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恋しな。外伝3

作者: 春日聖奈

匿名希望さんへ。

あたしの妄想爆弾はベクトルがいろいろ間違っているみたいね。

楽しんでくれるといいわ。


お二人さん♪

 スマートフォンのアプリって、簡単に手に入る。

 ワタシはゲームを開いた時間に出来れば良いかと思い、色々と手を出しては飽きていた。

 パズルはそんなに好きじゃないし、アクションは苦手…。

 RPGもあまり凝ったのだとしんどいし…。

 んー、コレなんか良いかも。


 選んだのはたまにテレビCMに出てくるスマホゲーム。

 自分のアバターを作って遊ぶ、MMOと呼ばれるタイプのモノだった。

 早速ダウンロードして開く。



 コレは正解だったと思う。

 もうあっと言う間に1ヶ月が過ぎて、初心者とは言えないくらいに進みました。

 もちろん強い人は居るけれど、基本的に軽いノリで協力プレイをするから楽しくって。

 お友達や同じ時間帯に良く会う人とかとお話をしたりしています。


 そうそう、チャットが割と見やすいんですよ、このゲーム。

 ぼーっとしてたらいつの間にかチャットだけで終わった時もありました。

 でもそれも良いかなって。


 そう言えば、ちょっと嬉しい事が。

 とある人にグループに誘われて、ワタシ入る事になりました。

 その人はそこのリーダーさんでワタシなんかよりとても強かったし、クエストの手伝いなんかも良いよーって軽く付きあってくれたり。

 ワタシが女だからかもって思う所もあって、なんか恰好つけたりする時がある。

 ゲームの中だからそんなのもなんだか楽しくって、気付いたらかなり仲良くなっていました。



 あまり、自分の事話す人じゃ無いけど。

 聞いてると色々と大変そうな大人の男性っぽい感じ。

 口調が荒くなる時なんかもあるけど、優しいから気にならないし。


 ただ、ちょっとケンカ腰になる時があって、また、グループの仲間からも信頼されてるから怖いって思った時もあった。

 でもそれは、仲間が意地悪されたり、守るためだったり、本当は良い人だって分かる。

 そんなリーダーのこと、ちょっと好きになってた。




 ある日、グループの仲間内でカップルが出来た。

 もちろんゲーム内でだけれど。

 そんなのも良いかも知れないって思ったけれど、なんか2人とは少しずつ疎遠にはなった。

 邪魔したら悪いって思って。

 仲良さそうにしているの見ると、やっぱり羨ましい。

 ワタシにも出来るかな?


 彼氏かー。

 全体のチャットだと、彼女募集!みたいなのは良く見かける。

 でも、決まって同じ人だしなんか微妙。

 大体、募集してほいほい行く人なんて軽いと思われるし、ああ、そもそも相手も軽いか。

 ワタシがそっと全体チャットから目を逸らそうとした時に…。


『男の子なら募集とか言わずにアタックするくらいの気概を見せて欲しいわね!あ、あたしなんぞは放っておいて結構!』


『誰がお前に声かけるんだよ!』


 あ、あの人だ。

 この人だけは良く分からないのよね。

 初めは厨二病かな?って思ってたけど、単に痛い人だなって今は思ってる。


 しかも、あの変な言葉使い。

 かなり堂に入ってるというか。

 聞いてても変な感じが無いのがむしろおかしい。

 普段からあんな口調で話す?普通。

 絶対しないし、したくもない。

 中身一体何者なんだろう。

 仮に男だとして、あんな話し方続けるか?

 女のワタシでもしないような。

 逆に女だとして、かなり痛々しい。

 ほんと変な人。



 ただ、あの人はずっとあのままだ。

 荒らす訳でも無く、何かの募集をするでもなく。

 そう言えば、ケンカしてるところは見た事ないかも。

 なんか悟り開いてるみたいな文章だったかと思ったら、やれお酒だの、カラオケだの自分の欲望丸出しの文章、オニギリをしきりに求めてたり。

 もう、なんか考えたら考えただけ頭がこんがらがる。


 やめとこう。

 深く考えるのは。



 グループ内であまりこの話になったことないかな。

 みんなも無視してるのかな、どうでもいいかな。


 そんなある日、ちょっと嬉しいというか混乱する出来事が。

 一人で狩りをしていたら、突然リーダーがやってきて話をしてきた。

 ひとりで何してるのー?ってそりゃクエをしてるけれども。

 ワタシは特になにかあるわけでもないし、普通に返答して会話はそこで終わる。

 そしたら、またねーって。


 なんだったんだろう。


 ちょっとその時から彼の事が気になりだして、いろいろと追いかけたりしてみた。

 ちょっと楽しい。

 気づかれたらどうしよう、これってストーカーか。

 ゲームだしまぁいいかとこそこそしながら動向を追っていた。

 自分の中に芽生えてる気持ちも知らずに。


 そのうち、彼には相棒が出来た。

 あ、なんかくやしいかも。

 しかも同じグループ内だったし、余計に居心地が...。

 まぁ相手のほうもそれなりに気を使ってたし、グループの中では別に二人で会話することもなかったし気にはならないかな。

 でも、たまに二人でフィールドに出て話をしてる時なんかはかなりヤキモキしてた。


 彼は軽いわけでもないけれど、何となくそういう男の人なのかなって思った。


 そして、見ちゃった。

 あ、なんか重なってる...。


 ドキドキしてきた。

 すぐに移動!



