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朝倉颯太の答え

 突然、観客席から誰かの大声が聞こえて、かと思えばど真ん中のステージに何者かが飛び降りた。あの金髪頭は……!



「ぎ、ギブソン⁉︎ な、何してるんだ⁉︎」



 俺は驚いた。さっきまで元俺から謎の気持ち悪い視線を送られていて戸惑っていたのだが、そんなもんも全て吹っ飛ばされるほどの衝撃だった。



「ニーナ、どう言うことなんだ?」


「わ、わかんない」



 ニーナも何が何だかさっぱりと言った感じ。

 元々ギブソンがいた席を見れば、黒髪で眼鏡をかけた少年が頭を抱えていた。



「おい! 勇者! お前に聞きたいことがある!」



 そしてギブソンはステージ上で勇者2人と、偉大な魔術師、学園長の方を指差した。



「こ、こらギブソン君! 無茶しない!」



 学園長は注意して、ナパさんは元俺とギブソンの間に割って入り、障壁となった。もしかして元俺からのギブソンへの乱暴を防ぐためか。慎重な人だ。

 一方、関係があると先程教えられた先輩勇者の紅屋桜姫はギブソンを見て驚いていた。



「ぎ、ギブソン! 何してるのよ!」


「ベニちゃん、俺はそっちの、俺らの勇者に質問があるんだ。悪いけどまた後でな」


「あ、うん……」



 止めようとしていたがギブソンからそう言われて大人しく身を引いた。ほんのり赤く染まった頰や、ギブソンの見る目は、まるで恋する乙女のような……。



「あれ? もしかして……」


「はあ~、俺らの代の勇者様はやっぱギブソンに惚れてるみたいだな」



 すぐ後ろに座っている、三年生と思しき男子生徒がやれやれとした感じで言っていた。その隣の人も同意して頷いている。彼女が選ぶ仲間候補の三年生達も周知していたようだ。

 紅屋桜姫がギブソンに惚れていることを。



「って、それどころじゃなくて!」


「ギブソンは私らの勇者に聞きたい事があるみたいだけど」


「なんなんだ?」



 紅屋と、元俺(ソニア)の前に立っていたナパさんが避けると、ギブソンとソニアが対面する。



「……なにかしら、確か、ギブしたい絶頂ロックとかいう名前だっけ?」


「ギブソン・ゼットロック……って、あれ? なんで知った風に言うんだ? 初対面だろ」


「え? あ、あー、あはは! 私だって自分が選ぶ事になる今期の生徒の名前と顔は調べてるのよ!」


「てかオカマなのか、お前」


「ちっがうわよ!」



 うぐ、俺がオカマだと思われてる。というか向こうは言葉遣いに気を遣ってないから、女口調と女みたいな仕草で話している。俺の方はこの学園に元々いたソニアになったから誤魔化しているが、向こうは異世界からきた浅倉颯太になっているから気を遣わなくていいんだ。くそ!

 隣からニーナの視線を感じる。

 その間にもギブソンと浅倉颯太の話は続く。



「まあいい。お前に、聞きたい事がある」


「なにかしら。スリーサイズは教えられないわよ」



 ふざけた事を言う元俺の言葉を無視して、ギブソンは一瞬躊躇ったが、そのまま言い切った。



「———勇者とは、なんだ」



 その言葉が講堂に響き渡ると、さっきまでギブソンの登場にざわめいていた会場が一瞬で凍りついた。

 それはおそらくこの世界で、なによりこの『勇者学園』で聞いてはならない事なのかもしれない。元の世界の人間でも神が例え世界を滅ぼすような事をしたって、それは神の所業であり仕方ない事だからと許容して信仰するように、勇者がなんなのかと言う疑問は持ってはいけないタブーなのでは。

 ギブソンだってそれはわかっている。だが聞いてしまった。そこにどんな思いがあるのか……。



「そんなの———」



 そんな問いに、浅倉颯太は答える。

 隣では学園長とナパがアイコンタクトで何かを示し合わせていて、紅屋桜姫は口元を押さえて硬直状態。そこで浅倉颯太が答える。



「———栄華の象徴に決まってるわ」



 ギブソンの表情の変化は著しかった。

 まず首を傾げ、次に友人であろう黒髪で眼鏡の少年の方を見て、視線を戻してまた首を傾げ、そして拳を握り唾を吐き捨てた。



「なんだ、想像してたのとは違ったな」



 そう吐き捨てたのち、そして宣言する。



「俺はお前を越える! 勇者! 俺は勇者を越えた勇者になる!」


「はあん。それで?」


「そして……なんか思ってたのと違ったので、結論! 勇者ってのを解体する!」

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