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裸で語ろう

 あの女ヘッドはフライヤーが軍に身柄を引き渡した。そこで彼女がアラクレの1人である事がわかり、異様に集まっていたヤンキー達もその一味。

 女ヘッドの事は王都の軍に全て任せるとのこと。

 しかし……レベルの違いを知った。街中でたまたま会った女ヘッドもとんでもない強さだったし、ライトニングもフライヤーも強い。俺とは比較にならないほど。



(あの2人は、あれで“七階級”……もっと上がいるって事か)



 あんな戦い方元いた世界で見た事ない。異次元な戦いをする人間がいて、さらにその上の上の人間がいると言う事実。



「簡単に強くなると言ってたのが恥ずかしい」


「ねーねー、ソニア」


「なんすか? オシラーゼさん」


「シャンプーっていつも何使ってる?」


「いや最近はあんまり使ってもない———ん?」



 シャンプー?

 学園長から依頼された護衛対象すなわち俺のために、フライヤーは宿屋を用意してくれて、そこに同行者全員で寝泊まりする。

 個室がいい、と言える立場でも状況でもなかったためそのまま俺はライトニング、オシリン、オシラーゼとの4人部屋に寝泊まりする事に。

 フライヤーとその副官アキツは、フライヤーが俺の中身が男だと知っているからか同室を避けていた様子だった。

 そして今、ベッドの上で先ほどの戦いを思い返していると隣からオシラーゼがシャンプーの話題を振ってきた。



「なんでシャンプー?」


「だっていつもと違うのイヤじゃない? ねー、お姉ちゃん」



 オシラーゼが俺の後方に向けて声をかける。思わず振り向いて……服を脱いで下着姿のオシリンを見てしまった。

 慌てて首を前に戻す……と、今の目を離した一瞬のうちにオシラーゼも服を脱いでいた。下着姿どころか裸を見てしまった。



「うわああ!」



 慌てて両手で目を覆うも、オシラーゼの裸が脳裏に焼き付いてしまっていて、真っ白な乳房とその先のピンク色の……。

 わ、忘れろ!

 忘れないと!

 しかしオシラーゼの体、傷だらけだった……胸元のあたりにも傷が……ってだから忘れろ!



「なんで脱いでる、のよ! いや、脱いでるんですか!」


「なんでってお風呂入るからに決まってるじゃん」



 手を掴まれて片目を抑えてる手がオシラーゼによって剥がされる。力強く目瞑る。



「なんで目をつぶってるの?」


「え、えーとそれは! あー……あ!」



 男だからだとは言えない。

 けど、俺が男だと知っているフライヤーならこの状況から助け出してくれるかも知れない。



「フライヤーさんはどこですか!」


「アイツなら隣の部屋。私は呼びたくないから、オシリン呼んできて」



 不機嫌なライトニングの声が聞こえる。衣擦れの音も同時に聞こえてきて、ライトニングも風呂に入るために服を脱いでいるのだと分かった。



(ヤバいヤバいヤバい!)


「ライトニング上官、ドラゴンフライ殿をお連れしました」


「あなたねぇ、私を呼ぶにしても部下を下着姿で出歩かさないの。それでブラックパンツァーは目をつぶって何を……」


「フライヤーさん! 助けてください!」



 顔を覆うもう片方の手もオシラーゼに剥がされて大ピンチだ。入り口の方にいるフライヤーに向かってSOS。



「ほう、なるほど……ライトニングも脱いでるのね」


「あ? 私が脱いでたからどうなのよ」


「いや?」



 すると足音が聞こえてきて、そして俺のそばで立ち止まったかと思うと、一瞬で服が脱がされた。上半身が裸に剥かれる。

 何故⁉︎



「ちょっおおお!」


「おお……」


「す、すごい……」


「でっか! ロケット!」


「ふむぅ。服の上からでも分かってたけど、ここまでとはね」



 オシラーゼ、オシリン、ライトニング、フライヤーの順番で俺の胸に対する感想を聞かされる。思わず腕で隠そうとするが、その時に自分の柔らかい胸に触ってしまい、驚いて腕を離す。



「な、なんで脱がすんですか! 誰が脱がしたんですか!」


「フライヤー」


「なんで!」


「お風呂、入るんでしょう? だったら脱がないと……ぷっ、ふふふ」



 何を笑ってるんだ。何がおかしいんだ。

 というかフライヤーは俺の中身が男だと分かっているんじゃないのか?

 それなのにどうして風呂に行かせるような事を……まさか!



(ら、ライトニングが入るから、男の俺に入らせて嫌がらせするつもりか!)



 なんて陰湿な!

 しかもライトニングは俺の正体知らないから、実質女の子の裸を見てしまう俺しか被害受けない!

 俺が男だと言っても、もう副官姉妹の裸を見てしまっている以上バラした瞬間殺される!

 八方塞がりもいいとこじゃねーか!



