談話 オレとメイドとレジスタンスと
今回は登場人物が多いので、セリフもかなり多めです( ;´艸`)
オレとロレンスの様子を見て、友好的な相手だと理解した他のレジスタンス達もこちらに混ざってくる。
「ねぇアリスさん。今後の相談を私達の拠点でやるのはいいけれど、ここからだとかなり遠いわよ?」
「……マジで?」
「ええ。この人数だと馬車で移動することになるだろうし、なおさら時間がかかりますよ」
「たしかに、この人数だとなぁ……」
見た限りだと、今この場にいるレジスタンスだけでも学校のクラス3つ分……つまり70人以上はいそうな感じだ。
中には負傷して仲間に抱えられている人もいて、これを全員で移動となると本当にかなりの時間が必要になる。
いったいどうしたものか……。
「そういうことならニコラスとナー」
「フラメルにお任せだネー」
とつぜんニコラスとフラメルとフェイルが姿を現す。
おそらくフェイルの<エゴス:転移>で来たのだろう。
その証拠にフェイルがすごく眠たそうにしていた。
「お前ら、あっちはもういいのか?」
「マリアとフリージアに…お嬢様のトコ行けって……追い出された…………」
「だろうな……」
この3人の性格からして、マリア達の邪魔になったんだろうなぁ。
「ところで、お任せっていうのは?」
「そいつはナー」
「これを見るんだネー!」
そう言って2人は手に持った<錬金銃>のカートリッジに錬金術用の何かの結晶を詰めていく。
色からして、土属性に関する結晶のようだ。
パキュンパキュンッ!
2人が撃った先に現れたのは、どう見てもロードタイプのオートバイと、どう見ても大型トラック用の車輪の付いたコンテナだった。
「<ゴーレムバイク>なのだ! ディーヴァさんこれ大好きなのだっ!!」
「それと<ゴーレムカート>ですね」
そう、初見の方々にはまず信じてもらえないが、これもまた<ファンタジーテールオンライン>で実際にあるコンテンツだ。
<ゴーレムバイク>は騎乗可能なNPCと違って、自ら移動することも攻撃することもできない代わりに、召喚のクールタイムがなく、速度こそギガントゴーレムほど早くないが洞窟やダンジョンなどの屋内でも使用可能なので、ちょっとした移動の時にはかなり便利な代物だ。
<ゴーレムカート>はアイテム欄がいっぱいで持ち運べない時に緊急用で使うもので、こちらはゴーレム自ら移動することが可能だ。ただし、一定時間経過するかHPが0になると壊れてしまい、入れていたアイテムが散乱してしまうが、壊れる前に再びゴーレムバイクの結晶を撃ちこめば時間延長が可能になるという、ちょっとクセのある代物だ。
「あとはコイツを生やしてナー」
「バイクを掴ませれば完成だネー」
パキュンッ!
