二人の小人
続きになります
今回は小難しい話はなしです。
オルトゥーナ民主王国の首都ジブラスク、その中でも誇れるものの一つであるプリンスタワー。そこの上階は裕福層をターゲットとした高級なレストランやホテルが用意されている。しかしその下は一般人でも楽しめるような娯楽やショッピングを用意しており、そのため幅広く親しまれているものだ。
しかし今日、今現段階において誰一人としてそのような娯楽やショッピングを楽しむ者はおらず、ただひたすら叫び逃げまどっていた。
「や、やめてくれ!」
必死の懇願をするのはこのタワーに遊びに来たエルフだろう、しかしその願いはかなえられなかった。そのエルフはそう言い終わるや否や体ごとつぶされたのだ。
ぐしゃりと生々しい音が聞こえ、それを運悪くも耳にした一般人の中には吐き気をもよした。
その場にいる者たちにとっては地獄であろうその場の中心に二人の小さなものがいた。二人ともとても小さい、遠く見たらおそらく子供なのであろうと判断してしまいそうになる。しかし不埒のうち一方はその顔つきがとても小さな子供とは思えない顔つきであった。少なくとも人にして30歳前後の顔つきだろうと判断できる。もう一方もとても幼さが残る子供顔とは思えなかった。
「あ~~、ここうるさいねぇ、グランピー。とてもここじゃ眠れないよ。眠れても、それはそれはとてもよろしくないねむりだろうねぇ~。早く帰って暖かく、気持ちの良い自分のベットで寝たいものだ」
一方がこの場においてとても合わない言葉を吐く。
「おい!何のんきなことを言っているスリーピー。早く上階へ行くぞ。そこに俺たちの目標がいるのだからな」
それに対してグランピーという小人はスリーピーという小人に対して叱責をし、早く来るように促した。
「わかってるよ~」
それに対する返答は何とも気の抜けたものであった。
「本当にわかってるかお前はわかんねぇんだよ……」
そう言いため息をつくグランピー、その際頭を地面に向けたために、自分の服の隅についた汚れに目が入る。
「ん?な、なんだこのよごれはーー!!!!!!!!!!俺のお気に入りの服が汚れっちまているじゃないか!さっきのエルフのせいか!こんちくしょうめが!」
先ほどと打って変わってその場で暴れながら怒り始めるグランピー、それも見て周りはさらにおびえるが、スリーピーはまた始まったよっとあきれたかのようにあくびをするだけであった。
「ちくしょう!今すぐあいつに責任を取ってやりたいが、あいつはもう殺してしまった。こんなことならもう少し生かしとくべきだった……どうする、どうすれば俺のこの怒りを!このどうしようもなく沸き上がった熱をどう発散すればいいんだ……」
ギロリと辺りを見渡す、グランピー。その視界にその場にいるエルフ達が入ってきた。
「よ〜し、この責任はこの場にいるエルフ達にとってもらおう。仕方ない、仕方ないよな〜、お前らは関係ないかもだけど。俺はこの怒りを誰かにぶつけなければならないからよ〜」
なんとも理不尽なことだが、それを非難する者はいない。そのような余裕があればまず先に逃げるべきだろう。
「というわけで……、てめら全員皆殺しだぁぁぁあ!」
余計な動きは一切なかった。ただシンプルに、一直線に襲い掛かる。ただしそれは魔法によって強化されているため、身体能力だけでは到底か出せないスピードだ。それだけで十分であった。戦闘に慣れていないものにとって、それを避ける術はないからだ。
しかし、グランピーの望む結果とはならなかった。それよりも早く横からリナが横から盾で吹き飛ばしたからだ。完全に不意をつかれた形となったため、全く防ぐことができなかった。
グェっとなんとも間抜けな声を出すグランビー。
「な、なんだ!いきなり俺に体当たりしてきたやつは!」
グランピーはすぐさま体制を整える。そして少し冷静さを取り戻したのか、あたりを見渡した。しかし、そのせいか自身の服がさらに汚れたことに気づいてしまった。
「アアアアァァァァァァーーー!!さ・ら・に・汚・れ・て・し・ま・っ・たー!」
つい先ほど少しばかり取り戻した冷静さは瞬く間に失ってしまった。
「何なのよこいつ…」
あまりの乱れように突き飛ばした張本人であるリナは戸惑いを隠せなかった。
「よし!殺す。まずお前を殺す。何が何でも殺す。覚悟はいいかこのクソ野郎!」
その直後周囲の気温が数度上がった。グランピーの近くはさらに上がっている。それはグランピーが全身を炎をまとったからだ。そしてそのままシンプルに再び突撃してくる。短気なグランピーに見事にフィットした戦闘スタイルだ。
しかし、タックルの速度は凄まじいものではあり、とても目で終えるものでもないが、リナとてそれなりに戦闘経験が豊富だ。それぐらい直感で対処できる。さらにリナは防御に特化している。そのようなタックルを防ぐのは朝飯前だ。詰まる所グランピーにとってリナは相性が悪いということだ。
