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辺境伯の娘(レイモンド視点)

「アリスお姉さまー!!」


領地の辺境伯邸前に着いて、馬車を降りると、少し先の方から数人の幼い女の子の声がした。アリスは声の方向に気付いて、俺に声の正体を教えてくれる。


「レイモンド様、うちの領にいる子供達です。少しお時間いただいても良いですか?」


「勿論」


俺が頷くと、アリスは視線を子供達くらいに合わせる。子供達は近寄って良いと判断したようで、駆け寄ってきた。


「アリスお姉さま、おかえりなさい!」


「『おうと』どうだった?」


「おみやげ、ある?」


「ただいま。王都はねキラキラしてたよ。おみやげは、急なお仕事で買うことが出来なかったんだ。ごめんね」


「良いよ~!アリスお姉さまが早く帰ってきてくれたもん!」


「男の子達もね、アリスお姉さまに会いたがってたのよ!」


「でも、格好つけてまものたいじにでかけちゃった!」


「男の子達、ちゃんと大人の人と一緒?」


「いっしょ!みんな領主さまとアリスお姉さまの言い付けは守ってるもん!」


一人一人の子供達の会話を聞きながら、笑顔を絶やさないアリスが綺麗に見えた。ふと、取り囲んでる女の子の1人と目があう。じろじろ見すぎちゃったかな…。目があった女の子は物怖じせずにこちらにきた。


「ねえねえ、お兄さん、だぁれ?ここに住むの?」


子供と話すことは慣れていないが、アリスに倣って視線を合わせてみる。子供とはこんなに小さいものなのかと初めて実感した。


「そうだよ。私はレイモンド。縁があってお屋敷に住まわせて貰うことになったんだ」


「そうなんだ!レイモンド様は、アリスお姉さまのだんなさまになるの?アリスお姉さまのこと、好き?」


女の子は心配そうに訊ねる。アリスがこれほど子供に慕われている事に、微笑ましく思う。


「今は結婚する約束しているだけだけど、そのうちね。まだ話すようになったばかりだけど、大事にしたいと思っているよ」


安心して貰うように笑って見せると、女の子は顔を真っ赤にして走り去ってしまった。アリスの横も通りすぎて走り去ってしまい、一緒に駆け寄った女の子達も追い掛けて去ってしまった。


「あら…レイモンド様、何かしてしまいました?」


アリスが首を傾げて訊ねる。


「いや、普通にお喋りしてただけの筈だけど、笑顔が怖がられたのかな…」


「笑顔…ふふっ、そっかぁ。王都育ちのレイモンド様の笑顔が王子様に見えたんだと思いますよ」


アリスは何か思い当たる節があるようで、クスリと笑う。


「俺が王子だと言うなら、さしずめアリスはお姫様?」


少しからかってみると、アリスは顔を真っ赤にした。


「か、からかわないでくださいよ…今日は比較的淑女みたいな格好してますけど、いつもは動きやすさ重視で、ちっともお姫様なんかじゃ、無いから…!」


否定する場所そこなのか、と笑みがこぼれてしまう。からかったことがばれてしまった。


そうは言っても、この北の辺境にとって、アリスは間違いなく愛されている姫君ではあるのだろう。領土を大事にして、子供達に視線を合わせて受け答えする姿を見れば、彼女の献身さは伺える。領主とアリスの言い付けは守ってると子供達も公言しているくらいだから影響力も大きいのかもしれない。…一般的な貴族の娘とは違うかもしれない。


(だけど、アリスの方が好ましく映る。彼女の婿になれる事は、最高に幸せなことかもしれないね)


王女に婚約破棄されたことが遠い過去に感じるようになっていた。

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