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僕たちはこの非情な世界で抗う  作者: MASANBO
戦争を始めたい者と拒む者
79/80

7人の小人はこうして生まれた2

 目がさめるとそこは知らない部屋であった。そこに立った1人ドッグはいた。他のメンバー誰1人としてどこにいるのか確認を取ることができない。手足は縛られている。動くことすらできない。


「一体何が起こったのですか?」


 怪しげな雰囲気をまとった二人組がこちらに向かってきてその直後意識を失ったところまでは覚えていた。しかしなぜそのようなことが起こったのかも全くわからない。


 しかし1人でこの部屋に閉じ込められ、手足も縛られている以上何もすることはできないドッグ。仕方がないのでこの部屋を詳しく観察することにした。


 その部屋には多数の機材が並んでいた。そしてその機材はどれも高級高性能であった。


(これは最新技術が搭載されたものであるということはわかりますね……そしてこれを使うための目的は生物研究などに主に使われるものであるということも……)


 そしてそこにいるたった1人拘束された自分、ということからどういったことが行われるのか理解することができた。おそらくそれは正解だろう。


(私が実験材料ということは間違い無いでしょう。そして彼らもまた……)


 ならばドッグはここでじっとしているわけにもいかない。たとえ手足が縛られようとここを切り抜けなければならない。


(この拘束具は私の魔力をジャミングすることにより魔法を行使させない仕組みであるのは間違い無いですね。そしてそれは魔法により拘束を解かれることを防ぐため。しかしながらそれを行うにはこの拘束具自身に何かしら科学的要素を取り入れたものでなくてはならない。そうこれはただアナログチックに作られたものでは無い。それならば私にも対応策はあります。幸い体内に埋め込められているものをまだ取り除かれていないでしょうしね)


 そう判断するとドッグは自分の上半身に視線を向ける。その体内にこそまさしく何かしらの装置が埋め込まれていた。その装置は魔法行使における安定装置であった。これはドッグの完全にオリジナルのものであった。ドッグは大学の教授であり、彼が研究していたのは科学と魔法の融合に関することであった。未だあまり発展していないブルーオーシャンであった。ドッグは科学と魔法の融合を図るため己の体にまず簡易的な魔法制御装置を埋め込んだのだ(最も簡易的と言ってもかなり高等な技術が当然ながら使われている)。


 体に機械を取り付けることに抵抗があるものが多いかもしれない。それはこの世界でも同じであった。しかしドッグはあまりそのような考えは持ち合わせていなかった。それをいうならばペースメーカーなども同じではないかという考えであった。その点に関しては他のメンバーともイマイチ合わなかったが、お互いそういうもんだということで納得した。それは彼らが全く違う種族で構成されている特徴なのかもしれない。


 だがドッグはその点に関しては少しばかり他のメンバーとズレが生じているが、彼自身何よりも生き物の感情は非常に尊重するたちでもあるので他のメンバーだけでなくとも、彼をそれだけで悪く言う物はほとんどいなかった。


 ドッグは体内にある機械を作動させる、その機械の名前はまだない。そしてドッグは拘束具を一つ一つ取り除いていく。その取り出し方は特殊であった。


 その拘束具が自ら動き出したかのように剥がれていくのだ。そして少し動くとその後元々あった定位置であろうフックに自ら戻っていった。それが四つ例外なくであった。


 これぞドッグの特徴な魔法『Every physical phenomenon goes backwards(ありとあらゆる物理現象は逆行する)』、使用できるものはおそらく彼だけであろう。この魔法はある一つの物事の動作をある一定の範囲で巻き戻す魔法だ。今回で言えば何者かわからないがドッグの右手を拘束具で拘束したのなら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「さて外れましたか。ではグランピー達を探しに行きましょうか」


 ドッグは部屋の脱出を試みる。当然のことながらこの部屋には鍵がかかっているだろうが、ドッグの魔法を使用すれrば鍵を開けることは造作もないかった。なにせ鍵は中に入る目的で他のものを入れないためにあるのだから。


 ドッグはドアノブに手を触れようとした瞬間、その扉は開かれた。なんとも間の悪いことであった。ドッグが部屋から脱出する前に中に入ってきたのだ。


「おや、やはり逃げ出そうとしたか。そしてその拘束具を外すとはなかなかやるな」


 部屋に入ってきた人物はアーノルドであった。


―――ーー


アーノルド事務次官はドアの目の前に黙って立っていた。流石のドッグもこれには内心焦りがあった。体は冷や汗でびっしょりだ。


(この場を切り抜けるには彼を倒さなければならないでしょう。しかし彼からとてつもなく嫌な予感がしてならない)


 あたりは重々しい雰囲気が流れている。その重さにドッグが押しつぶされようとしているのだ。


 その重々しい雰囲気が依然残っているこの状況のなか先に口を開いたのはアーノルドであった。


「やはり君達は素晴らしいポテンシャルを持っているようだ。やはり君達を連れてきたのは正解であったようだ」


 アーノルドは嬉しそうにそう語る。


「何が目的なのでしょう?見たところ貴方は、軍事省のトップのアーノルド事務次官と見受けられる。そのような人物が私のようなものに用があるとはとても思えないのですが……」


「そう思うのか?君には素晴らしいポテンシャルを秘めていると先ほど言っただろ?それに拘束具をこうも簡単にすり抜けている時点で只者ではないだろう?」


 アーノルドはドッグにそう告げる。そしてドッグ自身アーノルドの意図はよくわからないといったものの、その実アーノルドが何をしようとしているのかなんとなく予想できた。


 それはこの部屋の中にあるものを見ればなんとなくわかる。先ほども述べたとおりこの部屋には様々な生物を研究するために必要な道具が揃えられている。しかも中には違法とも言える実験をしていた形跡が見受けられる。


