表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/15

1話:プロローグ

自分が誤字とか変な文とか見つけたら、その都度修正します(´・ω・`)


2020/01/03追記:現在、作品全体の文章を添削をしております。

話数が書かれていない物は添削前なので悪しからず…(=ω=`;)<ホントにごめんなさい

 3DMMORPG<Fantasy Tale Online -ファンタジーテールオンライン>。

 一般的に言うオンラインゲームであり、俗にいうネトゲというヤツである。

 よく「FTO」や「ファンテー」と略される。


 このゲームが出るまでは3Dモデルを使ったパソコンのオンラインゲームは存在せず、横スクロール視点や俯瞰(ふかん)視点といった2Dの物しかなかった。

 故にこのゲームはオレたち人類にとって、世界初めての3DMMORPGとなった。


 サービス開始当初は、まだ一般人が所有している平均的なパソコンの性能があまりよろしくなかったため、基本的にキャラクターもマップもローポリゴンでモデリングされており、今となっては古臭いのだが、昔ながらの適度なデフォルメがなされたデザインは「カワイイが性癖」なオレのハートを容易く射止め、このゲームを始めるきっかけとなった。

 オレがこのゲームを知ったきっかけは、サービス開始から3周年記念が開催されていることを旨としたネット広告からだ。それ故に、オレはそれまでのゲーム情報はファンが作った情報共有サイトでしか知らない。


 元々オンラインゲームで3Dモデルを使うという試験的な目的で作られた物だったせいか、サービス開始から4年くらいは戦闘系のスキルは剣・斧・鈍器の3種類の武器を使った<近距離>、炎・氷・雷の3種類の属性がある<魔法>、ロングボウ・クロスボウの2種類の<遠距離>といった、3つのシンプルなジャンルに分けられたスキルしか追加されず、さらにこのゲームでは職業や種族といった取得スキルの制限をする概念がボス専用などのスキルを除いて永遠に実装されなかった。

 しかし、その自由度とシンプルさ故に、先人ゲームユーザー達はあらゆる戦闘スタイルやコンボを作り出してゆき、1人(ソロ)用のはもちろんのこと、2人用コンボから8人用コンボまで幅広く開発された。

 フレンドから紹介された2周年記念の製作スタッフインタビュー記事によると、製作スタッフが想定していたのは、その時点で既に8割以上がユーザーの手で編み出されたものだったと書かれていた。

 ただ、4年目の後半に実装された<錬金術>を境に、武器の種類やスキルのジャンルが次々と増えて行ったことでコンボ名が仲間内でしか伝わらないなんていう珍現象まで起きた。それほどまでにこのゲームの戦闘システムは自由度が高いのだ。


 装備についても面白いシステムが採用されている。

 基本的にはNPCから購入した物を装備するのだが、同じジャンルの装備であればその全てが同じ攻撃力・防御力・重量が設定されている。違うのはデザインだけ。

 ではどこで性能差を出すのかというと、それは<生産系スキル>だ。

 クエストの報酬、モンスターのドロップ、リアルマネーを使ったガチャなどから入手できる素材には1個につき様々な追加効果が付いており、それを組み合わせ、自分好みのデザインの装備が書かれている<図面>というアイテムを用意することで、自分だけのオリジナル装備を作ることができるのだ。

 しかも色も最低3カ所のパーツごとに色分けできるのでさらに個性を出せるところも見逃せない。

 このお約束がずっと守られていたおかげで、他のゲームでよく見かける「過度な装備の偏り」なんてことがこのゲームでは起こらなかった。


 そんなゲームでオレが使っているキャラクターがどんな姿なのか項目名で言うと


 ・人間(ヒューマン)

 ・身長8歳サイズ

 ・ふわふわショートな金髪

 ・クリクリまんまるの空色の目

 ・花のような小さい鼻

 ・ぷにぷにほっぺの顔

 ・ちょっと未熟ないちご色のかわいい口

 ・透き通るような桃色肌


 そう、いわゆる幼女だ。しかも装備もフリルたっぷりのロリータファッションに武器もほとんどが花の装飾があるものばかりのね。

 ちなみに身長は基本的に<10歳サイズ>が最低値なのだが、8年目の後半頃に発生したバグにより、本来は選択できない0歳~9歳のサイズが一時的に選べるようになっていた時期があったのだ。そんなバグにオレを含めて何人ものロリコンがその悪魔のささやきと共に手を染めてしまうことになる。

 なお、このバグによる運営側からのお(とが)めはなかった。

 それというのも、このバグはゴブリンやオーガといった、それまでモンスターとして登場していた種族にも容姿が変更できる項目が追加されたことで発生したものであり、その中には期間限定イベントや課金することでしか変更できないものも含まれていたのだ。

 つまり、運営側はこのバグを「期間限定イベントの1つ」として黙認してくれたのである。

 おかげでこの身長の人間(ヒューマン)族プレイヤーはかなり珍しがられ、オレもちょっとした有名人となっている。


 そんな自由度の高いオンラインゲームにも、30年の歳月を経てついに<サービス終了>の烙印が押されてしまった。


 理由というのは単純にソースコードがスパゲッティどころかビビンバ並みにグチャグチャになってしまい、これ以上のコンテンツ追加がほぼ不可能になってしまったうえに、長年溜まったユーザーデータも膨大な量となってしまい、維持費が3年以上前から既に限界を超えていたからというのが主な内容らしい。


