忍び寄る影と闇を照らす炎
今回、幼女の出番はほとんどありませんヾ(´・д・`)ノ<みんな、オラに少しだけ幼女をわけてくれぇー!
アリスホイップがニアフォレスト村へ到着した頃、村の近くの高台に複数の人影があった。
「アルター様、こちらです」
「あれが亜人どもの拠点かオルガ」
「はい」
イエージサキリス聖皇国の法皇の嫡男<アルター・シャ・ユウ・タイクーン>が、聖騎士の<オルガ・ジャ・ソル>という女性に連れられてニアフォレスト村を一望できる高台にひっそりとやってきた。
「それで、本当にあの村で間違いないのか?」
「既に亜人の姿も確認し、何より聖皇国直属の尋問官の調べです。間違いありません」
「彼らの<読心術>にかかれば、どんな情報も抜き出し放題というわけか」
「左様です」
アルター達の後ろを追うように、アルターと行動を共にする仲間達が現れる。
その中の1人、<エレイン・チャ・アール>という弓矢を背負った細身な女性がアルターに話しかけた。
「それにしても、亜人達の拠点を見つけられたなんて<未来精霊の剣>さまさまね」
「まったくだよエレイン」
「たしか、『緑添えられし村にて、世界を塗り替えし者によって聖なる騎士は滅びん』だったかしら?」
「ああ、それに緑添えられし村っていうのは、この大森林が横にあるあの村で間違いないようだ」
「じゃあ世界を塗り替えし者っていうのは、あそこの村には私達聖皇国の人間を殺して領土を奪おうとする亜人がいるってこと?」
「そうなるな」
そう、彼らはイエージサキリス聖皇国に伝わる秘宝の1つである<未来精霊の剣>を聖皇国の法王であるザクゲルグから貸し与えられ、法皇直々に予言の調査を依頼された戦士達。
道中、<未来精霊の剣>がお告げがあり、それを頼りに森に沿って向った先で、オルガ率いる聖騎士の亜人討伐部隊と偶然合流し、同じ聖皇国の国民同士ということもあって彼らと協力することになったのだ。
「そんじゃあ、とっとと攻め込んじゃおうぜ。やられる前にやれだ!」
「待ってくれカリン、何か村に近づいてくる」
アルターの仲間の1人である<カリン・ルー・ツクナ>という軽装の筋肉質な女性がさっそく攻め込もうとするが、アルターが村に向かうアリスホイップ達が乗る<ゴーレムカート>を発見して彼女を制止させる。
しかし、アルター達にはゴーレムカートやゴーレムバイクの知識がなかったため、それがどんな物なのか理解できずにいた。
「あの馬車のようなものは、いったい何だ……?」
「たぶん、亜人の新兵器の一端……」
「なるほど。ちなみにウェンディ、キミは一端とは言ったがどのような技術があの先にあると予想できる?」
アルターの仲間の1人であり魔法関連の技術的知識が豊富な<ウェンディ・マー・ツクジ>という少女が、アルターの質問に答えようとする。
「まず、あれはゴーレムと同じ魔力を感じる。それと、動力源が3つに分かれてる」
「1つのゴーレムに動力源が3つ? いったい何の意味が……」
「あれ、それぞれが違う動きをして役割分担をしてるみたい……。ちなみに、前が主動力として後ろの物を引っ張って、曲がるときに真ん中が各部の関節を駆使して前後のバランスを取って、後ろが中の物に伝わる衝撃を抑えてる……」
「つまりあれは、3体のゴーレムが合体してるっていうことか?」
「うん、単純に考えればそう……。問題は、あの細かい動きをゴーレムに設定して、それを合体できる技術がある点……。」
「……なるほど、あの柔軟性と応用力の高さは確かに技術の一端だ。となると中身が気になってくるな。ターニャ、あの中に何が運ばれているか調べてもらえるかい?」
「りょーかいッス!」
アルターの仲間の1人、ある盗賊の娘であり自身も元盗賊の<ターニャ・ゾット>が村へと忍び込みに行く。
「みんな、ターニャが戻ってくるまでの間に、オレ達は野営の準備に取りかかるぞ」
アルターはそう言って、仲間たちを引き連れて聖騎士のキャンプ場へと戻っていく。
* * * *
「おかえりなさい、アルター!」
