襲撃! 聖騎士団VSゴーレム部隊
メイドちゃん達の話より先に、平行してちまちま書いてた聖騎士団サイドの方が完成してしまったので、予定を変更してこっちを先に投稿しました(つД`)<メイドちゃん待ってた方々はごめんなさい……
アナザーによる指示が終わった後のオルガ率いる聖騎士の最後列にて――
「くっ…! いったい何なんなのだこのバケモノ共は!?」
オルガ達が戦っているのは、黒い鋼の球体に3本の腕が生えた光る赤い瞳の異形の存在。
その正体は彼らを発見した<影忍者>が<空の花園>へ支援要請を出して、ギルド基地から<錬金砲>を用いて発射された<ゴーレムボール>である。
体力は低い代わりにコストが非常に安いので、主に囮や足止めとして使われることが多く、例えるなら特撮ヒーローで言うところの素手で簡単にやられる戦闘員ポジションである。
「手を休めるなオルガ、まだ降って来るぞっ!」
「わかっておりますアルター殿! しかしこの数はキリがない!!」
アルターの忠告通り、空からはゴーレムボールが次々とオルガ達のいる後方部隊へ雹のように降り注がれる。
なお前線部隊は、ゴーレムボールの奇襲によってオルガ達がいる後方部隊とは完全に分断されており、物資ごと送り出した増援部隊は命令通り忠実に前線へ向ってしまったのが裏目に出てしまい、人材も物資も不足してしまった後方の状況を知らずにニアフォレスト村への攻撃に専念してしまっていた。
「吹っ飛びやがれェー!!」
『ピキキッ…! <ショートレンジカウンター>』
「うわっ!?」
カリンが右ストレートでゴーレムボールを殴ろうとするが、近距離の直接攻撃ならば100%の確率で相手の攻撃を無効化して自信の攻撃力に相手の攻撃力を加えたダメージを与えることができる<ショートレンジカウンター>で反撃されて吹き飛ばされてしまう。
『ピキキキピキーン……<スマッシュ>!』
「……っ!」
ゴーレムボールは倒れこんだカリンに追撃しようと歪な機械音声を出しながら大振りのパンチを放とうとする。
「そこだァー!!」
しかし、接近戦に長けたカリンはその隙を見逃さず、すぐに体勢を立て直して怒りの咆哮を上げながら渾身の蹴りを直撃させる。
ボカァーンッ!!
その飛ばした方向にいた他のゴーレムボールが次々と巻き込まれてなぎ倒されていく。
「はぁ…はぁ…、意外と動きが単純で助かったな……」
カリンの言う通り、ゴーレムボールは<近距離>スキルの中でも初歩的なものしか使えず単調な戦闘しかできない。
しかし、<錬金砲>で<結晶解凍>された影響でサイズ補正がかかっているので、本来はサッカーボールサイズの本体部分が直径1mほどに大きくなっており、腕部まで含めると軽く人間の身長を超えるので、相手の恐怖を駆り立てるスパイスの1つとなっていた。
「く…来るなバケモノ!」
「放せ…っ! 放せぇ~!!」
聖騎士の何人かがゴーレムボールに捕まり、その腕で今にも絞殺されそうになる。
「でええええいっ!」
仲間のピンチを察したアルターが聖騎士を拘束しているゴーレムボールの腕を1本切り落とすが、まだ残っていた腕によって助けた聖騎士が再び拘束されてしまう。
「くっ、いい加減にしろ!」
ゴーレムボールのすべての腕を切り落としても、その間に新たなゴーレムボールが空から降ってきて、それに再び聖騎士が拘束されてしまうので、完全にいたちごっこと化していた。
「ハァ…ハァ……。いったいどうすれば――」
「任せて!」
ガッ!