 そんなわけでオレ達は今、サービス終了の1ヶ月前から最後の大規模の<P(プレイヤー)V()P(プレイヤー)>……いや、<G(ギルド)V()G(ギルド)>……いやいや、まだ言い表し足りていない。ギルド同士が連合を組んだ、ギルド連合とギルド連合の対戦<U(連合)V()U(連合)>と言うべきプレイヤー主催イベントの真っ最中だ。



 * * * *



 2つの大陸に挟まれた海。

 この辺りは普段、波と海鳥の音しか聞こえないフィールドなのだが、大陸から無数の魔法や弾丸などが飛び交っていることで、辺り一帯から凄まじい音が鳴り響いている。

 そんな数々の攻撃スキルから放たれる七色の光に紛れてオレ達は空から海上を移動していた。

 

「ホイップちゃん、2時方向から敵の新手が来てるぞ!」


 横から声をかけてくるのはオレと同期のギルドメンバーで同じ人間(ヒューマン)族の<黒キノコ>さんだ。

 ちなみにホイップというのはオレが使っているキャラクターの名前<アリスホイップ>の略で、サブのキャラクターやテイムしたモンスターの名前も「○○ホイップ」で統一しているので、親しい人からは「ホイップ」、そこまで親しくない人からは「アリス」と呼ばれている。


「嫌な角度から攻めてくるなぁ。これじゃあトラップばら撒いてるヒマなんてないじゃねーか。」


 オレ達が所属しているギルド<空の花園>は、速さに重点を置いたメンバーが多い。そのためオレ達のギルドは今回、前線での遊撃を任された。


「あ~ホイップ組、”フネの主砲”を撃つからまっすぐそのままの速度を維持してちょー。」


 ギルド用の通信から声を発したのは、各ギルドが1機ずつ所有できる<空中戦艦>で指令を務めている兎人(ラビットマン)族で、うちのギルドのマスコットの立ち位置になっている<かたゆでたまご>さんだ。


 ドギュウウウウウウウウウンッ!!


 凄まじい轟音と眩しい光と共にオレ達の空中戦艦から<戦艦>スキルの<コスモキャノン>が放たれ、こちらに向かっていた敵の増援に直撃した。

 しかし、この<コスモキャノン>は準備する段階で主砲部から光が見えるスキルのため対策がしやすく、案の定敵側は当たる直前まで全員で防御系のバフを必死にかけていたため、ただ遠くに押し出されただけとなってしまっている。

 とはいえ、このままではお互いに数を減らし合うだけになるはずだったので悪くはない一手だっただろう。


 ビーッ! ビーッ! ビーッ!


 嫌悪感を与えるような警告音が鳴り響く。高い<戦場レベル>の発生だ。

 <戦場レベル>というのは、土煙や冷気といったフィールドに発生する特殊効果のことだ。

 土煙なら<命中率ダウン>や<視界不良>、冷気なら<移動速度低下>や<スタミナ消費量増加>といった効果がプレイヤーを襲う。そして<戦場レベル>が高いほどその効果や描写も激しくなる。

 ちなみに今回発生した<戦場レベル>は……


「<乱気流Lv5>だって!? マズい、すぐに移動するぞ!!」

「だっ、ダメだ間に合わないッ・・・!」 


 ドカーンッ!!


 爆発したのはオレが乗っていた<錬金術>で作られた搭乗できるゴーレムという設定の、どこからどう見てもSFのスーパーロボットにしか見えない<ギガントゴーレム>だ。

 <戦場レベル>は敵味方関係なしに適応されてしまう厄介なもので、一歩間違えるだけでもこのように大参事になってしまう事が良くある。


「うわあああっ! オレの<アンヴァル>がぁ~っ!!」


 <アンヴァル>というのは、オレのギガントゴーレムの名前で、その由来はある神話の太陽神が乗っていた馬の名前からだ。

 主に防御力が減る代わりに移動速度がすごく上がる素材ばかりで作らており、ほとんど戦闘よりも移動用に使うことが多い代物だ。

 特にプレイヤーとはHP(体力)SP(スタミナ)MP(マナ)が別個に設定されてあるため、速度増加のバフをてんこ盛りにして移動しても、降りた後には何の支障もなく行動ができるので、そういう使い方をする人が多いのだ。

 ただ、コイツにも弱点がいくつかある。

 1つ目は狭いダンジョンには持っていくことも呼び出すこともできないこと。

 2つ目は呼び出す準備時間だけで5秒、位置を指定したあとにさらに5秒。最短でも10秒かかってしまうこと。

 3つ目は種類にもよるが戦場レベルが5以上だとHPが徐々に減っていく。ただし、これは防御力を上げたり対抗効果の素材を取り入れることで抑えることが出来る。逆にオレのアンヴァルみたいに防御力が低い場合はすぐに壊れてしまう。

