テロリスト達
さて今回はテロリスト側の視点です。
久しぶりにあいつも登場だ。
リーベ王国とガント人民共和国の間に位置する風桜山、そこに小さいながらも数十人が窮屈することなく収容できるほどの大きさであった。
その中でとりわけ豪華な机と椅子を備わっている部屋があった。そこにはリザードマンとエルフがいた。
「……以上で、今回の研究の報告を終えます」
リザードマンはどうやらキメラの研究について報告をしていたよであった。それを聞き椅子に座っていたエルフは静かにその報告を聞いていた。
「ありがとう、下がっていいぞ」
「かしこまりました」
エルフがそう促すとリザードマンはそのまま部屋を後にした。
「ひとまずある程度の成果が出たな」
そう言って一息をつくエルフーーその名はマクドネル。テロ組織エンジェルのメンバーの一人でこの拠点を任されているリーダーだ。
「このままいけば、エンジェルの目標のに少しながら近づけますね」
「でも、まだやることも多いし苦労が尽きないわよ」
そこには二人の人間がいたユスフとニコ、こちらもこの拠点でNo.2とNo.3に位置する人間だ。
「それに君たちの目的もね」
マクドネルがそう言うと、二人とも少し黙る。
「別に責めるわけでもない。むしろこのように我々の力が君たちの役に立てるのならそれは喜ばしいことだ。エンジェルとは我らの主に近づこうとするための組織。そしてこの世界をよりよくする組織だ。ニコ、ユスフ、正しい力に頼ることは素晴らしいのだ」
うっとりとそう語るマクドネル。自分は絶対的に正しいと信じて疑うことのない姿勢だ。
(何が正しい力だよ……)
ユスフは吐き捨てるかのように言った。ここに所属するのも別に望んでのことではない。ユスフはガント人民共和国にある。国立ガント大学にニコとともに通う学生であった。ニコとは恋人関係である。しかしある日ニコには心臓に病を患う事となった。それは突然出会った。医者には持って数日だろうとも言われたほどだ。この時ユスフは救いを求めた。誰でもいいから助けてくれと。その時だった、ある男があわられたのは……
「ずいぶん捗っているね〜」
陽気な声が聞こえてくる。
(奴か……)
ユスフはこの声の主に心当たりがあった。
「あぁ君か。よくきてくれた我がアジトへ!」
マクドネルは親友を迎えるべくその声の主に近づいた。そこにいたのは全身黒い衣装で纏った男であった。
ーーー道化だ。
この男はニコが突如不治の病に侵された時現れ、彼女の病を一瞬で治した。はじめ見たときは信じることができなかった。現代の医学では不可能と言われたことを彼はやってのけたのだ。それが信じられなかった。しかし、彼は対価を求めた。
ーーーマクドネルという男がいるから、そこの元で働いてくれないかい?断れば再び恋人は苦しむけど?
にこやかにそう要求した。断れなかった。断れば再び彼女が苦しむこととなる。であるならばユスフが断ることなどできないのだ。
それからこの道化の紹介の元マクドネルと知り合ったのだ。正直全く価値観が合わず、正直この男の元で働くのはユスフはごめんであった。しかしそれをぐっとこらえて働くことにした。
それからほどなくしてユスフの元にニコがやってきた。
ーーー私も働く!もともと私の問題だから
その目には強いものがあった。ユスフは違う意味で断れなかった。そして二人でマクドネルの元で働くこととなり今に至るというわけである。
「本当に君の知識は役に立つよ。おかげでまた研究が一歩前に進んだよ」
ユスフの気も知らないで呑気に道化と話すマクドネル。
「いやいや君と僕の中だ。こっれぐらい例には及ばない。僕自身君たちには是非成功を収めて欲しいしね」
「それで何の用できたのですか道化様は?」
少しキツ言い方でニコは道化に問う。
「命の恩人にそれはないじゃないかい?まぁいいけど……」
あまり気にしてないよう道化は言う。
「さてここにきたのは、警告だよ。もう間も無くここにリーベ王国の部隊がやってくる。すでに君たちの情報も掴んでいるようだ」
「何!」
ユスフは思わず声を荒げる。
「うろたえるな、ユスフ。みっともないぞ」
余裕の表情を浮かべるマクドネル、何か自信でもあるのだろうか?
