フレイムジラーフ
さぁ今度は謙也とクリスティーネの出番だ。
「すごいです。かっこよかったです!」
クリスティーネは少し興奮気味にそういう。
「だろう!なかなかにきまっていただろう。」
(人志さんはどうも調子にのりやすいひとなのだなぁ。)
人志とクリスティーネのやりとりを見て、そう思う謙也であった。
「……少し落ち着きなさい。まだ一匹残しているのだから。」
リナは少したしなめるように人志に対していう。
「それもそうですね。すみません。」
人志自身もあまりよろしくないことを悟ったのだろう、リナの言葉を素直に受け入れた。
「リナさん、あと一匹というのは……」
「フレイムジラーフね。炎を得意とするキメラ。しかもそれなりに素早い。今のあなたではなかなかの強敵よ。」
謙也の問いかけにリナがそう答える。
「そうですか……」
リナの問いに少し顔を歪ませる謙也、やはり不安があるのだ。
「おいおい、そんなん顔をするな。今からお前達二人がメインで戦うのだ。シャッキとしろよ。」
「でも、まだ私たち未熟ですよ。」
クリスティーネも不安があるのか、あまりやりたくないように聞こえる。
「今回はあなた達の経験を積むことがメインなの。だからあなた達が戦わなければならないのよ。勿論、あたし達もバックアップをするけれど。」
「その通り、一度怖い相手と戦えば、意外とタフになっていくってもんだ。まだ恐怖心があるようだけど。それをうまくコントロールしていくようになることだ必要だ。そのために必要なのだ。」
「それにさっきも言ったけど、私たちが守ってあげるは。・・・私の武器アイアスの盾はどんな攻撃も防いで見せるは。防御は任せなさい。あなた達は勇気を振り絞って戦うのみよ!」
リナと人志はそれぞれ力強い言葉を送る。
「……わ、わかりました!私やります!」
クリスティーネは力強く答えた。
(彼女は見かけによらず強い子なのであろう。純粋で可愛く強い。・・・これは負けていられないよな・・・)
謙也は正直まだ不安がある。しかし意地というものがある。なのでここで返答する言葉は決まっていた。
「俺もやってやりますよ。見事恐怖とやらをコントロールしてやろうじゃありませんか!」
「それじゃあいくか!」
二人の返事に満足してか。人志は颯爽に森の中をさらに進んでいく。
「どこにいるのかわかるのですか。」
「ええ、あらかじめ目撃情報を得ている以上。意外と探すのは簡単よ。」
「例えばほらあそこを見てみろ。」
人志の指差す場所には炭となった、木々があった。
「結構炎をまき散らすやつだから、ああいう目印は多いのだ。しかも目立つ。」
「なるほど。」
謙也は少し感心したようにいう。
そのまま歩き進めると、だんだん先ほどのような目印が多くなっている。近くにいる。そう考えることは、まだ日が浅い謙也とクリスティーネにも容易であった。
「みんな構えて。いるは。」
リナの視線の先には全長2.5mはあるであろうキリンであった。しかし全身に炎を纏い、なるほどフレイムジラーフと呼ばれるわけだ。
「モヴァアアアアア!!」
こちらに気づいたのか、フレイムジラーフは叫びながらこちらに迫ってきた。
「さあ二人とも出番よ!」
「頑張ってこい!」
リナはアイアスの盾を人志は先ほどの拳銃二丁を構えながらそういう。何かあったら守ってやるという意思表示なのであろう。
(……少し気が楽になったな。)
そう素直に感じた。
「コールドブレス!」
クリスティーネは手をかざし魔法を唱える。
ヒュォォォ!!といういかにも冷たそうな音が流れる。炎を得意とする相手だから、氷系統の魔法で戦う、決して間違っていない戦法だ。しかし・・・
「ブルルル!」
一瞬炎は弱まった、しかし動きを止めるほどではなくそのままクリスティーネに向かってきた。
ヒュン!ヒュン!
すかさず謙也がフォローに入った。童子切安綱の真空刃が襲う。
フレイムジラーフの周りの炎が集まる。そして、真空刃を見事受け止めた。
「……マジで?」
驚いたように謙也はいう。以前はホークライガーをこの真空刃で一撃で仕留めたのだ。それを受け止められたのだ。それも二発。
フレイムジラーフは標的を謙也と変えた。
ゴオォ!!
『フレイム・ボンバード』巨大な炎の塊を砲撃するかのように相手に打つ魔法。炎系統を得意とするだけあって、魔法もかなり高ランクだ。
(やばい!!)
