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ダンジョン経営物

何故か召喚したら女の子が増えた

作者: 名嵐

予想以上に話が進まなかった……


「では、管理ツールの確認をしましょう」


 そう言ったフォラスに提案されて俺と茉莉奈さんは持っていたタブレットに目を向ける。

 どうやらフォラスを生み出した事でコアとの接続が出来たからかディスプレイには神々しい光が差し込む山とその山の裾に洞窟らしい穴が開いているロゴが表示されていた。

 えっ? 起動画面なのかコレ。と言うか、OSの名前がOracleオラクルって預言とか神託とかって意味の言葉じゃなかったっけ?


「どうやら、無事に起動しているようですね」


 はっ、起動しないって事有るのか?

 勢いよくディスプレイからフォラスに視線を向けた俺に気が付いたのか、フォラスは満面の笑みを浮かべながら答える。


「稀にですがね」


 何か含みを持っていそうなその笑みに俺だけではなく茉莉奈さんまで少し引いてしまう。

 ま、まぁ、良いけどそれでアイコンが何個か有る画面に切り替わったけど?


「では、順番に説明していきますね」


 そう言ってゆっくりと出来るだけ分かり易く説明し始めたフォラスの言葉を聞き逃さない様に俺はディスプレイにもう一度視線を向けながらも耳を傾ける。

 左上から順番にメールマーク、洞窟の入り口のマーク、モンスターっぽいモノと宝箱のマーク、パソコンマーク、何か立て札みたいな物に何か書かれているような紙が張り付けてあるたぶん掲示板マーク、ショッピングカートのマーク、ガチャガチャのボールのマーク、ハンマーとそれを叩きつける台のマークと計八個有る訳で大半は何となくわかる訳だが……。


「まず、左上の封筒のマークについてですが、メルキュルリス様からの連絡事項などが届くのを見る為の物です」


 何でもダンジョンマスターたちの状況や世界の状態次第で何が起こるか予想できない為、連絡手段(そうは言ってもこっちから返信できない)として用意されているらしい。

 まぁ、それ以外にもメルキュルリスは何らかの方法でダンジョンマスターたちと交流を持つつもりらしいが。


「次は洞窟の絵のマークですが、ダンジョンの編集用ツールです」


 このツールを起動する事でダンジョンの編集が出来ると。

 で、その横に有るモンスターと宝箱のマークが所有しているモンスターや武器などのダンジョンに設置できるアイテムの一覧が確認できる物で特典のガチャチケットもここの中から使う事が出来るらしい。

 次いでパソコンマークと掲示板っぽいマーク(掲示板で当たってた)はパソコンはインターネットに接続出来る物で|今までの世界(地球)は勿論の事、今後はダンジョンマスターたちだけがアクセスできる電子スペースも実装予定らしい。また、掲示板は文字通りダンジョンマスター専用の掲示板サイトに繋がるらしく、既に何人かのマスターが書き込んでいるらしい。

 まぁ、お早い事でと言いたくなってしまう。

 残りのショッピングカートマークはメルキュルリスの説明に有った取り寄せの出来るネットショッピングモールで≪ミステリアスランド≫と言う名前、ガチャガチャのボールマークはそのままガチャが引けるツール、最後のはモンスターなどを他のマスターたちに売る為のオークションツールだった。

 特に変わったものは無かった気がしたけど、茉莉奈さんは大丈夫かな?

 そうして、茉莉奈さんの方を見るとフォラスがもう一度最初からさっきよりも分かり易く説明しなおしている姿が見えた。


「……という物です。これで大丈夫でしょうか?」


「……たぶん、大丈夫です」


 不安が残る様に頷く茉莉奈さんの姿にちょっと心配になった俺だが、フォラスもいるし少しの付き合いながら本当に分からなかったりしたら聞いてくるだろうと思ったから今はそのままにしておくことにした。


「はぁ、そうですか。では、取りあえず先に進めさせていただきます」


 そう言ったフォラスは微妙に崩れた笑顔でチラチラと茉莉奈さんを見ながらも次にやる事について俺たちに教えてくれる。


「その前に待った!お知らせのマークの隅になんか数字が書いてあるけど?」


「それはメルキュルリス様からの何か連絡が来てる証拠ですね」


 俺の言葉にフォラスは一言で簡単に答える。

 まぁ、確かにそんな気はしてたけどさぁ……。

 そう思いながら俺はお知らせマークを触って画面を切り替える。

 すると良くあるメールフォルダのような画面に切り替わり、メルキュルリスからの連絡が一通届いている事が直ぐに分かった。

 えっと、タイトルは『シヴィラガリアへようこそ!』か……。なんか、気が抜けたというかガクッと来たっていうか……。

 そんな風に思うが見ない訳にはいかないだろうとそれをタップして表示させる。




 タイトル:シヴィラガリアへようこそ!