「なぜそんなに余裕の表情をしているのですか!私たちの名も知られていると言うことは既に指名手配は済んでいるいるに決まってます。早く逃げないと全員掴まんですよ!」
ニコはかなり慌てふためいて、すぐさま脱出すべきだと主張する。
「脱出はするさ。しかし慌てて逃げるのはよろしくないだろう。この時のために脱出用の通路は用意しているさ」
「それも無効に知られているかもしれないですよ」
ユスフは一つの懸念を提示する。
「それはつまりこの中に裏切り者がいると言うことかね?」
先程までの笑みが消え鋭い目つきでユスフを睨む。
「可能性は考えるべきです」
(道化は怖いがマクドネルはさほど怖い存在じゃない。こいつはガント人民共和国のお偉いさんの息子だとか聞いていたが、こんなテロ組織にいる以上関係ないしな)
「それはありえないな。この私が信頼をおける人間を選んで少数精鋭でこの仕事にあったているのだ。裏切りが出るはずなかろう?」
「……左様でございますか」
これ以上視聴しても無駄だと感じたためかユスフはこれ以上何も言うことはなかった。
「さて、喧嘩は終わったかい?ならこれからどうするのか一応聞いておこうかなぁ〜」
道化はさも無関係とばかりの余裕であった。実際自分は関係ないのだろうが……
「ここの地下に閉じ込めてあるキメラたちを放つ。スケルトンスネークやフレイムジラーフなどの上位種もいる。それらを数体放てば相手も手こずるだろう」
「しかし、近頃そのキメラを倒されたとの報告もあります。つまり其れ相応の実力者が今回の部隊に加わっている可能性が高いはずですが」
「無論それだけじゃない、ここにはリザードマンとエルフ、そしてノールがいるが、研究者以外は全員実践経験を持つものだ。陸の戦いなら問題ない」
「空爆の可能性はどうですか?」
ニコはもう一つ重要な懸念を出す。
「ここはリーベ王国とガント人民共和国の境、ただでさえあまり空爆は良い印象がないのに、こんな場所で撃てばガント側からの抗議がくる。つまりそうやすやすとは撃てないさ。せいぜい戦闘開始前の威嚇として一発これは打たれるかもしれないがな。つまり私たち三人が逃げるだけの時間は稼げるさ」
「……」
自分だけは確実に助かろうとする精神はリーダーとしてどうなのかという疑問がユスフにはあったが、彼自身ここで捕まるわけにも死ぬわけにもいかないため黙っていることにした。
「他にもう何もないな?ならば二人とも逃げる準備をしたまえ、準備が終わり次第ここの部屋の隠し通路から脱出するぞ」
そうマクドネルはいいユスフ達に背を向けた。
「それじゃぁ、僕も怖いからさっさと帰ることにするよ」
そういい道化はさっさと”ゲート”を使い、その場を去って行った。
「ねぇ、ユスフ……」
そうユスフを呼ぶニコの顔は罪悪感が浮かんでいた。仲間を盾に逃げる卑怯な自分がいるからだ。
「大丈夫さ」
ニコの恋人として彼女を元気づけるのはユスフの役目だ。だからこそユスフは自分自身にもある罪悪感、不安、恐怖それらを押し込め。懸命に優し声色でニコに語りかける。
マクドネルの姿勢に不満が二人にはある。しかし今はそんなことを言っている状態ではない。これから時間稼ぎとなる者達に対する罪悪感は凄まじい。しかし二人して生き延びなければならない。だからたとえ卑怯者だとかクズだとか罵られようと逃げ延びてみせると覚悟を決めるユスフであった。
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