ニコラスが追加で取り出した結晶をフラメルの錬金銃に込めてゴーレムカートの正面に撃ちこむと、そこから歪な手のようなものが生えてきた。
「あわわ、<ゴーレムアーム>じゃないですか…っ! わわ私アレ苦手なんですよぉ~……」
「エムエスもアレと似たような武器使うじゃないですか」
「ぜっ…ぜぜぜ全然違いますよぉ~っ!!」
この<ゴーレムアーム>は、<ファンタジーテールオンライン>ではその場からは絶対に動かすことができない設置型の攻撃支援NPCだ。
うねうねとトリッキーな動きをして、さらに攻撃スキルの初動モーションがどれもこれも似てて見分けるのが非常に難しく、敵として登場した場合は本当に厄介な存在となる。
ちなみに錬金術で出現したゴーレム系NPCの大きさと制限時間は、基本的に<ゴーレム錬成>というスキルのランクに依存している。今回出てきたゴーレムアームは比較的小さいものなので、つまりはランクが低い状態で出したという事になるわけだ。
そんな比較的小さなゴーレムアームがゴーレムバイクの後ろ部分を掴んだ。
「これなら大勢で早く移動ができるよナー」
「足りなかったら増やせばいいしネー」
そうか、ゴーレムカートみたいな追従型のNPCは<ファンタジーテールオンライン>だと一定時間以上離れた状態が続くと主人であるプレイヤーの近くへ強制的に瞬間移動されたけど、この世界だとそれがないのか。
プレイヤー視点だとこういう事に気付けないのは本当に痛い弱点だな。
「あっ、いたいた~♪」
「お待たせいたしましたお嬢様」
空を飛ぶフリージアに乗ってきたマリアが優雅に飛び降り、オレ達の前に着地した。
こうしてみると、やっぱりマリアってかなりの美人だと改めて思う。
「ではフリージアさん、手筈通りに」
「任せてー☆」
マリアに何かを任されたフリージアは、ギルド基地ではなく全く別方向へ一直線に飛んでいく。
気になったオレはさっそくマリアに質問することにした。
「手筈って、フリージアに何を頼んだんだ?」
「彼女は聖騎士の皆さまの面子を立てに行っただけです。不本意ではありますが……」
「というと?」
「この世界ではドラゴンは伝説上のみの存在らしく、そのまま伝えても信じてもらえないとの事でしたので、一度フリージアにイエージサキリス聖皇国へ飛んでその姿を実際に見てもらうことにしたのです」
「……プロパガンダやな」
「その通りですフェイル」
「プロパガンダって何なのだ?」
「名前からして強そうだナー」
「名前からして格好良さそうだネー」
「ぷ…プロパガンダというのは……、思想や世論を誘導するための行為の事です…………多分」
「大丈夫ですよエムエス、ちゃんと合ってます」
「あ…ありがと……リューナちゃん」
今の会話で気づいたが、おバカチームと博識チームに分けるとちょうど半分ずつになるんだな。
このオレをおバカチームに入れたらの話だがな!
――うん、プロパガンダなんて言葉、オレも初めて聞いたんだよ。
* * * *
オレ達についてきていた<影忍者>の大半が<聖騎士>を追いかけに行ってしまったため、代わりにジェネラル将軍とガングニールの部隊からそれぞれ1名ずつこちらに派遣されることになった。
「カーネル大佐、ただいま着任いたしましたっ!」
「おう、早かったな」
「閣下のためならば、これくらい当然のことです!」
「は…はは、まぁそう肩を張りつめると後で疲れるぞ……?」
「ああ、労いのお言葉ありがとうございますっ!」
――ダメだこりゃ。
軍服に似合うくらいかしこまりすぎて、逆にこっちの肩が凝ってきた。
そういえば、もう1人の方は黙ったままだな。
「……アロンダイト」
「おう、よろしくな!」
「……はい」
うっわぁテンション引っくいなぁ……。
いわゆるクール系キャラなんだけども、実際に話すと会話に困るな。
ただ、ルックスは少女漫画に出てきそうな容姿なので女性受けしそうではある……が、肝心な幼女な主人の中身がオッサンなせいで、まったくときめくことができないんだ。済まない<†ジャンヌ†>さん!
