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訓練2

第7話目です。

 マルティンとの模擬試合から数分が過ぎた後、ようやくマルティンは口を開いた。


「どうだ、しゃべれるようななったか?」


「ええ、ようやくですが……」


 マルティンの問いかけに対して、謙也は、ゼェゼェと息を切らしながらも返答した。


「なんというか、全然だな。」


「……はっきり言いますね。」


 全くオブラートに包まない、はっきりとしたものの言い方に、少しげんなりする。もっとも、はっきり言われる方がまだマシだとも思っているので、そこまで嫌なことでないが、それでも結構心にくるものはある。


「全くの素人という感じだな、最後の魔法はうまく使ったようだが。」


「…実際素人ですしね。」


 そう吐き捨てるかのように謙也は言った。


「まぁ、エルクからそこら辺は聞いているからわかってたけどな」


 そう言い、ケラケラと笑っていた。


「知ってたのに、いきなり実戦形式の訓練をさせたのですか」


 謙也は恨めしそうにマルティンに目を向け、そう言い放った。


「まぁ、そっちの方が上達が速いと思ってだな…」


 少しバツの悪そうに目をそらし、マルティンは言い訳にも聞こえる返答をした。


「そうだ、謙也、お前は自分専用の武器を持っているのだろう?出してみな」


 話をそらしたな…、謙也は心の中で悪態をつきながらも黙って従うことにした。今は言ってしまったら、教師と生徒の関係だ。あまり大きな態度を取るのはよろしくない。


 謙也は手を広げ、念じるかのように、少し深い呼吸を一度する。すると光の粒子が集まり。刀の形へと変わっていった。


 ―――童子切安綱(どうじぎりやすつな)、天下五剣の一つである刀は謙也の手に収まった。


「ほぅ…」


 マルティンは感心したようにそう呟き、まじまじとその刀を見る。


「あの、出しましたけど……」


 戸惑った様子で謙也がそう言ったことで、ようやくマルティンは意識を謙也に戻した。


「すまん、すまん。やはりあまり目にすることのないからな。このような代物を持つ人間なんて限りなく少ない。勿論俺も持ってないしな。」


 ああ、なるほど。謙也は合点いった。やはり、これは特別なのだ。そしてだからこそ今ここにいるのだ。なんとなくそういうことだろうと理解した。


「それで、俺はどうすれば?」


「その刀の使い方を見たい。適当にやってみろ。俺はそんな代物は知らないしな」


 適当な…、二度目の悪態をつきながら、自分自身キメラに襲われて以来使ってなかったから、気になるのでここも素直に応じておくことにした。


 深呼吸を数回繰り返し、刀を構える。そしてクラスを描くかのように、二度振るう。


 ビュン!と空を切るように真空波がで、そのまま壁にあたり……


「あ!おい!」


 見事にクロスの形で壁に切り傷をつけてしまった。


「あー、あとで報告かな…、エルクに押し付けるか。」


 どこか遠い目をしてそう呟くマルティンがいた。そしてさらりとエルクに押し付けようとする姿に清々しさを感じてしまった謙也であった。


「それが、その武器の特性かい?」


「ええ、童子切安綱は風の刀、練習すれば他にもいろいろできますよ。それに、まだ出せませんが、これは本来、五本あるんですよ。それぞれ特性は異なりますが。」


 サラサラと答えていく、いつのまにか身につけていた知らないはずの知識がこうも、スラスラ出てくる違和感には未だ慣れないものである。


「しかし、相変わらずすごいものだ。」


 本心から出た言葉からだろう、独り言のようについ出てしまったかのような、気の抜けた言葉であった。


 それから数時間もの間マルティンの指導のもと訓練が行われた。もともと男子高校生でしかない謙也にとっては非常に過酷なものであったが、尻を蹴られながらも、なんとか食らいついていった。


「よし、今日はここまでにしよう。エルクがそろそろくるはずだから、先にシャワーでも浴びてくるといい。」


 そう言われ、謙也は正直体をこれ以上動かしたくないが、シャワーを浴びたいのもまた事実であったので、息を切らしながら、ふらふらとシャワー室へ向かった。(シャワー室はこの部屋のすぐ目に前にあるためすぐにわかった。)



「さて、あいつがものになるのにどれくらいかかることやら」


 マルティンは息を切らし、体をひきづるようにシャワー室へ向かって行く謙也を見ながら、ふとそのように呟いた。


(決して筋が悪いわけではない。しかし基礎体力面は一般人並だ。これではまだまだだと言わざるを得ない。しかし…)


 マルティンはそう思いながらも、


(『他の』連中らだってはじめはそんな感じだったけ。ならどうにでもなるか。)


 謙也と同じような人間は他にもいた。そしてやっていけるのだろうかと不安になったこともある。しかし案外なんとかなるものだった。


「まぁ。気長にやっていこうか。」


 マルティンは直感的にこれが最善なのだろうと判断したのであった。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

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