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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
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黒猫のノアール

作者: まついち
掲載日:2016/05/30

黒猫のノアール




俺の名前はノアール。

名前の通り黒くて艶のある耳と尻尾をもつ猫人だ。

猫人というのは人間のように魔法が使える訳でもなく、知恵がある訳でもない。生活能力は低い。

だが人間より運動能力は良い。人の上れない屋根の上だって簡単に登れるし、

暗闇で探し物をするのは得意だ。

人間より長けている部分もあるし、基本気高い種族ではある。

なのに、何故か昔から人間に依存心を持つ種族で猫人は人間と契約し、名を貰い

飼い猫となって一人の人間と共に居れる事を凄く幸せに感じる習性がある。

契約相手が見つからず、一匹で生活能力や先を考える力が低いせいでお金もためれず家も建てれず…

野生の動物を狩っては胃を満たし、飼い主を探して彷徨う猫人が大半。

人間が恋しくて仕方が無い…そんな種族だ。


因みに人間は猫人は勿論他の動物の種族も愛する。

個人や地域によって差はあるようだが猫人の俺から見たら博愛主義に見える部分がある。

猫人や他の種族の動物達のようにたった一人の契約者…飼い主を探す訳ではなく…

中には複数の動物と契約し、沢山の動物を飼う人もいる。

まぁ、沢山平等に愛せるのはそれだけ人間が賢くて裕福であり器用だからなんだろうと俺は見てて思う。


…俺には名前がある事から察しているだろうけど俺には飼い主が居る。

一応だけど…。


俺は「黒い猫人は不幸を呼ぶ」と言う迷信のある地域で生まれ、

猫人が自立する18歳よりだ大分早い12歳で親に捨てられた。

元々生活能力の低い種族の上に何も教わっても居ない…

そして不幸を呼ぶとされている黒い猫人が助けを求めても誰も手を差し伸べてはくれなかった。

そんな中、寂しさと飢えで死しそうになって倒れた時、拾ってくれたのが俺の主人だ。

目が覚めた時には契約の証である「首輪」が首に巻かれ、そして医者に「ノアール」と言う名を呼ばれ…

俺は飼い主を見る前に契約を果たした。

…後々聞いたら獣の種族の医者に診て貰うには責任の問題もあって

先に契約を済ましてからでないといけなかったらしい。

イレギュラーな契約の仕方で飼い主を見る前の契約だったけど、初めて首輪に気づいた時の感動は今でも覚えている。

暫く病院で入院して…退院と同時に使用人という人に連れられて遠い遠い地まで汽車や馬車に乗って…

丸一日かけて移動して漸く大きな豪邸についた。

そこには沢山の同じ格好をした「使用人」という職業の人達に世話してもらっている…。

この地域ではあの迷信が無い事と…寧ろ「黒は幸せを呼ぶ色」とされているせいか本当に良くしてもらっているんだ。

ただ…俺はまだ飼い主と会っては居ない。

…拾われてからもう5年以上は過ぎているのに…。

猫というのは依存心が本当に強い種族だってのは俺も知っていたけど…本当に強いって身をもって今実感しているんだ。

早くご主人に会ってみたい…。

使用人の人達は皆ご主人の事を良い人だって言うから尚更…会いたい。

会って、礼を言って…出来る事なら髪を撫でて貰いたい…。

…俺は毎日そんな夢を思い、飼い主を想像してはうとうとして一日を過ごしている…。

今日も高級なベットの上で身を丸めながら窓からそそがれる心地良い日光と春風ながら…。



***




「大分大きくなったみたいだけど可愛いな…」

春風で揺れる黒い短髪を起こさないように気をつけながらゆっくりと撫でる。

たまたま仕事で遠い地に行った時に見つけた小さな猫人は細くて小さくて…

抱えた時は壊れてしまうんじゃないかと心配した。

そして小さな弱々しい呼吸に焦りを感じた。

今はそんな昔が嘘のように体つきも少年から青年に変わる頃合にしては細身かもしれないが

しっかりしていて…そしてなにより幸せそうに眠る呼吸はしっかりしていてつい笑みを零してしまう。

撫でられるのが心地良いとばかりにピクピク揺れる耳に気づくとその耳にそっと唇を添えた。

「ん…ッ」

耳元に唇が触れた瞬間、ノアールの瞼が微かに揺れると同時に微かに指先が動き、

甘える様にシーツを握り抱きしめる。

そのノアールの仕草の可愛らしさに声を抑えて笑うと流石にノアールも気づいたようでゆっくりと目を開いた。

「おはよう。ノアール…調子はどうだい?」

開かれた目はまだ眠そうながらも綺麗な澄んだ青色の瞳は綺麗で