「お嬢様~、出発の準備が整いましたよ~!」
「おうリューナ、今そっち向かう!」
出発の準備が整い、レジスタンスと共にゴーレムカートに乗り、砦をあとにしたオレ達は、彼らの拠点であるニアフォレスト村に向かった。
ゴーレムカートの中は、壁に小さな窓が作られ、簡易的なイスを横並びに固定したことで、まるで飛行機の機内のような雰囲気になっている。
負傷者用の床で寝れるスペースも用意されており、レジスタンスの何人かがマリアとエムエスに応急処置を受けていた。
ここまで色々あったが、やっと一息つけたおかげで、みんなは明るく賑やかに雑談を始め、オレもロレンスと話し合っていた。
「それにしても、アリスさんの仲間は本当にすごい人ばかりだなぁ」
「ああ、オレなんかにはもったいないくらい素晴らしいヤツらばかりだよ……」
「たしかアリスさんは、創設者の跡継ぎだとか?」
「ただの穴埋めみたいなもんだけどな」
「なるほど、お互い大変だな……」
「お互い……?」
「キミほどすごい地位じゃないが、俺の姉さんは数あるレジスタンスグループのうちの1つ<大木>のリーダーをやってたんだ」
「支部長や支店長みたいなもんか?」
「まぁだいたいそんなもんだな。それで、姉さんが聖騎士の奴らに殺されてから、弟の俺が姉さんの代わりにそのリーダーを任されることになった訳なんだ」
「そっか……」
――ヤバイ。
さっきその聖騎士の1人を私的な感情で逃がしたことがバレたら、空の花園VSレジスタンスVS聖皇国なんていう最悪な泥沼バトルロワイヤル展開になるぞ。
とりあえず話の流れを別方向に変えよう。
「今向かってるニアフォレスト村ってどういう所なんだ?」
「そうだなぁ…食べることに不自由しない場所……かな」
「へぇ~、例えば?」
「森には果物がたくさんあるし、川には魚がよく泳いでるし、それを求めて動物たちがやってくるから、狩りにも困らない」
「なるほど、そりゃあ食べることに不自由しないわ」
「とは言ってもな、肉食動物もたくさんいるからいつも死と隣り合わせなんだ。この前も、森に遊びに行った子供達が何人かクマに食べられちまった……」
「そ…そっか……」
――マズイ。
危ない話の流れは回避できたが、暗い雰囲気はそのままになってしまった。
ついでにオレにとって、<ファンタジーテールオンライン>でのクマとの初戦闘はかなりトラウマだったりするので、なおさら暗い話題に聞こえてしまう。
「オレもクマには良い思い出がないんだよなぁ……」
「ほう、アリスさんだったら逆にクマを一人で倒しそうなのにな」
「そりゃ今でこその話だ。初めてクマと戦った時なんて、まだ戦い方も習いたてだったうえに、クマが<スマッシュ>するときの『ガァオウッ!!』って叫び声があまりにも怖くて、こっちはヒイヒイ言いながら手汗びっしょりで剣を振りまくってたんだぞ?」
正確には手汗びっしょりでマウスとキーボードを操作してたんだが、装備してたのは実際に剣だったし、クマの叫び声が怖かったのも本当の事だ。うん、本当に迫力満点で怖かったんだよ……。
そういえばこの話、結構スラスラと言えたうえに、身体まで勝手に動いて再現しようとしてたな。
なんというか、ここまでアリスホイップの身体とオレの心がシンクロしてくると、もう本当にこっちが現実の世界で、あっちが夢か幻の世界だったように思えてくるぞ。
「……で、そのクマは倒したのか?」
「いや、途中で見かねた仲間達が助けに入ったよ。その時のクマの叫び声がトラウマになったせいで、結局自力で倒せるようになるのに1ヶ月以上もかかっちまった」
「むしろ1ヶ月で1人で倒せるってすごくないか?」
「周りは1週間も経たずに自力で倒せるようになってるんだぞ!? ハッキリ言って遅すぎるわっ!!」
「ははっ、そりゃあまたすごい連中だなぁ」
「ああ、自慢の仲間たちだったさ……」
「……だった?」
「ん~……少なくとも、もうこの世にはいないな。理由は聞かないでくれ」
「ス…スマン、悪い事聞いたみたいだな……」
――しまった。
これじゃあロレンスに仲間が死んだように思われちまうじゃねーか!
この話はうちのNPC達にも聞こえてるんだぞ、わざわざ不安にさせるような言葉を口走るなよオレの身体もといアリスホイップ!?
せめて生きてることは確かだという事実だけは伝えておかないといけないっ!!
