中型飛空挺クラーニヒ
グランピー、ハッピーから逃げ出すことに成功したオルソはホッと一息をつく。そして己がのりこんだ飛空挺を何気なしに見渡す。
飛空挺クラーニヒ、収容人数は10ほどで、中型というには些か大きさが小ぶりだと思うのだが、マァあまり大人数のせることができても仕方がないということを考えれば妥当かもしれない。この飛空挺は別段軍事用として用いられるというよりは、移動をメインに行うものであって、金持ちたちが好んで買うようなものだ。言ってしまえば、プライベートジェットを持つのと意味合いは大差ない。しかしそれだけあってかなかなかのり心地も良く、オルソが今座っているソファーも上等なもので、疲れた体でもたれかかるとうっかり眠りそうになる。
(迎えに来るのがこれだとはな……)
この飛空挺が来たのは紛れもなくオルソがセルゲイたちに連絡を飛ばしていたからである。だから逃走用の移動手段のとなる乗り物が何か送られて来るのはわかっていたが、まさか飛空挺が来るとはオルソも思ってもいなかった。
(しかし、飛空挺は目立つとはいえ、このクラーニヒを製造している会社はなかなか有名な企業だ。それの飛空挺なら確かに持っていたら珍しいが、警戒するようなものでもない。むしろ目立つことによって俺のギューゲスの指輪を使用しやすかったことを考えるとなかなか良い選択でもあったな)
オルソにとってこの飛空挺を己の逃走用のものとしての評価はなかなか良かったようだ。
(しかしこれを選んだということは俺の武器を知っている人物。ということはセルゲイたち含めほとんど知らない。なんなら、一部の俺と同類の奴らもまだ知らないしな。となると今回これを手配したのは……)
オルソが答えを導く前にどうやらその答えが先に顔を出したようだ。
「なかなか大変だったようだな」
「エルク、やはりあんただったか」
この飛空挺を手配した人物、それはエルク・マジソンであった。
「まあな。少しオルトゥーナに用事があってまたこの近くにいたのでね。そしたら君から連絡が来て、いま君が七人の小人の隠れ家に行っていることを考えると、大方奴らと戦闘する羽目になったから、逃走できるようにしたかったのだろう?となれば君のその武器を最大限生かせるものがいいと思ったのさ」
エルクは今回の用意をした理由を述べていく。
「ああ、ありがたいことだ。おかげで特に怪我もなくことを終えることができたよ。そしてこいつが収穫物だ!」
上機嫌にオルソはエルクに手に入れた資料を見せる。エルクはそれを手に取りざっと目をやる。そして数秒目を閉じた後、オルソの方へ再び顔を向けた。
「素晴らしい!これでなかなか奴らの立場が危うくなる。これをセルゲイ先生にもぜひ提供しておかねばな」
エルクは今回のオルソの活躍を大いに喜んでいるようであった。しかしオルソは少し気にかかることがあった。
「セルゲイはいないのか?俺は彼にも連絡をしたのだが……」
オルソの問いに対して、エルクは伝え忘れていたと言った表情でオルソを見た。
「いまセルゲイ先生には少し隠れてもらっている。護衛に、リナと謙也君をつけている。その近くには人志たちもいるから大丈夫だろう。君が奴らの隠れ家に侵入したのはすでに向こうに知られてしまっている。そしてこの密約に関する資料も盗まれたとなると、向こうも余裕はなくなる。そうなるとどんな手をつかてでも解決しようとする。その後の障害など無視してな……」
「なるほどな。確かにそうだ。となると近い将来奴らは何かしら行動を起こすということか……、しかしどうするのだ?このまま受け身に奴らを待っている訳にもいかなだろう?」
オルソはエルクにそう問いかける。
「もちろん、待つつもりはない。実はセルゲイ先生は近く全世界に声明を表明するようだ。もちろんその内容はこの密約についてさ」
オルソは流石に驚きを隠せなかった。
「おいおいそれじゃあ、間違いなくそこを襲われるぞ……」
「彼も覚悟の上だ。そして何より我々がそのようなことはさせないさ、無事にセルゲイ先生が声明を発表できるようにしてみせるさ」
エルクは力強く答えた。しかしオルソは納得したが、同時に少し気にかかることもある。
「七人の小人の1人にドッグという奴がいる。どういう奴なのか詳しくはわからんが、そいつは道化を関わりがあるようだ……、今回俺がバレたのだって道化が原因なんだからな」
オルソの言葉にエルクは少し顔に緊張が走る。
「道化だと?また奴が関わっているというのか……何なんだあいつは毎度毎度我々の邪魔に入って、ないが目的なんだ?」
エルクは苛立ちながらそう呟く。
「さあな、あの道化については何者なのか、何を考えているのかなんてわからねぇよ。ただやばいほど危険な奴だということだけがわかっている。だからこそ今回も警戒すべきだ」
オルソはそう助言する。
「わかっている。しかしだからと言って計画を変えるつもりもない。どうせいつまでも隠れて解決などはできないのだ。覚悟を決めて、命をかけないといけない時があるのだ。そしてセルゲイ先生、彼にとってのその時とは、今なのだからな」
「あぁ」
エルクの言葉にただ一言オルソは返すだけであった。
(しかし、間違いなくその時は大規模テロ攻撃並みの被害を被ることになる。となると彼が守ろうとしてきた国民が犠牲になるのは間違いない。にもかかわらず彼はその責任を背負い、それでも前に進むということなのだろう。……ならば、俺も1人の人間としてその覚悟に応えねばな)
オルソは今一度気を引き締め、この件に関わる覚悟を決めるのであった。
さてそろそろ自体が大きく動き出し始めます。彼らはどうするのでしょうか?
尚中型飛空挺クラーニヒ、このクラーニヒとはドイツ語で『鶴』という意味です。
明日は投稿できないです。すみません、また月曜18時に投稿しますのでお願いします