 差出人 :メルキュルリス

 本 文 :

 これを見ているという事はシヴィラガリアに無事転送されてダンジョンコアでパートナーの生成を行えたという事でしょう。

 さて、この度のこのような連絡を送らせていただいたのは動作確認と共にお伝えしたい事が有りましたので送らさせていただきました。

 まず、動作確認とはこの機能を含めた数多くの物を皆様が使いやすいであろう形で創らせていただきました。ただ、シヴィラガリアには存在していなかったものの為に私自身も試行錯誤の末の結果の為にしっかりと動いているか自信が無かった為です。

 そして、何故わざわざそのような形にしたのかというと皆様にはお願いした事に集中していただきたい為に使い慣れたであろうものをモデルにさせていただきました。

 次に現状で幾つか皆様の為に考えている事が有り、その事で今後変更していく事が有ると思いますが、どうぞシヴィラガリアの為にもご協力をよろしくお願いいたします。




 読み終わった俺が顔を上げると同じようにそれを読んでいただろう茉莉奈さんがタブレットから顔を上げているところだった。

 そして、その顔は何か改めて決めたことが有るかのように真剣な顔つきだった。


「さて、次に行うのは休憩室の確認です。因みに今はタブレットで確認していた管理ツールに関してですが、このコアルームとこれから行く休憩室ではパソコンで操作できるようにもなっています」


 読み終わるのを待っていたフォラスがそう言う。

 えっ? そんな言葉についフォラスの方を見てしまった俺だったが、フォラスはその事に気が付いていないのか説明を続けている。


「休憩室を利用するにはコアルームにいる事が第一条件です。次に互いに別の休憩室に入る事はできません」


 うん、それはメルキュルリスが目の前で設定してるのを見てたから。

 で、休憩室に有るのがパソコン、ベッドにお風呂、トイレと……。

 他にも色々と置けるらしいけど、そっちにばっかDPを使ってるとダンジョン経営が大変になるから気を付けないといけないか……。


「ここまでで何か気になった事は?」


 そう聞いてくるフォラスに茉莉奈さんは何か悩んでいる表情を見せているようだが、言葉に出すには時間が足らなそうな感じだ。

 なら、俺から聞いていいかとフォラスに問いかけると満面の笑みと共に頷かれる。

 じゃあ、聞くけど入るときの条件とか何か有るのか? 例えば侵入者がコアルームにいると入れないとかみたいな。


「そうですね。今言われた事はまさに言おうと思っていた事です」


 何か嬉しそうにそう言うフォラス曰く、他にも注意事項として休憩室内で管理ツールはパソコンでのみ使えるが制限が掛かるらしく、ダンジョンの編集は出来ずに状況を見る事しか出来ないらしい。

 そういう事も有ってダンジョンの編集を含め、基本的にコアルームで色々と行って休憩室は名前通りに休む時以外は使わない方が良さそうな気がしてきた。

 しかし、休憩室だけパソコンか……。正直、タブレットをあまり使い慣れてない身からするとコアルームでもパソコンが使いたいところなんだけど……。


「コアルームでもパソコンは使えますよ?」


 俺の言葉を聞いて不思議そうな顔で答えたフォラスに一瞬だけイラっと来た。

 うん、落ち着け俺。相手はまだ生まれたばかりの存在だから。

 取りあえず、コアルームでも使えるのは良いんだがどうやって使えばいいんだ?


「はい、デスクモード起動と言っていただければ使用できるようになります」


 フォラスの言葉にすぐさま行動した俺に答えるようにコアルームの一部が変化して、今まで存在していなかった机と椅子、そしてそこに置かれたパソコン一式が現れた。

 パソコンに近づきながらもチラっと茉莉奈さんの様子を見てみると急に現れたそれに驚いたようで目を白黒させながらもフォラスに聞いているのがよく分かる。

 あの様子だと茉莉奈さんも同じようにしそうだな……。

 ちょっと薄暗い感じで岩肌がむき出しの部屋で中央に台座の上に浮かぶクリスタル、で、その部屋に新しくパソコン関係一式って違和感が凄いな、これ。

 これってコアルームも内装を変える事出来るのかな?


