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Cクラスの新しい仲間

「つまり昨日の朝方辺りに俺が部屋に運ばれたって連絡があったのか」



 早朝、フライヤーが学園に入学して、そして俺と同じ部屋で暮らす事が決まった事を知らされた翌日。

 ニーナと話しながら食堂に向かう。



「そう。私はそれを聞いてその時たまたま一緒だったラウラウとロミロミと、あなたの部屋に向かった」


「……で、フライヤーが俺の部屋に来た理由は知ってたか?」


「部屋で待ってた時に彼女が来て教えられたわ。あの……めんどくさそうな性格の人があなたのルームメイトになると。それとライトニングって人はロザリアのとこに行ったらしいわ」



 姐さんも学園に来たというのも教えられていた。

 しかしまさかあの2人が来るなんて、思いもしなかった。

 なんで来たのかと聞いてみたものの、学園と軍からの許可は降りてるし半分命令みたいなもの、としか話してもらえず詳しい経緯まではまだ教えられてない。



「ギブソンとライドウ君の空いた席に座った感じだって事だけど……」


「こないだB級争奪戦があってメル様とテンテラが昇級したばかりだってのに、忙しいわね」



 話しているうちに食堂に着いた。

 配膳の順番待ちに並んでいると、後ろから肩を叩かれた。振り返ると黒いツンツン頭のライダークがいた。横には争奪戦の時コンビを組んでいたケジャリーもいる。



「よお。王都に行ってたんだって?」


「ライダーク。ああ、ちょっと野暮用があって」


「なら運が悪かったのか? 寝込んでたのはガンマンズに襲われたからって聞いたが」



 ん?

 ガンマンズって……ああ、テロリストか。

 俺はガンマンズにやられてそれでずっとベッドに寝たきりに……ん?

 あれ、なんで俺昏睡してたんだっけ。

 あ!そうだ、姐さんが俺を庇って、太った貴族服の大男に腹を刺されて———



「ッ!」


「どうした? 震えてるぞ」


「いや……」



 な、なんだ?

 あの太った貴族服の大男……顔までは思い出せないが、なぜか思い出そうとすると悪寒がする。まるでトラウマを植え付けられたような気分だ。



(というかあの人誰だったんだ? でも話し的にガンマンズなのか)


「ふぅん、まあ無理すんなよ。お前はこっからなんだしよ」


「ソニアちゃん、前進めますよ」


「あ、ごめん」



 ケジャリーに言われて列の前に進む。ニーナはこっちの会話に入る素振りすら見せずに、前だけをみている。

 頭の中にしこりを残しながら、ニーナの受け取ったソーセージ入りカレーライスを見て、俺も出されたそれを受け取って……違和感を覚える。

 後ろを見るとライダークとケジャリーも受け取っている。しかしソーセージの本数が違った。俺だけ2本ほど多い。



(給仕の人が入れすぎたのか?)



 前までならラッキーと思えただろうが、今のソニアの体は少食でこんなに食べられない。

 ニーナに先にテーブルへ行ってるよう言い伝えてから、もう一度列に並び直し、そしてカウンターの給仕さんに。



「あの、ソーセージ2本ほど多いんですが……」


「ん? ああ……受け取ってやって」


「へ?」



 給仕のおばちゃんは後ろを指さした。

 後ろは調理場になっていて、見知った顔の女の子が2人ほど俺の様子をチラチラ伺っていた。俺が目を向けると途端に顔を伏せる。



(あの2人……そっか)



 思わず小さな笑いがこぼれてしまう。



「ありがとうございます」


「冷めないうちに食べなよ」



 ニーナの待つテーブルに座る。



「どうしたの?」


「ん? なんでもない」



 あの2人から貰ったソーセージを一気にかき込む。



(あの子たちのくれたパワーだ、食って自分のパワーにしてやる)



 不思議そうにするニーナの隣で完食した。

 そして皿を返す時に給仕のおばちゃんに伝える。



「あの、今度はもうちょっとささやかな増量でお願いします……ウップ」



△▼△▼△▼△▼△▼△


「あんな張り切って食べるから」


「うう、でもアレ食べ切らなきゃ男じゃない……」


「はあ」



 教室で机に突っ伏している俺を、ニーナがジト目で見下ろしてくる。



「どーした? そんな張り切っても、ちゃんと体作れねーと戦いのプロには成れねーぞ。焦ってんのか?」


「……焦っては、ねーと思うが」



 頭上から投げかけられるライダークの言葉が心に刺さる。

 “戦いのプロ”……ね。


 …………。


 “戦いのプロ”ってなんだろ?



「あらァ、ソニアちゃん元気ないのォ?」



 ふとした疑問が頭をよぎったその時、ミカライトが話しかけてきた。制服の六つある前ボタンのうち上から三つ、下から二つ外した、もう着てないのと同じような肌着丸見えの格好をしている。ジャケットも全開である。

 刺激的すぎて直視できない。



「ミカライトお前な、もーちょっと男子の目と言うのを気にしろよ」


「いーやァー」



 ライダークの文句もどこ吹く風で聞き流した。



「ねェねェ、ジュピターの戦いどうだったァ?」


「え?」



 ジュピター?

