ぽとふー
うんちく多め。
レシピもあるよ!
おや、はしご酒かい兄さん。いいねえ、給料日で物持ちがいいのかい……なんてな。
テレビでもたまにあるじゃねえか、はしご酒のテーマが。いや、実を言えば俺も酒はからきしなんだがな。ただ、呑みに行った先で触れ合う店主や客の絡みは、浪漫そのもの。話し掛けてみると、案外話しやすかったり、話題が合ったりするもんさ。
そうは言っても、俺が呑むのは多くて一、二合程度。かなり多くて四合いくかどうか、ってところか。
俺が好んで呑むのは日本酒だ。ワインもイケるが、焼酎だとかビールはちょっとな。お陰でよく言われるのさ。
『酒に強い』だとかな。
甘さと冷たさ──日本酒は大抵冷酒だから──
酒に呑まれやしないのか、だと?
帰り道も分かるし、お巡りの世話になることもねえさ。失礼なこったな、俺がそんな呑ん兵衛に見えるってのか?
……
最近俺は、人間というやつをみる機会が多くてな。これがまた厄介なものなのさ。挨拶しても、むすっとしたまんま何も言いやがらねえのも居れば、丁寧に返してくれる人間も居るんだ。
俺だって、なにも挨拶を返して欲しくてしてる訳じゃねえのさ。自分自身が気持ちよくなれるし、大人として当然の社交辞令でもあるわけだからな。
ひねくれものに映るかも知れんが、突き詰めればそう言うこった。なに、揚げ足をとるない。
さて、そこへ行くと、だ。初対面で会釈ひとつしないというのは、ちょいとばかり疑問なのさ。
要は、十人十色。十人が十人同じではないとは言え、釈然としない部分もごまんとあるってことだ。何事も第一印象ってやつは馬鹿に出来ねえよ。その後の関係にも影響があるかも知れねえんだからな。
ま、人が人のことを真に理解しようなんざどだい無理なこった。恋人同士はおろか、夫婦であっても、な。ン十年来の仲間にしたって、本心じゃあ何考えてるか分からねえもんさ。
本音とか言うヤツぁな、上っ面の言葉や態度に潜んでるほど易しかねえんだ。
ところで、本当に分からねえのは、案外お互いの第一印象が壊滅的だった男女が後々になってくっつくことさ。
ほら、心当たりがあるんじゃねえか?
そう言うことも世の中にはあるのよ。
……なに、『どうしたら良いか』だァ!?
なぁ、お前さん、人選が致命的だってことに気付いてっか?
しかし、しちゅうだとか、ぽとふだとかが旨い季節だよな。季節の変わり目、身体を冷ましやすい日もあるくらいだ。冷やさないようにという点じゃあ、打ってつけだろうよ。
白菜の……なんだっけか、くりぃむ煮だったか。あれもイケるもんだ。こないだ晩飯に並んでた。白菜ってやつは、煮込めば甘く、柔らかくなる。焼いても旨い。いいもんだぜ。
……ここだけの話、正直俺は揚げ物が苦手でな。いつも衣を焦がしちまう。分かるだろ、つまりは熱の通しすぎなんだ。まあ、失敗例として豚カツのろぉす肉が半生だったり、そもそも衣が揚げる前に剥がれたりしちまうんだ。
鶏の唐揚げだけは、一度もそうはならないんだがなあ。
それだけは、うちの死んだ婆さんがやってるところを何度も見てたからかな。俺でもよく分からねえんだ。知人に言わせると、衣がしっかり付いてないってことなんだがな。
ともかくそう言うことがあって、こと豚カツに近い揚げ物は苦手意識が先立つんだよ。近々、試してみようと思うが。
一方で煮物は得意なんだ。カレーは手抜きにも思えるかも知れんが、あれは得意なんだ。一度ぽとふを作った残りのスープでカレーにしたら旨いのなんの。
野菜の持つ優しさと奥深さが舌を伝うのさ。ウィンナーをぶつ切りにして入れてるから、出汁もよく出てる。野菜がたっぷり残っていりゃあ、トロットロになってよく馴染む。今度喰わせてやるよ。もっとも、評判がいいお陰で年中品薄だがな……。
機会があれば是非一度やってみたいもんだ。
おっといけねえ。そういやぁ、花見の頃合いだと前に話したがよ、出店の味って覚えてるかい?
へへ、餓鬼っぽいと思われるかも知れねえがな。俺ァな、そういう味をよぉく覚えてるんだ。
焦がし醤油の絡んだ焼きとうもろこし。ソースたっぷりの焼きそばに、懐かしい鼈甲飴の甘味。今じゃあ色んなものを口に出来るが、餓鬼の時分ってのは親が買ってくれる屋台の食い物が旨かったのさ。
……それがたとえ、味付けが濃すぎたり、薄すぎたりしてもな。
不思議なモンだぜ。親が作る料理や料亭なんかで出てくる凝った料理よりも、そう言うものの方が嬉しくて旨いだなんてな。
『そんなの──子供に親が買ってあげること──親なんだから当たり前』と思うかも知れねえが、子供ってのはやっぱりそう言うの──とびきり嬉しいんだぜ、きっとな。
色々あると思うぜ。『食い物は胃袋に収まって、それで終い』だとか考える人も居るしな。悲しいかな、それは強ち間違いでもないさ。でもよ、いい思い出になる。それだけは、間違いねえよ。
やれ虐待だのなんだのと、情けなくなるニュースばかりが流れるご時世だけどな。
スマホだ、社会問題だなんだのと騒いでるけど──人と直に接する方が大事なんじゃねえのかな。
スマホで誰かと繋がれるからと言って、案外身近な人間から離れすぎてると思うのさ。それが実の子供でも、な。人の温もりよりも、無機質な機械の方が頼りになるだなんて、まったく寂しい世の中じゃないか。
……あ、いけねえ。また説教臭くなっちまったぜ。
さて、品書きだったな!