リナのシールドによってあっさりとはじき返されたグランピー、しかし今度はしっかりと着地に成功する。
「……畜生め!無駄に硬い盾を持ちやがって、おい!スリーピー!ぼーっとしていないで手伝いやがれ」
そういうや否や、この状況下においてうたた寝という相当な度胸があっても到底できない行為をしていたスリーピーだが、応援の要請にすぐさま応えるべく、本人にとっては大急ぎで駆けつけた。
「おい!早くしろ!」
しかしその行動は他の者にとっては到底遅いと言わざるを得ないため、グランピーは、リナと攻防しながら、怒りながら催促する。
「これでも急いでるよ〜っと。さてと行きますか」
突如あたりが霧に包まれた。その範囲は相当だ。少なくとも半径数十mはあるだろう。
「!?幻術の魔法。これは『ミストラビリンス』、なかなかに厄介ね……」
全くもって視界を奪われたリナは警戒心を高める。もう既にスリーピーの姿は見えない。それが何より警戒すべきことである。何せ、スリーピーがこの魔法を行使し、あたりを霧に包み、その後すぐに姿を消したのだ。間違いなく攻撃を加えてくるのは分かってるからだ。
周囲に集中するリナ、すると後ろから風が吹いてきた。しかしそれは自然からなる者ではなかった。だれかが仰ぐことによってくる風だと判断した。
「!?」
すぐさまリナは後ろに盾を構える。するとその後ろから巨大なハンマーが降り落ちてきた。盾とハンマーによる金属音があたりに広がる。その音は思わず耳を防ぎたくなるほどだ。しかし耳を抑えるとやられる両者はそのような愚かな行為はしない。すぐさま第二撃を加えるスリーピー、しかしその動きは遅い。どうやら素早い行動はできないようだ。
「遅い!」
リナはスリーピーの攻撃に難なく対応する。その対応に選んだのは『リフレクトシールド』、相手の攻撃を反射する魔法による防御だ。これにより相手におよそ2倍の威力を返す。しかしこれは自身の持つ武器の強度、魔力、身体能力によって反射できるか否か決定する。しくじれば、全て自分に返ってくるという諸刃の剣だ。しかしリナは魔力、身体能力共に相当レベルにあり、何よりリナの持つ盾、アイアスの盾は最高峰の強度を誇る。つまり、ほとんどノーリスクでこのリフレクトシールドを放てるのだ。
「ぐぅっ!」
やはり相当の衝撃を体に身を受けたスリーピーはうめき声をあげる、しかしどうやら魔法によって補強していたのだろう。普通ならその衝撃で死んでもおかしくないのだが、よろけたとはいえ、まだ立つあたりそれがうかがえる。尤もスリーピー自身が相当の実力者であることも要因なのだろうが。
「くたばれや!」
「!」
しかしリナはスリーピーに意識を向けすぎたせいか、グランピーの攻撃に反応が遅れてしまった。
「させるか!」
しかしそこに駆けつけたのは謙也であった。謙也は真っ先にリナが滞在している一室へ向かったため、ここに駆けつけるのが少し遅れてしまった。(ちなみにリナのいた部屋から現在地は數十回下にある)
駆けつけた謙也はグランピーに対して、風の力を宿す童子切安綱を斬りつける。それにより、風と炎が混ざり合い、高熱の風が吹き付ける。
「グォ!」
それにより苦しんだのは謙也であった。それは相手はもともと炎を体にまとっているためこの程度の熱風は全く区でないのに対し、謙也はもともと普通の人間だ。その為このような結果になってしまったのだ。
「はっ!その程度で怯むのならしゃしゃり出るんじゃねぇよ!」
そう言いながらグランピーは謙也をターゲットに攻撃を仕掛ける。しかしそれに対し謙也は剣を構え、迎え撃つ。突撃してくるグランピーに対し、剣を振るいながら周囲に風の防壁を気づく、さらにアイスオブスピアを二本放つ。
「しゃらくせえ!」
それに対してグランピーは突っ込む。あまり難しいことは考えないたちのようだ。しかしそれが失敗であった。炎の衣は風の防壁によって、削られていく。そこに二本の氷の槍だ。完全に炎の衣で守っていたら、この氷の槍は容易に防げただろう。しかしすでにその衣は弱まっている。この氷によって、完全に炎の衣を剥がされ、少しばかりといえどダメージを負う。そして氷という性質上、直撃した部分が少しばかり凍る、その場所は足だ。つまり、動きが鈍くなるということだ。
「喰らえ!」
すかさず追撃を行う謙也、その動きはまっすぐ突撃するという単調なものであった。相手の動きが鈍くなった以上下手に動き回るよりも一直線に行く方が良いと判断したからだ。
しかしそれがいけなかったのだろう。上より降り注ぐ氷の槍に気づくのが遅くなってしまった。
「何!」
氷の槍を対処するために、炎の力を宿す三日月宗近を出すのがベストだが……
(だめだ間に合わない!)