「べっ…別に死んだわけじゃないぞ!? それぞれ確かな理由があって、いなくならざるを得なかっただけなんだっ!!」
「そうなのか。けど、それはそれでさみしいもんだなぁ」
「まあな。けど、さみしい事ばかりじゃねーぞ?」
「ほう?」
「仲間が残してくれた思い出のモンがいっぱいあるんだっ! 空を飛ぶ船とか、強くてでっかいゴーレムとか、賢くて頼もしい精霊装備とか――」
「わっ…わかったから、落ち着けって! すっ転ぶぞっ!?」
「お…おう、悪い……」
――恥ズイ。
つい熱が入りすぎて、思わずイスの上に立ってしまった。
本当にこれからどうなっちまうんだよオレ……。
このままじゃいずれ心まで幼女になっちまうぞ?
オレが悶々としていると、ゴーレムバイクを運転しているディーヴァがロレンスに話しかけてきた。
「ロレンスのおっちゃん、あそこに見えるのがニアフォレスト村なのだ?」
「ははっ、まさか。いくらこの馬車みたいな乗り物が速いからって、そんなに早く着くはずが……」
ロレンスが笑いながら窓を覗くと、彼の顔がどんどん唖然とした表情へと変わっていく。
「……あれだ」
「わかったのだ! ニコラス、フラメル、こっちなのだー!」
「そっちだナー!」
「わかったネー!」
ディーヴァの合図で3台のゴーレムカートの進路が村へと傾く。
あまりにも予想外の早さで村に着いたせいか、ロレンスはため息のような声をもらす。
オレとしても、こんな現実では公道なんて絶対走れなさそうな突貫工事のコンテナをバイクで牽引して、よく無事に到着したことに驚きを通りすぎて呆れており、彼とだいたい同じようなため息のような声がもれた。
「……本当にすごいな」
「……本当にな」
* * * *
「そこの馬車みたいなの、止まれ!!」
「キサマら、いったい何者だ!?」
村に入ろうとするオレ達を、人間の兵士に動物の頭が付いたような人達が槍を構えて制止させる。
おそらく彼らこそが亜人と呼ばれる人たちなのだろう。
すぐにロレンスがゴーレムカートの窓から顔を出し、オレ達の弁護をしてくれた。
「オレだデニン。この人達は味方だ」
「ロレンスじゃないか!」
「ああ、ホッドやカラール達もいるぞ」
「最近まったく姿を見ないとは思ってたが、お前らいったいどこに行ってたんだ?」
「その話は後だ。みんな、今すぐ各グループのリーダーを集めてくれ。新しい仲間の紹介と大事な話がしたいんだ」
「わっ、わかった! デニン、その人達を会議室まで誘導してくれ」
「ああ!」
オレ達はデニンというヤギの亜人に誘導され、村の中へと入る。
途中、道の幅が原因でゴーレムカートが通れそうになかったため、怪我人を最寄りの診療所へ運んだ後、ゴーレムカートを解体して徒歩で進むことになった。
「ロレンスおじさん久しぶり~」
村に住んでいると思われる犬や猫のような亜人の子供達がロレンスの周りに集まってくる。
みんなモフモフしてて可愛いかったので、思わず抱きしめたくなったが、さすがにいきなりはマズイと理性が働き、オレはなんとか思い止まった。
「よお、みんな元気だったか?」
「うん、元気だよ!」
「そうかそうか、そりゃあよかった」
「そっちのお姉ちゃん達はだーれ?」
子供達が余所者のオレ達を珍しそうに目を輝かせながら見つめ、ロレンスに向けて質問したので彼はそれに答えようとする。
ところで、子供達がモフモフな尻尾をブンブンと振り回していて、まるでオレを誘っているように見えるのだが、気のせいだろうか?
