朝倉颯太の考え
———朝倉颯太視点
ブッゴろずッっッ!!!!
元私の体に壁まで蹴っ飛ばされた私は、怒りのまま起き上がり……と、そこで気づく。
(……あれ、なんで私は私に吹っ飛ばされたの?)
確かに自分を蹴っ飛ばしたのは元の私。けど私にそんな力はなかったはずだ。
元私の身長は147センチ。181センチあるこの男の肉体を蹴っ飛ばせるほどのパワーはなかったはずだ。
それに私が戦っていた場所はアイツが座っていた観客席から下にある。高さはまあ2メートル以上は確実にある。実際の高さが3メートルだろうが10メートルだろうが関係ない、そんな高い位置から飛び降りれば怪我どころでは済まない。それほど私の体は弱かった。
でもアイツは飛び降りて、私を蹴飛ばした。それも私が反応できない速度で接近して来て。そんな事、私にできるわけが……。
(あ……私を蹴った方の足から、血が出てる)
元私の今の状態を確認すれば、足がへしゃげて折れて血が噴き出していた。つまりコアをある程度使っていたみたいだが、無理をしていたということ。
(もしかしたらコアでものすごく強くなったかと思ったけど、そんなこと無さそうね)
けれどここまであり得ない動きができていたのも事実。蹴飛ばされたのも事実。つまりアイツのコアは危険。
(なら、潰すなら今しかないかしら)
怒り狂っていた自分を忘れ、今は自然と冷静になれていた。そしてギプスだかゴハサンだか知らないけど、あの金髪巨漢のBクラスの奴がアイツに、訳もわからない勝負を持ちかけたのを聞き取る。
(何考えてんのか知らないけど、ここは一時中断と行きましょうか♡)
学園長に武器をしまったことを見せると、学園長は顔をしかめた後に、勇者お出迎えの会のお開きを生徒達に指示した。
そうしてお開きムードでコチラを疑って見てくる生徒どもの視線をウザったく感じながらも、元私に近づいて言伝した。
「後で学生寮3階のVIPルームに来なさい。一番奥の部屋よ」
「あ……?」
久しぶりに間近で聞く私の声は、私に疑いを持っていた。しかもヤンキーみたいな荒っぽい感じ。
怪しんでいるみたいなので、オマケを付け加える。
「入れ替わりの真実を知りたいでしょ?」
「⁉︎」
驚いた様子の元私の顔を見る必要はない。それを言った後すぐに講堂から出た。さーて、お楽しみが始まるぞー♡
と、そこで出て行く途中の背後から話し声が聞こえて、振り返ると元私の所にニーナやロザリア、ボディアや、Bクラスの名前は知らないが有名な踊り子の妹が集まって行くところだった。そしてボディアが折れた足をコアで治療していた。
(……………)
本当に、お楽しみが始まるぞ。