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薄い氷の上の世界  作者: おすまん
第1部 【誕生編】 魔法学入門
7/30

2話

 今、私達の前には一冊の本がある。


 その前にどうして外で遊ぶはずが本を借りてきたのかを説明したい。


 これまた唐突だけど、私達の住むこの街はメツという。市長が言うには


"ゲルマニア共和国の工業の心臓部であるルルー工業地帯の中心都市"


 だとか。


 今は不況とは言え、比較的裕福な街だと思う。至るところで工場から立ち上る煙が見える。夜は街中が街灯で照らされ仕事帰りの労働者がビールに酔った勢いで歌って踊る。それを見た他の酔っぱらいは観客となって、いいぞいいぞと盛り上げる。一夜限りのストリートビューイングの完成だ。


 富裕層の印である自家用自動車は石畳で舗装された街のメインストリートに出れば沢山見られるし、渋滞だってたまに起きる。街の中心にはゴシック様式で建てられた荘厳なメツ駅がある。ここの機関車に乗れば首都ベロリナまで1本で行ける。


 現在、つまりは統暦1930年7月下旬、そんな私達の街に外国人がやって来た。それも沢山。彼らのあるものは馬に乗って、あるものは徒歩で、あるものはトラックで来た。しかし共通しているのは皆が銃を持っていること。


 ママが言うには、


"私達の国の西の隣国、マリアンヌ共和国、通称共和国の軍隊"


 だそう。


それからというもの街は騒がしくなった。そして"政治集会"とやらで私達の遊んでいた公園は大人たちに占拠された。


 だからそんなこんなで今日は仕方なく図書館でその問題の本を借りて3人で自宅に帰ってきたって訳だ。


 本の名前は魔法学入門。入門とはいえハードカバーの分厚い本だ。


 魔法?ええ。この世界には魔法がのよ。でもそれを使えるのはごく少数。子供たちは自分がその「選ばれし人間」なのか、ずっと気にしている。


 そして魔法が扱えるか調べる方法が載っているのがこの本。10歳までにこの本に書いてある方法で試して、それでも素質がないとされたら魔法は扱えないということになるらしい。


 「魔法が使えたらどうするよ?」


私と同じで"キレイな金髪"と称されるお兄ちゃんの目は期待と緊張が入り乱れた様子で言う。対してレオンは不安そうな表情だ。


 「魔法が使えたら全員軍隊に入って魔導師になることが義務付けられてるんでしょ...」


 「ちょっと待ってレオン!それじゃあ私、軍人にならないといけないの!?」


 「それは素質があるって分かったら言う台詞だろ。」


 茶々を入るなお兄ちゃん。


 「それに軍人になるってことは生活が安定するってことだ。稼げるらしいし。お誂向きだろ!」


「たし...かに...!」


「いいわねあんたらは男だから。私は乙女よ!軍隊に入ってムキムキになってる乙女なんてどこにいるの?恥ずかしいわ!」


 筋肉ムキムキの男性は確かにストライクゾーン。しかし、私自身が男性のような身体になるのは真っ平。


 プンスカプンスカしながら私は本の1ページ目を開く。

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