種族
さあいよいよファンタジーの醍醐味でもある人間以外の種族も段々登場します。
「みんな集まったか」
高級な椅子に座り、机に手を置きながらそう言う男は、エルク・マジソン。エルクは周りを見て確かに四人遅れず集まっていることに満足したのか小さく頷いた。
「それで何の用?随分久しぶりに集めて」
リナが先頭を切って会話を切り出した。確かに謙也たちがこの部屋で、何なら謙也に関してはエルクを見たのは初めてキメラ討伐に出かけて以来であった。
「何そろそろ二人も慣れてきたと思って、次に移ろうと考えて呼んだのだ。皆『エンジェル』をおぼえているな?」
そう言われ皆当然とばかりに頷いてみせた。
「そろそろこの一帯にキメラをばら撒かれるのはうっとおしいと思ってな。それでこれ以上キメラを増産されないよう、検挙しようと思う。」
ニヤリとエルクは言った。
「居場所は分かっているのですか?」
人志は問う。
「もちろん、場所は隣国ガント人民共和国と我が国、リーベ王国の間にある山風桜山にある。首謀者の名はマクドネル、ユスフ、ニコの三名。下っ端合わせて計十数名程度の小規模だ。放っていたキメラは大したことがなかったが、こいつら自身は結構厄介だ。」
サラサラとエルクは答えていく。
(なぜこんなに情報が集まっているのならもっと早く行動できたのでは?)
謙也はついそう思ってしまう。
「そこまで分かっているのなら、幾ら謙也君たちの経験を積むためとはいえ野放しにしすぎじゃない?」
「あらかじめ一ヶ月と言ったはずだが?」
特に悪びれもせずそういう。
「そうだけど…」
リナは少し悔しそうな表情をする。
「ですがエルクさん、そもそもキメラの製造自体『世界安全機構』のルール違反です。それも割と重大な、それを許しているとなるのはあまりに問題はないですか。」
人志がリナに助け舟を出す。世界安全機構、無論謙也も知識として備わっている事項だ。言ってしまえば前の世界の国際連合と似たようなものだ。それにより様々な規定が定められる。その中に一切のキメラ製造を禁止とするという条項がある。それを公然と破っているのがテロ組織『エンジェル』だ。ゆえにその組織が最も問題だが、それを責任ある立場で放置するのもやはり問題なのだ。
「…確かにそこは痛いところだ。」
エルクはそう認める。
「相手自身は結構厄介だと言ったろう、奴らがいるところは先ほども述べたが、隣国との間にある山だ。我々があまりしゃしゃり出ていくとされまた問題なのだ。現ガント人民共和国の連中に色々文句も言われたしな。奴らはそれをわかっていてそこに拠点をつく他のだろうな。その間に色々と何か準備をしているそうだ。それについては確認できなかったが…そういう事情もあって一ヶ月と言ったのだ。まだ半月に縮めただけマシだと思ってくれ。」
はぁと深くため息をつく。相当面倒なことがあったのだろう。そう言われると皆何もいえないので、リナも人志もおとなしく引き下がった。
「そ、それで私たちは何をすれば良いのですか?」
クリスティーネが場の空気を読んでか質問を投げかける。
「あぁそうだな。人志とリナはキメラの対応だな。どうせ奴らは捕まえに来たら抵抗するに決まっているからな。」
「わかったわ」
「承知しました」
「俺たちは?」
謙也は問う。
「二人は見学だ」
「け、見学ですか?」
クリスティーネが戸惑ったように言う。二人とも自分たちにも仕事が振り分けられるとばかり思っていたため、この反応は仕方のないことだ。
「あぁ、それも近くでな。…それなりの覚悟をしておけ、おそらくキメラ狩りより精神的にくるぞ」
エルクはそう警告する。その言葉に嘘偽りはないと二人は確信した。それだけの重みを感じたのだ。
「なぜ精神的にくるのでしょう?」
その言葉を疑ってはいないが、理由は聞いておきたいがために謙也は質問をしたのだ。
「人、それにそれ以外の種族も含めて何人か死ぬはめになる可能性が高いからな。」
「「!!?」」
さらりとしかしどこか力の入った言葉でエルクは言いのけた。
(人が死ぬ…)