「ええ、可能です。ただし、その場合はDPを消費しますが」


 茉莉奈さんも同じように出したパソコンを触り始めたのを見届けてからフォラスはそう答えた。

 ふーん、まあ仕方ないよね。それよりそろそろダンジョン創った方が良いかな?


「そうですね。公開するかどうかは置いといても作り始めていただけると有難いです」


 じゃあ、まずはガチャからだね。

 そんな俺の言葉に気が付いたのか、茉莉奈さんが俺の方を向く。


「ガチャですか?」


 そう。先にモンスターを手に入れておけば創るダンジョンがもっと考えやすくなるしね。

 だから、最初は特典で貰ったチケットと使ってみようか。

 という事で、タブレットと変わらない画面を見てからマウス操作でチケットを使う。

 すると新しく何か儀式を行うような蝋燭(たいまつ?)が周りに置かれた魔法陣の書かれた部屋を描写したウインドウが表示される。

 そして、魔法陣の上でチケットが破られ、そこから漏れた光が魔法陣に吸収されて魔法陣自体が輝き始める。

 真っ白になったウインドウに次に表示されたのは魔法陣の上で佇む一人の女性の姿だった。

 血のように赤にドレスを着たその女性は閉じていた目を開くと俺をしっかりと見つめて手を振ってくる。

 黒髪に白雪のような白い肌、そして、吸い込まれそうになるほど朱い瞳にただただ見つめているだけの俺。

 どれぐらい経った頃か不意にその画面に一つのメッセージが表示される。


『ランク8 ヴァンパイア・クィーンをダンジョン内に召喚しますか? Y/N』


 えっ、ランク8? 何段階での8なのか知らんけど、喜んでいいのか?

 脳裏に様々な事が思い浮かんで消えていく中で思ったのは取りあえずはそのまま召喚してみるかという事だった。

 ヴァンパイア・クィーンは反応の鈍い俺にお怒りなのか腰に手を当てて早くしてよとアピールしている。

 茉莉奈さんやフォラスがどうしているかも気になるが、急ぐように俺はカーソルでイエスを選択した。すると今度はパソコンを挿んだ正面の床に魔法陣が現れて輝き始める。

 そして、次の瞬間、画面に表示されていたままのヴァンパイア・クィーンがそこに立っていた。


「やっと、召喚してくれた!もう、遅いわよ」


 そういうが早いかその姿が一瞬にして消え、次の瞬間には座っていた俺の膝の上に乗った状態でヴァンパイア・クィーンが抱きついていた。

 いやいやいや、意味が分かんないんですけど。どうして、膝の上にいるんだよ!


「そこまでにしていただけませんかな?」


 同じ様にいつの間にか傍に来ていたフォラスによって直ぐにヴァンパイア・クィーンは俺から引き離されるが、その事に不満そうにフォラスを鋭い目で見つめる。

 そして、視界の淵で何やら一触即発の雰囲気にあわあわと慌てだした茉莉奈さんの姿が見えたが直ぐに二人の声に俺は視線をそっちに移す。


「えー、マスターにご挨拶をと思ったんだけどなー」


「別に抱き着かなくてもよかったと思いますが?」


 まるでフォラスに対する態度が嘘のように俺に愛嬌を振り撒くヴァンパイア・クィーン。

 既に意識は俺にしか向いていないようでフォラスに背を向けて俺に話しかけてくる。


「改めまして、ヴァンパイア・クィーンのエリザベート・バートゥツェッペと申します。エリザと呼んでください、マスター」


 そう言って赤いドレスを掴んで綺麗なカーテシーをするエリザの姿はその見た目も手伝って物語に出てくるような貴族令嬢のように見えた。

 もっとも、その後ろで少し怒り気味のフォラスの姿が無ければもっと良かったんだけどな。

 ただ、俺としてはそんな事よりもエリザが名乗った事に疑問が湧いた。そして、そのままエリザの後ろに立っているフォラスに視線を向けると今までの様子が嘘のように驚いた表情をしていた。


