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ライダーク ロイムロヒ

 ———ライダーク・ロイムロヒ視点。


 ニーナと話している銀髪で巨乳の女子、ソニア・ブラックパンツァーの姿を一瞥する。



(ソニアの力を見る良い機会かもな。しかしペアか……)



 学園長からペアを決めろと言われたものの、特に組みたい相手もいないし、一人の方が動きやすいと考えて、俺は一人になろうと考えた。

 と、その時、すぐ横から視線を受けてそちらを見れば、中学時代からずっと仲の悪いマック・リナランがこちらを見ていた。向こうも俺のことは気に入らないはずだが、何のようだと言うのか。



「んだよマック」


「いいや、ソロで参加する利点を君から聞いておこうと思ってね」


「あ? なんだそりゃ」



 相変わらず鼻につくキザな話し方だな。



「どうせ脳筋の君はやり易いからと言う理由だけでソロになろうとしているのだろう。けど考えてもみろ、もしCクラスでも上澄みの実力者が手を組んだとすれば……」


「確かにそれはヤバいけどよ」


「けどソロならペアのワッペンが壊れて失格となるリスクもなくなる。戦力増強のメリットか、的を増やすデメリットか、君はどちらを取る?」


「なあまず聞いて良いか」


「なんだい」


「なんで俺に聞くんだよ。お前俺嫌いだろ」


「それは」



 マックと話し込んでいると、その途中でガーリックのこんな声が聞こえてきた。



「デット、俺と組むぞ」



 それを耳にした途端、俺は絶望しかけた。

 だってさっきマックの言った上澄みも上澄み、Cクラスのみならず一年生全体で見ても中くらいか上の方の実力者のガーリックとデットがペアを組むと言うのだから。



「ガーリックのやつ、本気か? オトロゴンかサンタンクのどちらかと組むかと思ってたんだが……」



 横にいるマックも唖然としている。クラスの全員が騒然とする。

 しかし完全に絶望しなかったのは、少しの希望があったからだ。

 まずデットが断る希望。現にデットはガーリックから持ちかけられても、1ミリもガーリックの方に意識を向けていない。しかし誘っている側も引く気はないようだ。



「返事してくれ。いくら無口でも頷くくらいは出来るだろ」


「……………」


「俺と組む利点はわかるよな」


「………私は、奴隷だった」


「はあ、知ってるが。で、俺の誘いを断る理由になんのか? やっと喋ったと思ったら身の上話か」


「奴隷は独りなものよ。私はずっと独りでいい」


「奴隷が一番一人からかけ離れてるだろ。売り手も買い手も生涯ずっと一緒にいんだろ。的外れなこと言ってないで、組むのか組まないのか」


「私は———」


「あー……なら一個、交渉しようか」



 ガーリックはデットの耳元で、俺らには聞こえない声で何かを伝えた。するとデットの目が若干見開いて、そしてついに頷いてしまった。



「わかった、それなら良い」


「はあ、全く……なんで俺がこんなことしなきゃならないんだか。ギブソンは上手くやったよ」



 ぶつくさ文句いいながらガーリックは担任のイシュ先生の元まで行き、ペアを決めたことを報告した。イシュ先生は特に何も言わず、表情を変えずに、2枚のワッペンを渡した。

 一方、デットはなぜかソニアの方を見ていた。それが気になって黙って見つめていると、ガーリックがワッペンを振って見せながらデットを呼んだ。



「おい行くぞー、作戦会議だ」


「…………」



 デットは黙ってガーリックと共に講堂の端の方へ行った。2人が完全に離れたところで、クラスメイトはざわめき立つ。



「おいおいガーリックやつ、どういうこった。なあオトロゴン」


「ああ……いや、なんとなく分かるような分からないような。なあサンタンク、お前なんで昇級しないんだ?」


「は? ……今、それができる機会じゃないのか」


「今までの話だ。お前ならいつだって昇級できたはずだ」


「……そんな甘い話じゃないだろ」


「まあ、そうだな。お前の性格は知ってる。悪い、ヤな事聞いたな」


「別に」



