7人の小人はこうして生まれた3
ドッグの攻撃を受けたのに関わらずアーノルドは平然としていた。この事実はドックはすぐに受け止めることはできない。攻撃を受けたにも関わらず無傷。これも受け入れ難いことであるがまだ受け入れられる。問題はさらに先回りされていたこと。それもドッグが気づかずにだ。
「なぜ?」
「私が強者で君が弱者であるからだ。それが理由だ。シンプルな回答。学者であるならば理解できる理だ」
それでは理由になっていない。そう思うがそれを言ったところで望む回答は返ってこないだろう。ならば今やるべきことはそれではない。彼らを助けるための行動を行うことこそやるべきことだ。
ドッグは立て続けに攻撃する。炎、雷、氷、水無数の槍がアーノルドに襲う。だが、そのどれも当たらないアーノルドの目の前でそれは儚く消え去る。
「これだ。君の実力によってもたらせる結果はこれなのだ。そう今のままでは…。これでは倒せん。しかし強くなれば私にも勝てるやもしれん。だからこそ強くなる機会は逃すべきでない」
「生命の尊厳を捨てるほどではない」
「尊厳?何を言っている?捨てる必要などない。その必要はまるでない。尊厳は己の中で確固たるものとして存在する。例え貴様が糞のような成れの果てになろうとも。確かに尊厳はある。身体を弄った如きでなくなる尊厳など取るに足らん」
「ドッグ!無事か!」
声が聞こえる。聞き慣れた声だ。
「無事か!」
「バッシュフルですか。それに他のみんなも」
駆けつけたのはドッグの親友と言えるもの達。彼らは同じ目的を持ってここまできた。
「全員が全員。抜け出したか……。やはり強い。それだけで君たちは素晴らしい」
「やかましいぞ!俺たちをこんな目に合わせやがってぶちころすぞ!」
グランピーは頭の血管が切れるのではと疑ってしまうほど怒り狂っていた。
「……やかましいぞ。ガキの喧嘩では強いと評価しただけに過ぎないのだ。今の君たちはその程度。それで何ができる」
直後7人の小人達による一斉攻撃がアーノルドに仕掛けられた。
それらの攻撃が当たる前に、アーノルドの姿が消えた。
「!」
「どこにいきやが―――」
言い終える前に蹴りが放たれる。
一人ではない。全員に均等にだ。僅かに1秒もない間にやってのけた。
(い…いつの間に……)
ドッグの頭は混乱する。自分達よりも早く動き、倒されたのか。このような状況であればそう思うのは普通だ。それがどれだけ日原津的であろうともだ。
「どうした?それで終わりとはあるまい。君たちの闘争はその程度ではない」
「みなさん。魔法を使いなさい!ありったけを!どの方向からも避けれぬほど!」
ドッグの叫び声に応えるべく、全員魔法を行使する。炎、氷、雷の槍だけでなく、氷がガトリング銃の如き花垂れていく。
しかしそれらの攻撃を行なってなお、アーノルドに命中することはない。さらに付け加えると、ご丁寧に二、三発ずつ腹を殴られていた。
ただ殴られたのではない。一撃で胃液を出してしまうほどの強烈な一撃を二、三発だ。
それだけで、7人とも動けなくなる。
「久しぶりの戦いだと思い、ウキウキしたのだが。これで終いか……やはりダメだな。お前は、お前らの現時点での力ではこれが限界だ」
アーノルドはゆるりと歩きながら語る。
「我らは生命が必要とするのは、持たなけらばならないのは闘争力だ。それがなければ意味がない。人間の三大欲求。食欲、睡眠欲、性欲。これらを満たすものこそ必要というが、闘争力さえあればそんなものは後々お釣りがくるほど得られるのだ。それはどれほど科学が発展しようとも変えられない。結局我らは、生命は互い互い戦いあい、その過程でそれらを満たす。であるならば、その闘争力の源である暴力、力を手に入れようとすべきだ。君たちにはその資格がある。さぁ私と共にいこう」
アーノルドは、そう言ってにこやかにドッグに手を伸ばす。それをドッグは汚いものを触るかのように弾く。
「断ります。そのような世界につれられるのはゴメンです」
直後アーノルドの周りから一切隙間なく無数の魔法が襲いかかる。
「!……こ。これは!」
「Every physical phenomenon goes backwards(ありとあらゆる物理現象は逆行する)。先ほど私たちが放った魔法を逆行させました。今まで攻撃した魔法を!それを一気に寸分狂いなく同時に戻す。もはや逃れる隙間はない!」
この攻撃ならばいかにアーノルドが素早い動きをしようとも交わすことはできない。当たらないように避ける隙間はないのだから。
「……」
アーノルドは一方の方へ歩き出す。その方向にも無論魔法攻撃がある。しかし、おかしな点がある。
放った魔法はそれぞれ確かに差異がある。しかしドッグはEvery physical phenomenon goes backwards(ありとあらゆる物理現象は逆行する)で、同時に、コンマ0秒も違わずに同時に逆行させた。それなのにどうだ?アーノルドが歩いた方だけ、なぜか魔法がゆるりと動いていた。
そのせいで隙間ができてしまった。アーノルドが出られるぐらいの隙間が。
「……」
「なぜ?君の中はそれでいっぱいであろう。だが教えないよ?これはまだ教えない。だが、しかし一瞬だけだが、驚いたよ。私とてまともに食らえばタダでは済まない。銃で脳を打ち抜けば死ぬのは私も変わらん。……さて。これでしまいか?終いならば終わらせるとしよう。君たちには実験。いや我らガントのために働いてもらう」
アーノルドはにこやかに告げるのを誰も止めることはできなかった。すでに勝負は決していたのだ。