謙也は恐怖に近いものを感じた。おそらくクリスティーネも感じていることだろう。だが、考えてみれば当然かもしれない。今から小規模とはいえテロ組織のアジトの一つに突撃するのだ。そこでは戦闘が繰り広げられる。となれば当然死者が出て当然だ。むしろ死者が出ず平和に誰一人死なず解決する方がおかしいのだ。
「だからこその見学だ。いきなり仕事を振り分けても失敗する可能性の方が高いからな。」
(いきなりとんでも無いこともない話になってきた)
謙也の心に再び初めてキメラに襲われた時の恐怖心、いやそれ以上のものが襲う。
「他の種族もいるのですか?」
謙也の気も知らず、いや気にしていたらきりがないのかもしれないが。人志は話を変えた。
「あぁ、エンジェルは多種族からなるテロ組織だ。竜人、エルフ、オーク、獣人、リザードマン、ノールなどといった種族から構成されている。無論今回のアジトにも少なくともエルフ、オーク、リザードマンは確認されている。」
「…マジですか」
少しうんざりしたかのように人志はいう。
種族、この世界の大きな特徴の一つであるものだ。謙也自身この半年は部屋と仕事現場を行き来するばかりであまり街へ行けていないが、それでもちらりと何ならこの施設でも見たことがある。
オークは人間よりも大きくかつ筋肉が発達している。それゆえ近接戦闘が得意とされている。多くは大工などの仕事で生計を立てているが、中には学者になるものもいるので知能が低いをいうのは割と偏見である。
エルフは多くは魔法適性が高くかつ知能も高い。その反面筋肉の発達は全種族の中で一番遅い。しかし、普通に過ごす際はあまり気にしないことが多いため本人たちもあまり気にしている人は少ない。魔法が得意なことからその分野で職を見つける人が多数だ。
獣人は最も人間に近い種族だろう。なにせ人間に猫の耳や犬の耳などがついているといえば分かりすい。そのため獣人はそれぞれどこか人間より優れた機能を有する。例えば犬の鼻を持つ獣人は嗅覚が優れているなどだ。基本的に人と変わらないため割と職種も偏りはない。ただ魔法適性はあまり高くない。
ノールは二足歩行の犬型の種族だ。集団行動を好み得意とする。魔法適性もそれなりで、何より脚力がかなり発達しており、瞬発性が全種族の中で最も優れている。それらの特性を生かし軍隊に所属する者も多い。
リザードマンは二足歩行のトカゲの姿をした種族だ。こちらはバランスよく筋肉が発達しており、軍隊でも重宝される。また知能も低くはなく学者になる者もいる。また特徴としては魔法に対する耐性が高い。つまり魔法が効きにくい体質を生まれ持ってあるのだ。無論これは個人差がある。
そして竜人は人の形をした竜である。そのため飛行することも可能であり。皮膚も頑丈。魔法適性もエルフよりは劣るが高い水準である。また竜化することで、さらに身体能力を向上できる。しかしそれはかなり体に負担をかけることとなるので地震の寿命を縮める結果となる。また飛行もそれに類似するためあまり長時間できないなど欠点もある。職種は獣人と同じく偏りはあまりない。
さて話は戻るが、人志が少し嫌そうな顔をしたのは、リザードマンがいるからだろう。先ほど述べた通り、魔法が効きにくく正直人志とは相性が悪いからだ。
「…どんな時でもいつも通り対処できることが大切だ。これも経験を思って諦めるんだな。」
エルクは人志が嫌がる理由は当然分かっているので、そう言い聞かせた。
「それで、私たち以外にもこの仕事に参加する人がいるんでしょ?聞いた話では私たちだけでは人手不足そうだしね。」
リナはエルクにそう聞く。
「ああそうだ。だがもう少し待ってくれ、そろそろ着くはずだ」
そうエルクがいい終わると、後ろからガチャッと音がした、扉が開く音だ。どうやらちょうどいいタイミングで今回の同僚が到着したようだ。
「お待たせして申し訳ありませんでした。エルク様。エレーナとアギア只今到着しました。」
「うむ」
そう言ってエルクはその声の主の方に視線を向けた。それに釣られ謙也たちもそちらに視線を向ける。その先には竜人とエルフがそこに立っていたのだ。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
感想よろしくお願いします。