疲労が見え始めたアルターの後方から、エレインの放った矢がゴーレムボールの赤い瞳に刺さると、まるで糸が切れた操り人形のように動きを止めて聖騎士の拘束は解けた。
「助かったよエレイン。けど、どうしてヤツの弱点がわかったんだい?」
「偶然よ。よく狩りでデカい獲物を相手する時は先に視力を奪うために目を射るんだけど、たまたまそれが相手の急所だっただけ」
エレインは狩人の家系でもかなり上流に位置し、厄介で凶暴な肉食獣の討伐依頼が日常的に送られてくる。
そのため、彼女自身も肉食獣の討伐を引き受けることが多く、今回はその経験が活きた結果、ゴーレムボールを一撃で仕留める術を見出せたのであった。
「ふーん……」
「ウェンディ、どうしたんですか?」
エレイン達の様子を見て何か閃いたかのような声を漏らしたウェンディをイリーナが気にかける。
「イリーナ、今から<即興魔法>を使う……。いつもの合図をしたらみんなを下げて……」
「う…うん、わかったわ!」
イリーナにそう言ってウェンディは後方へ下がり、スタッフを前に構えて魔法の詠唱を始める。
彼女の言う<即興魔法>というのは、一定の法則に従ってイメージの籠った言葉を魔力に込めて詠唱することで、円状に文字のような模様が描かれた魔法陣が次々と囲むように展開され、その場でオリジナルの魔法を作り出すという代物だ。
一見すると汎用性があって便利そうではあるが、法則から外れすぎる言葉を並べると魔法陣が消えたり発動しても不具合が生じやすく、魔法陣が大きくなればなるほどを展開に必要な魔力も大きくなるので一般的に使われる魔法よりも燃費が悪く、イメージを少しでもハッキリとしたものにする為に必然的に並べる言葉の量も多くなってしまうので詠唱が非常に長くなりやすいという、あまりにもピーキーすぎる上級者向けの方法なので使い手はかなり少ない。
『廻る季節の四つ柱の一柱、極寒を運びし冬の精霊、その偉大なる力を一部をこの地へ――』
『ピキキキー! <チャージアタック>!!』
『<チャージアタック>!!』
『<チャージアタック>!!』
ウェンディが詠唱を始めた途端に、無数のゴーレムボール達が彼女めがけて突進する。
<ファンタジーテールオンライン>では、スキルを準備し始めた相手を妨害するは基本中の基本であり、序盤のマップにいる敵NPCさえも戦闘中であればプレイヤーがスキルを準備しようとすると妨害してくる。それは味方NPCであるゴーレムボールも例外ではない。
「させんっ!」
猛スピードで迫り来るゴーレムボール達の前にオルガと数人の聖騎士が盾を構えて立ちふさがった。
ガツゥーン!
綺麗な金属音と共にゴーレムボール達が制止し、聖騎士達は無意識に冷や汗と共に「ふう……」と、ため息を漏らし、安堵するが――
『<チャージアタック>!!』
『<チャージアタック>!!』
『<チャージアタック>!!』
『<チャージアタック>!!』
『<チャージアタック>!!』
制止したゴーレムボールの後ろから、増援のゴーレムボールが後押しする形でさらに突撃し、再び聖騎士達が勢いよく押され始めてしまう。
その様子はまるで黒い雪崩のようであった。
ガッ! ガガッ! ガガガガガガァーッ!!
鉄製の靴が火花を散らしながら、聖騎士達の身体はどんどん後方へと押しやられていく。
「だ…ダメだ……!」
「このままでは押し潰され……」
苦痛と諦めの混じった息を漏らす聖騎士達の中、オルガはたった一人諦めの心を一切持たずに声高らかに叫んだ。
「私は聖騎士第三部隊の隊長、オルガ・ジャ・ソルだ! このような猪突に任せた攻撃、どうということはなァァァァァァい!!」
ガァーッ! ガガガガッガガッ…ガッ……
オルガは倒れそうなほどに身体を大きく傾け、足もほとんど側面が当たった状態で必死に踏ん張り続けたのが功を奏したのか、徐々にゴーレムボールの勢いが弱まっていく。
「とっ…止まった……!?」
ついにゴーレムボールの凄まじい突撃は止まり、聖騎士達は信じられないような表情を浮かべるも、オルガの表情は凛とした戦う騎士の表情を崩さなかった。
そんな彼らの足元からは土煙に交じって湯気が発生しており、ゴーレムボールの勢いの凄まじさが伺える。
「みなさん、射線を空けてくださーいっ!」
イリーナのかけ声に聖騎士達が振り向くと、そこには<即興魔法>によって発生した何重もの魔方陣に囲まれたウェンディの姿があった。
ウェンディは片足の爪先をパタパタと動かすことで、間もなく<即興魔法>の詠唱が終わることの合図にしている。
なぜ彼女はこれを合図にしたのかというと、声で合図しようとすれば<即興魔法>にその声が組み込まれてせっかく準備した魔法に不具合が生じ、手で合図しようとすれば魔方陣の魔力の流れが不安定になり魔方陣が消えてしまうからであった。
『狙うは鋼鉄の赤き瞳……穿て、<ホーミングブリザードニードル>!!』
コォォォォオオオッ!!
ウェンディの詠唱が終わると共に、魔法陣は彼女の持つスタッフの先端にはめ込まれているクリスタルに吸収され、それと同時に吹雪が彼女の後方から吹き始めた。
「……それだけ?」
長い詠唱にもかかわらず、ただの強くて冷たい風しか出なかったことに、この場の全員が呆気にとられた。もちろんゴーレムボールも含めて。
ドドドドドドドドドドドッ!!
