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喚ばれた剣聖  作者: たんぽぽ3号


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11/72

喚ばれた剣聖ー11



いやー、今回もギリギリ間に合った、、、ってわけじゃない。


ぶっちゃけあの全身鎧に身を包んだ野郎がこの村に到着した頃には俺も既にここにいた。


ただ、どうして魔王軍が来たのか、誰が呼んだのか、そして敵なのか、それらを把握しようとずっと聞き耳を立てていたのだ。


ちなみにミリアには既に俺がいることを伝えてあるよ。

ミリアが震えながらもあいつに立ち向かえたのはそこら辺が大きいんだろうね。


そんで、、、



「オババ様!」


「スイ! トイス! 戻っていたのかさ!」



ついでにこいつらも連れ帰ってきた。


ぶっちゃけ説明くそめんどかった、いちいちトイスの野郎が突っかかってくるせいでここに戻るのも鎧やろうと一緒になっちゃったしね。


てか説明も何もすげー強い気配が近づいてるんだから様子見に戻るだろ、普通。



やれやれと首を振りながら俺は目の前の鎧に向き直る。



「えーと、初めまして、確か金の首 ギュリカ・ライロットさん?」


「・・・貴様、いつからここにいた?」


「最初からだよ。あんたが来た時にはここにいた、気づかないとは情けないね。」



無駄に煽ると、鎧は埋まった剣を引き抜きそのまま振るくる。

相手はしっかりと溜めを作ってから斬り掛かってきたので僅かにできた隙をついて俺は回避行動を起こし、返す手で相手の目を狙い鉄剣を刺しこんだ。


しかし、相手はそれを捻りながら躱し、もう一本の剣を引き抜いてくる。


先ほどよりも手数が増えて、反撃が難しくなる。


こちらは脆い鉄剣なので神経を使いながら二つの剣をいなし、躱し、相手の隙を探し続けて。



「は、速い。」



律兎は全く問題にしていないが、ギュリカの剣速はとても目で追えるものではない。そして、それをいなし続ける律兎も異常だと言えた。


まるでそれは舞のよう。


あらかじめ決められたルートを辿ってくかのように躱し、受け止め、反撃する。

お互いに当たる事もなければ、打ち合う事もない。

まさに剣舞という言葉が相応しい動きであった。



「・・・貴様、勇者か?」



唐突に鎧に問いかけられる。

またか、まぁ黒髪だしね。



「いいや、全く? 俺は女神様とやらにあった事もないからな。勇者でもなければ正義の味方でもないよ。」


「なら何故戦う?」


「えぇ? 理由なんかいる? 簡単だろ、お前が俺の敵だからだ。」



腕の捻りを加え、脱力。

敵の攻撃を滑らせるように後ろへ流し、俺は敵の横に並び立った。


そして真上に剣を構え、そのまま振り下ろす。


しかし、、、



「・・・『夜針』」



真下からボソッと呟きが聞こえ、嫌な感覚がビリッと首筋に走った。


その感覚を頼りに俺は後ろに飛び退った。


目の端に鎧から黒い針がハリネズミのように飛び出す光景が写る。

予備動作も無しに突然現れた針に満足な回避行動を取ることができず、数本の黒い針に貫かれた。



「ーーいってぇ!」


「人間、貴様ならもう少し速くしても良さそうだ。」



宣言と共に急加速。

横合いから振られた剣には必殺の威力が込められ、当たれば死ぬ威力が込められていた。



「ーーッち!」



ギッギギィイイイイ!



なんとかその一撃をギリギリで逸らしたが、もう一本の手に握られた剣が逆手に振り上げられる。

俺は崩した体勢のまま足に力を込めて飛び上がり、その2撃目も何とか躱したが、それでも鎧を引き剥がすことができず、下から切り上げられた剣に肩を裂かれた。



「ーーッツ!」


「律兎さん!!」



痛みに歯を食いしばって耐える。

ミリアの叫び声が聞こえるがそちらを気にする余裕はない。


俺は痛む肩をガン無視して踏み込み反撃に移った。


もう余裕はないな。


先ほどと違い、保身を捨てて斬り込むことにした。

避け切れず何度か裂傷を負うが、鎧に近づくことに成功。


心落ち着け、息を整え、止める!



ズガガガガガガガガッ!



