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僕たちはこの非情な世界で抗う  作者: MASANBO
望まずテロリストとなった者たち
31/80

外交準備

2日ほど遅れました。

「さてとみんなニュースには目を通したか?」


一通り食事を終え、食後のコーヒーを楽しみながら人志は言う。


「いや俺はまだです……」


昨日までただ部屋でゴロゴロとしていた身である謙也は当然チェックなどしていなかった。


「見ました。このあいだの件がすごい流れていましたね」


「相変わらず誇張しているわ、間違っているわと行った事も多いけどね」


すでにニュースを見ていたのであろうクリスティーネとリナはそれぞれ反応を示す。


「思った通り、リーベの悪口だったな」


「正しくは非難ね」


リナが訂正する。


「エルクさん大変そうでしたね……」


エルクはここしばらく各方面の対応に迫られやれ書類だの連絡を取るなどしており全く休む暇がないのだ。その補助としてエレーナがついているがそれでも大変そうだ。そのことを思い出したのかクリスティーネがそういったのだ。


「まぁわかっていたことだろうけどな」


そう言いながらも人志もエルクに同情の念を抱いている雰囲気であった。


「しかし一体どういった内容なのですか?」


一人情報を把握していない謙也は皆に質問をする。


「まあありきたりのものだ、我々はテロ組織に決して屈しないなど言った後にリーベは今後どういった対応をするのかなどだ。まぁ悪口的の源は大方マスメディアだがな」


そういって人志は自信の情報端末から記事を検索し謙也に見せた。


「なるほど確かにそうですね。なんかこの辺りはあまり変わりませんね」


謙也の言う意味とは自分たちの世界と変わらないと言う意味だが、この四人の間では共通認識のためこれ以上の補足は必要はなかった。


「だが今だけ耐えておけばいい。どうせマスメディアはしばらくするとすぐに忘れて他の事件に目がいくからな。それに次に非難を浴びるのはガントだ」


「人志、あまりそう言うことはこういったところで言うべきではないわよ。聞かれていなかったからいいけど」


少し感情的になっていた人志をなだめるリナ。


「そうですね、すみません」


ここは素直に謝る人志。


「私たちは何もできない。ただいまは次に備えて英気を養っておきましょう。休みはしっかり取らないとね」


気を遣ってかそう言うリナ。


「そうですね!」


クリスティーネも同意する。


「そろそろ出ましょうか、食休憩も終わったことですし」


謙也がそう提案すると皆同意してか、それぞれ会計を済ませて外へ出た。

ーーーーーーーーーーーー


「ああそれで頼む」


ガシャッと音を立てて電話を終える。


「そろそろ一息つかれてはいかがですか?エルクさま」


深いため息が出そうなエルクに気遣うエレーナ。


「ああ、ありがとうそうさせてもらうよ」


エレーナの好意を素直に受け取ることにするエルク。


「やはり難航しましたね。各国の交渉は……」


「まぁ、わかってたことだ。前例があるとはいえあれは例外的な話。普通は自分の国に相手の半ば軍隊みたいなものを入れるなんて嫌だろう」


「ですが、グアラテム連邦国が話に乗ってきてくれたのは意外でした」


「そうかい?」


「ええあの国は主権を大事になさる国です。その国が一時的とは少なくない主権の放棄をするとはとても……」


「確かに」


グアラテム連邦国 多数の支部国家が統一的主権のもと平等に結合している国家だ。各支部国家は広い自治権を有しており、根本的に自由主義思想が強い。なので貿易では主体的に自由貿易を促進するなど経済面で強い影響を持つ。


その自由を好む特性が故、自身の国の政策等に介入されるのは当然嫌がる。無論主権が侵されるとなると黙っているわけがない、たとえ一次的だとしてもだ。


「しかし今回は例外なのだ」


無論エルクもこの国の体制はよく知っている。しかしそれを分かった上でこう述べる。


「向こうは絶対に自身の国に入れさせることのない自信がある。なんせ今回は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()としている。その要件が揃わない限り立ち入ることがない。そしてこの条約は双務的だ。こちらも同じ条件を飲まなけらばならない。だから了承したのだろう」


「それでも万が一にでも自国に相手の国に入られることを恐れる可能性はないのですか?」


それでも納得いかないエレーナは続けて質問する。


「それもあるが、しかし今回に限りそれもない。向こうもガントが怪しいと踏んでいるのだろう」


「向こうもその情報をつかんでいるのですか?」


「ああ、向こうも独自でつかんでいる部分もあるだろう。しかし私が教えたということもある。非公式で向こうの外務省と会いその情報をリークしたからな」


ニヤリと自分の計画を述べるエルク。


「それらの情報は正しいと踏んだグアラテムは、今回の条約に批准に真っ先にすることで自分たちは全力でテロと戦うことをアピールし、他の連中は非難だけして何もしないような雰囲気を作る。そして世論が、勿論大多数が賛成とまではいかなくとも一定程度の人間が国際的な義務を果たせと主張し始める。そこでどうしようと考え始める。そこで他の国にもこちらのつかんでいる情報をリークする。これはさすがに私が行くわけにもいかないが、優秀なものがいるからね。彼らにうまく情報を流してもらうさ。そうすれば他のものもデメリットが少ないと判断し批准する。そうなるといよいよ先進国として威厳を見せなければならないガント人民共和国も批准せざるを得なくなるという話さ」


