突入3
第24話目です
エンジェルの拠点内部、そこではアギアがすでに数人のノールたちを相手にしていた。
「全員取り囲め!」
「「「了解」」」
アギアの周囲に包囲網が作られる。
「……」
しかし当の本人は相変わらず黙ったままであった。
「ふん!」
一人のノールは玉のようなものを取り出しそれを地面に叩きつけた。
プシューッという音を立てて煙のようなものが出てきた。
対竜人仕様の毒ガスだ。無論容易に手に入るものでは決してない。それはこれが軍事用であるという事、そしてあまり実用的でないという事だ。竜人は確かに強固な肉体をしているが、銃撃で傷を負わせることもできるし何よりーーー
アギアは無言のまま槍を構えるホワイトホーク社製“オーディン”。魔力を流すことによって強度が高まりまた、その内部にはショットガンまで内蔵されている。アギアの特注品だ。
それを三振り静かに振るう。
ブシャアア!!
ノールの血飛沫が飛び散る。
「……アンティトクスエンハンスメント」
ーーこのように魔法で容易に防ぐことが可能だからだ。
ギラリ!と部屋の奥を見る。壁の向こう側にリザードマン気配がする。どうやら待ち伏せしているのだろう。しかしアギアには全くバレバレである。
「トリプル・フレイムオブスピア。…トリプル・アイスオブスピア。」
アギアは魔法を唱える。すると三本の炎の槍と三本の氷の槍、計6本現れる。
ドゴオオオン!
アギアは壁ごとリザードマンを貫く。リザードマンは魔法に強い耐性があるが、どうやら相手が悪かったようだ。アギアはその耐性物ともせず、余裕で破ってみせた。
「ん?」
向こうから高速で接近してくるものがいる。
ガン!
その対象はアギアに向かって思いっきり剣を振りかざした。
しかしアギアは冷静にそれを受け止めて見せる。そしてふりはらったのち敵を確認する。
どうやら今度は3人の竜人が相手のようだ。全員竜の力を解放している。
ちらりとさらに奥を見る。そこには血だらけになったノールとエルフがいた。どうやらこいつらにやられたようだ。
「ふん」
ならば容赦する必要がない。思いっきり叩き潰すだけだとアギアは思った。
ーーーー
エレーナ達もアギアたちに続いてエンジェルの拠点へと入っていった。中の通路は広かったためが、カンメッロに乗ったままでは邪魔なため降りて侵入することにした。
「だいぶ落ち着いてきたのではないですか?二人とも」
「ええ、すごい落ち着いています」
本当に不思議な感覚だ。未だ恐怖心とかがあるはずなのにそれが客観視している気分だった。
「初めはそれでいいのよ。普通はそんな反応するものよ…あなたたちは決してダメなんじゃない。その感覚こそ本来大切なのだから……」
少し遠くを見るような目でエレーナはそう言う。
「まぁ今はそんな話をあまりしていられないですね。おそらくあらかた始末したと思いますが、まだ残党はいるでしょうし」
「そうですね、どこからやってくるかも分からないですしーー」
そう言い終える前だった。
ドン!!
壁が砕ける音がした。そして誰かがその奥の壁に叩きつけられた。
ーーアギアであった。
「大丈夫ですか!アギア!」
エレーナはアギアに近寄る。
「……来るな。まだ問題はない。然し少々厄介でな…」
そういっているアギアの視線の先にエレーナも向ける。
「竜としての力を解放した竜人ですか…それも3人」
エレーナはアギアが手こずる理由を理解した。
竜の力の解放は凄まじい力を発揮する、竜人の能力だ。身体機能は一時期的に全種族の中で最強となるほどだ。短期決戦では最も強いのだ。それが3人手を組めばそれは恐ろしい力だろう。しかし…
「やれやれこちらも竜の力を解放するべきかな」
アギアはまだ余裕があった。
「エレーナ手を貸してくれないか?あまりここで全力を使いたくないのでな」
「わかりました。二人は下がっていてください」
そういってエレーナはオートンヌを構える。
「はああぁ!」
メキメキと音を立ててアギアの体がより竜に近づいて行く。これが竜の力の解放だ。
「…さていくぞ」
ドン!!
アギアはおもいっきり地面を蹴った。脚力が強まったのか、その地面にはアギアの足跡がくっきりと残っている。
「ダブル・フレイムオブスピア」
「ダブル・アイスオブスピア」
「ダブル・サンダーオブスピア」
3人の竜人はそれぞれ魔法を行使する。
「マジックオブシールド」
魔法の盾によりそれらを防ぐアギア
「ワイルド・ダブルグラビテーション」
エレーナは3人の重力を二倍にする。それにより動きが鈍る。
「サンダーオブスピア」
アギアは再び魔法を行使する。しかしその魔法は発動しない。その代わりにオーディンにその力が集まる。
「ふん!」
「!!」
アギアは鈍くなった竜人の一人に槍を振りかざす。それに対応して相手は自身オブ機で受け止めようとする。
「グオオオオ!!」
しかしその電流は受け止めきれなかったようだ。さらに身体能力が上昇したとはいえ、この一撃は耐えられなかったようだ。
「うおおお!」
「がああ!!」
未だダブル・グラビテーションの魔法が効いているにも関わらず動けるのは流石竜人といったところだろう。しかし、その動きはあまりに遅い。
ドン!ドン!ドン!ドン!
残り二人にエレーナは魔力を込めた実弾を心臓と脳天に放つ。いくら竜人とはいえ、それは致命傷であった。
間も無く3人の竜人は人形のように動かなくなりそのまま倒れることとなった。
「すげぇ…」
「本当にすごいですねあの二人」
精神が安定しているせいか冷静に物事を観れた二人は吐き気をも様子こともなかった。
(でもこれくらいできるようにならないといけないんだろうな……)
これからのことを考えるとエルク達は口には出さなかったが、これくらいのレベルを求めているのはわかる。だからこそ果たして自分にはできるのかという疑問が謙也にはあったのだ。
そう思い悩みながらふと、後ろを向いた。
「!!」
そこには傷を負った人間がいた。その目には殺気があった、おそらく誰か一人でも道連れにする魂胆だろう。そしてそのターゲットはクリスティーネ。もうすでに彼女を殺すために剣を構えている。
(まずい!)
謙也は右手に集中する。
「避けろクリス!」
そう言いながら、謙也はクリスを押す。そしてクリスティーネを斬り殺すために振りかざした剣よりも素早く童子切安綱をふるった。
ブシャアアア!と血が流れる。
その人間は上半身と下半身が分離することとなった。薬のせいかひどく落ち着いている自分がいる。しかし恐怖と言うべきかよくわからないものがつっかえているのも事実。どう表現すべきか謙也にもわからない。
そしてこれが謙也の初めての人殺しであった。
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