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僕たちはこの非情な世界で抗う  作者: MASANBO
戦争を始めたい者と拒む者
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彼らに風が吹き始める

 セルゲイの演説からわずか12時間ほどしか経っていない。だが、いま世間の話題は彼のことで完全に支配されていた。そしてその評価は概ね良好と言ったところだ。それもそうである、彼が演説をした後彼はオルソが手に入れた資料を世界に公開したのだから。そしてそれは世界安全機構など信頼に足る機関にファクトチェックがなされ、セルゲイの話は事実であるということがすぐに公表されたためである。


 だが、オルトゥーナ民主王国はこれを認めない。認めるわけにはいかないのだろう。そしてガント人民共和国はというとすぐに否定するかと思えば、事実を確認するとして、沈黙を貫いている。エルクはおそらく内部で対立が激しくなっているのだろうと推測する。そしてそれはおそらく当たっていた。ガント人民共和国のトップはフロランス総書記であり、その人物は穏健派で、国際安全機構などにも協力的だ。だから自国でそのような事実があり、さらにファクトチェックがなされてそのような結果が出たら協力する可能性が高い。しかしそれを許さないのが軍事省事務次官アーノルドを筆頭とした者たちだ。彼らは全力でそれを阻止するはずであり、事実もうすでにそれが行われているのであろう。それゆえガントは世間には特に反応を示さない、というかできないのだろう。


 そしてセルゲイの演説後謙也たちは一度リーベ王国に戻っていた。ただし、オーレリーは国際軍の方へ行っているため不在である。そしてそこで状況の整理が行われていた。


「今我々にとってかなり良い方向に向かっている。今オルトゥーナは否定しているがそれももうあまりもたないだろう。確かに国民の中には未だそれでも政府がやっていることを支持する者もいる。しかしそれは多くない」


 エルクは謙也たちに向かってそう答える。


「しかし多くないと言っていますが、俺は結構多い印象を受けるのですが」


 エルクの言葉に少し引っかかりを覚えた人志が質問をする。


「確かに印象はそう受けるだろうな。なにせオルトゥーナの流す放送がそのような声が多く取り上げられ、ネット上でもそのような声が多いからな。ただそれは所詮一部の者だけだ。声は大きいがそれはだいたい少数の人間が声をあげる人間が多いというだけの話だ。もちろんその影響力は無視できないものではあるが、しかし他の国の影響を考えれば、大国とはいえその国のものの少数の考えではやはり今回に関してはその影響はすぐに潰されるだろう」


 エルクは人志の疑問に丁寧に答えていく。それに満足したのかそれ以上人志は何も言わなかった。


「それで次はどうするのか考えているのか?」


 続いてオルソがエルクに問いかける。


「もちろん。我々がやるべきことは限られている。それは七人の小人の残りを見つけ出し、全員始末することだ!奴らはあれ以降姿を消している。まずはそれを見つけ出したい。だからオルソは情報を集めてきてほしい……それも大至急にだ」


 エルクはそうオルソに要求する。それに対してのオルソの返答は決まっていた。


「承知した。すぐに見つけ出してやろう。……少々手荒なことをするかもしれないがそれは許せよ」


「一向に構わない」


 それだけを確認するとオルソはそのまま部屋を出て行った。


「さて君達もすぐに動けるようにしてもらうぞ。おそらく相手は5匹、こちらはオーレリーが国際軍の関係で不在で、さらに私とオルソが他のことで手が離せない状態になる可能性が高い、となると君達はエレーナ、アギアを入れて六人、数は1人こちらの方が多いが、それでも一対一の構造になる可能性は高い。気を引き締めて挑むよう」


「わかったわ」


 エルクの忠告にリナが先んじて返答をし、それにつられるように他のメンバーも返答する。


「七人の小人の情報は何かないのですか?」


 謙也が気になっていたことについて質問をする。それに対してエルクは少し困った様子であった。


「残念ながら彼らの情報はあまりないのだよ。奴らがどのような攻撃をするのかもね。わかっているのはハッピーというやつとグランピーというやつはわかっているが、それはとっくにオルソから聞いているまたは直に経験しているのだろう?となるとこちらから分かる情報はない。もちろんできるだけ私も探ってみるがあまり期待しないでくれ」


「そうですか……」


 謙也は少し残念そうに返答する。確かに事前に相手の能力をわかっている状態であれば戦略も練りやすく、有利な状況を作りやすいので知りたがるのはもっともであった。


「……向こうから攻めてくることなんてないわよね」


 リナがなんとなくそのような不安を感じたようだ。


「……一応警戒はしているし、君達もそのつもりではいてほしい。だが、今の状況でむやみに襲い掛かったとしても仕方のないことだ。なにせただでさえオルトゥーナもガントも立場が悪い。そのような時にそのような行動をしても援護が来るとは思えなからな」


 エルクはリナの不安にそう答えた。そしてそれは至極もっともなことであり、リナもそれは理解できた。ただまだ納得はしていないようだ。そしてエルクもまた一つの懸念があった。


「ただアーノルド事務次官はもしかするとそのようなことを考え援護するかもしれないな。やつはあまり自分の地位にこだわらない。それ以上に戦いが好きなのだからな」


「前から思っていたのですが、そのアーノルド事務次官てそんないかれたやつなのですか?」


 正直知らない人間に対していかれたやつという評価を下すのはどうかと思うが、謙也のその評価は概ね間違っていないとエルクも考えているので特に何も言われなかった。


「……過去にもそのようなことがあったのだ。あいつは争いを好むからな、そしておそらく道化とも関わりがある。あの道化とだ、普通であるわけがあるまい」


(あの道化と関わりがあるのならそのような争いを好む性格もうなずけるな)


 その言葉で謙也も納得してしまった。


「とりあえず、我々は七人の小人に対して警戒をしておかなくてはならない。今我々に流れは来ている。この流れを途絶えさせてはならない」


 エルクの言葉に再度同意するメンバー、そして各々次の戦いに備えて準備を開始するのであった。

前回からだいぶエルク達に有利な方向へ進むようになっていきました。しかし彼らの前にはまだ七人の小人がまだいます。彼らのとの対立は決して避けることはできない。そしていくらこちらに理があろうと、向こうが黙っているわけがない。ですのでまだまだ気が抜けない状況です。そして何よりこれらの騒動で世界の状況がまた一段と歪んでくるようにも思われます。そのような変化も楽しみながら読んでいただけると幸いです。

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