帰還
30話目です。
灼熱に包まれた中、謙也は正直なところ手で防ぐことしかできなかった。無論そのようなことでは灼熱を防げるわけでもない。しかし彼は無傷であった。
彼らの先頭に立っていたのはリナであった。
「ありがとうリナ。助かったわ」
そうリナが自身が持つアイアスの盾で皆を防いだのだ。
パーフェクトシールド、前方も攻撃を広範囲にわたり完全に防ぐものだ。これはアイアスの盾を持つリナしかできない芸当だ。
「しかし、他のメンバーは大丈夫なのか?」
人志はそう呟く
「他のメンバーは外で待機してもらっていましたから大丈夫です。……中で入っていたエルフ達はダメでしょうが」
人志の疑問に答える形でエレーナは言う。
「そうですか……」
謙也はそう言うしかなかった。
「しかしこの様子じゃ、もう二人は逃げられたわね……」
リナがげんなりとした顔で言う。
「……その件については外にいる連中に伝えて探させている」
アギアはそういい指示を出すために使っていたであろう端末をしまう。
「ありがとうございます。では、私たちは一旦戻りましょう。エルク様に報告して今後の活動を考えるべきでしょう」
エレーナの提案に異論があるものがいなかったため、そのまま全員同意しそれぞれ来た道を戻っていった。
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それから程なくしてエルクのいる職務室まで戻ってきた一行はエルクに報告した。
「そうか……」
ただ一言そう呟くとエルクは深いため息をつきながら天井を見上げた。
「マクドネルの尋問は後で行うとして、急務はユスフとニコだ。彼らの足取りがわからないのだろう?」
エルクは質問する。
「はい。脱出するために使用したであろうシェルターは発見されていますが、肝心の彼らは見つかっておりません」
その質問にエレーナが答える。
「ふむ、それはガント人民共和国の近くであったよな?」
「その通りでございます」
「では彼らはガント人民共和国に入国した可能性が高いな」
エルクは断言した。
「なぜです?彼らはテロリスト。そのような人間を意図的に招き入れるようものなら批難の格好の的ですよ?」
謙也は当然の疑問を投げかける。
「普通ならな」
エルクは含みのある言い方で答える。
「俺の情報網から得た話だが、ガントの一部とエンジェルはつながっている可能性がある。それが本当であれば招き入れる可能性もあるだろう。事実マクドネルのエンブレムがなくなっていたのだろう?おそらくそれはガントのお偉いさんとつなぐために使ったのだろう。そして事情を知るものが絶対にあっているはずだ」
(なるほど確かにそれならそうかもしれないな)
そう思いながら謙也は理解したかのように頷いた。
「相変わらず様々な情報を持っていますね」
人志が感心したかのように言う。
「さて、おそらくだが向こう側は何らかのアクションを起こしてくるだろう。まず無難に我々リーベの批判だろうな。『お前のところがテロを起こしているではないか、どう責任をとる』などと言ってくるだろう。他の国もな、最もガントは後ろめたいことがあるせいか大人しいかもしれないが。普段はやかましいのにな」
クックックっと笑いながらエルクは言う。あまりガントには良い感情を抱いていないのだろう。
「まぁ、その避難は想定済み。彼らを拘束するよう迅速に対応するよう声明を出す。その後各国と一種の条約を結ぼうと考えている」
「条約?」
リナが聞き返す。
「あぁ、他国の協力を呼びかけると言うことだ。万が一その国に侵入していた場合。こちらが責任を持って捕獲すると言うな。無論その国民の生命及び人権を蹂躙することのないよう配慮すると言う条件付きでだ。費用もこちらが持つと言うことでだ」
「それはやっぱり、こちらに責任があるからそれを取るためでしょうか?」
今度はクリスティーネが質問をする。
「責任取ると言う理由もあるが他にも目的があるよ」
「証拠隠滅を阻止するためにものですね?」
エレーナが答える。
「その通り」
エルクは満足げに言う
「先ほども言ったが、彼らがいるのはほぼ間違いなくガントだ。そして奴らはグルだ。ならば証拠隠滅を考えるのは至極当然。だからその前に抑えておこうと思ってな。そうすれば今度は向こうが非難の的だ」
「しかし、他国のものがその国にズカズカと入って捕まえるなんて行為許されるのですか?」
謙也がいた世界ではそのような場合、そう簡単に入れるわけがない。向こうにも主権があるからだ。今回入って仕舞えばその主権の一部を踏みにじる行為をも捉えることができる。とするとそのような行為がそう簡単いうまくいくとは言えない。
「まぁそうだな。向こうに入った捕まえると言っても。向こうの国と連帯してのことだがな。そしてその場合中立国を一つまたは複数相手国が選び監視のもと行うという条件が付く。その場合において過去にそのようなことが行われたことがある。でも確かにこのような方法はあまり取られないが、前例はないわけではない。珍しいがな」
「はぁ……」
あまりなじみのない感覚なのでそう答えるしかないが、この世界ではそうなのだと理解することで落ち着いた。
「さて、ひとまず皆ご苦労。少し休むと良い。どうせしばらく情報収集等などをしている間はやる事はない。そうだなかなり時間がかかるかもしれない数ヶ月といったところか。向こうとの交渉もあるしな。それに謙也くん、君は人を殺したと聞く。ならば精神安定剤が切れる頃に何とも言えない感覚に襲われる。ゆっくり休め」
「……」
そう言われれると謙也は全身に力が入った。あまり気にしないようにしていたのかはたまた薬で気にする必要がなかったかわからないが。未だ感覚がおかしいことになっていた。それが戻るとどうなるか少し恐ろしいように感じたが、それも薬の影響からか意識を向けなければわからない程度ではあった。
「……次第になれるさ」
それは正直なところあまりなりたくないことだが、だからと言って毎回それで迷惑をかけるわけにもいかないためそれが望ましいを思う自分もいるため。謙也はなんと返事していいのかわからなかった。これはクリスティーネも同様だろう。
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