 変なところ見ちゃったな、ゲームなのに胸があつい、良いなあ。

 彼氏かー。

 この手のゲームでそういうのってまぁあるんだろうけどさ、ワタシはちょっとだけこのゲームが嫌になってたかもしまったかもしれない。

 リアルとさして変わらない感覚って...。



 適当にクエ流して、グループの仲間と遊んで。

 あれ?なんか人減ってる?


 グループの人数が少しずつ減ってることに気付いた。


 そしてその原因が次第に分かってきた。

 どうも彼、うちのリーダーが関係しているみたい。

 彼は自分の我を通すところがあるから、いろんな人と蟠りがあってそれがグループ内にも波及してるみたい。

 そのせいで彼と同じグループの人も悪い目で見られてる。

 ワタシのところには特に何もなかったからよくわからなかったけれども。



 彼は目に見えて憔悴していった。

 相棒さんがインしていないときはたまにワタシのところまで話をするときもあった。

 まぁ、自業自得っていったら彼に悪いかもだけど、ワタシはどうにもこうにも。

 でも、そんな彼の事心配でストーカーしてワタシもなんだかなあ。


 あれ?

 え?

 彼はとある人物に声をかけていた。


 春日聖奈。


 あの変な人だ。

 しかも、あれ?仲いいの?


 顔文字まで使ってご機嫌に声かけてる...。

 嘘。


 あ、隣にならんだ。

 直接会話してるのかな。

 えー、なんかすごいの見ちゃった。


 ......



 その後も暇があったら彼の事つけてたけれど、こっちが一段落すると決まって彼女のところにというか、相棒どうすんの!

 なんかRPGじゃなくってマスコミの仕事してるみたいになってきた。

 よし、そうと決まれば彼女にも話聞いてみるか、それとなく。


 ワタシは彼女がうろついている時間を特定しようと観察し始めた。

 ここ最近のストーカーでその辺は慣れたきた。いいのか?

 ワタシは別の楽しみを見つけてしまった。

 でもモチベーションの維持には効果的かも。


 ところが、件の彼女。

 これがなかなか難しい。

 居てるみたいだけれど、サーチしにくい所にいるからなかなか見つからない。

 あ、やっと見つけたっと思ったら、あれ?あの人って。


 彼女を追いかけているといろんな人達と一緒にいることが分かった。

 大体一度二度は見たことがある名前の人達。

 あの人なんなの一体。


 ワタシは直接会話を試みる。

 軽く窺うような形で聞けるといいけど、うまくいくかな。


『あの、聖奈さん?』


『なあに?』


 ...なに?なにその”あ”は。

 さて、腹くくって返信いこう!


『けっこう全体チャットで見かけるんだけどさ、何者なんですか?なんかよくわからなくて』


『あら、ふふ、なら変人とでも思っていてくださいな』


 ...あ、変人さんでしたか。

 いやいや、キャラ作ってるだけでしょ?


『ww』


『ふふ』


『性別って聞いてもいいですか?』


『そういうのはマナー違反ね、この手のネットゲームではお勧めしないわ』


『つまり答えられないと?』


 煽ってみる。


『えぇ、品位に反するわ。それに、中身の事想像してくれたらそれだけ楽しい感じしないかしら?』


 ん...ん?よくわからない、ただ、答えてはくれないみたい。


『いえ、いいんですけれど』


『あら、残念』


 どっちなの!


『ちょっと聞いてもいいですか?』


『どーぞ』


『彼氏さんっているんですか?』


『...あなたそれあたしの事女性だって決めてしまっているわよ?』


『女性じゃないんですか?』


『ふふ、立派なレディとだけ言っておくわ』


『女性じゃないですか!』


『さぁ、どうかしら、それと貴方は女性ね。あたしはその体でお話しするからね』


『いや、勝手に決めないでください』


『ふふ、そのままお返しするわ』


 ヤバ、この人変だけど面白い。

 話してるとどんどん進んじゃう。

 落ち着けワタシ、聞きたい事があるんだった。


『話逸れたけど、彼氏はいるんですか?』


『いないわ』


『さっきもだれかと一緒に居ましたよね?』


『そうね、こんなあたしなんかほっといて遊んでいればいいのにね。ほんと、優しい人ばっかりで』


『ええーー』


 もー、なかなか進まないなー!