「は、入らないって選択肢は……」


「あると思う?」



△▼△▼△▼△▼△


「ふかふか~」


「ふわふわ~」


「や、やめっ……んんっ」



 目を瞑るのに集中したいのに、俺がまともに抵抗出来ないのをいい事に副官姉妹が俺の胸を揉んでくる。暴れて手が彼女らの身体に触れるのはマズイので、両手を挙げっぱなしにしておかなくてはならず、なので揉まれっぱなし。

 む、胸を揉まれる感覚は初めてではないが、こんな2人がかりで片方ずつを遠慮なく揉みしだかれるのは経験がない。



「アッ! ら、らいとにんぐさんっ! たすけてっ!」


「いやぁ、次私の番だし」


「そんなっ!」



 ライトニングの揉みかたは、それはそれは激しかった。目をつぶって暴れないように堪えるので必死だった。

 ……変な声いっぱい出しちまった。



「でさ?」



 副官姉妹に洗ってもらった身体を、湯船に浸ける。

 浴槽に入るとすぐ隣に座るライトニングの方から、そんな声がかけられた。



「なんすか?」


「なんしに王都に来たん?」


「え? それは」


「言えない? けど言えないような事をしてる不届きものを放って置くのもアレだしさぁ。教えてくれた方がなんぼか助かるんだけど」


「と、言われても……」



 言えるわけはない。

 だって俺の要件は、勇者朝倉颯太が関わっている。俺の目的を言えばライトニング達は朝倉颯太を不審に思い始めて、あらぬ争いの火種になりかねない。勇者と敵対する事はこの世界では御法度。



「言えないんす」



 そもそもの話、他言していい事情じゃない。

 人の心の話だ。



「勇者が関係してるのは分かったけど、確か朝倉颯太ってアンタが蹴った相手よね? しかも126代目勇者と、126代目勇者パーティ候補って関係。なのにこんな所まで来て………あ! もしかして自分を勇者パーティに選んでくださいってお願いするつもり? そのおっぱい使って」


「違う!」


「じゃあなんで」


「えっと……」



 そこで俺は思考する。理想と理屈を考えよう。

 理想は朝倉颯太に質問をして、その答え次第では俺は朝倉颯太と敵対するかも知れない。

 なら理屈はなんだ?

 朝倉颯太に質問するためには……あ。



(俺、アイツに恨まれてるかも知れない。だったら会った瞬間に襲われる?)



 それ考えてなかったな……。

 もし顔を合わせればアイツから攻撃される恐れがある。

 学園長はフライヤーとライトニングに護衛を頼んだ。もし襲われるとなったら俺を守るために彼女らが動くという依頼内容だが、その相手が勇者ともなれば彼女らもこの世界の価値観に則って手を出さないかも知れない。もし手を出したとしても、それこそ彼女らの立場が危うくなる。

 ならどうする?

 どうやって目的を達成する?



「……帰るのは、なしだ」



 それだと意味ない。アイツ……朝倉颯太の起こした“事件”は、俺も他人事ではない。他人事で終わらせられない。

 ならば今から学園に帰って、全て忘れてのんびりするなんて事は、俺自身が許せない。

 そうなるとここでできる事は……。



(朝倉颯太にバレずに調査するしかない)



 そうなると協力者が必要だ。

 落ちこぼれの俺に戦闘は不向きだ。ならば協力者が必ず必要になってくる。

 となると……フライヤーとライトニングに頼るしかない。だが彼女らを巻き込んでいいのか?



「………」


「悩んでるな。なんか。何を悩んでるんだ?」


「その……」


「喋りにくいの? ならこうしよう。立て、立って湯から出ろ」


「え?」



 言われた通り、目をつぶったままなのでこけそうになりつつも、風呂から出た。




「目を開けろ」


「えっ! いや……」


「開けろ!!」


「はいい!」



 怒鳴られて目を開けてしまう。

 すると目の前には、あちこちに傷のついたライトニングの裸体があった。まんま女の子の裸だ。

 慌てて目を逸らそうとすると、またも怒鳴られてこっちを向けと命令される。



「ど、どうして……」


「これからするのは“兄弟”の契りだ」


「……兄弟?」



 ザシュッ、とナイフが人の皮膚と肉を切り裂く音が聞こえた。

 思わずライトニングの方を見てしまう。ライトニングの裸体、よりも俺の目が自然と惹きつけられるように注目したのは、彼女がナイフで己の右手の掌を切って血を流しているところ。



「ナイフはコアで造った」


「な、ちょ……何してんだ!」


「お前も自分の右手の掌を切れ」


「そんな事より怪我を」


「そんな事ではない! これからするのは“兄弟”の契りだと言ったはずだ! ……やってくれ」



 ゆっくりと差し出されたナイフ。

 なんで?

 何がしたい?

 何をするつもりだ?

 逡巡しまくって、しかしライトニングの俺を見る真摯で真っ直ぐな目を見た。それを見た瞬間この人を疑えないと感じた。

 俺はナイフを手に取ってしまう。



「これで、手を?」


「そう。やって」



 “兄弟”の契りとは?

 わからないが、しかし……俺は右手の掌を思いっきり切った。

 痛みと、傷口から血が流れてくる。



「くっ!」


「切った手を出して」



 言われた通り手を差し出すと、そこにライトニングの右手が繋がれる。すると切った傷口が重なり、血が重なる。



「これで2人の血が交わった、同じ血を持つ兄弟だ」


「同じ、血?」


「そう。これが“兄弟”の契り。私とお前は、家族になった」



 ギュッと握られて傷が痛む。

 じゅわっと血が染みて、ズキズキと痛む。



「家族なら苦楽を共にする権利がある」


「ライトニング……」


「これで話しやすくなったろ? ……ところで何歳?」


「15」


「じゃあ一個下の妹だな。そんでオシリンは14で、とオシラーゼは13。お前の妹てことになる。これからよろしく、ソニア」



 俺は……勇者朝倉颯太が、メイドや奴隷を襲っているかも知れないと言う事を話して彼女らの心を知り、救うべきなら救いたいと話した。

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