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異世界に来たやつ皆、XX !  作者: なみやん
第一章  異世界へ
5/8

謎の美少女、カルマ。登場

滴り落ちる血を想像していた目に、別の映像が映る。

 目の前にいた山田が、まるで白い砂のようにサラサラと風に流されていく。

 やがて、完全に姿は消え、跡形もなくなってしまった。

 まるで、はじめからそこにいなかったかのように。

 「どっ・・どういう」

 口から言葉がこぼれる。

 どういう事なのか、いったい何がおこっているのか、僕には理解する事ができない。

 定まらない目の焦点をどうにかマントの男にあわせる。

 マントの男がゆっくりと僕に近づき、言った。

 「あいつは嘘をついていた。私にはわかる。イセカイニきたやつは皆、あんな奴ばかりだ。だから、殺す。どこにいても見つけて殺す。もちろん、お前もだ」

 「っ・・僕をこっころすなら、どうして山田を先に殺したんだ!」

  恐怖と怒りがまじった声がのどからあふれ、それを止めることができない。

 「ここは!異世界じゃない!現実だ!あんたは人殺しだ!人をっ・・」

 僕は山田が嫌いだ。

 だけれど、彼がこの男に殺されるすじあいはない。

 森に火をつけてしまったけれど、それはわざとじゃない、そのことで警察につきだすなら、まだ分かる。

 だけど、殺していい理由にはならない!

 そうだ、冷静に考えれば、これはおかしいことなんだ。

 急に現れて、人を殺すなんて!

 こいつは無差別に人を襲う通り魔と同じだ!

 僕は心の中の怒りを燃やした。

 恐怖と言う感情を消し去るために。

 しかし、僕の怒りの炎は恐怖という名の冷水で消されていく。

 マントの男の鎌が僕の頬をかすめたからだ。

 「いせかいにきたやつみんなしね」

 さっきまで普通に会話していたのが、嘘のようだった。

 マントの男は、意志疎通が出来ないロボットのように言葉を繰り返す。

 「いせかいにきたやつ皆死ね」

 その言葉と同時に、何度も振り落とされる刃。

 それは、僕の体の間一髪の所でそれ、地面につきささった。

 黒いマントの男が、また攻撃をしかけてくる。

 もう、僕にはその攻撃をよける体力も逃げる力も残っていない。

 地面を這いながら、かろうじて動く両腕を前へ、前へと動かす。




  ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「だめだ・・もう動けない」

 音のない森の中、僕はその場で力つきた。

 もうろうとした意識の中でかすかに音が聞こえた。

 マントの男の足音。

 それと、もうひとつ・・

 「政府の化け物!彼から離れなさい!」

 女の子の声だ。政府の化け物とは、マントの男の事だろうか。

 力強く、それでいてどこか優しく、包み込むような声。

 ドドドドドっ!突然銃声がひびく。

 彼女の武器?その銃声はマシンガンそのものだった。

 彼女とマントの男が戦っている。

 どちらが優勢なのかはわからない。

 僕の気力と体力はすでに限界で、体は鉛のように重く、視界はぼやけていた。

 彼女が僕の近くに来てわかったことは、華奢な体に似合わない大型の武器を持っていた事くらいで、彼女が今、どんな顔で僕の事を見下ろしているのかさえ、謎だった。

 マントの男といい、謎が多いものは恐怖心をあおる。

 まだ、あかされていない真実が牙をむき、自分をおそうかもしれないと、感じるからだ。

 だけど、僕はその時。

 恐怖心どころか、安心感という感情をいだいていた。

 「もう大丈夫。あいつは遠くに行ったわ」

 彼女の声が、僕の弱り切った心を癒していくのがわかる。

 「ほら、私につかまって」

 そういって彼女は、僕の右うでを彼女の肩に回し、僕の体を空の方へと引き上げた。

 「近くにアジトがあるわ。そこまで、歩ける?」

 「うん・・平気・・だ。ありがとう・・」

 「どういたしまして。ところで君の名前は?」

 「田中 ヒデト・・・。君は?」

 「私は、カルマよ。よろしくね。」

 あっさりとっした口調でカルマは言った。

 生い茂る草をかきわけ森をぬけていく。

 カルマに聞きたいことは、数え切れないほどあった。

 ここは、どこなのか。

 黒いマントの男は何者なのか。

 山田は本当に死んでしまったのか。 

 

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