『ピキーッ!?』
とつぜんゴーレムボールの弱点である赤い瞳に氷のつららが突き刺さった。
その後も次々とどこからともなく現れる氷のつららが恐ろしい速さでゴーレムボールの弱点をピンポイントかつ確実に命中していく。
『ピ…ピキキッ……ピキィ~…………』
ガシャン!
儚い音を立てながら、ついに最後の1体のゴーレムボールも活動を停止した。
「すっ…凄い……」
「あれほど苦戦したボールのバケモノ共がみんな止まっちまった……」
「それにしてもあの数の氷、よく俺らに当たらなかったな……」
ウェンディの放った魔法の威力と性能に誰もが驚愕の言葉を並べる。
「はぁ……はぁ…………」
「……ウェンディ?」
息を切らしながら身体をふらつかせていたウェンディにイリーナが思わず手を伸ばすも、その手が彼女には届くことはなく、そのまま前へと傾いていった。
バタンッ
「ウェンディー!?」
そのままウェンディは地面に倒れこんでしまい、イリーナが悲鳴を上げた。
騒ぎを聞きつけたアルターとオルガが2人の元へと駆け寄る。
「おいウェンディ、しっかりしろ!」
「ううっ…揺らさないで……。頭がクラクラするから…………」
アルターはウェンディの意識がある事を確認して「ほっ……」と安堵の息を漏らす。
対するオルガはイリーナに状況の説明を求めた。
「イリーナ殿、いったい彼女に何が起こったのだ!?」
「お…おそらくウェンディは、魔力欠乏症になったのだと思います……」
そう、ただでさえ魔力の消費が激しい<即興魔法>で非常に細かい調整を行った影響で、体内の魔力が欠乏してしまい、ウェンディの身体にはとてつもない負担がかかってしまっていたのだ。
「あれだけすごい魔法だもの。倒れるのも無理ないわ」
「ホント、ウェンディには感謝しきれねえな」
遅れてエレインとカリンが様子を見に来る。
彼女たちに褒められたウェンディは、照れくさくなってプイッと視線を逸らすと、その様子を見て周囲が笑いをこぼした。
「皆さんちょっと静かに! ……何か聞こえないッスか?」
「「「えっ?」」」
とつぜんターニャが注意を呼びかける。
彼女に従って全員が耳を澄ませると、どこからともなく地響きに似たような音が聞こえ始めてきた。
ヒュー……ドス……
ヒューン……ドスン……
ヒューン…………
『モオオオオオオオオオオオオンッ!!』
ドスウウウウウウウウウウウウウウンッ!!
家畜の鳴き声のような音を立てながら豪快に着地したのは、角が生えた動物のようなフォルムの頭に文字通り丸太のように太い逆間接の足が生えた、ゴーレムボールとはまた違った異形の存在だった。
その2階建ての建物ほどあろう巨体が着地した衝撃によって、凄まじい砂埃が吹き荒れて誰もが心身ともに圧倒される。
「おっ…大きい……」
「まだ来るッス!」
ドスドスドスウウウウウウウウウウウウンッ!!
さらに上空から3体が着地し、計4体もの巨体が聖騎士達の前に立つ。
「デカくて速いうえに、群れるとか反則だろぉ!?」
あまりにも突拍子もない光景に思わずカリンが叫ぶも、エレインが「群れてるのはこっちも一緒でしょ」と突っ込まれてしまう。
「ったく、この――はどこまで――と違ってるんだか……」
「アルター、今なんと言ったのですか?」
「……いつもの独り言だよ」
イリーナがポツリと呟いたアルターの小さな声に反応するも、彼のいつも通りの言葉でうやむやにされてしまう。
アルターのこのような意味深な言動は、周囲が知る限りでは幼いころからずっとであった。
しかし、その言動が何を意味しているのかをまだ誰も知らずにいた。
「コイツら、様子を見るばかりで仕掛けるような素振りがないわね…?」
「ああ、まるで何かを待ってるような感じだぜ……」
未知の敵に恐怖しながらもエレインとカリンは、冷静に相手を観察して意見を交換し合う。
戦闘スタイルこそ違うものの、2人には「戦闘中でも相手を分析し続ける」という共通の得意分野があるため、こういった分析は彼女たちが担うことが多かった。
そして、彼女たちの分析は大当たりを引くことになる。
「なんだろ、この音……」
「まだ何か聞こえるのか?」
耳を澄ませ続けているターニャにオルガが問いかけると、彼女は上を向いて答えようとする。
「えっと……空から聞いたことがない不思議な音が聞こえるんッスよ」
「空からだって?」
ターニャの指摘でオルガも揃って上を向くが、何も確認できず「気のせいではないか?」と言おうとする。
「……! なんッスかありゃーっ!?」
空から近づいてくる何かに気付いたターニャは、目を丸くして驚愕の表情で叫んだ。
ギュウウウウウウウウウン!
ズシャアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!
宙を縦横無尽に飛翔しながら地面を滑るように着地したのは、今までの半端な異形とは違いハッキリと人の形をした鋼の巨体。
そう、彼らこそがジェネラル将軍の命令を受けてゴーレムボール部隊の増援としてやってきた<ゴーレムレッガー>と、<かたゆでたまご>の愛犬の<シュナイダー>が搭乗した彼女の愛機であるギガントゴーレム<不思議の懐中時計>の部隊である。
「こ…コイツがあのバケモノ共の親玉か……!?」
「くそっ、本当に奴らは何者なんだ!?」
ただでさえ大きいゴーレムレッガーを易々とその股にくぐらせるほどに巨大なギガントゴーレムを前に、聖騎士達は絶望の表情を隠せずにいた。
「翼があるわけでもないのに、どうやって空を飛んでんのよ!」
「飛ぶのもそうだが、あの身軽な動きも十分おかしいっての!」
周囲が思考停止に近い意見しか出せない中、エレインとカリンはギガントゴーレムの恐ろしい性能に言及する。
「あっ…あれは…きっと……夕方見た……魔法技術の…最先端…………」
「あの合体ゴーレムのことかっ!?」
アルター達に自身の分析を伝えようと、ウェンディが疲れ切った体を必死に起こす様子を見たイリーナが彼女の身体を支えた。
「あれは動力源が…13個ある…みたい……。その中でも…胴体に…あるのが……一番強くて………ありえ…ない量の……膨大な魔力が…圧縮されて…うごめいてる…………」
「つまり、その膨大な魔力であの巨体で空を飛んだりしてるってこと?」
アルターの問いかけに、ウェンディは額に汗を浮かべながらコクリとうなずく。
「世界を塗り替える……か」
ふとアルターの口から、<未来精霊の剣>のお告げの言葉が出た。
自分たちの知る世界ではありえない常識外の力を前に、あやふやだったはずの表現が実は適格だったことに気付きいたアルターは、手にしている<未来精霊の剣>を強く握りしめる。
キュイーンッ!!
「なっ…なんだ……ッ!?」
とつぜん、<未来精霊の剣>が輝き始めた。
鍔からは「検」という字が書かれた魔法陣が現れ、<未来精霊の剣>から言葉が発せられる。
『<規定>違反の<オーバーテクノロジー>を検知。プログラムコード<S-01>を実行します』
そう言って<未来精霊の剣>は魔法陣の字を変化させ、今度は「浸」になった。
『<スピト:浸食>!!』
「うぐっ……! うがああああああああああっ!?」
<未来精霊の剣>の言葉と共に、アルターの全身から痛みが走り絶叫する。
「い…いったい何が起こったんだ……っ?」
痛みが引き、気が付くとアルターは黄金の装飾があちらこちらに施された純白に輝く鎧に身を包まれていた。
「おい<未来精霊の剣>、俺に何をしたんだっ!?」
『本システムは着装者の力と同調させているため、長時間の運用は着装者の命にかかわります。<規定>に則り、着装者は速やかに<規定>違反の<オーバーテクノロジー>の排除を開始してください』
「はあ!?」
アルターは自身に何が起きたのか尋ねるも、<未来精霊の剣>は事務的なそっけない言葉で返されてしまった。
彼としては、<未来精霊の剣>が言う<規定>のことも気にはなったものの、それよりもとつぜん身に纏わされた得体のしれない力に不安や不信感を抱いており、今すぐにでも外したい思いでいっぱいだったため、そちらを優先しようとしてしまう。
「……ちなみに、これを外すには<オーバーテクノロジー>っていうのを倒せばいいのか?」
『肯定。速やかに排除してください』
「その<オーバーテクノロジー>っていうのは、あのでっかい奴のことでいいのか?」
『肯定。速やかに排除してください』
「ああ、もうっ! 排除するのは分かったからそれはもう言わないでッ!!」
『了解』
あまりにもしつこく<オーバーテクノロジー>の排除を催促する<未来精霊の剣>に、アルターは苛立って剣に向かって怒鳴ってしまう。
彼は半ば諦めにも似たため息を「はぁ……」と吐くと、ギガントゴーレム達の前に剣を向けた。
「まったく、ホントにこの世界はどこまで原作と違ってるんだか……」
次回はおそらく、この話より前の方に話を挿入することになりそうなので、しおり機能を利用している方々に混乱が生じると思います。
大変申し訳ございません。
それと、加筆修正の方ですが、第二章については序盤の心理描写が決して少なくない量の変更が出てきそうなのでかなり後回しになります。
重ねてお詫び申し上げます。




