Cクラスの実力者
ニーナの部屋から出たところで、『フラン』を見ると30分前に学園長から電話がかかってきていた事を示す着信履歴が残っていた。ニーナの部屋にいた時にかかってきてたのか、気づかなかった。
急いでかけ直すが、タイミングを逃したようで学園長から出てもらえなかった。代わりにメールが送られてきた。
『ブラックパンツァー君。すまない、本名を書くほど時間がなかった。アサクラいにソウダんしたかったのだが、今連絡させてくれ』
途中、文字化けした部分は俺の本当の名前『朝倉颯太』を書きたかったが、もし万が一のことを考えて暗号にして送ってくださったようだ。
事情を知る学園長が俺の本当の名前を呼ばないのもおかしいと思う事なく、余計な考えもしなくて済み、すんなり信用できた。前文にある本名というのも朝倉颯太の方を指しているんだろう。
学園長の要件は続く。
『そして昨日話した件なのだが、あれしろこれしろと言うだけなのは無責任だと感じた。君だって辛い立場のはずだ、君だけに何もかも背負わせるわけにはいかないと考えた』
「そんな……別に構わないのに」
『しかし肩入れしすぎるのも他の生徒たちに不公平。そこで君に師匠となる先生をつける事にしようと思うのだが、どうだろう』
「師匠———もしかしてコアとか、鍛え方とか教えてくれる人を探してくれるってことか⁉︎」
それは願ってもない事。
しかしその師匠となってくれる人は、俺に教えてくれるのだろうか。
『君の事情は話さない。教員としての仕事の一環として君についてくれるよう頼むつもりだ』
(先生の仕事って割と大変って聞くが……大丈夫だろうか)
『君の決定を待つよ。ここで答えなくていい、しばらく考えてから答えを聞かせてほしい……というか、明日にあるイベントが終わるまではこちらも忙しいから、後にしてほしいと言うのが本音だ。このメールの返信も必要ない』
「明日にあるイベント?」
『イベントについては明日の早朝、Cクラスを講堂に集めて発表する。では、君の健やかなる成長を祈っている』
そこで学園長からのメールは終わっていた。
返信はしなくていいと言う事なので、ちょっとモヤモヤしながらも、フランをポッケにしまう。
「イベントってなんだろ……Cクラスを集めてって何するんだろ」
Cクラスは俺の……もといソニアの所属するクラスだ。戦いが基本の戦闘力で格付けし、勇者の印象に残るような優秀なクラス順位の、最下位クラス。
けれどAクラスに行く事を決めた時に色々調べたが、最低クラスでも実力者が何人かいる。
「そもそもこの世界での喧嘩に不慣れな俺としては、ソニア以上に落ちこぼれだろうな……」
フランを再起動して、現在の高校一年Cクラスのメンツを調べていく。
特筆すべきは2人。
「1人はAクラスの身体能力を持つとされる、デット」
死、と言う意味のデット。ヤな名前だ。
白髪のロン毛で、無表情な、氷のように冷たい女子だ。コアの扱いは不得意のようだが、身体能力において言えば最高のAクラスと並んでも染色ないほどの実力だという。
ただ気難しく、教室であった時に目を合わせたり挨拶しても無視される。
使う武器は双剣らしい。
「そしてもう1人は、歴代Cクラス一の秀才、ガーリック・アクアパッツァ」
茶髪の男子だ。細身だがフランの電子画像の写真からでも伝わる風格がある。
武器商人の息子らしく、武器の扱いに長けている上に、さらに頭が抜群にキレる。戦闘においての思考能力が群を抜いて優秀との、学園長の評価コメントが学園ホームページ学生紹介ガーリックの欄に書かれている。
ちなみに学園長のコメントだが、ガーリックは優秀、デットは天才、そしてソニアである俺は『もっとがんばりましょう』だった。
「そしてガーリックが使う武器が『刀』と、ペーパーボックスピストル」
親父がコンビニで買ってきた昔の銃特集の雑誌に載っていたのを覚えている。面白い武器だったからな。
ガーリックの銃は六つの穴に、銃口からそのまま弾を入れて、後はトリガーを引くだけで連続でドンドン撃てる。
リボルバーと銃口が一体化したような銃だ。
「ペーパーボックスピストルか、これまた個性の強い武器を持ってるな……」
あんまり名前呼びたくないデット。
ペーパーボックスピストルのガーリック。
この二人が学園長のお墨付きもあるCクラスのツートップ。
後実力者として挙げられるのはメル様、サンタンク、オトロゴン、テンテラ、アシト、ミカライト、カミラ……そして、
「ラウラウ・シックオルゴール」
キャラ紹介
【時計の剣】ラウラウ・シックオルゴール
Cクラスの実力者。円形の珍妙な形をした剣を使う。剣は古都の武器商人に依頼して作ってもらっている。
紫色の髪をしていて、身長は155センチで胸はソニアと同じくらいの大きさ。使う武器は【時計剣=レローエスパーダ】。