桜の風情を楽しむ
酒と花の香は棄てがたい。
けして酒に呑まれることなく、静かに風情を味わうは一興よ。
いい季節になったもんだ、なあ。
しっかし、桜の開花時期ってのも、大分早まっちまった。三月末には早いところではもう咲いてるんだとよ。早咲きや山桜じゃなくて、染井吉野だとかそう言う類の方の話だ。
少し前なら、四月頭に咲き始めだったんだがな。
……なに?
『何故酒だけ持ってるのか』だと?
ンなもん決まってらァ!
花見だよ、花見。
ブルーシートの上でどんちゃん騒ぎだとか、出店の食い物を食い漁るだなんて野暮なことも無し。
ただ身一つで、賑わう人達を横目に、一人静かに日本酒──銘柄には拘らん。日本酒なら何でもいい──を煽る。桜の花弁が盃の中にでも落ちれば一興──またとない酒の肴さ。
だから今年は、つまみも持たず、純粋に桜だけを眺めて酒盛りと洒落混むわけよ。
不思議なものだ。言い方は悪いが、たかが小さい薄紅色の花だぜ。それでも、俺ァ魂が揺すぶられるような気がする。だから、一等好きな花なんだ。
まあ、世の中不便が減って、みるみる便利になっちまったけどよ、その……なんだ。こう言うご時世だからこそ、風情だけを楽しむってのも得難い気もしてな。
だから、たまには花でも愛でようと、そう思ったのさ。
賑わう客と桜を眺め、一人酒というのも乙なものよ。
薄紅の花弁は正しく春の到来を告げるもの。
追伸
どうしても小腹が減るなら、一人酒を満喫した後に出店で何かを食べればいいと思います。
花見のスタイルは人それぞれですし、今回は風情を味わうことだけに念頭を置いた──所謂“浪漫”型なので、後は各人にお任せします。
十人十色の楽しみ方があった方が、楽しくていいと思います(*´∀`)b