『あなたも隠さずに本題を言ったら良いのよ。あたしのあってた人達に関係あるんでしょう?』


 バレてるし、ならもういっか。


 ワタシは彼の話をしてみた。

 すると、割合すらすらと話をしてくれた。


 曰く、良くお話してくれるわ。

 クエとかでも見かけたら声かけてくれるし、気が向いたら相手をしてくれるみたい。

 直接会話になったら男の人っぽい感じになるからちょっとここじゃ言えないこともあるわね。


 何を話したんだろう。

 まぁでも、なんとなくそういう関係ではないことが分かった。

 それだけでも良いかな。


 ワタシが直接会話を切った瞬間に彼女は場所を移動した。

 ピクっとワタシの中の何かが頭をよぎる。


 ワタシは彼女を探し回った。

 あぁ!

 とある部屋で彼女が彼と立っているところを目撃した!

 ワタシの感のするどさは磨きがかかってる気がする。

 もうそれでいいかも。


 彼を先頭に連れだってどこかへ行こうとする。

 その先には、あ、普段人があまり入らないエリア。


 ...なんかくやしい。

 彼女の感じからすると彼をそそのかしているようには見えないし、彼の悪い癖なんだろうって。

 でも、最近つらそうなのに、相棒もいるのに!!


 ワタシはだんだんイラだって来た。

 これチクっちゃおうかな。


 ...出来るわけない。

 しかもしたところでなんの良いこともない。

 ただ、少しだけ胸にあった彼への気持ちがどんどん膨れて胸を焦がし始める。


 少し経ったところで彼らが出てきた。

 あ、お楽しみでしたね。


 ワタシは彼女に話し始める。


『お楽しみでしたね』


『ふふ、あなたも彼にこんなことされたことある?』


 あ、この人逃げないんだ。

 こんなことって、どんなこと、ワタシはやっぱり悔しい。


『嫌じゃないんですか?』


『あたしに対してしてくれてるのに嫌っていったら失礼かしら、ただ』


『ただ?』


『もう少しロマンチックなのがあたしは好みね』


 ...敵わないなこれ。

 きっとこの人こういうの慣れてるんだろうな。


 あ、グループ会話が。

 なんか...彼、機嫌良くなった?


『ふふ、もしも貴方が彼の事好きなら、アタックしたら案外転ぶかもしれないわよ?』


『へ?』


『あら、違うかったかしら?それは失礼。ただ、あたしにこんなの事するくらいだもの。』

『相棒がいたからと言って、別に奥手に回る必要もないと思うわよ?ふふ』


 勝手に話を進められる。

 ドキドキするワタシ。

 でも、なんか...あ。


『これはゲームなんだから、楽しい思いをしたら良いのよ。もちろん、程々にね』


『はい』


 ワタシ分かった。

 ストーカーしてたり、こんなに話したりってやっぱり彼の事気になってたのね。

 でも、ワタシ自身が軽いノリだからやっぱり重たいのとか嫌だし。

 楽しむって言ったって...。


『ワタシにはできそうにないです』


『そう?あたしにはそう思わないけれど』


 なんでそんなこと言える。

 ワタシの事が分かるとでも?


『だって、ドキドキしてない?彼の事で』


 してる。

 ヤキモチを妬いてたり、ハラハラしたり悲しくなったり、でもそれが?なんの関係も...。


『恋してるっていいわね』


 !!!


 ......


 彼女との邂逅の後、ワタシはグループを抜ける決意をした。

 解散するとリーダーが言ったこともあり、いい機会だと思って。

 彼への思いは次第に薄れつつある。

 そして、ドキドキも。


 でも、ワタシは今このゲーム楽しんでる。

 ちょっと気になる人が出来たから。

 しかも、ストーカー慣れてるから、その人の動きは手に取るように分かる。


 いつ声をかけようかしら。

 怖がりで引っ込み思案で、なんでも軽く考えるワタシにとっての大問題。

 リーダーには結局声かけれなかった。

 お別れの時に少しくらい。


 はぁ、成長してないなやっぱり。

 ん?


『さぁ夏がきたわよ!男の子も女の子も熱くならないと!花火に海に、ふふ、楽しみね!』


 あの人だ。

 そっか、夏か。


 夏ね!!


 ワタシは駆けだす。

 リーダーとの出会いで久しぶりに思い出した恋心。

 あの人に囃し立てられたあたしの小さな恋心。

 いま、燃えてる気がする。


 ちょっと声出してみよう。

 彼の傍に行ってみよう。

 ゲームなんだし、もし失敗してもいいや。


 ワタシ楽しんでるかもしれない。

 あ、彼がいる。

 ずっと見てたもの、大体の事は分かってるつもりなんだけれど...。

 その中にワタシの事入れてもらえないかな~なんて。


「あの、ちょっと良いですか?」


 夏はこれから。









あまり向こうでいじめないでね?

恥ずかしいので。

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