表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/102

ベッドの中に女の子が

 まどろみのなか。

 草の匂いがした。

 広大な草原でニーナと走っていた。

 後ろからはロザリアやボディア、ラウラウにロミロミ、ライトニング姐さんや、フライヤー。今まで出会ってきた人たちが追いかけてきている。



(地平線の先に、誰かいる……)



 遠くに二つのシルエット。

 1人はメガネの光がきらりと輝く黒髪の少年。ライドウ君だ。

 そしてもう1人は、金髪の大柄な少年。ギブソンだ。

 2人は俺らよりも前にいた。



(追いつかないと)



 追いかけて、ギブソンに手を伸ばす。

 しかしその行方を塞ぐ五つの影が現れた。

 1人だけ、正体がリキュアだとわかった。そして他の4人はみんな“五芒星”だ。



「あれは……」



 五芒星のさらに奥。

 もっと先に、もう1人いた。

 あれは、俺だ。

 否、朝倉颯太。すなわちソニアだ。



「届かない」



 遠い。

 手を伸ばしても届かない。

 それでも諦めずに思いっきり腕を伸ばした。すると柔らかい何かを掴んだ。

 そこで———目が醒めた。


△▼△▼△▼△▼

 ふに、と手に柔らかい何を掴んでいる。無意識の中で俺はそれを揉みしだいていて、手にその感触を記録しようとしていた。



(なんだ……これ)



 この弾力性はおそらく女の子の胸だろう。

 しかし俺の胸じゃない。俺のよりも小さい。寝ぼけて自分の胸を揉みしだいていると言うことはない。

 なら、誰のだ?



(ルームメイトはフライヤーさん……まさか! フライヤーさんの胸を揉んでしまっているのか⁉︎)



 しかしそうだとしても疑問が残る。

 今の俺は布団をかぶってベッドで寝ているんだ。

 だからもしフライヤーの胸を触っているのだとしたら、彼女が俺の布団の中に侵入してないとおかしい。そして彼女はそんな事をする人ではない。



(この部屋には2人だけ。そしてもう1人の方はこんな事しない。つまり………新たな人物。侵入者!)



 急いでこのおっぱいの感触の発生源を確かめなければならない。

 掴んでいる右手は動かせず、左手で布団を剥ぎ取る。

 そして布団の中にいたのは……。



「…………」



 見覚えのない女の子だった。

 浅黒い褐色の肌に、ねっとりした絵の具をそのまま目の中に流し込んだような、色彩の混じり気がない真っ赤な瞳。

 そして右の額にはツンと伸びたツノが生えていた。

 黙ってこちらを凝視するその少女に、俺は戸惑うしかできなかった。右手はまだ生まれたままの姿の、彼女の左乳を掴んでいる。



「……誰……?」



 俺の当然の疑問に、小さな小さな唇がスローモーションでゆっくりと開いていく。



「ガ、ド……」


「ガド?」


「……ガドガド」



 ガドガド。

 それが布団の侵入者の名前。

 で、誰だろう?



「何しているの?」


「あ、フライヤーさん」



 いい加減胸から手を離そうかとしていたところで、いつの間にかフライヤーがベッドの隣に立ってこちらを見下ろしていた。

 そして一息に俺の布団を全部引っ剥がした。

 中から出てきたのはピンクのパジャマを着た俺の体の上にのしかかる、裸の褐色少女。ツノが生えた不思議な少女。



「あ、ガドガドじゃない」


「もしかして知ってる相手? 起きたら中にいて……」


「いいから胸から手を離す」


「ごめんなさい」



 素直に謝って手を離す。そして体を起き上がらせて、ガドガドと名乗った少女の下から抜け出そうとした。

 しかし離れようとした俺の方に、少女が手を伸ばしてきた。

 今度は逆に向こうから俺の胸を両手で両胸を掴まれる。



「ひゃっ! ちょ、なにして……!」


「ふか、ふかふか」



 たどたどしい言葉で感想を言われる。そして細い指を食い込ませて、思いっきり握るように揉んでくる。



「ちょっ! い、痛い、痛いから……!」


「その子は私と同じBクラスの生徒よ」


「冷静に解説なんてしてる場合じゃ……!」



 胸を揉まれながら頭の中で整理する。

 Bクラスって事はフライヤーや姐さん、ロザリアやボディア、レッサーベアー達と同じクラスだ。

 えっと、Bクラスの女の子が………俺の布団に入って何してるんだ?

 フライヤーがやっと、俺の胸を揉みしだくガドガドという女の子の手を掴んで、離してくれた。



「あ、ありがとうございます……」


「で。ガドガドはどうしてここに? 学園長の元から抜け出して来たの?」



 フライヤーが尋ねてみても、ガドガドはポケーとした顔で何も答えなかった。



「はあ、相変わらずね」


「学園長? どういう事ですか?」



 フライヤーがガドガドの俺の足の方に移動させたのと同時に、上半身を起こしながら聞く。

 学園長がなんか関係してるのか?

 学園長が、一学生と?



「この子は学園長が“保護”してる子なの」


「保護? 単なる生徒ってわけじゃなくて?」


「ええ。なにせこの子は———魔族と人のハーフだから」



 ガドガドは、俺の足の上に乗っかったまま俺を見つめていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