ヒデト。現実の世界に戻る方法があると知る
少しだまった後、カルマが口を開く。
「こっちから君の世界へ行く方法は、一つだけある・・」
「あるのか!教えてくれ!」
「この世界にある、テレポ石と呼ばれてる石の力を使えば、望むところであればどこでも行くことが出来る」
「その石は・・どこにあるんだ?」
「この世界でもっとも危険な場所。ダークシティに行けばあると言われているわ」
「ダークシティ・・」
「そう、一度はいったら、人格が壊れてしまうといわれている危険な場所。だから、みんな噂はするけれど、行く人は誰もいない」
「そんな・・そんな場所に石はあるのか・・」
「・・これからどうするかは、アジトで休んで考えればいいと想う、今は少し休んで」
「・・・わかった・・」
いつの間にか僕たちは、深い森をぬけていた。
夕日のような光が開けた砂利道をつつみこむ。
遠くの方に、町のようなものがみえた。
あの町にカルマのアジトがあるのだろうか。
期待と不安をかかえつつ、僕はいっこくもはやく休みたいという欲求を飲み込む。そして、大きく息をすい、はいた。
カルマは重たそうな武器と、重いであろう僕をささえ、ただひたすら足を前へと進めている。
カルマを見ていると、自分と年齢が2つしか変わらないのに、とても頼りになる妹のことを思い出す。
兄貴はどこにいっても、なさけないよな・・。
政府が異世界の人間をこばんでるのなら、遠くに見えるあの町の住人もそうなのかもしれない。
僕は、その不安をカルマに話した。すると彼女は
「えぇ。君の正体は、まわりにばれないようにしなくちゃいけないわ」
と、僕の目をまっすぐ見つめ、そう言うのだった。
凛とした白銀の髪の少女が、どうしてここまで見知らぬ他人の僕をかばうのか、知りたくてたまらなかった。
その思いは、一歩また一歩、町にちかずくにつれ、言葉をつむぎはじめる。
「・・カルマはどうして、異世界から来た僕に、こんな・・優しくできるんだ?」
僕の曇った表情を笑顔に変えるかのように、彼女は答える。
「これが、私だから」