「ああ、ただいまイリーナ」
アルターを我先と出迎えたのは、彼の幼馴染であり聖皇国直属の巫女<イリーナ・ヨウ・セリー>だ。
「はぁ~、あたしらには挨拶なしかよ?」
「カリン、イリーナのアルターへのご執心っぷりは今に始まったことじゃないでしょ?」
「そりゃそうだな、あははっ!」
「ほんと、見せつけてくれる……」
「あう…、みんなごめんなさい……」
通り過ぎるカリンとエレインとウェンディに笑われて、イリーナは顔を真っ赤にしながら謝った。
実はカリンとエレインもアルターの幼馴染で、こうした砕けた口調で接し合っているのだ。
ちなみにウェンディとはイリーナの紹介で知り合った仲で、「イリーナの親友ならオレの親友だ」と言ってアルターは他の幼馴染と同じように彼女と接している。
「それで、亜人達の拠点は本当にあったのですか?」
「ああ、この目で実際に見た。亜人の新兵器らしき物も確認できた。おそらく、お告げの事があの場所で起こるだろう」
「そう…ですか……」
「不安かい?」
「ええ、あのお告げにはもっと恐ろしい意味があるような気がして……。ねぇアル――」
「おーい、もう食事の用意できてるみたいだぞーっ!」
「早くしないと、アナタ達の分も食べちゃうわよーっ!?」
「わかった、すぐ行くーっ! ……で、なんだっけイリーナ?」
「……ううん、なんでもありません」
「……そっか」
イリーナがアルターに何かを伝えようとするも、カリンとエレインの呼び出しでさえぎられてしまった。
アルター達は聖騎士が用意してくれた食事を受け取り、ところどころに配置されている焚火の1つを囲うように座って食べ始める。
みんなが楽しく食事をする中、カリンはさみしそうな表情を浮かべていた。
「レオンも一緒に来れたらよかったんだがな……」
「おやカリン、またレオンの心配かい?」
「ちっ、ちげーよ! アイツがいないと調子が狂うというか…なんというか……」
アルターがいたずら心で指摘すると、カリンは大慌てで否定した。
ちなみに彼女たちの言うレオンというのは、辺境の砦にて自称エースの<レオン・スウ・カッシュ>その人であり、彼もまたアルターの幼馴染の1人である。
「けどたしかに、あのバカがいないと本当に静かよね」
「エレイン、さすがにバカは言いすぎですよ」
「だってアイツってば、いつも猪突猛進で危なっかしいったらありゃしないんだもの! あれをバカと言わないで何て呼べばいいのよ?」
イリーナがエレインに説教するも逆に説教で返されてしまうが、今度はウェンディが静かにレオンの弁護をし始めた。
ウェンディはかなり後からレオンと知り合ったが、何度も共闘した気心の知れた仲であり、言葉ではあまり語らないが彼の能力を高く評価している。
「レオンは無茶をするけど、そのための努力をしてる……。全く考えなし、というワケじゃない……。良くも悪くも…蛮勇……?」
「あらウェンディ、やけにあのバカの肩を持つわね?」
「私は、努力する人は嫌いじゃない……。けど、レオンの性格は好きじゃない……」
「まぁあのバカも、昔はあんなふうじゃなかったからねぇ……。前のレオンを知ったら、ウェンディもカリンみたいにベタ惚れしてたかも?」
「だっ…だから違うって言ってるだろーっ!?」
「はいはい、わかったわかった」
「それ、わかってない時に言うセリフじゃねーかっ!」
「ねぇイリーナ、昔のレオンってどんな人だったの……?」
「うーん、そうですね……」
エレインが再びカリンをからかう中、彼女の言葉でレオンの過去に興味を持ったウェンディがイリーナに問いかけると、彼女は戸惑いながら答え始めた。
「……小さかった頃は今みたいに無鉄砲な感じはなくて、むしろ誰よりも臆病な人でした」
「それは、信じがたい……」
「うふふっ、でしょうね。けれど本当のことなんですよ」
「だって、今とイメージが全く合わない……」
「……まだ私達が小さかった頃、レオンのご両親が亜人に殺されたのです。お父様は兵士として夜の畑の番をしている時に、お母様は馬車で年貢の作物を納めに行く途中で」