()名前持ち(ネームド)ですか……」


 あぁ、やっぱりそれは驚いていい事なんだ……。あまりに自然な流れで言われたから名前が有って一瞬当たり前かと思ったよ。

 俺の視線に気が付いたフォラスは咳を一つして誤魔化すように俺から視線を外す。


「ね、ねーむどですか?」


 茉莉奈さんのそんな声が後ろから聞こえてきた。

 まぁ、知らないよな……。簡単に言うと通常よりも強いモンスターってことだよ。

 ゲームモノによっても違ったけど、基本的には“○○の”とかの異名っぽいのとか今回みたいに人の名前みたいなのを持ってるとそういう扱いになるんだ。


「へぇー、そうなんですね!」


 勉強になりますという何かほんわかするような事を言っている茉莉奈さんに視線を向けるとどうやら召喚したと思われるモンスターを腕で抱えて直ぐ傍まで来ていた。


「そうよ! 私は凄いのよ!!」


 何か威張るような風に言いながらも茉莉奈さんに視線を向けた俺に勢い良く飛びついてくるエリザ。

 バランスを崩しながらもなんとか耐えた俺は背中から感じる柔らかさに頬が緩みそうになるが目の前に茉莉奈さんがいる事を思い出して必死にそれを堪えようとする。


「ですが、ヴァンパイア・クィーンのネームドとはかなりのモノですよ、クロー様」


 そう言ったフォラスだったが、俺はそんな事を言われても他の事で頭が一杯過ぎて聞いている余裕はなかった。

 フォラス曰くこの世界のネームドモンスターには2種類有るらしく、一つはエリザのように最初から名前を持っている個体、もう一つがダンジョンマスターなどに命名された個体が成長したもののらしい。

 勿論、前者の方が能力が高く優れた能力も持っていて、同種のモンスターよりはランクでいうと表示されたものより一つ上になるらしい。そして、エリザの場合だと8ではなくて9という事になるという事だ。

 また、ガチャでネームドが出るのはかなり幸運な事らしく、俺に抱き着いているエリザを見ながらフォラスはしみじみと言っていた。


「では、次はマリナさまの番……」


 唐突にフォラスの声が止まった。

 その事で不思議そうにしている茉莉奈さんが目に入るが同じように背中でエリザが固まっているのが背中越しによく分かる。

 なんか変わったことでも有ったか?

 疑問に思いながらも顔だけ振り返り、フォラスを見ると茉莉奈さんを見つめて固まっているのが分かる。同じ様に背中にいるエリザも茉莉奈さんを見つめている。

 未だに不思議そうにしている茉莉奈さんと二人を交互に見ていると二人の視線の先が茉莉奈さん自身でなく、腕の中にいるモンスターを見つめて固まっているように見えた。

 そして、その視線の先にいる緑色の体毛に覆われた狐みたいなモンスターはそんな二人の視線に怯えたのか、その顔を二人から逸らして茉莉奈さんに擦りつける。


「か、か、カーバンクル、ですか……」


「え、嘘でしょ?」


 信じられないのか呆然とした表情のままそう呟く二人と首を傾げる茉莉奈さん。

 でも、カーバンクルか……。特に額に真紅の宝石が有ったような気がしなかったけどな?


「キューちゃんがどうかしたんですか?」


「「キューちゃん……?」」


「はい! 鳴き声から決めたんです!!」


 嬉しそうに答える茉莉奈さんに同意するように顔を見せて鳴くカーバンクルのキューちゃん。

 直ぐにその顔をまた茉莉奈さんに擦り付けて隠してしまうが、その額に赤く光る物が見えた。

 まぁ、良いんだけどさ、確かカーバンクルって風属性の精霊とかの扱いが多かったような気がしたけど……。


「そうですね。カーバンクルは高位の・・・風の精霊と言われています」


 未だに信じれないモノを見るようなフォラスだったが、俺の疑問には答えてくれる。

 まぁ、カーバンクルだと一番最初にイメージするのがグミみたいなモノを消してくゲームのマスコットキャラな俺はだいぶ歳をとっているのかな……。


「しかし、通常だとそうそうお目に掛かれるモノでは無いんですが……」


「そうね。私も今回初めて見た訳だし……」


 相変わらず俺に抱き着いたエリザですらそういうという事はかなり珍しいんだろうな。

 後でフォラスから教えてもらった事だが、カーバンクルはその見た目と見た目に反する力の強さから乱獲されてしまって、今ではほぼ人前には姿を現さないらしく、ガチャでもランク9のモンスターとして登録されているものの、ランク9の中でも出現する確率はかなり低かったらしい。