相手はこちらの剣に合わせてくるが、決して受け流すことはせずに受け続ける。

俺の剣は刃引きされた鉄剣で決して一撃が致命打にならない。


だがそんな事は関係ないと振り続ける。


すると、敵は一撃が脅威ではないと油断し、避けるのを疎かにして攻勢に移ろうとした。


俺はそこを見逃さずに横腹に向かって剣を当てた。


決して大きな音はせず、ゴンッ!と鈍い音をさせただけ、、、しかし、鎧は次の瞬間、横に大きくふらついた。



「ーーごふッ! 貴様!」



・・・よし、上手く当たったな。


先程までの乱撃によって生じた衝撃を体の中で循環させて相手へと送る小手先の技。


もし一瞬でもこちらの動きが止められれば流れが止まってしまい、こっちが内部ダメージを負うことになるピーキーな技だけどちゃんと当たればでかい。



「ーーックハハハ! 久しぶりだ、楽しくなってきた!」


「いやキメェな、戦闘狂とか求めてないんで勘弁してくれよ。」



突然の哄笑にドン引きしていたがそれと共に敵の猛攻はスピードを増した。

既に斬撃や、スピードによって増した力によってドンドン広場は壊れていく。


これ以上増していけばいずれ住居にも被害は及ぶだろう。ま、そんときは直してくれって事で。



「・・・『魔装』」


「あ?」



相手の口から軽く呟かれた次の瞬間、大ぶりに振り上げられた片手剣に紫色の光が集まる。

背筋にビリビリと嫌な感覚がはしり、受ける事もギリギリを見極めて回避する事もせず、無様に転がるように避ける。


そして、その判断は正解だった。


振り下ろされた豪剣によって地面は割れ、直線上の大地を割り砕く。


円柱にヒビはいるだろうが!


相手はこの村が壊れようと知った事じゃないのだろう、取り上げようとしてたくらいだからね。


俺は周囲に視線を巡らせた。


皆、戦いに介入できないからか不安そうにこちらを見ている。でも広い場所がこの広場しかないから移動も難しい。



相手のあの破壊力は剣に魔力を纏わせたのだろう。破壊力、斬れ味、硬度の全てが底上げされているはずだ。


思考を巡らせていると相手が魔力を足に込め、こちらへと飛び出してくる。



俺は意識を深く、深く落とした。



周囲の雑音が消え、無駄な情報を削いで相手の動きのみに集中する。

相手の剣に合わせて力を一切逃さずに後方へと逸らし、そのまま投げ飛ばしてやった。


魔力纏いの欠点だね。


魔力纏いは剣と体を一つにするように魔力を調整する。その為、剣に体がついていきやすくなり、剣を手放すのに一手反応が遅れやすいのだ。


と言ってもその一瞬の隙を見破れる剣士なんて基本いないけど。


そのまま吹っ飛んだ鎧を追撃するようにこちらも飛び出す。


吹っ飛ばした鎧に肉薄。

衝撃を加えるように体に捻りを加えながら胴を剣の柄で叩き、鎧を円柱の外へと吹っ飛ばしてやった。



下は泥水だ、普通なら溺死するけど、、、



うん、、、まぁ、無理だろうねぇ、、、。



魔力纏いができてるって事はあの泥沼の歩き方も分かってるだろう。

てかここまで来てるんだから今更か。


さて、下の柱を壊されれば終わりだし、少しキツイけど飛び降りますかね。


勢いをつけて端まで走り、俺はそのまま飛び降りた。



「ーーッ!? 律兎さん!?」




ーー




魔王軍幹部とやらを追いかけて崖まで走ってどうするのかと見守ってましたが、まさか飛び降りるとは。



(あれ? でも律兎さん泥沼歩けませんでしたよね!?)



それを思い出して、さーっと血の気が引いていく。


い、急がないと!


私は、律兎さんの足場を作ろうと必死に走り出した。



「どこ行くさ!?」


「律兎さんは泥沼歩けません! 足場を作らないと!」


「無策で飛び降りたわけではないだろうさ! それに固定する足場を広げれば広げるほど沼の動きを把握するのは困難になるさね!」



後ろからオババ様が必死にこちらを静止してくる。

確かに私では長時間の沼の固定は難しい。でも、ここで見てていいのだろうか?


