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勇者、来校

———ギブソン・ゼットロック視点



「ブラックパンツァー、聞き覚えは?」



 さっき訓練し始めて、刀使いであるライドウは他の場所に行っていて一時分かれていたのだが、俺の元にまた戻って来て開口一番そんな事を聞いてきた。



「いや、まったく」


「そうか」


「なんの名前だ? なんかのタレント?」


「さっきのおっぱいデカイ女子の名前。銀髪の」



 ちょっと思い出すのに時間がかかったが、さっき見かけて話していたヤツの話か。



「ああ、あいつ。すまん、あんま印象残ってなくて思い出すのに時間かかった」


「そんなもんだったのか」


「もしかして誰かに聞いてくれたのか?」


「剣の鍛錬するために行った場所で、同じ剣士のやつに聞いてみたんだが、まあ初めの方は全然誰も知らなかった。けどロザリアがルームメイトだって事で名前を教えてくれてな。ソニア・ブラックパンツァー、それがあの女子の名前だ」


「ソニアか。ふーん。なんて聞いて回ったんだ」


「銀髪の胸のでかいAクラスかCクラスのやつって聞いた」


「そう。まあでも手間かけさせて悪いな。もう考えてる場合じゃなかった」



 忘れてたしな。



「そんな場合じゃないって、もしかしてまーだ勇者がなんなのか考えてたのか?」


「まあ」


「ま、そんなもんじゃないかと思ったよ。ここに来る直前まで俺はお前が訓練中だと思ってた。けど今のお前は何もしてない。訓練する余裕もないのか」


「しょうがねぇだろ。全然答えが出ないんだから」


「難儀なもんだ。だったらいっそ、本人に聞いてみたらどうだ」


「本人?」


「勇者。勇者本人に勇者が何なのか答えて貰えばいいだろ」


「そう簡単に………いや、アイツなら答えてくれっかもな」


「アイツ? あー、もしかしてそれって———」



 ライドウが何か言っていた途中に、いきなり学校のベルが鳴り響いた。



「……なんのベルだ?」


「シッ、静かに。放送みたいだ」



 学園全体にスピーカーから放送が流れる。急に放送だなんて、なんかあったのか?これから何も行事とかはなかったはずだが。



『生徒みなさん、そして教員一同。ただちに講堂へ集まってください』


「この声学園長か? 講堂に? なんで」


「さあ?」



 周りにいる運動場で訓練していた生徒たちもざわめく。



「……ただちにって事は、着替える暇は無さそうか?」


『作業をしている方々も一旦手を止めて、速やかに講堂へお集まりください』


「無さそうだな。学園長からの催促だ。行こうぜ」


「ん。あ、そうだ、お前がさっき言ったなんたらパンツって銀髪の女子にも声かけた方が良さそうか? 別の場所に行ってたようだが」


「大丈夫だろ。さっきの放送は学校の敷地内なら誰でも聞こえる」


「そうか。なら行くか」


「おう」



 ライドウと共に講堂を向かう。と、向かう途中に人だかりが出来ていた。パッと見、生徒以外もいる。スーツを着た物々しい大人が、講堂に入る前に生徒と教師一人一人の持ち物を検査していた。



「なんだなんだ」


「……なんだ、というかさ。こう言うの前にもあっただろ。中学の時にさ」



 そのただならぬ雰囲気に困惑したが、ライドウは思い当たるものがあるらしい。



「何だってんだ?」


「だから……学園に勇者が来た時と同じだろ。学園中から人が講堂に集められて、こんな風に重鎮を守るかのようなスーツ姿の護衛付きなの」


「あ」



 勇者が来た時!たしかにそうだ!

 え、てことはまさか勇者が来てるってのか!今!



「だ、だが、そんな連絡はなかったと思うが」


「はあ~……今代の俺らを選ぶ勇者様は気分屋なのかもな。今までの勇者だって引きこもりとかいたし、裏切り者もいた。勇者と言っても一緒くたにできないようだな」


「…………」


「お前、なんか変なこと企んでないか?」


「べ、別に」


「わかりやすすぎんだろ」



 俺とライドウも検査を受けて通してもらった。

 講堂はスポーツのスタジアムを縮小化させたような形をしている。屋根があって中央にステージ、周りに観客席のように座る席がある。

 あの中央ステージでは演劇部が劇をしたり、行事の時に学園長が長ったらしい話とかしたり、公式のランク昇格戦をしたりする。だが今日は今までとは違う、衝撃的な光景が広がっていた。

 学園長がいて、他にも教師がいる中……かの偉大な魔術師ナパもいる中で……目を引く2人の少年と少女が立っていた。

 騎士のように服と鎧が一体化した武装をしている女子はよく知っている。けどもう片方は最近顔を知ったヤツだ。



「……俺らの勇者様だ」



 126代目勇者の浅倉颯太が、講堂の真ん中で学園長と話しながらニヤニヤ笑っていた。学園長が頭を下げるたびに優越感を感じているかのように、俺には見えた。



———ギブソン・ゼットロック視点、終了

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