 しかし、キューちゃんか……。


「可愛くないですか?」


 うん、可愛いには可愛いんだけど、なんか余計に一番最初のイメージっぽく思っちゃうよ。

 そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、キューちゃんを両手で抱えて高く持ち上げて見つめる茉莉奈さんの姿に俺も含めて三人はため息をしてしまう。


「これでお二人とも高位のモンスターを手に入れた訳ですが……」


 何か遠い目をしながら茉莉奈さんから目を逸らすフォラスを温かい目で見る俺とエリザ。

 そんな状態にした原因の一人だが別に意図的にそんな事をした訳では無いし、どちらかと言うと引きが良かったのは茉莉奈さんの方だし……。まぁ、暫くは優しくしてあげるか。


「次は通常のガチャをやってみてはどうですか?」


 何かに縋るように提案してきたフォラスに可哀想に思っていた俺は迷いなく乗る事にした。

 何よりまだ召喚したモンスターはエリザのみ。これからダンジョンを造っていくには数が必要になってくるはずだしな。

 そう思いながら操作して通常のガチャ画面に入ると当たり前のように10連にするかどうかを選べるようだった。


「現在、所有しているDPは画面縁に表示されていますよ」


 フォラスの言葉に見てみると1万DP持っている事が分かった。たぶん、この表示は他の画面の時も有るはずだよな。

 ただ、今はそんな事よりもガチャ優先。DPにも余裕が有る今なら10連を選んだ方がお得なはず!

 そんな考えで勢いよく選択してみたが、チケットを使った時のように魔法陣が表示されて10回光ると結果が表示されるだけで特に変わった事は無さそうだった。

 まぁ、強いて言えば魔法陣の光の色が召喚される度に違っていた事ぐらい。たぶん、召喚されたモンスターのランクで色が違うんだろうな。


『インプ、ホーンラビット、フォレストウルフ、インプ、ゴブリン、アントワーカー、トレント、ホーンラビット、コボルトソードマン、ハイゴブリンナイトを入手しました』


 エリザの時の同じ様に召喚するかどうかを聞かれたが、拒否して個々の能力を見る為に一覧の画面を開く。

 複数出たのがインプとホーンラビットか……。複数出ると何か意味が有るのか?

 と言うか、引いた数だけしか召喚できないとか無いよな?


「ご安心ください、クロー様。ダンジョン編集を始めていただければ分かると思いますが、ガチャから出てくるのはダンジョン内に設置できる召喚陣の数になります」


「召喚陣の数……?」


「はい、先ほど使われたような特殊なチケットを除いてガチャで出てくるのは全て召喚陣の数になります」


 どうやらエリザを引いたチケットはそのモンスターを一体召喚するものだったようで今すぐにDPを使って他のヴァンパイア・クィーンを召喚できないようだ。

 これはオークションで他のダンジョンマスターから買った場合も同じらしく、どうしても数を増やしたい場合は頑張ってガチャで引くか、オークションで買うか、買ったモンスターをダンジョンで繁殖させるかしかないらしい。

 で、通常ガチャから引いたモンスターは管理ツールに召喚陣が登録され、編集している時にそれを階層に登録する事でその階層に召喚できるようになり、そこで何匹召喚するかを設定するとダンジョン内にその数まで召喚されるようになっているらしい。

 注意する事として、侵入者に倒されたりした場合はDPが足りている場合は自動に補充されるようになっているから気を付けないと知らないうちにDPが無くなってしまうと……。

 他にも登録できる召喚陣の数は持っている数に依存するので、一つしか持っていない召喚陣を2つの階層に登録する事は出来ないらしい。まぁ、裏技みたいなものとして既に召喚されてダンジョン内で活動しているモンスターを他の階層に配置し直す事は出来るらしいのでうまく使っていきたいな。


「なので、ガチャから引いたモンスターでもダンジョン内で繁殖できるようにしておくと良いかと思います」


 まぁ、実際にやってみれば分かるだろうと思いながらも一応はガチャで出たモンスターを確認してみる。


 ・ランク1 ゴブリン、インプ(2)、ホーンラビット(2)

