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B級争奪戦

 Cクラスの人数は合計41人。

 私服でも学生服でも、運動着でもいいから、好きな服装で来いと言われたので、俺はソニアの持っていた私服の中で最も露出の少ない長袖シャツと長ズボンを着てきた。

 ニーナはいつものフードに赤いミニスカ。



「あなた色気ないわね」


「いいでしょ別に。それにしても、なんなんだろうね今日は」



 ザッと周りを見る。



「……………」



 集められたクラスメイトの集団の中で、最も存在感を放つ少年がいた。茶髪で爽やかな雰囲気を感じる、秀才ガーリック・アクアパッツァだ。

 お伽話に出てくる白馬の王子様みたいな感じ。服装はネクタイにバーテンダーのようなノースリーブのジャケットを着ている。



「なんだろあのカッコ」


「カッコいいよね、凛々しくて」


「ああ言う感じの男が好みなの?」


「可愛いイケメンが好き」


「私は?」


「あなたは女でしょ。朝倉颯太は……あの角刈りがビミョー」


「……やっぱそうか? 初めて行った散髪屋で『角刈りの似合う男がイチバンだ!』って乗せられてさぁ……前はちょっと長めだったけど、高校に行くから髪切ろうってなって……はあ~」


「別に嫌いじゃないけどね」



 お袋からは悲鳴あげられたっけなぁ。なんて頭になってるのーって。俺がしたわけじゃないのに。



「あとあなた、口調」


「あ、そっか。ありがと、ニーナ。気をつけるよ」



 女口調に戻す。やっぱりクセ付けないと、ついつい戻ってしまうな。

 と、そんなふうに話していると後ろから肩を叩かれた。振り向くと、そこには見覚えのある顔が。



「やっ! ソニアさん」



 気さくに声をかけてきたのは、同じクラスのリリーだった。学生服を着て、上にカーディガンを羽織っている。

 彼女がどういう人かと言うと、レッサーベアーと一緒にいる女の子。



「リリー、話すのは一昨日ぶりかな?」


「そうだねー、ギブソンくんとあなたが戦った後にちょっぴり話したよね」


「あの時レッサーベアーと一緒に来てくれたのよね。ありがとう」


「別にお礼言われるような事したつもりはないけど。でも、これからは会話する機会も増えると思うし、よろしくね」


「ん? どう言う事?」


「こぐまちゃんが狙ってるんでしょ。だったらいつかは私とも関係を持つかも知れないじゃん」



 スッ、と胸の先を指で突いてきた。しかしギリギリのところで触れていなかった。

 指の先が胸に触られると思った俺の体は、ゾクッと震えた。



「うっ、そ、そうなるのかな」


「ま、ならなくてもいいよー、それとは別にソニアさんとは仲良くしたいと思ったから。それじゃ、またね」



 そう言ってリリーはニコニコした顔で他のクラスメイトの方へ行った。なんかレッサーベアーと似てる感じがしたな。



「ソニア、ソニア」


「ん? なに?」



 会話中ずっと黙っていたニーナからズボンを引っ張られた。そして彼女が指を差す方向を見ると、そこには静かに一人佇む女子がいた。

 格好は細いスタイルをありありと見せつけられるような、体にピッチリ張り付くライダースーツ。胸の前でクロスされたベルトと、背中にはそのベルトに繋がれた二振りの剣。



「Aクラスレベルの身体能力を持つって言う」


「デットだよ」



 あんまり名前は呼びたくないが、Cクラス最強とも言われる人物だ。



「あのライダースーツずるいよね」


「ん? ずるいってなにが?」


「あんなスタイル細くていい体してるのに、胸やお尻はちゃんと丸くて大きいのがわかるもん。自分の武器がわかってるって感じがすると言うか」


「そういうずるいか? んー……」



 ちょっと考えてから、一人なのを見て俺はデットに歩み寄った。



「おはよう!」


「…………」



 元気めで挨拶したが、無視された。俺の方を見向きもせず、微動だにせず、ただ目を瞑り佇んでいる。

 会話は無理そうだと思ったが、ちょっと気になる事があるのでダメ元で聞いてみることにした。



「あのさ、どうして剣を持ってきてるの?」


「…………」



 返答なし。けれど気になって仕方がないので構わず聞く。



「今日これから何をするのか知ってるの? もしかして戦ったりするから、そうやって剣を持ってきてるの?」


「…………」



 やはり返答なし。

 俺は諦める事にした。収穫はなかったが、後悔はない。

 けど……なんとなく、ニーナをここに呼んで一人でいるデットのそばにいる事にした。ニーナから首を傾げられたけど、それには答えずに、なんでデットが武器を持っているのかを考えていた。

 すると、突然横から掴まれた。隣ではニーナが驚いた声をあげている。結構強い力で二の腕が掴まれてしまった。



「え! ちょ、なに?」



 掴んできたのは彼女だった。

 さっきまで無反応だったのに俺の腕を掴んできた。けれどそちらを見ても、彼女は俺の方に顔を向けていない。目だけをこちらに向けて、そして小声で話しかけてきた。



「この前の、あれ」


「え?」



 初めて聞くデットの声。



「どう言う事?」


「え? こ、この前のって……なんの話かな」



 腕を掴んできた手に触ろうとすると、触れる前に離されてしまった。



「あなた、エゴが強すぎるんじゃないかしら」


「?」


「けど、相手が応えてくれてるなら、正解なの?」



 そして彼女はニーナの方を一瞥した後、俺らから離れていった。俺とニーナはポカンとするしかなかった、だって話が全然わからなかったから。



「ねぇソニア、なんで私一回見られたんだろ」


「さ、さあ」


「主語って言うものを知らないのかしら」


「話し下手ではあるんだろうけど……でもさ」


「でも、なに?」



 立ち去っていく彼女の背中を眺めて、感じたことを答える。



「なんか、ギブソンと似た匂いがした」


「……あの胸とお尻してて、実は男でしたってこと?」


「いやそうじゃなくて」



 なんて言うんだろう。なんと言うか、ギブソンと同じ面倒臭さがあると言うか……それでいてギブソン以上に捻くれてて、でも、どこか純心っぽさがあると言うか。

 と、そこで講堂に学園長が入ってきた。学園長は俺らを順番に見て全員集まっていることを確認すると、第一声を張り上げた。



「これより、ギブソン・ゼットロックとライドウ・ヤナギの二名が抜けた二つの席をかけた戦い———B級争奪戦を開催する!」

キャラ紹介


リリー・ポップノート

 身長152センチ。Cクラスの生徒で、Bクラスのレッサーベアーと恋仲。

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