初めてみたノアールの姿ははじめてあった時よりも、

寝ていた先程よりもノアールの存在が際立たせており、とても愛らしく感じた。




***






「…ッ!…誰だ?」

はじめて見る使用人と同じではない服を身に纏っていない男は妙に近くて目覚めた瞬間に驚いて

つい寝る前に綺麗に梳いた尻尾の毛を毛羽立たせながら身を捩り距離をとる。

「…誰って…あぁ、名前教えてなかったかな?俺はクロードだよ?」

優しく微笑む相手に首を傾げると微かに眉間に皺を作り更に警戒心を向けるように睨み付けた。

「いや、そういう事聞いてるんじゃない…!お前…見たこと無い奴だぞ?誰だ!」

「ああ、そういう意味か…。俺はここの主人…お前の契約者…っていうかご主人って言うべきかな?よろしく…」

「主人…?」

睨んで威嚇するも全く気にしないように撫でてくる相手の手は大きくて優しくて心地よかった。

言ってきた言葉を理解する事が出来なくなり、喉を鳴らしてしまうほど気持ちよかったんだ…。

「猫人の喉音…はじめて聞いたな…気持ち良い?長い間構ってやれなくてごめんな…」

「…やめッ…俺を撫でるにゃ…!…撫でて良いのはご主人…だけ…ってご主人!?」

心地良さに目に力が入らず蕩けそうになるものの言われた言葉をようやく理解すると

目を見開いて驚くと飼い主だと言うクロードをまじまじと見つめた。

赤毛の少し癖のある髪に優しそうな同色の瞳…少し下がり気味の目元は更に優しそうで…

そして撫でてくる大きな手に合った俺より大きくしっかりした体…。

服はラフな服ながらに貴族なのだろう、質の良い布地を使ったもので…

ここの主人と言われるには若い20代後半だがしっかりした雰囲気から納得できてしまう…。

これが俺のご主人…。

クロード…。

やっと会えた俺の主人…。

そう思うと今まで我慢してきた分、箍が外れたように目元が熱くなり、涙が自然と溢れ出した。



***




「…泣く程寂しかったかい?猫人は依存心が強いから…辛かっただろう?ごめん…出張も終わったしこれからは傍に居るから…」

強い睨んでくる青い瞳…誘惑にまけて蕩ける青い瞳…そして誘惑に負けないと葛藤する瞳…。

どれも綺麗で仕方が無い…。

そんな瞳から涙を流すノアールを見ると間を詰めてそっと目元にキスを送ってやった。

近くで見ても美しい…そして猫毛にしては硬めの黒髪が余計にその青色をひきたたせているように見える。

塩味のするキスを何度も送りながら優しく抱きしめるとノアールは対照的に強くクロードの服を握りつつ

尻尾をクロードの足に巻きつけて離れないように抱きついてくる。

その仕草が愛しく、可愛く仕方が無い…。

こんな可愛らしい動物が居たのかとクロードは感動し胸を熱くさせた。

「…ッ、ほんと、だな…ッ?ずっとだぞ…!…そ、傍に居なかったら…引掻くからな?」

「勿論だ…。絶対に一緒に居るから…これからは幸せにするから…」

「…当たり前だ!…飼い主に勝手になって…放置して…責任、取ってもらうからな!」

「分かってるよ…ノアール」

寂しがった分…それを埋めるように、否、埋め尽くし更に溢れるぐらいこの猫に愛を注ごう。

クロードは心の中で長い間会えなかった可愛い飼い猫に誓った。



***




…なんで俺は素直じゃないんだろう?

今までずっと飼い主に出会えたら拾ってくれた礼を言って…沢山撫でてもらって…

どうして俺を拾ったのかとか、気に入ってくれているのかとか…色々聞きたいと思っていたのに…。

沢山撫でてはもらっているけど…

「ノアールの髪は結構硬いんだね…」

「き、気に入らないなら触るな!」

「気に入らない訳じゃないよ?これはこれで触り心地良いし…ノアールだって気持ち良いだろう?」

「良くない!」

「喉、鳴っているのに?」

「ッ…鳴らしてない!」


…という具合に長い間会えなかった成果緊張して…気がつけばクロードを嫌がる事を言っちまうし

話をふる事も出来ない…。

ただ、それでもクロードは、俺の理想に近いぐらい優しいし約束を守って仕事以外では傍に居てくれる…。

俺はとても今、幸せだと思う…。

…そして前までは起きている間ずっと考えていた飼い主の想像は当たり前だけどしなくなって…

代わりにクロードが仕事で居ない間は、頭の中で素直になって礼を言う練習をする。

いつか、ちゃんと礼を言おう。

それが出来るようになることが俺の今の目標であり夢だ。

大好きなクロードに更に愛でられ続ける存在に俺はなりたい。


気が向いたら続き書きたいなぁと考え中。

見ていただいた方、居ましたらありがとうございました。

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