勇者会議
「俺まで呼ぶ必要あったかよ、夫婦そろってさ。俺はもう勇者業辞めてんだがな」
巻島悠太。
剣の名前は『ミクソプテルス』。
・101代目勇者、40歳。
・勇者のために組織された自警団、勇者の篝火団の団長。
・巻島夜歌と結婚している。息子は5歳。
「何言ってるのよ、悠太。【ガンマンズ】についてでしょ? なら勇者の篝火だって他人事じゃない」
巻島夜歌。
剣の名前は『ラブカ』。
・102代目勇者、39歳。
・旧姓、佐々木夜歌。
・別の人が好きだった悠太に必死にアプローチをして6年前に念願成就を果たす。
「ああ、その通りだ。みんなに集まってもらったのは他でもない」
獅子王英雄。
剣の名前は『バーバリ』。
・100代目勇者、41歳。
・勇者たちの頼れるリーダー。
・勇者からも王国民からも信頼されている。
「ガンマンズねぇ……王都にはいないんじゃねーのか。俺がアイツらなら、標的である王都から離れた場所に拠点を作るね」
小原灯旗。
剣の名前は『ヒラコテリウム』。
・105代目勇者、36歳。
・三国志と馬が大好き。
・好きなのは曹仁、張遼、魏延、荀彧。馬の名前は黒捷。
「ぐー、ぐー……ううん、もう食べられないよー」
春山桃哉。
武器の名前は『コトゥルノキスティス』。
・108代目勇者、33歳。
・デブで面倒臭がり。
・現在睡眠中。
「…………………………………………………」
影山緋文。
剣の名前は『三葉虫』。
・123代目勇者、18歳。
・“選択放棄の裏切り者”。
・現在は城の部屋で引きこもっている。
(……颯太君も来たのね、意外。ていうか太り過ぎじゃない?)
紅屋桜姫。
剣の名前は『オットイア』。
・124代目勇者、17歳。
・今年旅立つ勇者。
・明日ギブソンと会う予定。
「会議になってます? これ。三人ほど喋らないんですが」
安達鞍馬。
剣の名前は『メガネウラ』。
・125代目勇者、16歳。
・朝倉颯太の一つ上の先輩。
・もうすでに仲間を“選んでいる”。
「議題はわかったしー、警戒して私らも王都に滞在してるけどさー、別段気にするものでもニャいんじゃニャいかニャー……おっと」
日立成美。
剣の名前は『アカントステガ』。
・121代目勇者、20歳。
・特別な能力を持つ。
・時々「な」が「ニャ」になってしまうのが悩み。
「いやいやいや、この会議は重要だぞ。アイツらの目的は勇者召喚の反対だ。もし俺の大切なアリレスが狙われたらどうするんだ」
東雲斎斗。
剣の名前は『ユーリプテルス』。
・120代目勇者、21歳。
・女好き。
・現在はとっても可愛い黒髪の女の子と結婚している。
「それはお前の問題だろ、お前がちゃんと守ってやれ、斎斗。つーかちゃんとリーダーの話を聞けよ。他のみんなもだ」
藤堂春樹。
剣の名前は『クックソニア』。
・119代目勇者、22歳。
・やる時はやる男。
・リーダーの獅子王英雄に憧れている。
「ふぅ、まったく纏まりのない……話は私が続けさせてもらおう。よろしいか」
仁科幸太郎。
剣の名前は『シーラカンス』。
・112代目勇者、29歳。
・王都にて自分で開いた学校の先生をしている。
・参謀役でもあり、英雄からも頼られる知恵者。
「はいはーい」
朝倉颯太。
剣の名前は『ボレアロスクス』。
・126代目勇者、15歳。
・今年召喚された勇者。
・ノリが軽い。
「ふむ、今年来たばかりと言うのに颯太はすごい順応しているな」
「いやいや、順応できないわよ。ワクワクが止まらないもの! 贅沢三昧にね! うひひひ!」
「はあ……まあいい」
朝倉颯太の言動の節々から滲み出る怪しさに、他の勇者達から少しばかり注目されている中で、仁科は続ける。
「では議題は【ガンマンズ】について。今現在わかっているのは、111代目勇者の井垣葉月……つまり私の一つ前の代の勇者が、彼らのリーダーだと言う事だ」
仁科が『フラン』に映した写真を掲げてみんなに見せた。そこには白髪の女性が写っていた。
彼女こそが111代目勇者の井垣葉月であり、反勇者召喚派のリーダーである。現在は身を潜めているが何度か王都の城や神殿、古都や各地の軍事基地でも襲撃事件が起きていた。
「規模は20人ほどの小いさなものだが勇者が率いている以上危険だ。彼女達ガンマンズの目的はみんなも知っているだろう。彼女は……———自身が召喚された時点で100年以上も続いている勇者召喚に疑問を持ち、帰れない可能性に恐怖し、王国に反逆した。目的は勇者召喚の撤廃」
「あーあーあー、はいはいはい」
「ん? なんだ、颯太」
「そう言えば私ー、学園に行った時にー、金髪で図体のデカい生徒から襲われましてー」
「ちょっと颯太君! 今はそんな事関係ないでしょ! 襲ったわけじゃないし!」
紅屋が立ち上がって怒りのままに話を止めさせようとするも、それを無視して颯太は続ける。
「ソイツ、勇者を解体するとか言ってまして~」
「颯太」
「はい? なんでしょう。あ、ちなむとソイツの名前は」
「ギブソン・ゼットロックだろう?」
「え、あ、はい」
颯太は仁科の表情が変わらず、淡々と話す言葉に、期待していた反応が見れずガッカリすると同時に、呆気に取られていた。
「我々も馬鹿ではない。紅屋について行って君が学園に行ったのも知っている。そしてそこで何が起きたかも調べがついている……当然、君も言動もな」
「ならギブソンはガンマンズの仲間なんじゃ」
「馬鹿ではないと言ったばかりのはずだが。もうすでにギブソンの調査も終えて、関係はないと判明している」
「い、いつのまに……」
「VIPルームで何があったのかも知り得ていることを肝に銘じておくことだな。それ以前に、颯太、君は勇者以外には随分傍若無人にしているが我々にもそれが通用すると思っているのなら大間違いだぞ。君の言動は目に余る、しばらくは勇者の城で大人しくしていろ」
「う………」
仁科の教師と同じ重々しく厳しい声色に気圧されて、颯太は何も言い返せず縮こまる。紅屋はそんな颯太を見て、口を窄め、ちょっと笑いそうになっていた。颯太はそれを見てイラッとした。
「さて、余計な茶々が入ったが話を進めようか」
「仁科、言い過ぎだ」
「それは申し訳ない、ヒデさん。でもこのくらい言わないと聞かないだろう、中坊上がりの調子乗った子供は。我々もここに来た頃は似たようなものだっただろうし」
「確かに颯太の言動は目に余るものがある。しかしそれを追求するのは会議外でするべきだ。ここでは会議の内容だけを話し合うべきだ」
「……すまない。歳を食っただけで偉くなった気分に、少しなっていたかも知れない。嫌いだった大人になりかけたな。わかった冷静になろう」
頭を下げ、短い言葉で颯太に謝った仁科。
颯太はそっぽを向く。早く終われこんなクソ会議、と思った。