一直線に向かってくる炎に謙也は交わすほどの度量などなかった。ただ向かってくるものに目を瞑ることしかできなかった。
しかし……
「ふん!!」
その攻撃はリナが謙也の前に立ち、そして防いだ。
「目を閉じちゃダメよ。謙也くん。……死ぬわよ。」
冗談抜きでの忠告であった。
「は、はい!」
思わずそう答えた謙也であった。
「確かに怖いかもしれないけど目だけは閉じちゃダメよ。目を開け、どう対処すべきか考えること。それが大切よ。」
(これが場数の違いなか…)
わかっていた差とやらを感じた。
(このまま情けないままはお断りだ)
謙也はさっきより気合を入れて、再び体勢を立て直す。そして攻撃態勢に入る。
「ダブル・グラビテーション」
人志が先ほど使っていた魔法だ。相手の重力を二倍にする高ランク魔法。
ドン!!と音がする。フレイムジラーフは地面に埋まるように沈んでいく。
「かはっ」
しかし代償に謙也は肺の中の酸素を一気に失う。やはり謙也が使うには無理があったのだ。
「コールドブレス!」
しかし謙也のおかげで隙ができた。その隙にクリスティーネは再び魔法を唱えた。狙うのは足元のみ、全身に狙ってはさっきと同じ結果になると判断してのことだ。
ピキピキと脚が凍る音がする。どうやらクリスティーネの判断は間違いではなかったようだ。
「うおおおおおおおお」
謙也は雄叫びをあげながら、フレイムジラーフに突っ込む。そこにはもう迷いなどない。
ダン!!
魔法によって底上げされた脚力によって前の世界では考えられないほどの高さまで飛んで見せた。
そしてリナがスケルトンスネークとの戦闘で見せたように、頭上から思いっきり刀を振り下ろした。
ブシャアアアア!!という激しい水音がした。フレイムジラーフの血だろう。
「うぁ!」
その勢いは強すぎたのか謙也にも降りかかった。
「大丈夫ですか!」
クリスティーネは心配そうにそう尋ねる。
「ああなんとか…」
謙也は気だるけそうに答えた。
(力任せに剣を振るったから、両手がめちゃくちゃ痺れるな…、しかも返り血まで浴びるし)
「お疲れ様、最後はなかなか決まっていたぜ。おかげで返り血を浴びる羽目になったが…、まぁすぐになれるさ」
人志は謙也を気遣うようにいうが、
「返り血を浴び慣れる羽目にはなりたくないですよ…」
これからもこういうことがある事を示唆するようなことに些かうんざりしたかのように答える。
「そりゃそうだ」
しかし人志は気づいていないのか、それだけ行ってクリスティーネの方へ向かい、クリスティーネを謙也以上に褒め称える。下心満載といった感じだ。
(なんだかなぁ…)
別にこれで気分を害するほどでもないが、この扱いの差に何も感じないわけでない。しかし、人志の気持ちは一人の男としてわからないわけでもなくなんとも言えないのであった。
「お疲れ様。人志ももう少し労ってやればいいのに」
「まぁ、そこは諦めてます」
そう言い互いに少し苦笑いをする。
「それにしても本当によくやったわ。最後はちゃんと目もとじなかったし、きっちり迷いなく踏み込めた…本当によくやったわ。」
そう言いリナは謙也に優しく微笑んだのだ。
「!!…そ、そうですかね?」
「ええ」
リナに急に微笑まれ、謙也は一瞬言葉を失った。なんとも優しいお姉さんのような微笑みだった。年上の女性にこのように接することがなかったせいか、反応に困ったのだ。
(ほんと改めて見れば綺麗な人だ…)
改めて彼女の容姿に注目させられる。案外悪くない状況下もしれないなどと邪な考えがよぎるのも無理のない状況なのかもしれない。
「ほら、今日のところは疲れているだろうし帰るわよ。人志もクリスティーネちゃんに鼻を伸ばしていないでさっさと帰宅する準備をする」
そう言われ人志も黙って従い、二人もいそいそと帰る準備をするのであった。(といっても帰り支度などほとんどないのだが)
「帰ったらうまいものでも食いに行こうや、謙也。特別だ、おごってやる」
ニッと白い歯を見せ、人志はそう言う。
(この人は正直イラっとするときもあるが、悪い人ではないよな…)
若干失礼かもしれない評価だが、間違っている気がしないので謙也は改めるつもりなどない。
「ええ、是非いきましょう」
この世界に来てまだ食事にありつけていなかった。果たしてこの世界の食い物はうまいのであろうか。謙也は少し元気になり。軽い足取りで先ほどの道を戻っていくのであった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
今までより若干更新速度は遅くなりますが、遅くなりすぎないよう頑張ってまいりますのでよろしくお願いします、
最後に感想いただけたら嬉しいです。




