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赤く染った翼

作者: 黒宮 白
掲載日:2023/02/26

この世界には、数多の天使がいた。

地上にいる者に幸せを運び続ける天使達が。

天使達は青く自由に広がり続ける空を自由に飛び回っていた。

その姿は、まるで初めて広い世界を見た赤子のように純粋で、ただ前を見て飛び続けていた。

その中でたった一人、数多の天使の中でたった1人だけ、赤く淡い光の翼を持った天使がいた。

彼は、血塗られたように色濃い赤に染っていて、天使のような輝きも見られなかった。

それはとても醜く、禍々しく、天使の形をした悪魔のような姿であった。

赤い天使は、存在が確立されてから永久に、終わることのない世の中を見てきて、ずっと考えていたことがある。

僕ら天使は、地上にいる者に幸せを運ぶ。

しかし、彼らから本当の幸を感じたことがない。

彼らは、いつでも辛さを抱えて生きている。

長いようで短い年月のほとんどを、辛さを抱えながら生きている。

時として幸せを感じる者もいるが、彼らは自分が幸せだと思っていることしか幸せと捉えられない。

他者の幸せを幸せと捉えていないのだ。

これを本当の幸せと呼べるのだろうか、と。

この世は自分の欲なしで生きることなどありえない。

多かれ少なかれ絶対に生命が持っているものである。

その欲のために、幸せのために不幸に足を踏み入れる。

こんなことがあっていいのか、と永遠の時間を永久的に考えていた。

そう考えている中、ありふれた天使は、体から血が溢れ、徐々に赤く染っていった。

輝きを失い、心を閉ざし、やがて今の赤い天使となった。

自ら負を作り出し、心の隅から隅まで自傷する。

まるで、心臓を鎖で締め付けて、その圧で血が溢れ出すようなものである。

迷い、思考を巡らせた結果、普通の天使に対しての嫉妬の想いに溢れていた。

彼らと共に自由に飛び続けていたい。

その気持ちが胸を渦巻いていた。

その姿を見た天使達は、

「君、どうしてそんなに赤いの?」

と問うてきた。

それに、赤い天使は答えなかった。

彼は羨ましかった。

自由に、純粋に、羽ばたき続けている彼らに。

そこに、神様が来て、

「彼は、地上の者と接触しすぎてしまったのです」

と、落ち着きのある声で言った。

「あなたは、いっその事、人間になってはどうですか?」

「僕が…人間に?」

「あなたの考えは知性のある人間らしいです。あなたを一日だけ人間に変えてあげましょう。そこで何が見えるか、改めて地上を見てきなさい」

という言葉に赤い天使は了承した。



━━━━━━



地上に送られた赤い天使は、日本の首都へ向かった。

そこで、もっと多くの人間を見てみたいと思ったからだ。

人間になった赤い天使は人混みの中を歩き回った。

そこで見たものは、天使のような純粋さ、ではなく人間の人間らしいものだけであった。

あの世界と比べてしまうと、ここはとてもつまらなく感じる。

一つの集団は他人を罵り、また一つの集団は仲睦まじく、見ていて微笑ましいものだった。

しかし、中には一人で行動している者もいる。

これは僕が見てきた天使達とは違うところだ。

天使は、常に他の天使と交流をとる。

そうすることで、彼らは愛を育んでいるのだ。

しかし、人間はどうだ。

皆、私利私欲によって動いている。

もっといえば、生物など皆そうだ。

誰かのために生きてなどいない。

誰かのために生きる、という自分の欲を満たそうとしているだけだ。

野生の動物などにある母が子を守る本能と変わりはしない。

にもかかわらず、知性を持って生まれてしまうだけで、それを我欲を肯定するのだ。

実に滑稽で恐ろしい。

そのように、赤い天使は日本の首都を回りながら考えていた。

それと同時に、赤い天使はこのように考えていた。

「天使と人間の違いは自由か、不自由かなのではないか」と。

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