「ああ、この人達は俺達の命の恩人だ。決して悪い人じゃないよ」
「ふーん、よろしくねお姉ちゃん!」
「お~う! よろしくね~♪」
なでなでなでなでなでなでなでなで……
モフモフな子供達に話しかけられたオレは、ついに我慢の限界を超えて、子供達に抱きついて思いっきり撫で回し始めてしまった。
撫でられている子供達もまんざらではないようで、身体をこちらに寄せてくるのがまた可愛くて、さらに撫で回し方がヒートアップしてゆく。
「お嬢様ったら、また可愛いもので発情してる……」
「うるせぇリューナ! お前にはこのフワフワでモフモフな子供達の素晴らしさがわかんねーのか!?」
「その子達が可愛いのは確かですけど、性癖レベルまで重症なのは理解できません。っていうかしたくありません」
オレとリューナが子供達のモフモフについて語り合っていると、デニンがそれを止めるかのようにオレ達の事を呼ぶ。
「おーい! お前ら置いていくぞーっ!?」
「ああ、待ってくださーいっ!」
「悪いなみんな、また今度な」
「またね~」
オレ達がデニンに追いつくと、とつぜん彼から話しかけられた。
「お嬢ちゃん、狼人族や猫人族を怖がらないんだな?」
「むしろあんな可愛い子達をどうして怖がらなきゃいけないんだよ?」
「ははっ、そりゃごもっとも。人間族は異種族を嫌うことが良くあってな、みんなお嬢ちゃんみたいに異種族でも分け隔てなく接してくれれば良いんだけどな……」
「そういうもんなのか……」
「そういうもんさ、世の中ってのは……」
こういった情報を聞けること事態は<空の花園>にとっては喜ばしい事なんだろうけども、オレとしては湿っぽい話は苦手なので、少々複雑な気持ちだ。
村の中で一番大きくて目立つ木造の建物が近づいてくると、デニンがオレ達に向けて説明を始める。
「あそこに見える家に会議室があるんだ。そこに入って待っていてくれ」
オレ達はデニンに中へと案内され、広いテーブルとイスがいっぱいの部屋に通された。
部屋はキレイに掃除されており、背の低いオレのために調整用の小さなイスまで用意してくれていて、歓迎されているのが伝わってくる。
しばらくすると、フクロウ、ドーベルマン、ヒツジ、ネコ、ヤギ、人間の容姿の人物たちが入ってきて、お茶とお菓子が並べられた。
「初めましてアリスホイップさん。私はこのニアフォレスト村の村長を務めているルークと申します」
「俺は武器の管理をしているザナックって者だ。よろしくな」
「食料やお薬の管理を任されているエミリィです。あっ、お茶とお菓子は好きに食べていいですよ」
「おっす、俺は戦闘指南をしているジーニスだぜぇ。ところで、なんでこんな小さい子がここに?」
「門番長のデニンだ。さっきは怒鳴ったりして悪かったな」
「そして俺が潜入捜査隊の第一部隊<大木>のリーダーを務めているロレンスだ」
「こ…こちらこそ初めましてみなさん! 自分は<空の花園>というギルドの……えーっと、ギルドマスターをやっている者ですっ!」
――ギルドでの謁見の時からまるで成長してねぇなオレ!
せっかくこんないい部屋でお茶やお菓子まで用意してくれてんのに、これくらいビシッと決めてくれよオレの身体もといアリスホイップ!!
「ははっ、可愛いマスターさんだなぁ!」
「こらジーニス、初対面の相手を茶化すヤツがあるか!」
「ザナックそう責めないでくれよぉ、お嬢ちゃん肩の力を抜かせようとしてんのにさぁ~」
オレの事で揉め合うザナックとジーニスにルークが「ゴホンッ!」と咳払いで制止させる。
「申し訳ありません、2人が失礼しました……」
「いえいえ、とんでもない村長さん!」
「ところで、そちらのお嬢さん方は?」
中断されていた自己紹介をエミリィが再開させたので、メイドインセヴンの7人も自己紹介を始めた。
「アリスホイップ様に仕える<メイドインセヴン>が1人、リューナホイップです」
「同じくメイドインセヴンが1人、マリアホイップでございます」
「同じく、ニコラスホイップだナー」
「同じく、フラメルホイップだネー」
「同じくメイドインセヴンの1人にして空の花園のアイドル、ディーヴァホイップなのだ!」
「うちも同じく、フェイルホイップ……」
「お…同じく、メイドインセヴンがひ……1人! エ…エエ……エムエスホイップれすっ!! ……よろしくお願いします」
「あらあら、皆さんご家族なのですか?」
「……当たらずといえども遠からず」
「わ…私達はお嬢様に作られたせ…精霊……」