 ジュピターって言えば、確か五芒星について『フラン』で調べた時に載ってた名前だな。

 最強という二つ名を持つジュピター・スノーホーク。



「……どうだった、とは?」


「えェ? 戦いを見たんじゃないのォ? じゃああの時のはなんだったのかしらァ」


「なんの話かわかんないけど、ジュピターとは面識ないわよ」


「そおなのォ? ふゥん……」



 何か思案顔になったミカライト。

 そんな彼女の姿を見て、そして思い出した。



「あ、そう言えばお見舞いに来てくれたのよね」


「別に私にとっては特に興味はないんだけどねェ……でも時流はあなたに向いてる気配がするわァ。なんかあった時は助けてねェ」


「助ける? うん、まあわかった」


「それじゃあねェ」



 ミカライトが立ち去ると同時にチャイムが鳴った。ホームルームが始まる。

 ライダークとニーナも自分の席に行った。

 少しして担任のイシュ先生が教室に入ってくる。相変わらず無表情だ。



「今日はこのクラスに新しく入る2人を紹介します」



 姐さんとフライヤーだな。

 イシュ先生が入って来るように教室の外へ呼びかけると、2人の少女が入ってきた。


 一人は薄ピンク色の髪をした小柄な女の子。目が大きく瞳も綺麗で、顔立ちの整った可愛らしい顔つきだが、どことなく落ち込んでいる風に見える。


 もう一人は後ろ髪がすごく長いロングヘアーに、頭の両側にツインテールで髪を結んだ髪型の、これまた小柄な女の子。細くて小さな体つきだが、胸が大きい。可愛らしい顔だがこちらもまた落ち込んでいる。



「………………あれ?」



 姐さんとフライヤーじゃない?

 てっきりあの2人がこのクラスに来るものだとばかり。



「あら? アイバルにココットじゃない。ん? B級のあなた達が来たってことは……」



 カミラがそう言った。

 B級?あの二人はBクラスの生徒ってことだよな。

 それがCクラスに来たってことは……。



「誰かに蹴落とされたってわけかァ」



 カミラの隣に座るミカライトが残酷な現実を突きつける。

 だから二人とも落ち込んでいる風に見えたのか。そしてこんなタイミングでCクラス降格が起こったって事は……。

 イシュ先生が二人を空いた二つの席に案内して座らせた後、2本の指を立てた。



「では次に二つほどご連絡があります。この度126代目勇者パーティ候補の仲間に、学園駐屯基地に所属する軍人、フライヤー・ドラゴンフライさんとライトニング・ファイアフライさんが加わる事になりました」



 先生が一本指を折る。



「そして二つ目のご連絡は、お二人が入ってすぐに学園のルールに則ってB級に昇格したという事。ですのでこのクラスでの新しい仲間はアイバル・オーブンパプリカさんとココット・キャセロールさんのお二人です。仲良くしてあげてください」



 二本目の指も折られた。

 紹介された降格した二人は席についた後も落ち込んでいる。



(マジかよ、あの二人行動早すぎだろ……)



 まあでも感覚的にだが、あの二人はCクラスに収まるような実力ではないと思っていた。



「それから政治的なご連絡」



 政治的?



「今朝、ガンマンズ達の結果について連絡が来たわ。この学園を襲ってきた彼らの目的は学園長だったらしい。そして学園を襲った5人はAクラスのリキュア・グレープハープさんとシルビア・ドーベルマークさんが倒して政府に受け渡した……もうその辺は聞いてるわよね。そして彼らの処遇だけど……」



 イシュ先生は一瞬だけ言いにくそうに口元を歪めたが、すぐにいつもの無表情に戻り言い伝える。



「彼らを捕まえて監視していた勇者藤堂春樹が逃してしまったと報告があったわ」



 勇者?

 勇者が捕まえたテロリストを逃してしまったってことか。

 藤堂春樹……どの代の勇者だろう。



「犯人は逃走中。またここを襲うかわからないから注意するように……そして」



 また先生は話の間を空けてから、話し出す。



「彼らに協力したダイス・グリッドハウスは今朝首切り台で処刑されたとのこと」



 処刑……⁉︎

 話題のインパクトに驚愕する暇もなく、教室から大きな声が上がる。



「なんだって⁉︎」



 大きな声で叫びながら立ち上がったのは、マックだった。マック・リナラン。



「あ、あの人が、死んだ……そんなバカな……」


「おいどーしたお坊ちゃん。確かにダイスは俺も知ってるが、そこまで反応するとは……同じ貴族だからなんかあるのか?」



 ライダークが少し茶化しながらマックに話しかけるが、マックは上の空でぶつぶつと小声で何か言っていた。そして唐突に教室から出て行った。



「おいマック! すみません先生! 追いかけて良いっすか!」


「はい。お願いします」



 先生の了承を得て、出て行ったマックをライダークが追いかけて行った。

 ……どうしたんだろう、マックは。



(それよりダイスって誰だろ)



 処刑されたって言うのは衝撃的だけど、それ以上に誰だ?って考えの方が大きかった。

 先生の連絡事項はそこまでで、それからはいつも通りホームルームが終わり、授業も始まった。二時限目頃にライダークは教室に戻ってきたが、放課後までマックが戻って来る事はなかった。

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