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東方遊楽調  作者: 甘味処アリス
第1章〜子供達の黄昏〈人超異変〉編〜
9/24

第八話『人を超えた少女〜人超異変第五面大ボス・前〜』

少々長くなったので、前後編に分けます!


「ふぅん……まあ、一人増えたところで変わらないよ!!」


 少女は元気よくそう宣言するが、妖夢はその宣言に対して頭上に疑問符を浮かべる。


「増えた? 何を言っているのです? 私は志郎さんと交代で戦いに参加するだけですが」

「あ、そうなんだ? って、どっちでも変わらないよ!!」


 超能力を操る少女はそう言う(ツッコむ?)と、片手を上に掲げた。


「神秘『バールベック』」


 少女がそう言って掲げた手を妖夢に向けると、どこから大きな岩がたくさん現れ、こちらに向かってきた。

 妖夢はそれを器用に乗りこなし、続々と次の岩に飛び移って少女との距離を詰める。


 その様は、まるで源義経がやった『壇ノ浦八艘跳び』のようだ。船と船の間の長さだったと言われる6メートルを優に超えるその飛距離を、妖夢は刹那のスピードで駆け抜ける。


 そんな中で、少女は再び片手を妖夢に突き出した。


「砂符『ナスカのハチドリ』」


 少女の宣言とともに、地面から大量の土埃が舞い上がり、それは何匹もの鳥を形成して妖夢に向かっていく。……ていうか、俺にもめっちゃかかるんだが。まあ、仕方ないか。妖夢と交代したとは言え、俺も少女と戦ってたわけだし。


 妖夢は流れていく岩を飛び移りながら、ハチドリを刀で切り落とした。その様は、まさしく達人の域だ。


 そう思っていると、少女は再び上に手を掲げた。


「土符『ガイア・プリズン』」

「くっ!!」


 少女の宣言とともに、流れる岩に合わせて大量の土でできた槍が地面から生えたり、そこから網のような地面が伸びる。


 妖夢は地面から生える土槍や、それを起点として伸びる土でできた網の間をくぐり抜けるように、ある一点に向かって飛び出し、ガイア・プリズンに捕らえられるのを回避した。


「いざ!! ……覚悟!!」


 妖夢は加速し、超能力を操る少女に向かって全力疾走しながら、刀を構えた。

 普通の横薙ぎの一太刀。だが、その刀には見事に威力が乗り、人を切ることに一切の迷いを見せていない。


 斬る。


 そう思った瞬間、刀に斬られかけて怯んだ少女を庇うように、一人の男が降りてきた。

 妖夢はそれに呆気にとられ、横に退避してしまったみたいだが……。


「ヴラド!! 邪魔するなぁぁ!!」

「うるさい!! 神剣『グラム』」


 俺はヴラドを跳び蹴りで蹴り飛ばし、妖夢から距離を離す。

 ヴラドはそれによってダメージを受けつつも、見事に着地し、俺に向かって召喚された剣を振りかぶる。

 俺はそれを刀で受けると、ヴラドの横薙ぎの一太刀をしゃがんで避け、そのままヴラドの足の攻撃を転がることでまた避ける。


「どうした!? 俺を倒さないのか!?」


 ヴラドはそう言って俺を挑発するが……こいつは本来の目的を忘れてるみたいだな、ちょうどいい。

 俺は刀でヴラドの攻撃を再び受け、さらに横に跳ぶことで回避する。

 ヴラドに突き出された剣を刀で逸らし、妖力弾をヴラドの眼前に突き出す。


「うぐっ!?」


 爆発した妖力弾に怯んだヴラドに対し、俺はガラ空きの腹部に蹴りを入れて吹き飛ばす。


「アガアッ!!」


 しかし、ヴラドはすぐさま復帰してグラムを片手に俺に襲いかかってくる。

 剣を捌き切ることができず、俺の身体中に徐々に切り傷が増えてくる。

 致命傷こそないものの、こいつは厄介だ……が、それでいい。


 今回は俺は時間を稼げれば勝ちだ。


 妖夢はそんな俺の思惑通り、戦いを高く跳躍して回避すると、妖力を射出して空中から一気に加速し、少女を居合斬りで斬り伏せた。


「しまった!!」


 ヴラドが叫んだときには既に時遅く、少女は斬られた腹部から血を流し、倒れていた。


「くそっ!!」

「あっ、待て!」


 ヴラドは悪態をつき、逃げ出した。

 俺は追いかけようとするが、それはヴラドの手から放たれた炎魔法に阻まれた。

 俺はヴラドを追いかけ、炎を振り切って再び空中に浮かぶ。


「……チッ、しつこいんだよ!!」


 ヴラドはそう言うと、紫色のエネルギーでできた槍や、赤いエネルギーでできた剣とミョルニルを俺に向けて撃ち出した。


 直後、巨大な地響きが響き渡る。

 俺と妖夢は、同時に地響きの元を探す。

 すると、そこには紅の目を光らせ、こちらにゆっくりと歩みを進める、巨大な岩人形(ゴーレム)の姿があった。


「ふふ……まだまだ、終わらせないよ」


 ヴラドから放たれた炎を、少女は体にとりこんだ。すると、みるみるうちに少女の腹部の傷は癒えていく。


「さすが『真祖』の炎、やっぱり回復能力もあったみたい。……まあ、少なくとも本人はそんなつもりで撒いたわけじゃなさそうだけれど」


 少女はそう言うと、片手を俺に向けた。すると、そこから火炎放射のように炎が放たれる。


「ふふ……私、炎も操れるようになったみたい。改めて……いや、あなたたちには初めてかしら? とりあえず、自己紹介させていただくわ。私の名は『黄昏 未花』。種族は人間……いえ、超能力使い(エスパー)と言うべきかしら。よろしくね」


 少女改め未花はそう言うと、ゴーレムの上にちょこんと座った。

 そして、俺や妖夢に向けて炎を放ってくる。


「やっちゃえ!!」

「甘い!!」


 俺は未花から放たれる鬼火を回避し、3メートルは超えるであろうかというゴーレムへと全力で駆け寄り……ショルダータックルを決める。


「嘘!! ゴーレムにショルダータックルで勝つなんて!?」

「まだまだ!!」


 俺はよろめいたゴーレムの頭に両足で蹴りを入れ、さらにその反動で反対側の樹木に着地する。


「キャアア!!」


 未花はゴーレムを超能力で体勢を立て直させると、俺に向けて鬼火を放ってくる。

 俺はそれを、地面と平行に別の木に飛び移ることで回避し、時間を稼ぐ。


「狙うはこの一点!!」


 その間に、妖夢はゴーレムの一番の弱点……即ち、ゴーレムを操る未花に対して斬りつける。


「2度は喰らわないわ!!」


 未花はそう言うと、高く跳躍して今度は未花の手首を狙う妖夢を、炎で吹き飛ばす。


「妖夢!!」

「甘いわ!!」


 未花はそう言って、近くにあった巨大な岩を超能力で持ち上げ、妖夢の頭上に配置する。


「いくわよ!!」

「人符『現世斬』!!」


 妖夢は落下してきた岩を真っ二つに斬って直撃を避けると、再び未花へと刀の切っ先を向けた。

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