よくもわからず走り続け、ついには崖の端まで来てしまった。



・・・あれ? そういえばここを飛び降りないといけないのですか?



すると、急に足がすくんできた。

やっぱいいかな、1人で大丈夫かも知れないですし。


そう思ってやめようかと思ったら肩をポンと叩かれる。

振り向くとスイさんがそこに立っており、私に対して一つ頷く。



「・・・・・へ?」


「・・・私は水面の固定に慣れてる。それにこの距離なら律兎よりも早く湖面に辿り着けると思う。でも、私1人の魔力だとそこまで広げられない。・・・だから、ミリアさんには私に魔力を送って欲しい。」



え、もうやめようかなって思ったのですが、、、。


流石にこの空気感でそんなことを言う事もできず、とりあえず頷いといた。

そういえば魔力の譲渡ってどうやるんでしたっけ?

確か渡す相手の体に触れて回路を繋げるとかなんとか、、、あ、地肌に触れないといけないのでした。



「・・・私はスイナを何度も助けてもらってる。なら私は貴方達を助ける事に躊躇いなんてない。行こう、このまま落ちるよ。」


「え? このまま? 待ってください心の準備がーーーーー!!!」



セリフの途中で背中を押されて空中に投げ出される。

ものすごい風と勢いに漏らしそうになるのを必死に耐えていると、隣から魔力が練られる気配を感じた。



「『水明沈下』」



詠唱破棄された魔法が唱え終わると、私とスイさんの2人が透明な一雫の水となり、泥水に向かって一直線に落ちてゆく。

自分がどういう状態なのか見当もつかないくらい加速され、あっという間に泥の湖面へと辿り着いた。


そして、湖面の一歩手前で雫は軽く回ると2人の形を描き出し、元の姿へと戻る。

私は何が起こったのか一切わからず目をパチパチさせてばかりだ。


スイさんは特に何も言わずそっと湖面に手を入れ、固定を始めた。



「・・・ミリア! 早く!」


「は、はい!」



急かされ、私はスイさんの首元に手を当てた。

白く冷たい肌にそっと手を当て、魔力を流し込むように集中する。



・・・魔力ってどのくらい流せばいいのでしょう?



とりあえずよくわからなかったので出来る限りの魔力を送り込もうと一気に魔力をこめてみた。



「ーーッッッツ!!?? ま、まって! 速すぎる! こ、壊れちゃうからもう少し流れを落として!!」



切羽詰まったように言われたので、私は慌てて送り込む魔力を調整する。

先ほどよりも一気に押さえ込んで徐々に魔力を送った。


それだけでスイさんの足元に展開された魔法陣が一気に広がって行き、あっという間に湖面全体を覆ったのだ。



うわぁ、すごい。



思わず感動してると、スイさんは驚くように目を見開いている。



「・・・何、この魔力量。湖の一部でも足場ができれば充分だと思ったのに。・・・しかもまだ余力がある。」


「え? まぁ、このくらいであればまだまだ平気ですよ。」



私って魔力量多いのですかね?

他の魔法使いなんて会ったことありませんし、普通なんてわからないんですよね。


すると、私たちより先に湖面に着地していた魔王軍幹部が驚いたように声をかけてくる。



「・・・おかしい。貴様は一体なんだ? 人間、、、ではないのか?」



・・・? 生まれも育ちも人間ですが?


母親の顔だって思い出せますし、人間として教会で育てられた記憶もある。そこくらい間違えませんよ。


質問の意味がわからず首を傾げていると、スイさんと私の前に律兎さんが着地した。

彼は苦笑いしながら頭を掻いている。



「・・・なんとかするつもりではあったんだけどな。でも助かったよ。これなら戦闘にだけ集中できそうだ。」



彼はそう言った後、再び鉄剣を構えて魔王軍幹部に向き直った。



「さぁ、テイク2と行こうぜ?」




ーー




・・・まさか、湖面全体を足場にしてくれるとはな。



正直、なんとか戦える方法は考えてあった。

でもそれには集中力を二分させる必要があったので、ここはありがたく足場として使わせてもらうことにしよう。


俺が剣を構えてると鎧は顎に手を当てて何か考えを巡らせてやがるけどね。



「・・・神子か? いや、それなら体の一部が精霊であるはずだ。魔女にしては手数が少ないし、無理矢理調整したような継ぎ接ぎ感がない。それよりももっと純粋な、、、(ボソボソ)」



なんかボソボソ言ってんな。

隙だらけだし攻撃していいよね? いいよな!


