交渉
短いですがご了承ください
「おいそこで止まれ」
そう警告しながら銃を構える者達。ガント人民共和国の軍人だろう。
(まぁそうだよな……)
当然ユスフも予想していたことだ。いまの時代国と国との間を無防備に晒しておくほどバカな奴はいない。
「ここからはガント人民共和国の領地だ。無許可で入ることはできない早々に待機せよ」
マニュアル通りの言葉が返ってくる。このまま無理に突破しようものなら銃殺されるだろう。そこまでガントは甘くないからだ。
「待っていただきたい。ひとまずこれを見ていただきたい」
そう言ってユスフが見せたのはエンブレムだ。
「!!それは」
相手は思わず怯む。ユスフが見せたのは、アーノルド事務次官が自分の家族及び気に入った人間に配っているものだ。彼は軍事省のトップ、なのでそのエンブレムのことは軍人の中では有名な話だ。故に彼らは怯んだのだ。
しかしこれはユスフのものではない。彼の息子マクドネルのものだ。だが、相手にその判断は難しい。万が一にも本当であった時失礼に値し、簡単に首が飛ぶからだ。
「軍事省局長オイゲネに話を通していただきたい。内容は『GtoE』について話したいと伝えてくれ、向こうはそれで通じる。それとどこか君たちの待機場所に連れて行ってくれないか?別にいきなり領地にズカズカ入り込むわけには君たちもいかないだろうし」
ユスフは彼らの立場も考慮した風に言う。
「承知しました。」
相手はただそう言わざるを得なかった。
(これで中に入れるな、マクドネルのエンブレム相当役に立つな……)
そうユスフはほくそ笑んだ。
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あれから30分ほどしたこと後、ユスフは軍用の車に乗せられてガント人民共和国の首都クイーンヘブン、その都市の中でも目立つ高層ビル(60階建てのビル)の中へ入っていく。(その間ここまでずっと抱えてきた、ニコは丁寧保管するよう手配をした。無論他の連中に気安く触れて欲しくないため作業はほとんど自ら行った。この世界では腐敗を防ぐすべは容易に確立されている)そこは軍事省本館、故に軍部の車が入っていってもなんら不思議ではない。
ユスフはその建物の51階に案内された。やはり上の連中は上の階に席を置くのは万国共通なのであろうか。などとユスフが考えているうちにどうやら目的地に到着したようだ。
そこには初老の男が立っていた。背はせいぜい170㎝歩かないかといった具合だ。それなりに裕福な生活をしてきたのか贅肉が隠せていない。そして金持ちの余裕からくるものなのか、大変愛想の良い顔でユスフを出迎えた。その男こそ軍事省局長オイゲネであった。
「やあ君かね。私を呼び出したのは」
オイゲネはユスフに尋ねた。
「ええ本日は是非お話を伺いたいことがございましたがゆえ」
オイゲネに尋ねられたことに対し丁寧に返答するユスフ。それに対してオイゲネもそうかそうかと言って反応を示した。
「ああ君ご苦労であった。もう下がって良いぞ。今から彼と二人で話したいからな」
そう言ってここまでユスフを案内してきた軍人はそう言われるとすぐさま別れの挨拶をした後、この部屋を出て行った。
「……さて『GtoE』の話だったかね?それを知っているとなると、君がユスフかい?」
「ええその通りでございます」
付き人が部屋をでって行ってからいきなり本題に入ったオイゲネ。その眼には確かな鋭いものがあった。
(やはりそれなりに上に行くと眼が違うのか)
それなりに厳しい道を歩んできたのだろう。オイゲネは確かにトップに位置するものではないが、それでもユスフが少し怯える程度には迫力があった。しかしユスフとてここでおびえたままで行くわけにもいかない。ユスフは気を持ち直し、オイゲネと話す。
「今回我々はリーベ王国側からの攻撃を受け、崩壊してしまいました。そこで私は盗られると困る情報を回収し、そのままこちらに向かわせてもらいました」
「マクドネル君、彼はどうしたのだい?」
オイゲネはユスフの言葉を聞きながらもまずマクドネルについて尋ねた。これは彼がアーノルド事務次官の息子だからであろう。
「彼はおそらくリーベ側に捕まったのではないでしょうか」
しかしユスフはマクドネルを気にする必要も義理もないため全く気にすることなく答える。
「そうか捕まったか…」
怒鳴られるだろうと予想していたユスフに反してオイゲネは静かにそう呟いた。
「ずいぶん冷静でいらしゃいますね?」
ユスフは思わずその理由を問いたい気持ちに駆られた。
「あぁ、別にそこまで気にしていないしな。それより重要なのはこれから君が求めるものだ。」
ニヤリと笑いそういった。
「マクドネルは重要ではないと?」
「重要といえば重要だ。しかし彼はリーベ側にすでに捕らえられている情報は掴んでいる。これから身柄を引き渡してもらうさ。君に操られていたという理由でね」
その口ぶりからするに本当のリーダーがマクドネルだということをオイゲネは知っているのだろう。その事にユスフは怒りを覚えた。
「…それをなぜあなたは知っている?」
怒鳴ることを抑え冷静さを保つよう努めながらユスフは問いかける。
「私がもともとその話に乗ったメンツの一人だからだよ。……アーノルド事務次官もだ」
「なんだと?それでは息子を利用したということか?」
「それぐらいこの世界では普通さ。それにまだ操られて動いたということならばまだマシだろう」
全く悪びれる様子はない。これが普通だと言わんばかりの態度だ。
「自分の手を汚す覚悟もない人間が、この世界で生きていこうとする時点でおこがましい。不本意ながらだろうが、望んでだろうがその世界に入り込んだ以上覚悟を決める必要があるのだよ。」
先ほど以上に目が鋭くなった。これが荒波の世界で揉まれた人の目だった。ユスフには持ち合わせていないもの。強気に出て対話をしていたが、そのような付け焼き刃ではどうともならないものだ。
「もうマクドネルの話は良いかね?マクドネル君については詳しく話すわけにもこちらもいかないのでは」
そうオイゲネに問いかけられたユスフは頷くしかなかった。
当初はユスフは自身が持つガンと側にとってかなり不利になるものを使って自分の身の安全を保障しようと考えていた。そしてそれはうまくいくと考えていた。しかしいまの件でそれは果たしてうまくいくのか不安を覚えずにはいられなかった。
「さてでは本題に入ろうか?君は最も話さなけらばならないことがあるはずだ」
しかしユスフとてここまで来た以上引くに引けない状態だ。いくしかないそう自分に言い聞かせてオイゲネと話を続けるのであった。
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