 そして4つ目はHPが0になるとリアルタイムで24時間経たないと再使用できず、時間が経っても残りHPはたったの1しか残っておらず、専用の回復手段を用いる必要があるということ。

 つまるところ、かなり状況に左右されるコンテンツであり、オレのアンヴァルは最低でも24時間経たないとまた乗れないのだ……。


「ホイップちゃん!下だッ!」

「ふぇ?」


 突如としてオレの真下から現れたのは、不定期に出現するタイプの<フィールドボス>である巨大イカモンスターの<クラーケン>だった。

 不意を突かれたオレは勢いよく海面から飛び出てきたクラーケンに衝突してバランスを崩し、そのまま呆気なくクラーケンの専用スキル<触手捕縛>で身動きが取れなくなった。


「すぐ助けてやるからな!」


 黒キノコさんがオレを助けようとクラーケンを攻撃するが、彼もまたあっさりとクラーケンの触手の餌食となってしまい、オレは思わず「何やってんのぉ~!」と笑い声を含みながら叫んでしまった。

 そう、<触手捕縛>は合計10体のキャラクターを捕まえることが出来るスキルなのだ。

 それはギガントゴーレムも例外ではなく、黒キノコさん自慢の戦闘用ギガントゴーレム<我が偉大なムスコ>でさえ動きを封じてしまうのだ。


「くっ、仕方ない……。少しの間さらばだ、我が偉大なムスコよ!」

「前々から思ってたんだが、そのセリフ去勢してるようにしか聞こえないぞっ!!」

「それを狙って言ってんだよっ!!」

「確信犯かーい!?」


 ドギュウウウウウウウウウンッ!!



 * * * *



「いやはや~、ザンネンだったねェ」

「まったく、クラーケンに捕まってる間に主砲撃ってくるとか、アイツらに空気読めよって言いたかったぜ!」

「こんなことなら、本来のギルドマスターである<俺が嫁>さんが残してくれた<あのときの景品>を使えば良かったかもなぁー……。」


 オレ達が今いるのは我がギルド自慢の空中戦艦<おもちゃ箱>。……が墜落した後に強制移動させられる修理ドッグの中だ。

 残念と言いながら全然残念そうに聞こえない愉快な声で話すかたゆでたまごさん。

 数々のアクシデントに腹を立てている黒キノコさん。

 使わない選択肢をしたことを悔やみ落ち込むオレことアリスホイップ。

 3人とも違った感情を浮き彫りにさせながら反省会のようなものをしていた。


「まァ~確かに、イマはホイップがギルマスなんだからオレガのギガント使っちゃってもヨカッタかもねェ?」

「それ以前に、ホイップちゃんのギガントが戦場レベルに弱いのにも関わらずスレスレにコスモキャノンなんかブッ放したのがマズかったんじゃないか?」

「いや、オレはギガントより白兵戦用の装備してたから、むしろギガントが壊れた後の方が重要だったんだ。ゆでたま先輩の判断は間違ってない。間違ってたのはオレが<あのギガント>に乗らなかったことだ……」


 実は俺たちのギルドは半年前、この<空の花園>を創設したギルドマスターである<俺が嫁>さんが引退しており、残ったギルドの遺産を今いるオレ達3人で分け合っていたのだ。

 オレはこの3人の中で一番ログイン率が高かったため、満場一致でギルドマスターに選任されたので、今の俺はギルドマスター専用の装備や施設を使用する権限を持っている。

 その中にギルドマスターが公式PVP大会で優勝した賞品として手に入れた、破格の性能を持ったギガントゴーレム<ラグナロク>があった。

 移動速度こそ中の上くらいだが、攻撃力と防御力が課金で手に入る超レアな素材を限界まで投入しても一回りか二回りほど届かないくらい高く、さらに攻撃用と防御用の専用スキルまで用意されているという。まさに最強兵器と言っても過言ではない代物なのだ。

 俺が嫁さんはこのギガントゴーレムを使って、あらゆるコンテンツのタイムアタックを塗り替えていき、あっという間にうちのギルドは良くも悪くも有名になった。

 しかし残念なことに、この公式PVP大会から1週間後にファンタジーテールオンラインのサービス終了が発表され、俺が嫁さんはショックのあまりすぐに引退の意思をオレ達に伝え、このギルドを残して去ってしまった。


「ひょっとしたらあのクラーケン、俺らに『傷が浅いうちにさっさとこのゲームをやめろ』って言いに来たのかもな……」


 押しが強い黒キノコさんが、珍しく弱気なセリフを吐いてオレ達は目を丸くした。

 正確には、オレ達のパソコンの画面に搭載されているカメラが現実世界の俺たちの表情を読み取って、事前に設定してある表情に自動で切り替わっただけなので、実際の表情はお互いわからない。


「確かに、たらばかに、今日壊されたおかげであと3週間は<おもちゃ箱>が空を飛ぶ姿をミられるのはカクテイだからねェ。少なくとも『残り時間が少ないんだから争いはもうヤメてよォ~』とはイッてそうだヮ~」


「…………。」


 しばらく沈黙が続き、誰も話を切り出せないまま、お互い”最後の挨拶”をしてログアウトした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