肌寒い日に合う品。
本日のお品書き。
鶏もも肉の唐揚げ。
鶏皮のポン酢和え。
──お、兄さん方!?
久しぶりだね、生きてたかい?
最近はとみに寒くなっちまった。毛布を被らなきゃ寒いって、年食った親父がぼやく時期だ。
まったく、ついこないだまでは「暑い暑い!」って喚いていたって言うのになあ。
そうそう! 日もすっかり短くなって、秋の夜長って風情だ。月見団子と洒落込むのも乙なモンさ。
兄さん方にゃ、釈迦に説法と笑われるかも知れねえがよ。月見の発祥は案外ロマンチックなんだ。
“中秋名月”って言われているんだが、この時期。実は秋雨前線なんかの影響で月を楽しめないことがあるらしい。雲に隠れたり、そもそも雨で名月を拝めないってこともあったそうだ。
そこで生まれたのが、“月見団子”って訳さ。
何故月見団子かって言えば、丸い団子を月に見立てているって寸法でな。雲に隠れたり、雨で月が見られない時には、満月を思い浮かべながら団子を頬張るようになったのが始まり。
……とも言われている。でも、昔の人は本物の月の方が大きく、美しいことを知っていたからこそ、団子を月に見立てることで月に思いを馳せていたのかもな。
……なに、「ロマンチックが止まる」?
断っておくが、CCBじゃねえんだぞ?
──一体俺を何だと思ってるんだ……。
おっと、悪いな。話が逸れちまった。
勿論、熱燗は温めてあるぜ!?
コークハイ、ウーロンハイもあるから遠慮はすんな……と言っても料金は据え置きだがな(笑)
こっちも商売なんでな、そう無茶を言ってくれるなよ?
さて、今日のおすすめは“鶏ももの唐揚げ”だな。それと、“鶏皮のポン酢和え”か。骨付きか、骨無しかは選んでくれても構わねえ。人によっちゃももの唐揚げっても、骨付きを好むからな。
俺が言えたモンじゃねえが、蓼食う虫も何とやらだな。そら、御開帳だ!
お品書き
①鶏ももの唐揚げ
○お好みの鶏もも肉をぶつ切りに。或いはカットしたものを使用する。
○ニンニク醤油に、お好みで生姜を少々。
*如月はニンニクをたっぷり5~6欠。チューブならたっぷり6センチ程度使用する。大体醤油100mlに対しての分量。スタミナバッチリ。においは自己責任ということで……。
○少し揉んで、30分程漬け込む。
○衣は片栗粉と小麦粉を1:3。又は、1:2でも可。衣の程度は好みに合わせて。尚、片栗粉が多めだと冷えていても割りとサクサクに仕上がる。
○高温の油で、全体が鮮やかな茶色になるまで揚げる。
○お好みでレモンを添えて、出来上がり。粗塩を軽く振るまである。
●如月のうんちく。
鮮やかな茶色に変化したところで取り出すと、過熱し過ぎず肉が柔らかく出来る。但し、早すぎる取り出しには注意!
如月流では、このニンニクたっぷりの下味が特徴。香ばしく、スタミナバッチリで、疲れた身体に効く。ビールの肴にすると止まらない。
粗塩のアクセント。発汗で失ったミネラル補給が可能ときた。それというのも、市販の食塩は塩化ナトリウム99%でミネラルに乏しい。実は、ミネラルは身体の調子を整える作用もあるんだ。
②鶏皮のポン酢和え
○お好みで鶏皮を用意する。基本的に熱で縮んでしまう為、少々多めに見積もる。
○それを熱が通るまで茹でる。具体的には、3分程度。
○カボスを絞り、醤油と合わせる。酸味の程度はお好みで。市販のカボスポン酢でもよし。
○茹であがったら氷水で締める。水気をきった後、短冊切りにしてポン酢と和える。
○アクセント
・ネギ
・生姜
・ニンニク
●如月の口上。
乳白色に染まったプルプルの鶏皮は、火を通して、氷水で締めることでコシが強くなる。ところで鶏皮ってやつは油脂が多い。そのままでは中々、食えたもんじゃない。
酸味ってのは、脂っぽさを中和する。……ってえよりは、程よく解け合うってのが近いか。口当たりが滑らかになるし、相性もよく味と味とが喧嘩しない。
勿論、酒の肴としてもイケるぜ!?
う~さぎ、うさぎ♪
うさぎ、何を見て跳ねる?
……なんてな。柄にもなく口ずさむのは、やっぱり月とは綺麗なものだからだろう。ほら、よくいうだろ。『男は太陽。女は月』ってな。
……で、昔から男が女に求めると言ったらそりゃあひとつしかねえ。それは勿論、え──おっと、女性客の殺意が高まってきた。この話はここで終いだな(汗)
しかし、世の中広いもんだぜ。あんまりにもいい月だからと言って、血を吸いたくなる御仁も居るんだからよ。
まあ、今日も他愛のない話を頼む。
色んな人間に出会って来るとな、一人になった時には人恋しくなる時もあるってもんだ。……俺の柄じゃねえ気もするがな。
まあ、なんだ。少し湿っぽくなっちまったが、語り明かそうじゃねえか。
──例えば俺が知ってるのはな、大酒呑みの豪傑が部下に寝首を掻かれた話とか。他には、傲慢が過ぎて見習いに格下げされた暗殺者の話なんかがあるんだ。
今夜も一献しながら、嫌なことは水に流そうじゃないか。腹割って話すのも、中々できるもんじゃないが俺ぁこれでも口は堅いんだぜ?
ささ、冷めないうちに喰ってくれ(笑)!
*最後はそれとなく他作品のことを示唆していますが、本作品と筆者の作品の内容に関連は一切ありません。