 ・ランク2 フォレストウルフ、アントワーカー、コボルトソードマン

 ・ランク5 トレント

 ・ランク6 ハイゴブリンナイト


 ……うん、分かってたけどさ、微妙な感じだ。最初から通常ガチャを引いている時点で期待していないけどさ……。

 これから予想するとゴブリンは職業持ちもいるし、たぶん進化するんだろうな……。

 他にも同じようながいるだろうけど、どちらにしろ進化とか職業持ちになる条件が分からないと意味無いし、取りあえずは考えれる事としてハイゴブリンナイトとゴブリンは一緒にできる事ぐらいか。

 後、気になるのが縄張りと言うか、異種族間での友好関係とかが有るかなんだよな。これはフォラスに聞けば何か分かるかもしれない。

 そう思ってフォラスを見てみるとキューちゃんと遊んでいる茉莉奈さんにガチャの事を教えている所だった。

 ん、そういえばエリザはどこに行った?

 知らないうちに背中から消えた重みと柔らかさを探して辺りを確認してみると茉莉奈さんの傍でどうにかキューちゃんと遊ぼうとしているエリザの姿を発見する。

 あの様子だと呼んでも意味なさそうだな……。別に寂しくないんだからな!


「では、今はクロー様が造っている様子を見ていただくだけでも良いのでお願いします」


「はーい」


 どうやらフォラスは茉莉奈さんに何かやってもらうのを諦めたようでそんな声が聞こえてきた。

 まぁ、仕方ないかなと思いながらも二人が近寄ってくるのを待ちながらどんなダンジョンにしようかと考えながら編集画面を起動した。

 新しく開かれたウインドウにはアイコンと同じ洞窟の絵と《D−CRAFT》の文字が現れ、起動中をを現すように洞窟からデフォルメされたモンスターたちが出てくる。そして、暫く待つと完全に起動しきったのか画面が切り替わり、メニューバーと縦に三分割された編集画面が表示された。

 たぶん、D−CRAFTのDってダンジョンから取ってるんだろうな……。


「では、画面の説明に移ります。まず、左からダンジョンの階層一覧と部屋数表示、真ん中が左で選択されたフロアの詳細及び編集画面、右は所有しているモンスターやトラップなどの一覧が表示されています」


 おっ、ホントだ。これを見ると現状のダンジョンは二階層で各階層二部屋になってる。

 試しに第一階層を開いてみるかな。ふーん、入り口からまっすぐ伸びた通路の途中に二つの部屋が有るのか。

 これは作り直さないとダメだなと思いながらも第二階層を開いてみるとこれまた全く同じ作り。

 まぁ、元々造る事を前提としてるから二部屋ずつ有るだけでもマシなのかな。


「そうですね。一度設置した物に関してはそのフロア内で移動させる分にはDPも必要無いので」


 ふーん、そうなんだ。でも、それらなよっぽどの事が無い限りは大丈夫そうだな。

 そいえば、DPって侵入者の撃退以外に何か入手手段は有るのか?


「はい、DPは侵入者の撃退と言うよりはダンジョンへの侵入時にその対象の強さによって溜まっていくのが基本的な入手手段となりますが、それ以外にも地形収入や報酬で手に入ります」


「えっ?じゃあ、あの時決めたことってかなり重要だったんじゃ……」


 だな。まぁ、そこまで不安そうな顔をしなくても大丈夫だと思うよ、茉莉奈さん。

 だろっとフォラスを見てみれば茉莉奈さんを気遣いながらも頷く姿が見える。


「そうです。最初の頃は確かに落差が有るかと思いますが、後々に無くなっていくものだと思われます」


 何より最初から地形収入の良い所なんてなりたてのダンジョンマスターからすればかなり危険な場所でしかない……だろ?


「はい、基本的に大都市の傍やその中にダンジョンを造れば多くの地形収入が手に入れる事が出来ますが変わりに直ぐに力を持った侵入者が来訪する危険性が有ります」


「でも、たくさんDPが手に入るならそれで対応できるような気がするけど?」


「残念ながら思われているほど簡単な話ではないのですよ、マリナ様」


 そっ、どんどん違う侵入者が来るけど、こっちはそんなにモンスターがいない状況になると思うからキューちゃんだってケガどころか命の危険が有ると思うよ。

 それに茉莉奈さんの望んでいるような事は出来ないだろうしね。


「まぁ、もう終わってしまった事は置いときしましょう」


 そうだね。で、地形収入ってどのタイミングで手に入るんだ?