屈むように足に力を込め、息を吐く。

構えは居合い。

急激な圧力の高まりに、相手は剣を構える。


先ほどとは違い周りに壊しちゃいけないものなんてないし、こちらも手加減は必要ない。



ーーズガンッ!



大地を陥没させながら、音よりも速く鎧に肉薄。

そのまま、振るわれた剣は相手の首をとらえて吹き飛ばした。



「・・・お?」



まさかの終わり? こんなに簡単に入るとは思わなかったな。


そんなふうに考えていると横合いから気配を感じ、技の直後で硬直した体を無理矢理動かして横に転がった。


俺がいた位置を2本の剣がから振る。

あぶね、居たら斬られてたわ。



「・・・初見であれば危険だったな。保険で影に潜っていて助かった。だが2度はやらせん。」



・・・マジか。この状況で観察に徹してたのかよ。どんな精神構造してやがる。


思わず冷や汗が垂れるが、口元には自然と笑みが浮かぶ。

久しぶりだな、この命をすり減らす感覚は、、、。




ーー




そこからは本当に泥沼の攻防だった。

周りへの被害を考慮せずに一気に肉薄。

止まることのない剣閃を結び続ける。


肉が抉られ、血が垂れ、汗と混じる。


片目に血が入り、赤く滲んで見ずらいが、そこは俺の空間把握能力に任せて動く。


致命傷は避けているので問題は失血かな。


速く決着をつけないとまずいだろう。


もちろん一方的に殴られてるわけではない。こちらからも相手へ衝撃を与え、内部ダメージを繰り返し与え続ける。



与え方は剣技だけではない。殴り、蹴り、使える手を繰り出し、ここぞの隙を探す。


いつだって剣の勝負は一撃必殺。


隙をついた方が勝つ。


実力は互角。いや、剣技だけの面でいえば俺の方が上だろう。


だって相手の剣は業物でこっちはただの鉄剣だからなぁ!!


優れた剣士は剣に左右されない、、、んなわけあるかぁ! 受け流すのに神経使うんだよ疲れるんだよ鎧斬るの大変なんだよぉ!!


それでも必死に喰らいつく。


鎧が不自然な動きを見せた。

グラリと揺れたかと思うと黒く滲んで空気に溶ける。


周りを確認すると、気配が三方向から感じられ同時に襲われた。

俺はそれに剣一本で応対する。


足を起点に回るように体を動かしながら各方向の剣を捌く。

運動量が多い。視点を目まぐるしく変え、全ての角度を予測し受け続けた。


相手も予想以上の食らいつきに動揺している。



「クハハッ! 楽しいな剣士!」


「ーーッうっせぇ! こっちは苦痛だよ!」



口ではそういうが、血は滾り、血が抜けて冷えてくはずの体は逆に熱を持っていく。


だがその熱は邪魔だ。


一度大きく血を吐き出し、熱と共に滾りを抑える。

増えた鎧は確かに脅威ではあるが一対一の時より動きに精彩が欠けていた。



「いい加減、、、! 終われ!」


腕を引き絞って体に寄せる。息を止めて狙いを定めた。

ギリギリまで引きつけ、、、放つ!!


ーーーーッボ!


高速で放たれた突き。

三体いた鎧全員の胴体に風穴を開ける。



「・・・・うぐぁあ!?」



全身傷だらけの状況で放てるような技では決してなく、無理が祟り右手に激痛が走った。



「・・・クポッ」



2体の鎧がペシャンと地面に溶け、目の前にいた一体が残る。

最後の一体は兜の隙間から血の塊を吐き、穴の空いた胴を押さえながら崩れ落ちた。


俺はそれを虚な目で眺め続ける。



「・・・はぁ! はぁ、はぁはぁはぁ、、、。」



まじでギリギリだった!


