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如月 恭二 食のススメ  作者: 如月 恭二
2/10

肌寒い日に合う品。

本日のお品書き。

鶏もも肉の唐揚げ。

鶏皮のポン酢和え。

 ──お、兄さん方!?

 久しぶりだね、生きてたかい?

 最近はとみに寒くなっちまった。毛布を被らなきゃ寒いって、年食った親父がぼやく時期だ。

 まったく、ついこないだまでは「暑い暑い!」って喚いていたって言うのになあ。

 そうそう! 日もすっかり短くなって、秋の夜長って風情だ。月見団子と洒落込むのも乙なモンさ。

 兄さん方にゃ、釈迦(しゃか)に説法と笑われるかも知れねえがよ。月見の発祥は案外ロマンチックなんだ。

 “中秋名月”って言われているんだが、この時期。実は秋雨前線なんかの影響で月を楽しめないことがあるらしい。雲に隠れたり、そもそも雨で名月を拝めないってこともあったそうだ。

 そこで生まれたのが、“月見団子”って訳さ。

 何故月見団子かって言えば、丸い団子を月に見立てているって寸法でな。雲に隠れたり、雨で月が見られない時には、満月を思い浮かべながら団子を頬張るようになったのが始まり。

 ……とも言われている。でも、昔の人は本物の月の方が大きく、美しいことを知っていたからこそ、団子を月に見立てることで月に思いを馳せていたのかもな。


 ……なに、「ロマンチックが止まる」?

 断っておくが、CCBじゃねえんだぞ?

 ──一体俺を何だと思ってるんだ……。


 おっと、悪いな。話が逸れちまった。

 勿論、熱燗(あつかん)は温めてあるぜ!?

 コークハイ、ウーロンハイもあるから遠慮はすんな……と言っても料金は据え置きだがな(笑)

 こっちも商売なんでな、そう無茶を言ってくれるなよ?

 さて、今日のおすすめは“鶏ももの唐揚げ”だな。それと、“鶏皮のポン酢和え”か。骨付きか、骨無しかは選んでくれても構わねえ。人によっちゃももの唐揚げっても、骨付きを好むからな。

 俺が言えたモンじゃねえが、(たで)食う虫も何とやらだな。そら、御開帳だ!

 


 お品書き

 ①鶏ももの唐揚げ

 ○お好みの鶏もも肉をぶつ切りに。或いはカットしたものを使用する。

 ○ニンニク醤油に、お好みで生姜を少々。

 *如月はニンニクをたっぷり5~6欠。チューブならたっぷり6センチ程度使用する。大体醤油100mlに対しての分量。スタミナバッチリ。においは自己責任ということで……。

 ○少し()んで、30分程漬け込む。

 ○衣は片栗粉と小麦粉を1:3。又は、1:2でも可。衣の程度は好みに合わせて。尚、片栗粉が多めだと冷えていても割りとサクサクに仕上がる。

 ○高温の油で、全体が鮮やかな茶色になるまで揚げる。

 ○お好みでレモンを添えて、出来上がり。粗塩を軽く振るまである。


 ●如月のうんちく。

 鮮やかな茶色に変化したところで取り出すと、過熱し過ぎず肉が柔らかく出来る。但し、早すぎる取り出しには注意!

 如月流では、このニンニクたっぷりの下味が特徴。香ばしく、スタミナバッチリで、疲れた身体に効く。ビールの肴にすると止まらない。

 粗塩のアクセント。発汗で失ったミネラル補給が可能ときた。それというのも、市販の食塩は塩化ナトリウム99%でミネラルに乏しい。実は、ミネラルは身体の調子を整える作用もあるんだ。


 ②鶏皮のポン酢和え

 ○お好みで鶏皮を用意する。基本的に熱で縮んでしまう為、少々多めに見積もる。

 ○それを熱が通るまで()でる。具体的には、3分程度。

 ○カボスを絞り、醤油と合わせる。酸味の程度はお好みで。市販のカボスポン酢でもよし。

 ○茹であがったら氷水で締める。水気をきった後、短冊切りにしてポン酢と和える。

 ○アクセント

 ・ネギ

 ・生姜

 ・ニンニク


 ●如月の口上。

 乳白色に染まったプルプルの鶏皮は、火を通して、氷水で締めることでコシが強くなる。ところで鶏皮ってやつは油脂が多い。そのままでは中々、食えたもんじゃない。

 酸味ってのは、脂っぽさを中和する。……ってえよりは、程よく解け合うってのが近いか。口当たりが滑らかになるし、相性もよく味と味とが喧嘩しない。

 勿論、酒の肴としてもイケるぜ!?



 う~さぎ、うさぎ♪

 うさぎ、何を見て跳ねる?

 ……なんてな。柄にもなく口ずさむのは、やっぱり月とは綺麗なものだからだろう。ほら、よくいうだろ。『男は太陽。女は月』ってな。

 ……で、昔から男が女に求めると言ったらそりゃあひとつしかねえ。それは勿論、え──おっと、女性客の殺意が高まってきた。この話はここで終いだな(汗)

 しかし、世の中広いもんだぜ。あんまりにもいい月だからと言って、血を吸いたくなる御仁も居るんだからよ。


 まあ、今日も他愛のない話を頼む。

 色んな人間に出会って来るとな、一人になった時には人恋しくなる時もあるってもんだ。……俺の柄じゃねえ気もするがな。

 まあ、なんだ。少し湿っぽくなっちまったが、語り明かそうじゃねえか。


 ──例えば俺が知ってるのはな、大酒呑みの豪傑(ごうけつ)が部下に寝首を掻かれた話とか。他には、傲慢(ごうまん)が過ぎて見習いに格下げされた暗殺者の話なんかがあるんだ。


 今夜も一献しながら、嫌なことは水に流そうじゃないか。腹割って話すのも、中々できるもんじゃないが俺ぁこれでも口は堅いんだぜ?

ささ、冷めないうちに喰ってくれ(笑)!



*最後はそれとなく他作品のことを示唆していますが、本作品と筆者の作品の内容に関連は一切ありません。

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