「精霊装備なのだーっ!」
「だからみんナー」
「ホイップの名前をもらってるんだよネー」
「ですので、お嬢様や私達の事はホイップ抜きでお呼びください」
「以後、お見知りおきを」
「ええ、わかったわ。それで、後ろの男性の方々は……」
エミリィがオレ達の後ろで立っているカーネル大佐とアロンダイトを気にすると、先にカーネル大佐が立ち上がって敬礼してあいさつを始め、アロンダイトも軽く会釈してそれに続いた。
「はっ! アリスホイップ総統閣下が配下、<黒鋼軍>のカーネル大佐であります!」
「……アリスホイップ陛下直属、<白銀騎士>のアロンダイト」
「ほほう、そちらはメイドの方々とはまた別のグループなのですね」
「どっちも名前がカッコいいねぇ」
「こらジーニス、またお前は!」
「だから怒んないでってばザナック~」
「それにしても精霊か……。この村もまた一段と華やかになりそうだ」
「この村には精霊という種族はまだいませんでしたものね」
無事みんなとの挨拶が終わり、デニンが待ちくたびれたかのようにロレンスに話しかける。
「それでロレンス、いったい何があったんだ?」
「さて…、どこから話せば良いものか……」
ロレンスは腕を組んで考え込んでしまう。
そりゃあれほど色々起きたら、誰だって説明に戸惑うだろうな。
「まず俺たちは、聖皇国の情報を外部に伝えるために、国境近くで国外のグループと合流しようとしていたんだが、既に聖騎士達に情報が漏れていたらしく、待ち伏せされて捕まってしまったんだ」
「……そん時、偶然いたうちらも捕まったという訳やな」
「そうなるな、巻き込んでしまって本当に申し訳ない……」
「ええで、お嬢様は無事やし、うちらの目的も果たせそうやし……」
ロレンスの話の流れでオレ達がなぜ捕まったのかにフェイルが気づいて話に入った。
フェイルのこういう洞察力の高さには、オレは本当に頭が上がらないわ。
「そのまま俺たちは砦に連れていかれると、既に捕まっていた仲間達が処刑台広場に並ばされていて、そこのアリスさんが最初に処刑されそうになると……」
「……されそうになって、それからどうしたんです?」
とつぜん話を止めたロレンスをエミリィが心配すると、ロレンスはお茶を一杯を一気に飲み干し、一呼吸をおいて話を進めた。
「信じてもらえないとは思うが……巨大で翼の生えた4本足のドラゴンが、ペガサスやワイバーンの大部隊を引き連れて、アリスさんを助けに来たんだ……」
「……そりゃ、お前さんが考えた新しいおとぎ話か何かか?」
「やっぱ、そういう反応になるよなぁ……けど本当の事なんだ」
デニンが呆れたような反応を見せ、ロレンスは落ち込んでしまう。
ルークが「私は信じるよ」とロレンスに話しやすい雰囲気を作ってくれたことで、彼は渋々ながら話を続けてくれた。
「……それで、色々あってアリスさん達と一緒に砦から逃げてここまで来た訳なんだ」
ロレンスの話を聞いたレジスタンスの一同が「うーん……」とうなずく中、ロレンスが話を続ける。
「それでアリスさんが、俺たちに相談したい事があるらしいんだ」
「ああ、そうだった」
とつぜん話を振られて戸惑ったオレは、深呼吸して落ち着こうとするが、あまり効果がなかったのでお茶を一口飲んでからもう一呼吸し、会話を始めた。
「この村か近くの開いている土地に、空の花園からの調査隊のための補給基地を建設させて欲しいんだ……ですっ!」
「ほう、調査隊……ですか」
オレの言葉にルークの表情が曇りだす。
ただでさえ怪しい人物なのに、調査隊とか言われたらなおさら警戒しだすのは当たり前だよなぁ……。
「ちなみに調査の目的は?」
「は…はい! 主に地上の情勢について調べようとしていますっ!」
「地上……とはまた大雑把ですな」
「ええ、何せずっと空にある土地に住んでいたもんで、地上の情勢に非常に疎くて……」
「「「空ぁ!?」」」
まだ空の花園が空にあることを知らない者達が一斉に驚いた。
既に知っているロレンスは「まぁそういう反応になるよな」と笑い声をこぼす。
周囲がざわつく中、エミリィがオレに話しかけてきた。
「補給基地と言いましたけど、補給の物資はどこから持ち出されるのでしょうか?」
「えーと……、最初の内はうちの基地で生産された物を保管する場所としつつ、いずれは現地でも生産可能な体制に持っていく予定です」
「なるほどです。まだお若いのにしっかり考えているのですね」
この予定考えたのオレじゃなくてジェネラル将軍だけどな!