「えっと、ご愁傷さま……」
あまりにも重すぎる話に、ウェンディはとっさにお悔やみの言葉を口に出す。
聖皇国の領地にいる亜人は常に迫害されていることもあって、食料を買うお金もなければ作物を育てる土地もないので基本的に飢えており、人間から食料を奪うために襲うことが頻繁に起こっていた。
そのため、田舎でも亜人を忌み嫌う人間は非常に多いが、原因までは知っている者はあまりいない。
そしてニアフォレスト村は、獰猛な肉食動物が蔓延る危険な森が近くにあることで基本的に人間たちは近づかず、亜人達の数少ない聖地とも言える大切な場所になっているのだ。
「それ以来、レオンはあのような性格になり、無我夢中で身体を鍛え始めたのです。絶対に死なずにみんなを守るために……」
「なるほど、理解できたような気がする……」
「それでね、カリンったらそんなレオンを見て、今まで避けてた彼女のお母様の訓練に参加するようになったのよ」
「たしか、カリンのお母さんって護身武術の武闘家だっけ……?」
「ええ、相手の力も利用する流派なので、女性にも人気なんですよ」
「イリーナも、一緒にやってたとか……」
「僧侶になる前に、ちょっとだけ…ね?」
「聖堂でしか教えてもらえない癒しの魔法を覚えるために僧侶になったんだっけ……?」
「みんな傷だらけで見てられなかったので……。特にカリンなんて傷跡を気にして私によく――」
「お~いイリーナぁ、聞こえてるぞぉ~?」
「うひゃ!?」
気が付けばエレインとカリンの口ゲンカは終わって、イリーナとウェンディの会話がカリンにまる聞こえになっていた。
カリンの顔は怒りといたずら心の混じった笑顔で満ち溢れ、イリーナの額から冷汗がにじみ出てくる。
――ガサガサッ
とつぜん茂みが揺れ、とっさにアルターやカリンが戦闘態勢に入る。
「……誰だッ!?」
「ターニャッスよ! 偵察よりただいま戻ったッス~!!」
「はぁ~、脅かさないでよぉ~」
敵ではなかったことに安心したエレインが尻もちをついて愚痴をこぼすが、ターニャは気にせず一直線にアルターの元へ駆け寄った。
「それでターニャ、村の様子はどうだった?」
「いやぁ…あれはガチでヤバいッスよ……」
「何があったのですか?」
アルターに村の様子を聞かれて青ざめたターニャのことをイリーナが心配して、彼女に水を1杯渡すとグビグビと飲み干した。
「まず、あの合体ゴーレムの中身ッスが、どうやら近くの聖騎士の砦から逃げてきた異端者達だけらしいッス」
「ここから一番近い砦と言ったら……レオンがいるところじゃないかっ!」
「レオンは無事なのかっ!?」
「さ…さぁ? 砦から逃げてきたって事くらいしか会話に出てこなかったッス……」
「そ、そうか……」
アルター達が大慌てでレオンの安否をターニャに確認するも、何も情報を得られずに落胆してしまう。
そんな中、ウィンディがターニャに再度荷台の中について確認を取る。
「それで、運んでいたのは人だけ……?」
「ういッス。それは間違いないッス」
「じゃあ、運ばれた人の中に怪しい人は……?」
「……いたッス。異端者の中に全く別の気配を漂わせてるめっちゃ怪しい10人組がいたッス」
10人組の情報を言うたびにターニャの顔色がどんどん青ざめてゆく。
「その10人組、特長は……?」
「……確認できたのは、7人のメイドさんに騎士さんと貴族さんをそれぞれ1人ずつ引き連れた綺麗なヒラヒラの服を着たお嬢さんの10人ッス」
「そりゃあ確かに怪しいけどよ、何だってお前そんなに怯えてんだ?」
どんどん豹変していくターニャの様子に、カリンがこれはただ事じゃないと思い話に入ってくる。
「……悪いことは言いやせん、あの一派には手を出さない方が良いッス!」
「落ち着いてターニャ! もっとちゃんと言ってくれなきゃわからないわっ!」
急に取り乱したターニャの肩をエレインが抑えつける。
しばらくしてターニャが落ち着くと、再び口を開いてくれた。
「……気配を感じたッス」