「確かに国際的にも世論的にもガントも批准しそうですが、しかしそれを無視するということもやりかねないのでは?なんせ軍部省はあんなんですし」


エレーナは怪訝な顔で言う。


「ガント人民共和国はあれでも一応民主主義を装った国だ。確かに一党独裁だが、実質的には強固なものではない。と言うのもその一党で派閥ができているのは知っているだろう?」


エルクはエレーナに問う。


「ええ、軍事省と国会というなかなかない構造ですが……」


「その通り、で問題は今現在軍事省が力をつけてきているということだ。行政側などははっきり言って弱体化を望んでいる。多少国に損益がでてもだ」


「損益がでてもですか?」


「ああ、仮にうまいこといけば軍事省の力はかなり削げる。世界中の非難を浴びることと引き換えにな」


「そんなことを受け入れるのですか?」


ありえない話だった。政治家というのは自国の利益になることを優先的にやる。これは悪いというわけでは決してない。人間というのは身内に優しくなるものだ。当然全人類に平等に扱うといった人間もいるだろうが、そのような人間は政治家には向いていない。理想だけで国は作れないのだ。


「それだけ恐れているのさ、軍事省をなんせあのアーノルドという男、はっきり言って狂っている。彼はもはや自分の国すらどうでもいいと考えている。今は結果的に自国の利益になっているがな。奴は基本的に戦いが大好きだ。幸せなのだ。だから自分の快感のために国を利用している奴だ。そしてオイゲネは一見まともに見えるばなんてことない、ただ自分の利を得ようとしているだけだ。何かあればすぐに逃げる。最もその勝負場の見極めはかなり優れた男だが」


「そこまでとは思いませんでした」


エレーナはエルクに情報取集力に感心したかのように言う。そしてアーノルドの警戒レベルをグッと引き上げた。


「今のガントには強力なリーダーがいない。だからそうなっているのだ。仮にいたのであればそうはならない。一党独裁などの政治体制はその人個人の力がそのまま権力となる。それも考えると今のガントのトップ、フロランス総書記は残念ながらあまりにも弱い。どんどんアーノルドに力を奪われている。これがもっと民主的な政治体制を敷く国なら別の結果だ出たのだろうがな」


少し同情するかのように言うエルク。時代、場所、その他の様々な要因によって人の価値はまるで異なるのだ。ある場所では優秀だとしても、ある場所ではむしろお荷物。人によってはどの場所でもある程度価値を生み出せるかもしれないが、そのような人間は少ない。だから人の成功というのは時に運命に左右されることもあるということだ。


「フロランス総書記、ですか。確かに人柄は良さそうなお方でしたね」


エレーナもメディア等からえていた情報をもとにその人物像を思い浮かべる。


「実際良いのだ。だが、あの対立の中に入り込むには少々役不足だ。最も他の人間が恐れて損な役回りを回されたのだろうな」


これまでの話から分かる通り、今政治家はかなり弱腰である。そして官僚である人間、特に軍事省が力をつけ、かなり発言力を持たせていることになる。他には魔法省というこの世界特有のものもあるのだが、その魔法省も軍事省側だ。いまこの二つを止めてくれるのが、同じ官僚であるということだ。その中でも一番有力なのはやはり財務省だ。しかし残念なことにじわじわとその財務省内部にも軍事省、魔法省の息がかかった人間がはいってきているのだが。


「しかし我々がこの問題に対してあまりどうもできなかった。なんせその国の問題なのだからな。しかし今回は違う。先ほども行ったがうまくいけば、ガントの軍事省の人間を潰せるのだ。我々も正直あのような人間がいては困る。なんとしてでも潰すさ。この機会を使ってな!」


エルクは力強く手を握り、宣言する。それだけ気合が入っているということだ。


「そうですね。私も正直戦争などは避けたいものですから」


エレーナもエルクに同意する。いかに戦闘を行う人間だろうが、別に好きではない。むしろ平和が良いと考えている。なのでその火種は速やかに除去すべきだという考えだ。


「では、エレーナこれから忙しくなる。とりあえずグアラテム連邦国と細かいところを話し、一度公式に会っておく必要もある。これらのことは早く済ませたいことだが、いかんせん民主主義の国が多い。時間がかかる。全ての仕事を終えるのに数ヶ月では済まないかもしれない。だができるだけ早く終えるために全力で取り組むとしよう」


「承知しました」


今回の件は久々に大きな仕事だ。エルク自身まさかここまで大きくなることは予測していなかった。しかしーー


(いつだって、想定外のことは起きるもの。ならば臨機応変に対応していくまで)


そう自分に言い聞かせエルクはいつも通りに、しかしいつより集中し仕事に取り組むのであった。


最後まで読んでいただきありがとうございます

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