もはや視界はぼやけ、意識がグラグラと揺れている。

自分がまっすぐ立っていられる自信もない。


でもこんなところで倒れてしまえば足元の魔法を維持するのも大変だろう。


必死に足腰に力を入れて無理矢理歩き出す。

ミリアとスイを見つけ、そっちに向かおうとすると、、、



「ーー! 律兎さん! 後ろ!!」



ミリアの叫びに跳ねるように後ろを振り向く。

すると、胴に穴が空いたまま立ち竦む鎧。


自然と汗が湧き出る。


嘘だろ、、、もう戦えねぇよ。


顔が一切見えない漆黒の兜がこちらを見る。

そこから静かに笑い声が漏れ聞こえてきた。



「クックックッ! どうしたその顔は、まさか魔族が人と同じで腹に穴が空いた程度で死ぬと思っているのか。貴様は俺の種族すらわかっていない。」



確かに相手は全身鎧で中身の姿形もわからない。

だが、確かに攻撃した時は血を吐いたりなど手応えを感じていたのだが、、、。



「では、テイク3といこうか?」


「・・・勘弁してくれよ。」



俺はフラフラになりながらも相手を見据え、構えを取る。

敵が立っているなら寝てはいられねぇ、、、。



「・・・随分と気概があるな。瀕死の獣ほど恐ろしいものはない、とはよく言ったものだ。」



まじで瀕死だよ。

もう諦めて帰ってくれよ、こういう時はまた会おうって帰っていくのがお約束じゃない?



「・・・人間、貴様は《天能》というものを知っているか?」



突然よくわからないことを聞かれ、俺は首を傾げる。



・・・《天能》? 初めて聞いたな。



「天の導きたる神から授かりし力を俺たちはそう呼んでいる。・・・そして、それを発現するのは選ばれた強者のみだ。」


「・・・・・つまり、お前がその強者だと?」



まずい、、、。


まだ奥の手があったのかよ。

しかもよりによって未知の能力。勘弁してくれ。



「誇れ、人間。この力を見せた者は貴様で2人目だ。」



そんなに貴重なら是非とも見せないでくれ。


悲痛な願いも虚しく、鎧は両手を真ん中に合わせるように叩いてしまう。


そして呟く、、、



「《天能 傲慢たる蒐集家》」



バキィイイイイイイイイイン!!



ガラスが砕かれるような響音が辺り一体に響いた。

それと共に鎧の背後の空間が縦に割れ、漆黒の空間が現れる。



「・・・なんだよ、これ。」



そこから巨大な黒い扉のような物体が出てくる。

その扉が観音開きのように開き、そこには数えきれないほどの剣が所狭しと並べられていた。



「グリード、ジャガー。」



静かに発せられた言葉に呼応して扉の中にある剣が2つ光り輝き、鎧の手元へ飛んできた。

炎を纏う片刃の長剣と3つの刃が爪のように形成された短剣。


2本とも周囲を威圧させる存在感を放っている。



「これが俺の天能だ。中の異空間に蒐集した剣を取り出す能力。」



・・・うーん、それだけ聞くと大したものに聞こえないな。


だが、握られている剣は強い存在感を放っている。

ただの剣というわけではないだろう。


俺は足に力を込めて、全力で踏み出す!



狙うは先手必勝。よくわからないことをされる前に仕留めてやる。



そう思い、剣を脇に構えて全力で振り抜いた。


しかし、、、



「無駄だ。」



剣は鎧に到達する前に砕け散った。



「ーーーは?」



思わず間の抜けた声が漏れた。

確かに剣は業物ではないし、無理に使っていたので耐久値は減っていただろう。


でもまだ壊れるほどではなかったはず、、、!



「この扉が存在する周囲一帯では意志なき刃は存在することはできない。・・・そして意志なき刃とは剣のみに在らず。」


「・・・冗談だろ? そんなヤバそうな剣に素手で挑めって言うのかよ?」



つまり意志がこもっていない無機物では存在が許されないってことか。

何そのチート、ずるくない?