なーんてことは言えるはずもなく、オレは照れ隠しのように笑ってごまかした。
ふとザナックの方を見ると、彼が不思議そうにこちらを見ていたので「えっと……なにか?」と、オレから話しかけてみた。
「いやね、荷物持ちもいないのに、そんな丸腰であの国境の森に行っていたのかと不思議に思ってな」
「別に丸腰じゃないよナー」
「しっかりと色々持ってるよネー」
ナザックの問いかけに、フラメルがニコラスの掌から<錬金術>に関する武器やアイテムが宿ったカードを何枚か取り出して実体化させていく。
「こ…これはいったいどういう魔法で……!?」
「いえ、これは<インベントリー>という<生活>スキルです」
「魔法じゃないの!?」
「この村では珍しいのだ?」
「珍しいも何も、この辺じゃ国が抱えてるような大魔導師って呼ばれるくらいすごい魔法使いしか使ってるの見たことないよ!」
「な…なるほど、存在しないわけではないのですね……」
マズイ、みんな盛り上がりすぎて、少し話が脱線してしまっているな。
オレは流れを本題に戻そうとルークに話を振った。
「それで補給基地に必要な土地についてなんですが……」
「ああ、それでしたら住宅や農作物に影響がなければ、どこでも大丈夫ですよ」
「本当ですか!?」
「ええ、元々は訳アリな者達が集まって出来た村なので、迷惑になるようなことさえしなければ、何だってやってくれて構いませんよ」
「あっ……ありがとうござーますっ!」
なんで肝心なところで噛んだんだよオレもといアリスホイップ……。
何はともあれ、補給基地の土地確保の件はこれで解決だな。
「ところで皆さん、もう宿泊先はお決まりで?」
そういえば、その辺の準備はマリアに任せっぱなしだったから、オレは知らないや。
オレがマリアの方を見ると、彼女はすぐに察してくれて、掌からカードを1枚取り出して説明を始めた。
「我々には<キャンピングキット>がございますので、空いている土地にそれを設置させていただければ何も問題はありません」
ああ、そんなコンテンツあったなぁ。
<キャンピングキット>はフィールドに一時的なプライベートエリアを設置できるコンテンツで、中で料理を食べると中にいる人達にも料理の効果が適応されるという便利なもので、昔は頻繁に見かけたものだったのだが、<ファンタジーテールオンライン>に<ギルド基地>のようなプライベートエリアや<フードバイキング>のような1つの料理を共有できるようなスキルが実装されてからはめっきり姿を消したコンテンツだったので、マリアからその名前を聞くまでオレはその存在をすっかり忘れていた。
「では、この家のすぐ横の空き地をお使いください。その方が何かと便利でしょう」
「お気遣いいただきありがとうございます、村長さん」
マリアはルークにお礼を言い、カードを掌に収めた。
それを見たニコラスとホイップも出した物をしまい始め、ロレンスがその様子を見ながらオレに話しかけてくる。
「ここまで色々な物を見ると、アリスさんが持ってない物なんてこの世に存在しないんじゃないかって思えてくるよ」
「ロレンスさん、オレだって欲しくても手に入らないものくらいあるぞ?」
「ほう、例えば?」
「かつての仲間さ……」
気が付けば日は落ち、まるでオレの心境を表しているかのようだった。




