暴走、反撃
———朝倉颯太視点
「えギャアアアアアアっっッ!!!??」
元私の指が口の中に入ってきたかと思えば、歯は傾いて奥に刺しこまれ、歯茎を抉って血を吐き出させた。
な、なんなのよおおおおお!!??
痛みで叫び転びながら壁際まで逃げた。
「が、ガフッ! ぐ、ぐぶぅ……ふッ! は、歯ぎゃ……歯ぎゃぁ……!」
さ、さっきまでアイツ、させるがままだったのに!コアを吸い取って動けないはずなのに!どこにあんな力が!
あ、コア!歯を、歯を治さないと!
急いでコアを使い歯の治療を行う。歯の形は元に戻り、吹き出した血も、傷が塞がって止まる。
なんとか治りそう、と言ったところでゆらりと立ち上がる影があった。
「ヒッ!」
前を見れば、なんとコアを吸い取ったはずのアイツが立ち上がるところだった。ベッドから降りてこちらを、青く光る目で見下ろしてくる。
「な、なによ………………」
そしてアイツは、私が床に放り投げていた剣を拾い上げて、こちらに歩いてくる。
「なんなのよぉ!」
直近まで突進してきた瞬間に、歯の治療をやめて、コアによる衝撃波を手先から出して、吹き飛ばす。治療よりも先にアイツを私から突き放すのが先決!
ヤツはベッドを越えた向こう側の壁に激突した。
「はあっ、はあっ、ど、どこにそんな……え?」
吹き飛ばして助かったと思ったが、足の方に違和感を覚えた。そして確認してみれば、なんと右足の太ももに私の剣が突き刺さっていた。
「ギャアアア!!??」
い、いつの間に!
い、いや……さっき接近した時!
吹き飛ばされる前に私の足に突き刺したんだ!
まず、剣を消すほうが先だった!
い、いいやそれをしても、剣を失ってもアイツは私に殴りかかってきたはず。吹き飛ばしたのは正しいっ!
そ、それよりも剣を……早く、抜かなきゃ!
「早く……」
ガタン!と大きな物音が聞こえた。
「なに? え……?」
剣を抜くのも忘れて確認すれば、なんと、なんと……なんと、奴はベッドを持ち上げていたのだ。両手で担ぎ上げて、こちらにゆっくり向かって来ている。
「ど、どこに……」
そしてベッドが振り落とされる。
「どこにそんな力があるのよおおおおおお!!!!」
私にそんな力なかったはず!
いやそうじゃない!
か、かわせない!剣が足に、床にも突き刺さってるから!
た、助けて———
ガンッッ!
「え?」
振り上げたベッドは、天井に当たった。
そしてバランスを崩した元私は、真後ろに倒れて、そのままベッドの下敷きになった。
ドスン!と大きな音が鳴り響く。
「あ、え? あ、あはは……ば、馬鹿じゃないのおおお! あっはは! あーはー!」
ベッドがこの部屋の高さを超えて、天井に当たって、ヤツは自滅した!ベッドに押し潰されたヤツは下敷きになっている。苦しそうなうめき声も聞こえるし、死んだなら良し!死んでないにしても動けない!
(今のうちに剣を足から抜いて逃げないと……!)
そう思っていたのだが、瞬間———ベッドが倒れる。
天井に当たって持ち上げていた元私の方にベッドが押し込まれ、ヤツは自滅した。だがそのベッドは縦に立っていた。つまり……倒れる、天井に当たったベッドの先の方が……私の方に。
———私の足の上に。
———私に刺さった剣の上に、ベッドが倒れ込んできた。
結果、私の足は切断された。
「アアアアアアアアアッッッ! アアーーーッ!!」
声にならない、言葉にならない悲鳴。
なんで……なんで私がこんな目にィ!会わなきゃいけないのヨォ!
(チグショオオオオオオ!!!)