(何より、この男はかなり冷静な男に見せかけてその実とんでもないほど争いが好きという話は聞いたことがあります。正直第三者から聞いた噂話に過ぎないので、信じてはいませんでしたが、だんだんとその話の信憑性が高まってきましたね……)


 思い出すのは国立ガント大学の主に軍事関係の研究をしていた人物を会った時にポロっと告げられたことだ。その人物は最近軍事省から生物兵器の研究を推進するよう強く希望を出されている。それも半ば強制的にだ……元々そのような動きがあったのだが、それがさらに強くなっているとのことであった。そうアーノルドが軍事省のトップに立って以降だ…


 確かにドッグ自身そのような傾向はなんとなしに感じ取っていた。しかしそれは近年他の国も軍事を強化している動きにあることからガント人民共和国もまたその動きに乗ったものだと考えていた。しかし彼はその考えを否定した。アーノルド自身の私欲のために軍事を強化しているのだというのだ。流石にその考えはとても信じられるものではなく、その時は何を馬鹿なことを言っているのだろうかとドッグは思って、すっかり忘れていた。しかし今回の状況がそれを思い出させた。


(最もまだ、国を強化するために動いているという考えの方が支持できますけどね……、まだこの男のことを詳しく知らない以上そのあまりに異常な考えの持ち主であると断定するわけにもいかないですし……)


「さて、ドッグ君きみは七人の中でも素晴らしい力を持っているように思える。だから是非協力していただきたい」


「拉致されている状況で流石にその言葉はどうかと思うのですが?あなたは一体私たちに何を望んでいるのですか?」


 アーノルドに対して非難の言葉を投げかけながら、アーノルドの目的を尋ねる。するとアーノルドは顎鬚を左手で軽く撫でながらその問いに応えた。


「私は今生物兵器にとても興味を抱いているのだよ。今まではそこらにいる動物で試していたのだが、我らガントはその研究をさらに進めることができた。いよいよ感情を持つ種族に対し力を与えることができるようになったのだよ!どうだ?興味深くはないかね?全種族を超える最強のキメラになることももはや夢ではないと言える。そして君達にはその適性があるのだ!他の者ではダメだ、適性がないからな」


 興奮気味に語るアーノルド、それをドッグはいたって冷静に聞いていた。アーノルドはつまり、自分達に生物兵器として体を弄らせろということなのだろう。確かに彼自身機械を体に埋め込んでいる為にそのような話に拒絶感というものは他の者に比べるとマシと言えるだろう。しかしーーーー


「それを聞いて私たちが同意すると思いですか?生物兵器、それはつまり戦争などで武器として扱われるということ。そこに私たちの意志はないではないですか。確かに体を改造することなどに関して、私はそう拒絶反応はないですが、だからと言って私たちの意志を奪われるようなことは許容できませんね。第一私は争いは好みませんので……」


 その言葉を聞いてアーノルドは少しばかり驚いたっといた表情をした。


「我々は古来より争いを繰り返してきたではないか、それはつまるところそのような闘争本能とやらが人間だろうが、エルフなどの他の種族だろうが備わっているものだと私は思うがね。その本能に従えば、今回の案に対して何が不満があるのだろうか?」


(何を言っているのでしょうか?この男は……)


 ドッグは思わずそう思ってしまった。それぐらいアーノルドが言いたいことを理解できなかったのだ、だから何か言い返してやろうと思い口を開こうとしたが、それに重ねるようにアーノルドは続けた。


「それにガントの兵器として扱われるのが嫌なら、歯向かえばよかろう?己の意思でな……己の意思で自分を兵器として扱おうとしている者を殺していけば良いではないか?おそらく君達は生物兵器として生まれ変わっても君たちの意思は残るだろう。その意思で歯向かっていけば良いではないか?」


「!な、なんということを言うのですか……」


 ドッグは彼の言葉に驚きを隠せなかった。なぜならアーノルドが言ったこと、それはつまり気にくわないなら祖国に対して反乱を起こしも良いと言うことだ。それをガント人民共和国を守ると言う役割を担っている軍事省のトップが発してより言葉ではないのだ。それをこうも当然のことのように述べたのだから驚いても無理もなかった。


(この男は相当異常な人間であると言うことは間違い無いでしょう……となるとこの男の近くにいるのは私にとってもよろしくない)


 ドッグはそう判断したのか、行動することを決意する。


「あなたは今己の意思を持って反抗しろと述べましたね?ならばそうさせていただきます。これでも私は文武両道の人間として有名なのですよ?」


 ドッグの頭上から一本の槍が生まれる。そしてその槍はアーノルドに向かっていく。ドッグとアーノルドの距離は1mほどの距離そう簡単に躱せるものではない、しかもドッグははなったのは『ボンバーオブスピア』、触れるまたは一定距離まで発射されると爆発する魔法だ。躱したところでその爆風を交わすことは出来ないだろう。


 もちろんそのようなことをすればドッグ自身その爆風に巻き込まれてしまう。だから彼は『アーマーオブロック』を使用し体を強化し、そのダメージを抑える。そして彼は走り出すのだ。アーノルドがやられた、または傷を負ったかなどの確認はしなかった。ドッグ自身その必要がないと考えたからだ。しかしそれは良い方向での判断ではない。おそらくあの程度ではアーノルドは全く効いていないだろうという判断だ。


「君は見かけに反してなかなかやるではないか。やはり適性がある者は違うな」


 しかしどうやらドッグの判断は少しばかり間違っていたようだ。ドッグは今ので時間を稼ぐことができたと思っていた。しかし実際のところはどうか、アーノルドは無傷でドッグが走り出し向おうとしていた方向に立ちふさがっていたのだ。

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