 サンタンクとオトロゴンが話している。あの2人はガーリックと仲がいいし、マックが言っていたようにガーリックはあの2人のどちらかと組むと思っていた。



「ど、どーすんのよコレ」


「どおって、どうしようもなくない? 諦めるしかないわ」


「トップの2人が組むなんて……確実に昇級するつもりなんだ」


「なんで私デットに見られたの?」


「それよりあなた、どうするの? ラウラウからも振られちゃったし」


「けっ、俺らには一筋の希望も見せないってか」


「さーて参加する気も薄れてきたわね」


「でも実力以外でBクラスに上がるイベントはこれが最後かも知れないし」


「Cクラス内での実力の差が埋まらないから希望が無くなってるんでしょー」


「なんでもいいから魔法打ちたいんだけどー」


「こぐまちゃんのクラスに行けるならやりたいんだけどねー」


「……勝てる見込みがないとは言い切れないけど、そのためには出場者がある程度多くないと無理ね」


「でも出場したらあの2人と戦うんですよね……」



 クラスメイト達が各々好き勝手に言っている隣で、俺はある決意をしていた。

 勝つためには、必ずペアを組む必要がある。そうじゃないと戦力的にガーリック・デットペアに勝てない。だから誰と組むかを真面目に考えるしかない。



「勝てると本気で思うのか?」


「んだよマック、さっきから」


「勝てる見込みは無いに等しいと思うのだが」


「いいや———」



 反論しようとしたその時。



「勝てる確率はゼロじゃないから、出場するだけ得だと思う」



 勝てる確率はゼロじゃない、そう言おうとした時に近くから同じ言葉が聞こえてきた。そちらを見れば、言っていたのは【勇者蹴り】のソニアだった。

 ソニアは俺が見ている事には気づかず、ニーナと話している。



「けどペアを組む必要はある。だからニーナ組んでくれない?」


「私でいいの?」


「うん。組むなら友達がいいし」


「……わかった」



 そう言って、ソニアとニーナが二番目にペア決定の報告をしに行った。表情の冷たいイシュ先生もちょっと驚いていた様子だった。

 俺も驚いた。



「……なあ、マック。先に答えろ。なんでさっきから俺に聞き続ける」


「……君の嗅覚は信頼できるからな。性格は気に入らないが」


「ふん、なら嗅覚だけが目的で組む気はないんだろ?」


「ああ、それは無いから安心してくれ。そして君の嗅覚のおかげで良いことが分かった。もう用済みだ」


「けっ、じゃあ俺も先に行かせてもらうぜ」



 誰も踏ん切りがつかない中、ソニア・ニーナペアに続いて少しずつイシュ先生に報告する人数が増えてきていた。

 俺より先に決まったペアはガーリックペアと同じように遠くに行って作戦会議をしている。そうして俺は小柄で細身のケジャリー・シンバルゲインに声をかけた。



「ぼ、ボクでいいの? ボク、コアも弱いし身体能力も特に……」


「こないだの勇者召喚で王都行った時、結構喋ったろ。理由はそれだけだ」


「そ、それだけ……?」



 ペアを決めてから30センチ背の低いケジャリーを壁際に連れて行って作戦会議だ。



「まず学園長の説明から推察するに、この競技は建物や地形を使ったサバイバルバトルロワイヤルだと考えられる」


「競技はこの学園の敷地全部でやるって言ってたもんね。他の学年の生徒達をみんないなくさせて。でもそれが?」


「で、スタートは武器を用意したりする準備時間が終わったと同時だ。つまりスタート地点に決まりはなく、最初から身を潜めて隠れてても良いってことじゃ無いか?」


「つまり隠れながら勝機を見極めて立ち回るってこと?」


「そ、かくれんぼだ。けど戦況を見失わないように常に動き回る必要がある」


「だったらなんでボクだったの? ボク、体力少ないけど」


「別にそこは問題じゃない。まー確かに隠れ続けるにも体力がいるが、ケジャリーには二つやってもらいたい事がある」


「え? 二つ?」


「一つ目は戦いに出ない事、そして———」

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