「気配?」
「あっしがその昔、盗賊の一味として働いていたのは覚えてるッスよね?」
「ああ、たしか<ル・タリクス王国>の方にいたとか……」
「はい、そこに<トゥーハンド>っていうヤバい闇組織がいやして、その中の暗殺部門のヤツらとソックリの気配をあの村で感じたんッスよ……」
<ル・タリクス王国>とはこの大陸の三大国家の1つで、同じ三大国家の1つである<イエージサキリス聖皇国>とは違い、亜人の迫害はない。
その代わり、<トゥーハンド>という裏で暗躍する闇組織が王国の貴族とガッシリ繋がっており、その根が深すぎて王国政府でも取り締まりきれないほどに腐敗が進んでいることで有名な国でもある。
「まさか、そのトゥーハンドってヤツらが絡んでるっていうの?」
「いや、ヤツらは王国貴族との関わりのせいで国外での活動は控えてるんでそれはないッス」
「その、気配を放ったヤツらの姿は……?」
「そ…それが……気配しか感じられなかったんスよ…………」
「……はぁ? アンタそれ、臆病風にでも吹かれたんじゃないの?」
「そうじゃないんッスよ! ……臆病風? そう! 急に風の音がしなくなったんスっ! 虫の羽音も獣の遠吠えも、なにもッ!! 聞こえるの自分の吐息と心臓の音だけ! 自分以外がまるで別の世界に隔離されたようだったッス!!」
ウェンディとエレインの問いかけでターニャが再び取り乱し始め、騒ぎが周りにも伝わり始める。
「さらに恐ろしいのは、トゥーハンドのヤツらとは違って相手の姿が影すら確認できないし、かと言って何をするという事もなくて! ただ心臓を刺すような恐ろしい気配だけを漂わせていて……! それであっしは……あっしは…………ッ!」
「逃げた……?」
――こくりっ
ウェンディの問いかけにターニャは目に涙を浮かべながら無言でうなずいた。
「……正直、死ぬかと思ったッス。いや、今でも生きてるのが不思議なくらいッスよ。ここの灯りが見えた時なんて、安心しすぎて危うく漏らしちゃいそうだったッス……」
「それで、逃げてる間はそいつら追ってきた……?」
「……たぶん、追いかけてきてたと思うッス」
「たぶん?」
「あっしが村から離れてしばらく足を止めると、また急に静かになるんッスよ。今度は気配を出さずに……、何度も……何度も…………」
「なるほど、そりゃあ確かに恐ろしいな……」
話を聞いていた全員がターニャの感じた恐怖を理解し、辺りが静まり返った。
「け…けど、逃げるときはこっちとは別方向に逃げて、追われていないのもしっかり確認してからこっちに戻ってきたッス!」
「そうか、さすがは元盗賊。一流の逃げ足だ!」
「あ…ありがとうございまッス……」
アルターがターニャに労いの言葉をかけていると、オルガが騒ぎを聞きつけて彼らに近づいて来る。
「アルター様。先ほどから騒がしいご様子ですが、何かあったのですか?」
「ああ、オルガ。聞いてほしいことがあるんだ」
アルターはターニャから聞いた情報を整理してオルガに伝えると、彼女は顎に手を当てて唸り声を上げる。
「怪しい10人組に、闇組織級の謎の気配……か」
今の彼女には2つの案が頭に浮かんでいた。
1つは、先に手を出さずに相手の出方を見ることだが、後になってから大参事になっては困る。
もう1つは、これ以上事が大きくなる前に潰しておくことだが、未知数の戦力を持つ相手に返り討ちにされる可能性が高い。
しばらくの沈黙が続き、オルガの口から頭の天秤の答えが出る。
「……よし、攻め込むぞ」
「おいオルガ、話を聞いてなかったのかっ!?」
「聞いていたからこそ、今すぐに全力で叩き潰すのですッ!!」
アルターが制止するも、オルガは自身の膝を叩きながら叫んでそれを抑え、2人が睨み合いを始める。
彼女のあまりの覇気に、周囲は冷や汗をかきながら焦りと怯えの表情を浮かべた。
「……ゼノン、<早馬>を出して近辺の別動隊に増援要請だ! 夜明けまでには到着させろッ!!」
「はっ! 直ちに出立しますッ!!」
