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僕たちはこの非情な世界で抗う  作者: MASANBO
望まずテロリストとなった者たち
30/80

休息

閑話に当たるかもしれない話かな?

 あれから数日が経った。その間謙也は特に何もしていなかった。やる気が出なかったのだ。


 薬の効果が切れてから自分が殺しを働いた実感を得た。でもぜつに発狂することはなかった。罪悪感で押しつぶされそうになることもなかった。ただ殺した問いことだけがそれとなくのしかかっていた。それが謙也にとっては気持ち悪かった。


(何なんだこれは?不思議な感覚だ)


 その感覚の違和感に悩まされていたためほとんど自室にいた。しかしそれももう飽きてきた。久々に外の空気を吸おうそう考え、謙也は軽く身支度を整え外に出た。


「あら」


 外に誰もいないと思って何も考えずに扉を開けたら、園にはちょうどリナがいた。どうやら謙也を訪ねに来たのだろう。


「どうしたのですか?」


 正直謙也もいきなり訪ねに来たのに驚きを感じたが、それよりも彼女の要件が気になった。


「様子を見に来たのよ。謙也君あなた、ずっと引きこもっていたじゃない」


「ああ……」


 なるほどと理解する謙也であった。確かに同僚がしばらく引きこもっていたのでは心配の一つでもするか。


「心配かけてすみません。なんと言うか、何もする気が起きなかったので……」


「やっぱり前の仕事は辛かった?」


 心配そうに気遣うリナ。


「まぁそうですが、実はいうとそこまで心に負担がかかっていないのです。そりゃあの当時は結構ショッキングでしたけど。それも薬のおかげで安定していましたし、それが終わった後もなんというかそういう事実だけがあったということしかなくて……」


「あぁ、そういうことね」


「変ですかね……」


 謙也は自分の状態に違和感があるからこそ言う。


「それは分からないわ。でも気にする事はないわよ。そんな他の人よりも変とかどうかなんて。特にこう言う事はね、そんなことを考え出すとただでさえ辛いことなのに余計に心がしんどくなるわよ。だから割り切ってしまいなさい」


「そういうものですかね……」


「そういうものよ」


 謙也のつぶやきにリナは断言する。


「さて暗い話は終わりにして、ご飯は食べた?もうお昼よ、まだならこれから一緒に食事でもいかない?みんなも居るしね」


 そう言われると謙也も空腹である事に気づけた。ここしばらくあまり食事だできなかったのも原因だ。しかしそれが今食欲にかられているという点ではそれなりに回復してきているのかという事にも気づけた。


「そうですね。ではご一緒させてもらいます」


「そうこなくちゃ」


 謙也の言葉に満足してか機嫌良く歩き出すリナ。謙也はそれについていくことにした。


 ーーーーーーーーーーーーーーーー

 首都ミッドロイドに久しく足を運ぶことなった謙也は、リナに連れられてオシャレなレストランに入ってきた。


 そこはどうやら個人店のようであった。この世界は当然ながら大企業等もあるためチェーン店もそれなりにあるのだが、やはりこういう個人店もある。それにこういうところの方が美味しいところはどうやら変わらないようだ。


 この店の中は、テーブル席が三つほど、あとはカウンター席が五つといったところか、あまり大きくないのはわかるが、これぐらいの方が謙也にとっては好みだったりするため少し嬉しかった。


「お!キタキタこっちだ」


 そう手を上げて謙也たちを呼ぶのは人志であった。その隣にはクリスティーネも居る。どうやら先に来ていたようだ。


「遅れてごめんね」


 そう一言謝罪するとリナもそちらに向かい空いて居る席に座った。謙也もそれに倣い座った。


「謙也はもう大丈夫なのか?」


 人志は少し心配そうに聞く。こういう気遣いをされるのは初めてだななどと見当違いなことを考えながらもちゃんと返答をする。


「ええ、別に病気とかいうわけではないですしね。なんというかだらけていた感じの方が近いです」


「そうか。それならいい」


 謙也の言葉と顔で大丈夫と判断してか人志はそれ以上何も聞かなかった。


「それならもっと早く外に出て私たちと会ってくれればいいのに……結構心配したのですよ?」


 そう不満を漏らすクリスティーネ。


「すまない、頭が働いていなくてな……、そういうクリスは大丈夫だったのか?」


 クリスティーネとて小規模ながらも戦場にいたのだ、精神的にくるものはあったはずだ。


「クリスちゃんは意外とすぐに出てきたわよ。まぁ少し引きこもっていたけど。それでも外に出てきたらすぐにショッピングを楽しむ程度には元気だったわ」


 リナは微笑ましく思い笑いながら答える。


「そ、そうです私は大丈夫ですよ」


 いきなりその後の生活を言われ、別に恥ずかしい内容ではないのだがなんとなく恥ずかしく思ってしまったのか少し顔を赤らめながら答える。


「とりあえず何か注文したらどうだ二人とも」


 人志はそういってテーブルに指を当てる。すると立体映像が飛び出してきた。やはりこういうところはこの世界ならではだろう。


 人志はそのままその立体映像をスライドさせ、謙也とリナ二人の間に持って行く。


「それもそうね。何を食べようかしら」


 そう言いながらリナはメニューを眺める。


「何がオススメですか?」


 一方この店を知らない謙也はオススメをきく。


「ガッツリ食べたいならステーキなんかどうだ?なかなかに美味だぜドラゴンの肉。赤みがうまいんだよ」


(そう言えばこの世界ドラゴンがいたな)


 これまで散々銃器などを見ていたためそんなTHE ファンタジーはものがあることをついつい忘れてしまいそうになる。最も他にも色々な種族がいることはわかっているが、やはりこの世界の技術で謙也が思う異世界感があまりない。


「まぁ、俺たちには最初は戸惑う食い物だが、食ってみろ。別にゲテモノを食うわけではないのだから。まぁそりゃ俺たちがいた世界のように豚みたいなものもいるがな」


「そうですか……それじゃあ俺はそのステーキを」


「私はパスタにしようかしら」


 そう言って二人はそれぞれ食べたいものにタップすると、そこには注文完了という表示が出た。


 それから程なくして四人それぞれの料理が運ばれてきた。


(なるほど言われた通りこのドラゴンの肉うまいな。赤身が癖もなくいい具合だ。)


 しばらく引きこもっていた謙也にはこの料理は大変嬉しいものだ。なにせ食事を楽しむということができたのだ。食事が良ければ気分も上がるものだ。


 それからたわいのない話をしながら四人はそれぞれの料理に舌を打つのであった。


 その時間はもしかしら初めてと言えるほどに心休まるものであった。


(引き籠もるべきではないものだ)


 謙也は一つ大切なものを学んだ気がした。

最後まで読んでいただきありがとうございます



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