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東方遊楽調  作者: 甘味処アリス
第1章〜子供達の黄昏〈人超異変〉編〜
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第七話『人を超えた少女〜人超異変第5面中ボス、元凶〜』


「いってぇ……ん? ここは……?」


 巻き上がる土煙の中、周囲を確認する。それにしても……俺が妖怪でよかった。人間だったら簡単に死んでる高さだぞ、アレ。


 俺が落下した先の森にポッカリと空いた草原……そこには、吹き荒び、荒れる天候と共に、1人の少女がポツリと立っていた。この場所も相まって、なんだか孤立感を感じさせるシチュエーションだ。


 しかし……ヴラド、どんだけ強いんだ。あんだけの強さを持ってるってことは、ライバルはかなり少ないだろう。そのくせに、俺が先に元凶と思わしき少女を見つけるとか……ヴラドの運が悪いのか、俺の運がいいのか。

 いや、最良の状態で少女と会えなかったことを考えると、俺の運は非常に悪いと言えるかもしれないな。


 俺は先ほどの戦闘を思い返しながら、視界に映る少女に目を見やる。さっきは軽く見ていたが、よくよく考えたらこの異変でこの場所に小さい子が居るのは不自然だ。


 ていうか、この少女、何なんだ? 霊力まみれなのに、目が薄青色に光っている。

 何ていうかな……例えるなら、ポ○モンのアニメのサイコキネシス的な感じだろうか?

 宙にプカプカと浮きながら、風に吹き飛ばされることもなく、一切の静止を保ちながら……あ、吹き飛ばされた。少女は元の位置に歩いて戻ると、再びサイコキネシスで浮かび上がる。


 なんか……律儀で健気な感じだな。

 俺は少女の行動に対して思っていると、少女は突然口を開いた。


「あら……博麗の巫女じゃないのね」

「博麗の巫女? ……あの神社に居るっていう人間か。残念ながら、巫女じゃないな」


 ていうか、こういう異変は巫女が解決しているのか? なんだか不思議だが……巫女というのが昔のような、神の代行者だとするなら、それもあり得るか。


「ふーん……じゃあ、私の努力なんて意味がない、骨折り損なわけだ。あなたに用はないけど……八つ当たりに付き合ってくれるよね? ここまで来たんだもん」


 体中に古傷が残るその少女は狂気的な笑顔でそう言うと、俺に対して一つの召喚魔法陣を展開した。どうやら今日は、召喚魔法陣に縁がある日のようだ。

 その召喚魔法陣から放たれるのは、一本の剣。

 というか、なんでこの少女は博麗の巫女と会いたいのだろうか? 異変を解決してほしい……とか?

 そんなどうでもいいことを考えるうちに、召喚された剣は1人でに俺に斬りつけてくる。


「不治『自己起動剣(フラガラッハ)』」


 機敏に触らなくても動くその剣は、さらに俺に対して斬りかかった。

 俺はそれを退行して避けながら、剣に隙ができた内に、少女に向かって一気に距離を詰める!!


「あは! 流石だね! でもまあ、これで終わりじゃないけど……ね!」


 少女はそう言うと、俺の足元に手のひらを向けた。

 すると、生えていた草花が一気に成長し、俺の足首を絡め取る。

 その草はギュウギュウと俺の足首を締め付けてくる。かなり痛いが、気にするほどでもないが……動きが制限されるのは厄介だ。


「隙あり!!」


 俺が草花をなんとかしようとしている間に、少女は俺に手のひらを向け、目を瞑った。

 すると、少女の背後にあった巨木がふわりと浮かび上がり、俺に向かって飛んでくる。


 なるほど……この感じを見ると、少女の能力は『超能力を操る程度の能力』か。

 俺はそう思いながら、妖力弾を巨木にぶつけて破壊し、足首を絞めていた草花をブチリと引きちぎる。

 解くのは結局無理だったから、実力行使だ。


「あれ? 妖力弾使えたんだ!」


 俺が放った妖力弾に少女は意外そうな顔をした。俺がここまで一切妖力弾を放たなかったことが起因しているんだろうな。


「一発だけな。まあ、そのおかげで俺の超奥の手になっているが……弾幕じゃなきゃ、そこそこやれるんだぜ?」


 俺はそう言って、巨大な妖力弾を作る。

 イメージするのは……地面すらも抉り取る、電磁砲(レールガン)

 俺が放った妖力弾はゆっくりと、しかし確実にイメージ通り地面を抉りながら少女へと迫っていった。


 いや、ちょっと待て。これ、操られるんじゃないか? 俺が内心焦っていると、少女は両手を電磁砲に向けて突き出しながら、おもむろに口を開いた。


「自分の首を自分で絞めてるんじゃ、世話ないね」


 少女はそう言うと、やはり予想通り電磁砲の軌道を俺に向けて変化させた。

 俺はそれを高く跳んでかわすと、電磁砲を消滅させ、代わりに俺の体に妖力を纏う。


 空を飛べないから普通に落ちるが、俺のスピードで少女を撹乱させながら少女に少しづつ距離を詰める。フラガラッハがそれに対してついてこようとするが、俺のスピードに追いつけないようで、少しづつ離すことができた。


 やがて、跳躍した俺のかかと落としが少女にぶつかりそうになるが、少女は冷静に俺に手のひらを突き出した。


「学習しないなぁ」


 少女はそう言うと、ふわりという浮遊感と共に、俺は空中にプカプカと浮かび上がる。

 無重力ってこんな感じなのかな、と考えていると、ここまで俺に一太刀も浴びせられていないフラガラッハが俺に標的を定めた。

 あぁ、やばい……俺、もうすぐ(・・・・)死ぬかもな。


 そんなことを考えながら、迫り来る気配に身を委ねることにした。

 俺にフラガラッハがぶつかる三秒前。

 甲高い金属音が響き、銀髪の少女が片手に持つその刀でフラガラッハを弾いた。

 少女のメンタルはもう回復したんだろうか? そんな適当なことを考えていると、少女は口を開き、叱咤の声を飛ばす。


「志郎さん! 勝手なことをしないでください!」

「ああ……悪いな」


 今回だけは、本当に反省だ。何度も死にかけたしな。まぁ……ここまで妖夢が精神的に死んでたかと思うと、それもまた怪しいが。俺のことを心配してたんだろうか?


「ん……もう。次は気をつけてくださいね」


 銀髪の少女、魂魄妖夢は可愛らしい仕草でそう言うと、超能力を操る少女に対して刀の切っ先を向けた。


「さて……覚悟してくださいね。志郎さんを傷つけたんです、相応の罰は受けてもらいますよ」


 妖夢はそう言うと、ビュンと刀を振るった。

 そこに、そよ風程度の風が吹いたのがこの嵐の中でも見て取れた。妖夢の鋭い眼光は、嵐の中でも変わらず、まっすぐに超能力の少女を睨みつけていた。

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