材料が同じだから、しちゅうもあげてみた。
○しちゅう
牛乳などから汁を作る。或いは、アットホームに固形ルゥから作る。如月の割烹では気分で変動する、らしい。今回は牛乳からメニューを供出。
・人参、馬鈴薯、玉ねぎ、鶏肉又は豚肉、ベーコン
まず、野菜を鍋で炒める。バターを入れ、全体に馴染ませる。また、切った野菜を耐熱皿に入れ、五〇〇ワットのレンジで五分程度温めると時短になる。馬鈴薯は特に推奨しておく。人参は薄切りだと火が伝わり易いと思われる。
玉ねぎが飴色になるまで炒め、火を止めて小麦粉を大さじ二杯強入れる、野菜によく馴染ませる。肉も野菜と炒め、馴染ませる。
小麦粉が馴染んだら、牛乳三〇〇cc、水を二〇〇ccを少しずつ入れる。余熱で小麦粉が溶けだす。この時、コンソメを二ブロック投入し、かき混ぜること。
後は味を見ながら整え、じっくりコトコト(*)煮込み、材料に菜箸が易々と刺されば善い。
好みにより、パセリを散らしてもまた善い。
○ぽとふー
水適量(コンソメのブロックひとつにつき、300cc目安とあるのでそれに合わせる)を鍋に張る。
馬鈴薯を乱切りにし──如月は土をよく落とした上で皮ごと放り込む。カントリーポテト気分が味わえるらしい(?)──、人参の乱切りも一緒に放り込む。
最近、人参もよく洗って、皮は剥かないという人をよく見掛けるが……流行ってるのかね(←ブーメラン)?
因みに、既知かとは思うが水から煮込み始めると、馬鈴薯の型崩れを防げる。
後は、煮えにくいものから順に投入する。
お好みで、ブロッコリーやキャベツ、玉ねぎ。この時期だと早生キャベツが柔らかく、味わい深い。オススメだ。
──で、だ。
ここから、ベーコンやポークウインナーを投入する訳だが……。
身も蓋もない話をすると、正直どのタイミングでもいい。特にベーコンはいいダシになる。肉の旨みがスープと野菜に染み込むわけだ。
だが、ウインナーとなると少々変わってくる。
長く煮込むことで、皮が割れるからだ。勿論、それが良いって人間もいる。なんせ、ウインナーの肉汁が出てくるんだからな。『長く煮込むと味わいが増す。見た目は少々アレだけどそれが良い』らしい。斯く言う俺もその一人だがな。
人によっては、出来上がる直前にぶつ切りにしたそれを放り込むらしいぜ。
まあ、それでも中々──実際に試したことがある──イケるけどよ。
余った材料で、ローストオニオンとか、パセリを散らせば良い塩梅になると思うぜ。味見は大事だぞ。もっとも、それで食い過ぎちまったってンならお笑い草だけどよ!
汁物はいいよな、兄さんよ。
春夏秋冬──色んなものが見られる。
なあ、知ってっか?
要は料理ってやつも、五感が大事なのさ。味覚は言わずもがな、触覚に嗅覚、視覚と聴覚。
『何を馬鹿な、聴覚だって!?』、と思うかも知れねえ。だが、聴覚は確かに難しい。
でもな、案外これが馬鹿に出来ねえのさ。小料理屋だとか、昔ながらの寿司屋とかを思い浮かべてみろ。そこには客と店主達の会話がある。
他愛ない話でも、弾めば味覚ってやつはな、これがまた左右されるもんなんだよ。今じゃあよ、個食で家族団らんなんて珍しいものになっちまった。黙って黙々と喰ってるより、和気藹々と馬鹿な話のひとつでもしながら喰ってたら楽しいもんさ。
そういう場所も珍しくなった。俺が居酒屋好きなのも、そのせいよ。黙って聞いてるだけでも、中々どうして──旨いもんだぜ。手前の話でもねぇってのによ。
さて、辛気臭くなったが、今は春だ。
気を取り直して、穏やかな季節の気配を前に、嫌なモンは全て吐き出して──取り敢えず呑もうぜ。
今日は良い日和だ、それも文句無しの、な。こんな日にゃ旨い酒が呑めるに違いねぇよ。
*じっくりコトコト……沸騰した後、弱火にすることでグツグツと煮込まない弱い火加減のこと。煮物では大体よく使う加減。
日本酒呑むなら、味噌汁をお供にするのもいいぞ!
和物同士故か、酒によく合う!
酔いで身体の中のミネラルが飛ぶから、よく染みるぜえ(笑)?