「欠点としては意志なき刃をこちらで指定できないってことだ。」



あー、そうなのね。どうでもいい情報をありがとよ。


冷や汗に頬が引き攣る。

今のコンディションでステゴロやれってか? 戦えるかよ。



「・・・では、終わらせようか。」


「ーーーーッッツ!」



右手に握られた真紅の長剣が振るわれる。

纏われた炎が直線上に伸び、先の地面を焼いていく。

俺は必死に走って炎をかわすが、完全には避けきれずに火傷を負ってしまった。


剣を振るわれた直線上は真っ赤に溶けたように抉れている。


もし直撃すれば骨も残らず焼き尽くされていただろう。



あー、こりゃ万事休すだ。もう諦めて寝てぇー。



あまりの理不尽な力に逆に力が抜ける。

こんなもん相手にしてられっかよ、もうミリア連れて逃げよっかなー。


チラリとミリアに視線を送る。


泣きそうな顔でこちらを見るミリアと、絶望に顔を青くするスイが目に入った。

そこには諦めも滲み、この終わりを受け入れてしまいそうに見えそうた。


そりゃそうか、俺が逃げればこの村は終わりだ。


おばばも戦えるだろうが勝てるとは限らないし、むしろ守るべき村がある以上大いに不利だろう。

ぶっちゃけ村なんかどうでもいいんだけど村にはスイナがいるし、見捨てるって選択肢はないな。



・・・随分と嫌な物を抱えちまってるもんだ。



空虚な笑みを浮かべて思わず天を仰ぐ、空は雲で濁り、晴れやかな青空は一切見ることはできない。



「どうした人間、諦めたか? ・・・興醒めだな、消えるなら消えろ。今なら見逃してやる。」



お、逃がしてくれんの? 嬉しいなー、それにこの村は含まれてないだろうね。


昔からよーく知ってんだ。敗者が贖うべき贖罪ってやつはよ。



「り、律兎さん。」


「ん?」



後ろから声をかけられ振り向く。

ミリアは泣きそうな顔で無理矢理笑顔を形作った。



「・・・任せてください。守って見せます、、、必ず。」



その言葉に俺は目を見開く。


死に怯え、戦いから常に逃げ越しだったミリアがそう言うとは思ってもいなかった。

つまり彼女には命をかける覚悟があるってことか、、、。全く、ただ居合わせただけだって言うのに大したもんだよ。



・・・それなら、逃げらんねぇな。



俺は思わず自嘲気味に笑った。

まったく、ミリアに言わせちまうとはなぁ。


そして、俺は目を瞑る。



・・・よく知ってるはずだろ、大っ嫌いな理不尽に食い潰された後の後味の悪さってやつをよ。



そして思い出す。

現世にいるとても最悪で、凶悪で、とても頼りになった最高の同僚たちはどうやってこの劣勢を崩すだろう。



・・・剣閃は言った。 


『ーー速さこそ至上!最強とは最速とイコールだ! 攻撃なんて当たらなければどうと言うこともないし、威力なんて速さが乗れば際限なく上がり続ける。圧倒的な速さこそが至高なのさ!』



・・・剣舞は言った。


『ーーいくら強い攻撃でも受け流しちゃえば意味なんてないよ〜。全ての攻撃を受け流し、ここぞと言うときに斬れば〜。・・・それでおしまい〜。』



・・・剣老は言った。


『ーー常に先を見ることだ。相手の動きを完全に読み切り、先を見れば攻撃も当たらず、斬るべき場所も自ずと見えてくるもの。』



・・・剣鬼は言った。


『ーーあぁ? んなもん圧倒的な力に決まってんだろ。どんなに硬くても受け流されても動じなければ意味なんかねぇ。・・・カカッ! なんか話してたら斬りたくなってきたな。おい律兎、付き合うよな?』



・・・剣王は言った。


『ーーガッハッハ! んなもん技量に決まってんだろ! 技っつうもんはな、代々洗練されながら継承されていくもんだ! 誰にも負けねぇ鍛錬を積んだ者こそが最強に至るってもんだろう!』



・・・剣帝は言った。


『ーー律兎、私達はなぜ『七剣』と呼ばれているか知ってるかい? 剣士だから? 強いから? たった1人で戦況をひっくり返せるからかい? 全て違う。七剣とは『至った者達のことだ』。一つの剣技を極め抜き、絶対に回避することのできない『至技』へと辿り着く。一撃必殺、一度振り抜けば例え盾であれ、鎧であれ、城塞であれ防ぐことのできない必殺の一撃。君達はそれを持っている。・・・理不尽を斬り抜ける力をね。』



俺は目を見開いた。

そうだった、()()にとって理不尽は斬り抜けるものだ。


この程度の理不尽、何度も味わってきたはずだろう。



俺は不敵に笑って目を見開いた。



その目に絶対の自信を持って、、、。





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