そう思い、止むを得ず童子切安綱の風で、槍の軌道を変えることによって防ぐ方針をとった。
その判断は正しかった。それにより氷の軌道がずれて、直撃する前にそれぞれの氷の槍がぶつかり合い消滅した。しかしそれによる冷気までは防げなかった。その冷気は謙也を襲う。咄嗟に魔法『マジックシールド』で難を逃れようとこことみたが、一番魔法が不得手である彼には防ぐことができず体が部分的に凍ってしまった。
(う、動けない……)
戦闘面において動けないのは致命的であることぐらい未だ未熟である謙也にもわかる。それゆえに相当の動揺が襲う。そして疑問も生じる。
(なんで上から氷の槍が)
「謙也君!」
スリーピーを相手しながら、謙也の状況を把握したリナは助けようと試みるが、スリーピーが予想以上に厄介でなかなか行けない。そして何よりもう一個の方に注目せざるを得なかった。
「危なかったね〜、グランピー。でももう大丈夫このハッピーが来たからにはもう安心だぞ★」
元気に動き回りながら茶目っ気たっぷりにそういうハッピー、しかしその手にはオーク、エルフ、リザードマンと言った生首を持っている。およそこの場においてふさわしくない物だ。そのようなもの謙也たちがいた世界の戦国時代の武将でもなければまず持たないものだ。それを嬉しそうに持っているハッピーは相当イかれたやつだと言わざるを得なかった。
「3対2……、なかなかキツイわね。謙也君動ける?」
そう言いながら盾を構えるリナ
「ええ動けるようになりました」
謙也は凍った体を三日月宗近の炎で溶かし、動く自由を得た。
「いやー、それにしても相変わらず馬鹿正直に突っ込むのは君の悪い癖だよグランピー。そう思わないかい?スリーピー?」
「そうだねぇ〜、でもグランピーに言ってもちっとも聞きゃしないし。もう諦めたよ」
スリーピーの問いかけにあくびをしながら答えるスリーピー。
「ウルセェ!そんな頭で考え続けるのなんて面倒だろうが、俺はこれがあってんだよ!」
声を荒げながら反論するグランピー、やはり仲間に対しても短気なようだ。
「それより早くやっちまおうぜ、今なら3対2。実力的にもさほど差がない以上こちらの勝利は確実だ。俺はあの女をやるからよ!」
「それじゃあ僕は援護するよ〜、ミストラビリンスを放つよ〜」
そう言いながらスリーピーは、グランピーの攻撃を放つ前に魔法を放ち、グランピーの姿を消す。
「それじゃあ私は、シックスミサイルズで遠距離攻撃と行こうかな★」
そう言いハッピーはこの視界の悪い中、魔法『シックスミサイルズ』を放つ、ミサイルとあるように相手を追撃する特徴を持つ魔法だ。それゆえ対象を認識し放つことで視界が悪くても関係ない。まさにこの今の状況において最適な選択だと言える。
「謙也君!童子切安綱の風で四方八方に真空波を放って!視界を奪われている以上完全に対処できないわ」
「わかりました。しかし全方位となると少し厳しいです」
そう言いながらも全力で剣を振るう。そしてそのヤイバはミサイルを直撃したような音がする。しかし確認できない以上断定するわけにもいかない。そしてさらなる脅威が迫ってくる。
「ウルァァァ!今度こそ死ねや!」
横からグランピーがリナをめがけて全力で拳を振るう。盾と拳による鈍い音がなる。一般的には拳で盾を殴れば間違いなく拳の方が痛いのだが、グランピーにはそれは当てはまらない。
「くっ!」
リナの方がその衝撃によって思わずよろけてしまう。
「さらにもう一撃くらいやがれ!」
そう言いグランピーが、もう片方の拳をあげる。
「リナさん!」
それに対し、謙也がその追撃を妨害する。しかし……
「後ろにもいるよ〜」
そう言いながら謙也の後ろに立ったのは、スリーピーだ。そのスリーピーは巨大なハンマーを謙也の頭に狙いを定める。しかし謙也は今グランピーの方を向いている。リナを助けられる状況ではない。
(やられる!)
思わず歯を食いしばった。
しかし謙也たちが予想する悲劇は起こらなかった。そして予想外な事に、今この場にいる者全員にとって予想外な事に、スリーピーの体に三つの燃え盛る剣が突き刺さっていた。
「え?」
何が起こったのかスリーピーにもわからなかった。
「随分と楽しそうなことをしているではないか。わたしも混ぜてくれないか?」
コツコツと品のある靴によって心地よい音を立てながら、近づく者が一人。
「エルクさん?」
そこにいたのは謙也たちの上司にあたる人物エルク・マジソンであった。
さて今回はかなり戦闘描写が多くなりました。それでもまだエルクが参戦したところで終わってしまったので、次も戦闘描写はありますね。
今回色々プロットを作っていると少し複雑気味(前からその気味なのは置いといてください)なので後書きでちょいちょい説明して行こうかなとも思います。まぁ、別にここは飛ばしてもらっても構わないのですが…
引き続き宜しくお願いします。




