不安
さあ新章スタートしたことだし、頑張って毎日1話は更新したいな〜できればだが…
「よく来てくれた。すまないが君たちと会うのが初めての人もいるのだ。悪いが自己紹介をしてやってくれないか。」
「承知しました」
「……」
エルクにそう促され、エルフは丁寧にその願いを了承したが、竜人の男は黙ったままであった。
「エルフ族のエレーナです。歳は20になります。いまエルク様の元で働かさせてもらってイルミですね。どうぞよろしくお願いします。」
そう言うのは長い白髪が特徴の女性だ。またその髪に合わせてか白を基調とした服装もかなり似合っている。さらに謙也にとってはエルフの特徴である長く尖った耳も目立つ。そしてどこか上品な雰囲気を漂わせている女性だ。
「…竜人族のアギアだ。年は21、俺もエルクの元で働いている。」
対しこちらは背中に大きな翼を持った男だ。背丈は180cm程度、手には竜であることをうかがわせる長い爪、MP関節にも短いが頑丈そうな尖った爪が生えている。こちらは寡黙な男という印象だ。
こうして二人の自己紹介が終わる。
(俺たちもするべきだろうな)
そう判断し謙也は先頭に立ち自身も自己紹介することにした。
「人間族の加藤岡謙也です。歳は17になります。同じくエルクさんの元で働いています。よろしくお願いします。」
「人間族のクリスティーネ・ヴァレンティンです。16歳です。わたしもみなさんと同じくエルクさんの元で働いて来ます。よろしくお願いします。」
謙也に続きクリスティーネも自己紹介をした。
尚この世界ではまず種族を言うのだ一般的だ。また重要なことだが、違う世界から来たことは同じ境遇の人間にしか話すことを禁じられている。エルクが耳にタコができるまでそう言い聞かせた。当然面倒ごとを起こさないためである。
「久しぶりじゃないエレーナ」
「ええそうね」
リナとエレーナは親しい間柄なのだろう。にこやかに挨拶を交わしたことからわかる。
「さて本題に入ろうか。先ほどの述べた通り、今回の仕事は最近この辺りにキメラを放っている連中エンジェルの組織員十数名を捕らえることだ。無論全員を捉えることは不可能だ。なので最低目標としてマクドネル、ユスフ、ニコこの三名だけは確実に捉えることとする。」
「…他の連中は?生きて捉える必要はないと判断しますがよろしいですね?」
サラリとアギアはそう言う。まだ慣れない謙也とクリスティーネはその言葉に恐怖の色を顔に浮かべるが、リナとエレーヌはそのことに気づいたが、この場で声をかけるわけにもいかないので無視することに決めた。
「投降する機会は極力与えてやれ、一方的に殺しにかかるのは国際的な義務に違反する。それは評価を落としかねない。…そうだな、第二の目標としてそれ以外の下っ端も数人捕まえることとしよう。そうすれば少なくとも表立って文句を言う奴は少なくなる」
感情を表に出さず、まるで覚える為だけに歴史の教科書を読み上げてるかのようだった。
(やはり、自分とは世界が違う)
同じ道化によってこの世界に連れてこられたものだが、そこでも住んできた期間がその差を開いたのだろう。
(俺は果たしてあれほど簡単に割り切れるか?人殺しだぞ)
答えは否と出す謙也、正直場違いであるとしか感じられない。クリスティーネもそうだろう。
(大体なぜ俺はここにいるのだ?)
全くもって今更な話だ。ここにいるのは謙也が言ってしまえば身元不明者でかつ強力な武器を持つ危険人物。何も知らなければ間違いなく暖かい寝床で寝ることなぞ夢のまた夢のようになるだろう。それを保証するためにエルクが手配し、その口実としてその下で働く必要がある。でなければ他の連中らに誤魔化すのは難しい。
だが、悲しいかな謙也はあまりその辺のことを理解していなかった。いや理解していても感情が追いつけない。謙也がふとよぎった思いをあまり責めることも酷な話かもしれない。
「エレーナ、君は謙也君とクリスティーネ君の護衛を頼む。彼らは見学だからな。それと君が指揮をしているEグループを召集しておいてくれ、彼らにもこの仕事に参加してもらうからな。」
「承知しました。またEグループの召集はすでに完了しております」
「流石だ、仕事が早い」
謙也の悩みなどつゆ知らず、エルクは話を進めていく。
「しかし、悪いなエレーナまだ今すぐに出発するわけではないのだ。出発は二日後だ。悪いが彼らに待機するよういっておいてくれ。仕事を増やしてしまって申し訳ないな」
エルクは少し申し訳なさそうにそう言う。
「左様でございますか。しかしエルク様お気になさらず、その程度仕事が増えても問題ありません。今すぐ伝えてきます」
「うむ」
そう言ってエレーナは「それではまた後ほど」と皆に挨拶をしたのち部屋から出て言った。
「さてエレーナに向けて言ったことだが、出発は二日後だ。各自準備をしておいてくれ、その間何をしてくれても構わない。話は以上だ」
そうエルクが言うと、ようやく終わったかと言わんばかりに背伸びをして人志は出て言った。アギアも無言で颯爽と出て言った。
「それじゃあ、私も行くね」
リナもどうやら出て行くようだ。
「あぁ、そうだ謙也君とクリスティーネ君」
「はい、なんでしょうか?」
「なんですか?」
呼ばれた二人は個々に返答した。
するとエルクが立ち上がって。
「…正直自分たちがなんでこんなことに巻き込まれてしまうのかと思っているのかもしれない」
「いえ、別に私はそんな…」
すぐさまクリスティーネは否定する言葉を返すが、
「そう思ってくれるなら嬉しいが、そうはいかないだろうやはり。しかし言っておきたい。どのみち我々は平和にのんびりと暮らしてくのは難しいのだ。毎日辛い日々を暮らしていかなくてはならないというわけではないが。やはり難しいのだ」
「どう言うことですか?」
謙也はそう問いかける。
「そのうちわかる。もしかしたら今はいい訳にしか聞こえないかも知れない。それならそれで結構。しかし君達の生活は保障しよう。私が責任を持とう。…これだけは言っておきたかったのだ」
そう言い終わると「時間を取らせて悪かった」と言って、椅子に座った。
(あの言葉に嘘はなかった)
なぜかわからないがそう確信できた。そしてその姿勢に少し尊敬の念を抱き、少しばかり心が軽くなった。
「先ほども言ったことだが、出発は二日後だ。二人とも街へ行って気分転換してみたらどうだ?ここの世界には我々がいた世界にはなかったものが色々とみられる」
エルクの気遣いだろう。何もエルク自身謙也たちに後ろめたさのようなものを全く感じないわけではない。だからこその気遣いだ。
「そうですね。それじゃあ少し今から行ってきます」
「私も一緒にいいですか?」
「もちろん」
クリスティーネのような可愛い女の子と一緒に行くのは男にとって嬉しいものだ。迷うことなく謙也は承諾した。
(少し、今回の仕事は忘れよう)
心が多少軽くなったとはいえ、まだまだ恐怖や不安はある。それを忘れる努力の一つとして、気分転換に出かけるのであった。
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