ガーリックの手の中
「ソニアとライダークが落ちたか」
オトロゴンは2人の戦いの行方を見守って、決着がつくと不意に屋上の方へ視線を向けた。そこに立っていたガーリックは姿を消している。
デットの方を見れば彼女も立ち去った後だった。
すると隣にいるサンタンクの身体が震えているのに気づいた。顔を俯かせている。オトロゴンが視線を向けたのが分かったのかゆっくり話し始める。
「なあオトロゴン、なんで、デットは脱落した?」
「……ほぼ確実な事は、ガーリックが何かを仕組んだ。そのためデットは脱落した。お前が昇格するのに最も大きな障害である、デットがな」
「……やっぱそう言うことか」
サンタンクも屋上を見上げた。しかし誰もいないので、視線を自分の足元に戻してから、おもむろに自分のワッペンを壊した。
「ふざけんじゃねぇ! そんな気遣いされたまんまいけしゃあしゃあと昇格できるわけねぇだろ! あとでガーリックはぶん殴る! そんで俺もぶん殴ってもらおう! 上等じゃねぇか、こんな競技じゃなく学園のルールに則ってB級になってやるよ!」
自分のワッペンを壊した事でアナウンスが鳴り響く。
『サンタンク、オトロゴン! 脱落!』
「あ」
その時、サンタンクはペア相手のオトロゴンのことを思い出す。
「わ、悪い! 俺、勝手に!」
「いいや構わない。お前とペア組んでいた俺もガーリックの恩恵を受けるところだったんだ」
なぜ昇級する気持ちのないガーリックがこの試合に参加したのか。
なぜ一番組むのにあり得ないデットと組んだのか。
それはBクラスに上がる事を尻込みしていたサンタンクを昇級させるためだ。
デットを確実に倒すにはペアを組んで仕掛けをするしかなく、同時にデットを使って他の参加者をふるい落とした。
そして最後の最後に、デットとガーリックを警戒して膠着する状況も作り上げて、ライダークと……予想していたかはわからないがソニアの攻撃に合わせてデットのワッペンに仕掛けた爆弾でワッペンを破壊しデットを脱落させた。
「ガーリックの狙いは、俺も含まれてたかもしれないが、こんなんで昇格した所でB級の連中から蹴り落とされるだけだ。だったらテメェの実力で乗り越えるしかない」
「そうだな……ふっ、もしかして今生まれたこの意気込みもアイツの策略だったりしてな」
「へっ、ありそう」
サンタンクとオトロゴンは笑い合う。2人は脱落したため、講堂の方へと移動する。その後ろではニーナがソニアを引きずって同じ方向に向かっていた。
その後の結果はどうなったのか。優勝したのはメル様とテンテラのペアであった。彼女らはソニアとライダークの勝敗が決まった後に、残った参加者を次々に脱落させていき、悠々とB級への切符を手にした。