 俺の問いかけにフォラスは茉莉奈さんを宥めながら答える。


「日付の変わった瞬間に入手する事になります」


 へぇー、そうなのか。俺や茉莉奈さんのダンジョンだとどれぐらいになるんだろうな。

 疑問に答えるフォラスによるとここは大陸の中でも有数の山脈地帯らしく、その中でも霊峰と言われるほどの所にダンジョンが造られている為に地形収入も通常の山岳地帯よりは多くなるらしい。


「なので、現状から考えると5階層までが限界だと思います」


 なら、造るのは5階層までにしとこうかな。1階層から4階層までは迷路状にして5階層はボス部屋のみにするとして、問題はどのモンスターをどういう風に設置していくかだよな……。


「因みに言っておきますとこのダンジョンの周りは凶暴なモンスターが生息している森になっていて人類の生活圏には未だ入っていない状態です」


「じゃあ、侵入者が来ないって事?」


「そうとも言えないと思います。今はと言うだけで恐らく遅くても数年後には……」


 ふむ、その言い方だと1年くらいは外敵をほぼ気にせずにダンジョンを造れるって事か。

 そう言った俺の言葉に頷くフォラス。


「えぇ、なので準備期間として用意されている期間も三ヶ月以上と考えていただいて大丈夫です」


「あの、その準備期間ってのは具体的にどんなのなんですか?」


「簡単に言いますとダンジョンの入口の解放を任意でできる期間です。この期間が過ぎると準備が出来てなくても強制的に入口が解放されて侵入者がダンジョン内に現れるようになります」


 なので、それまでにダンジョンを造ってくださいというフォラスに予想していた事だった俺は特に気にする事も無く、茉莉奈さんの相手を任せて編集を始める事にした。




 そうして、俺は途中で抱き着いてきたりしたエリザの相手をしながらもダンジョンの編集を終え、あまり侵入者がいない事から造ったダンジョンは次のような内容になった。

 一階層はインプとホーンラビットが出現する階層でエリザやフォラスに確認したら軽作業が出来ると分かったインプに外と行き来させて罠を自作させたり、外部のモンスターや植物などを採りに行かせれるようにしてインプの住処のようにカモフラージュした。

 二階層はゴブリンとフォレストウルフ、三階層にホーンラビットとアントワーカーを徘徊モンスターとして置き、三階層の最後の部屋にはランク5のトレントを配置して門番にした。

 四階層は次の五階層がボス部屋のみの階層にする為に出来るだけ侵入者を減らす為にコボルトソードマンの群れとそれを率いる形でハイゴブリンナイトを配置したが、実際に臨んだ通りの働きをしてくれるのかが怖い所だ。

 そして、現状での最終階層はヴァンパイア・クィーンのエリザが待ち構えるボス部屋になっているが、正直言って直ぐにここまでたどり着く侵入者が現れるとは思えなかった。


「では、これで完成という事でしたらこのままダンジョンの入口を解放する事が出来ますがどうしますか?」


 因みにだけど、今現状で他のダンジョンマスターが解放しているかどうかって分かるか?

 ウインドウに表示された選択肢を眺めながら俺はフォラスに尋ねてみた。


「そうですね。現状ではまだ誰一人として開放はしていないようです。ただ、解放されると早期解放特典がメルキュルリス様から配布されると思います」


 ふーん、やっぱりそうなんだ。なら、解放しちゃおうかな。

 どうせ侵入者が来ないんだし、インプたちに指示を出して外の様子も確認したいしね。

 そうして、俺は表示されていた解放のボタンを押した。


『ダンジョンが解放されました。これより侵入者が現れるようになります』






 【ようこそ】ダンジョンを造ろう! スレ1【シヴィラガリアへ】


 1:創生と破滅の女神様

 ダンジョンマスターの皆さまの為に情報交換が出来るものを用意しました

 一部制限は掛けさせていただきましたが、不便はないと思います

 なので、挨拶など節度を守ってご自由にお使いください


 2:創生と破滅の女神様

 忘れていましたが、次は950の方が立ててください

 では、より良いダンジョンライフをお祈りします


 3:とあるダンジョンマスターさん

 初カキコ、女神様乙です


 4:とあるダンジョンマスターさん

 女神様、乙です

 皆、よろしく


 5:とあるダンジョンマスターさん

 女神様、乙です

 よろよろでーす


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 46:とあるダンジョンマスターさん

 で、皆はチケの結果どうだった?