オルガは直筆の手紙の入っている封蝋印が押された封筒を彼女の部下のゼノンに渡し、<早馬>で送り出した。
この聖騎士の<早馬>の全身に着けられている装備には、各部位に別々の魔法が<符与>されており、<ファンタジーテールオンライン>で例えるならばSP最大値増加、SP消費量減少、移動速度上昇といった効果がある。
その<早馬>の性能をフルに発揮させれば、近辺の別動隊へ合流するのに10分もかからないほどのポテンシャルを秘めている。
「……これでよろしいでしょう、アルター様?」
「……ああ」
亜人を悪しき存在と認識するイエージサキリス聖皇国の人間にとって、亜人の拠点は見て見ぬフリはできない事。
しかし敵の戦力は未知数で半端な戦力では負けるかもしれない。
そこでオルガは近辺で同じ活動をしている聖騎士の部隊を寄せ集めて戦力を増強し、短期間で用意できる最大戦力で迎え撃つことにしたのだ。
こうなってしまえばアルターにはもう、何も言うことがなかった。
* * * *
「……ッ! ……様ッ!」
オレの耳元からリューナの叫び声が聞こえてくる。
寝ぼけているせいかうまく言葉が聞き取れず、二度寝しそうになるが……。
「お嬢様! 襲撃ですっ! 村が襲われていますッ!!」
「な、なんだってーっ!?」
オレはリューナの言葉が頭に入った瞬間、飛び上がるように起き、すぐに片手で戦闘用の装備が宿ったカードを取り出して日常用の装備と取り替える。
バタンッ!
勢いよくオレ達がキャンピングセットのテントから出ると、既に村は炎に包まれていた。
「これはいったい……」
触覚を刺激する炎から放たれる熱、小さな火の粉の熱、敵の殺気。
嗅覚を刺激する木造の家が焼ける臭い、錆びた鉄のような血の臭い、むせかえるような腐った臭い。
視覚を刺激する赤と黄色と黒のコントラスト、松明を掲げて剣を振るう聖騎士達、老若男女構わず襲われる村の人々。
あらゆる刺激がオレを精神的に襲う。
「……あれは!」
ふと建物同士の間を見ると、何か小さい死骸が転がっているのを見つけた。
あれは確か……この村の子供っ!?
あの可愛かったモフモフの子供たちの亡骸だ……ッ!!
「うぐっ……!?」
「お嬢様っ!?」
な……なんだっ!?
胸が……いや、心が…痛い……ッ!!
「うがが……があああッ!!」
「お嬢様どうしたんですかっ!? 返事をしてくださいッ!!」
リューナの言葉は耳に入ってはいるものの、痛みでどんどん聞こえづらくなってゆく……!
それにこの痛み…俺は知っている……知っているぞ…………ッ!
この痛みは……アリスホイップの心の痛みだッ!
<ファンタジーテールオンライン>のメインストーリークエストでは、プレイヤーが必死に戦うも守れずに必ず死んでしまうクエスト用のNPCが数多存在する。
オレの脳裏に、そんなアリスホイップが今まで経験してきたNPC達を守れなかった後悔の映像がひたすら流れてきた。
最初の村にある雑貨屋の娘を守れなかったこと。
魔神に利用され続けた研究者を助けられなかったこと。
世界を滅ぼすふりをしてオレの成長を信じてくれた師匠を殺してしまったこと。
親友になった人物を守り切れなかったこと。
自身が派閥争いに利用されているのも知らずに、温厚派のリーダーを殺してしまったこと。
オレを庇って死んだ者のこと。
オレに力を授けるために命を落とした者のこと。
オレの慢心で命を落とした者のこと。
ああ、全て知っている…ッ! 知っているさ……ッ!!
オレにとってはゲームのイベントでしかなかった出来事が……ッ!
現実として……ッ!
悲しみとして……ッ!!
アリスホイップの思い出が……ッ!
オレの思い出として苦しめている……ッ!!
そして、これと似たようなイベントも知っている……ッ!
あるスキルのジャンルを取得するためのクエスト……ッ!
そのクエストにある過去の後悔を受け入れ乗り越える試練……ッ!
そう、そのスキルジャンルは……ッ!!
そのジャンルで最初に取得するスキルの名は……ッ!!!
『――超新星、<無垢なる盾>』




