4話
「まさか私を追ってきたのですか!?」
彼女は俺を見ると驚いたふうに言った。しかし驚いているのはこっちの方だ。
「いや、だって、急に、飛び出して、行くん、だもの、そりゃ...いや、そうじゃ、なくて、なぜ、君、君は、いmゴホッゲホッ」
駅からここまで走ってきたため息が上がって上手く話せない。頭からは汗が出てきてそれが目に入る。だから視界がぼやけてよく見えないが明らかに場違いな、そうあり得ないものを彼女は持っている。そう、なんで...
「なんで日本刀なんて持ってんだ!?」
日本刀だ。もしかしたら彼女はおっちょこちょいなのかもしれない。そうだ。多分消火器を取ろうとしたら間違えて日本刀を...ってそんな訳あるか!どこに日本刀が置いてあるっていうんだ!
「そんなことどうでもいいですから!ここは危険なので早く帰ってください!」
どうでも良くない。銃刀法違反だ。すぐに警察も来るだろう。そしたら捕まるぞ...
そこで俺はある違和感に気付いてしまった。ここは市街地だ。市街地で爆発が起きたのに静かすぎる。野次馬の一人もいない。
しかしその疑問は周りを見渡してみてすぐに答えがわかった。今までは目に汗が入ってきて、夜なこともあり周りをよく見てなかった。死体。周りは死体だらけだったのだ!
俺は物怖じして一歩さがる。ビチャっと音がした。なにか液体を踏んだのだ。見なくても分かる。というか見たくない。多分その液体は赤色だろう。
「これは...一体どうなってるんだ!?」
「だから言っているでしょう!早く逃げて!」
テロ?いやそんなことはどうでもいい。わけが分からないが俺は馬鹿じゃない。ここに居たら死ぬ。それだけは分かる。
すぐに彼女を連れてここからすぐに逃げよう。そう思い彼女の手を取ると手に血が付いた。腕から大量の血を出していた。よく見ると足、背中にも傷がある。満身創痍とはこのことだ。
「あら、もうひとり死にたがりが来たようね」
ふと背後から第三者の声が聞こえた。
「誰だ!?」
という背後を確認せんとする俺の声に被せて
「ダメ!逃げて!」
という悲鳴が重なった。その瞬間腹部を襲う激痛とともに振り向けなくなった。物理的にだ。よく見ると俺と今日球場で知り合った彼女は串刺しにされていた。
誰かこんな事をしたのか。それは今後ろにいるやつだ。しかしそれを確認すらできずに視覚が奪われていった。
寒気もする。痛みは無くなった。いや麻痺しているだけだ。この危機的状況においてさらに眠気もさしてきた。
一緒に串刺しにされた三日月さんは途中までは悶ていたが今はもう静かだ。先に逝っちまったようだ。
あぁ...死ぬんだ。俺も。大学入ってこれからって時に。なんて不幸な人生だったんだ。せめて死ぬなら異世界転生でもしねえかな...。