 俺はモフモフのナインテイルフォックスっていう狐さん


 47:とあるダンジョンマスターさん

 ≫42 それ、大丈夫なのか?


 48:とあるダンジョンマスターさん

 パートナーが辛い


 49:とあるダンジョンマスターさん

 ≫46 裏山ー

 私はデュラハンだった……

 カッコいいんだけど、怖いよ……


 50:とあるダンジョンマスターさん

 当方、虫嫌いなのにエンペリアルアントを引いたでござる

 震えが止まらないでござる


 51:とあるダンジョンマスターさん

 はっはっはー、特典聞いた時から狙った我に死角無し!

 引いてやったわ、可愛い女の子のハーピィーを!

 ……言葉通じないし、なんか警戒されてるけど


 52:とあるダンジョンマスターさん

 ≫51 ざまぁーwww

 そんな俺が引いたのはランク9だぞ!!

 ただし、オークキング……(´・ω・`)


 53:とあるダンジョンマスターさん

 皆、良いの引いてて裏山

 ランク6のイリーガルワームって……


 54:とあるダンジョンマスターさん

 ドンマイ!

 その内、良い事あるって!!

 そんな私はエアリアルウルフでしたー

 モフモフ、サイコー!!


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 81:とあるダンジョンマスターさん

 さて、そろそろダンジョン自体の話でもしようか


 82:とあるダンジョンマスターさん

 賛成ーー!!

 みんな、もう造った?


 83:とあるダンジョンマスターさん

 俺氏、まだ召喚したうさぎさんと戯れてる


 84:とあるダンジョンマスターさん

 まだー


 85:とあるダンジョンマスターさん

 パートナーに周りの様子を聞いただけかな


 86:とあるダンジョンマスターさん

 ≫83 通報しますた


 87:とあるダンジョンマスターさん

 ≫83 通報した


 88:とあるダンジョンマスターさん

 ≫86−87 なんでや!

 モフモフしてるだけやないか!! 


 89:とあるダンジョンマスターさん

 私、ダンジョン造ったよー

 ただ、解放はまだだけどね


 90:とあるダンジョンマスターさん

 ≫88 なんだと……


 91:とあるダンジョンマスターさん

 ≫89 やっぱり、解放はまだだよな

 俺も同じー


 92:とあるダンジョンマスターさん

 我、パートナーに言われるままに解放


 93:とあるダンジョンマスターさん

 俺もまだー


 94:とあるダンジョンマスターさん

 ≫92 !?


 95:とあるダンジョンマスターさん

 ≫92 エッ!?

 大丈夫なのか?


 96:とあるダンジョンマスターさん

 ≫92 マジか!?


 97:とあるダンジョンマスターさん

 ≫92 現状を詳しく


 98:92

 ≫95−97 特に何も起きない

 ただ、早期解放報酬でDP貰った


 99:とあるダンジョンマスターさん

 ≫92 勇気あるなー


 100:とあるダンジョンマスターさん

 100、ゲッツ


 101:とあるダンジョンマスターさん

 ≫98 良いなー

 私も解放しようかしら


 102:とあるダンジョンマスターさん

 俺もー


 103:とあるダンジョンマスターさん

 私もー


 104:とあるダンジョンマスターさん

 俺も解放しよっ


 以降、続く

キャラ紹介

エリザベート・バートゥツェッペ

 九郎に召喚されたヴァンパイアクィーン。九郎に抱き着いたりとキューちゃんと遊んだりと自由気ままに過ごす。ただ、その力は巨大で召喚される前は同族たちからも恐れられるほどの存在だった。


キューちゃん

 茉莉奈に召喚されたカーバンクル。その見た目や言い伝えから狙われる事が多く、次第に姿を現さなくなった存在。

 茉莉奈に召喚されてからは愛玩動物のように可愛がられていて、本人もそんな扱いに不満が無いどころか好きなためにダンジョンで戦う事は無い。


もし、書けたら続きを書く予定……

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