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東方遊楽調  作者: 甘味処アリス
第二部〜スカーレット編〜
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第三話『喧嘩』

「うっし……これでどうだ!!」

「グルゥ!」


 俺は仕上げを完了し、達成感の中で両手を掲げた。

 俺の言葉に、ドラゴンは嬉しそうに鳴く。


「な……何よこれ……!?」


 そんな折。

 喜びに満ちていたその場所に、場違いな絶望の声が響いた。


「おかえり」

「あ、ただいま……じゃないわ!! 何よこれ!!」

「何って……こいつの家づくり兼美鈴の休憩所だけど?」


 当の美鈴本人は寝てた所をヴァンパイアハンターにボコボコにされてるけど……止めた方がいいよな。


「おい、ヴァンパイアハンターやめろ。そいつは俺の……部下だ」

「……申し訳ありませんでした。私の名前も覚えてくださると嬉しいですが」

「今は中国は私の部下よ。咲夜、気にすることはないわ」

「ア゛?」

「オ?」


 俺とレミリアの視線が交差する。漫画だったらバチバチと電気が走る所だな。


「ちょ……レミリア様、ヴラド様、止めてくださいよ〜!!」

「「うるさい黙れ」」

「ヒィッ!!」


 俺とレミリアの同時の言葉に、美鈴は縮み上がる。


「……チッ」

「ふんっ」


 俺が舌打ちをすると、レミリアはスタスタと屋敷へと歩いて行った。


「ヴラド様、喧嘩はよしましょう」

「……」


 俺は美鈴を無視し、上空へと飛んで行った。


◇◆◇◆◇


「オラオラオラオラァ!!! どんだけテメェら脆いんだよ!!」


 俺が半分八つ当たりで絡んできた雑魚妖怪を殺していると、俺の槍は突然何か硬いものに止められた。


「強ぇのがいるじゃねぇか!!」


 俺はそう言いながら、召喚魔法で上から大量の武器を降り注ぐ。


「ハッハァ!!」

「……ふんぬっ!!」


 しかし、武器が降り注ぐのも気にしていないかのように俺の槍を止めた奴はこちらに向かって歩いてくる。

 なんだこの巨体……デケェ。まさに肉壁だ。高さにして2メートルはある感じだな。


「我、運命の守護者なり。……貴様の心には今、影が見える」

「あ?」


 唐突なその言葉に呆気にとられている間に、俺はその巨大から繰り出される剛腕に吹きとばされる。


「うぐっ!!」


 何故、何故そんな言葉に気を取られた。普段の俺ならそんなことはなかったはずだ。

 俺はそう思いながら、地面に落下した。


「……その闇を拭えた時、今一度私に会いにこい。もう一度戦ってやる」


 謎の宣戦布告を聞いた途端、俺の意識は闇の中へと消えていった──。


◇◆◇◆◇


「……ここは?」

「目覚めたわね!?」


 俺が起きて周りを見渡すと、レミリアが凄いスピードで俺の今いる部屋に入ってきた。


「……コホン」


 いや、咳をするふりしたって無駄だわ。俺は脳内でそうツッコみながら、何かを話したそうなレミリアをまじまじと見つめる。


「この部屋はあんたの部屋、あんたの自由にしていいわ。あと、あのドラゴンと美鈴のことだけど……パチェから話を聞いたわ。しょうがないから、とりあえず今回は認めてあげる」


 ……しょうがねぇな。レミリアからしないなら、俺からするしかないな。


「レミリア」「兄さん」


 うっ……まさか被るとは。


「「ごめん」」


 ここまで被るとか……。

 流石にこれはちょっと嫌だな。


「……レミリア、悪かった」

「いえ、こっちこそ意地はって悪かったわね、兄さん。確かにあれは当主として止めるべきだったかもしれないわ」


 世間体を考慮してなかったもの、とレミリアは付け加えると急にシュンとしてしおらしくなった。


「……私、当主失格かしら」

「ああ、お前は言うほどしっかりしてないし、判断力も観察力もない」


 俺はレミリアから顔を背け、容赦なく自分の考えを叩きつける……が、レミリアが泣きそうになっているのを湿度の変化で感じながら、言葉を続ける。


「だが、当主なんて大体そんなもんだ。安心しろ、足りない部分は俺たちが補ってやる」


 俺はそう言って立ち上がると、レミリアの頭をポンポンと軽く叩いて自分の部屋から廊下に出た。


「……さて、約束を果たすか」


 俺からした約束なわけではないが、負けたまま終わりというのも癪だからな。

 俺は翼を広げると、召喚魔法でさっきの場所に転移するため、魔法陣を展開した。


◇◆◇◆◇


「──よく来たな。心の闇を拭えたと見受けるが?」

「ああ。ちっとはお前のおかげだ」

「……ふむ。では、先ほどの続きと行こうか」


 巨体の妖怪はそう言うと、容赦なく豪腕を突き出してくる。俺はそれを体を少し逸らしてかわすと、後ろ回し蹴りを妖怪に決める。


 パァンッという心地よい効果音と共に、その巨体が宙に舞う。

 取り巻きの妖怪たちは、それを見てあんぐりと口を開けた。


「おいおい……まだやれんだろ」

「当たり前だな」


 俺は再び迫り来る一撃を今度は素手で受け止め、それを力任せにおしかえす。


「ぐおっ……」

「紅魔拳・奥義『魔滅波状拳』」


 腕から溢れるエネルギーが渦巻く掌底打ちを妖怪の腹に決める。

 ギュルギュルとエネルギーは回転速度を速め、妖怪はそのままエネルギーに吹き飛ばされていく。


「運命の守護者、だったか? なら、これもお前の守った運命だが……如何か?」

「いやはや、頭も回るようだ。これで、我に心配事はもうあるまいよ。汝、我の話に興味はあるか?」

「微塵もない」


 俺の断言に、運命の守護者は寂しく笑った。


「いやはや、世知辛いものよのう」

「ふん。お前、そんな喋るようなキャラじゃねぇだろ」

「まあ、聞くが良い。お主の妹……レミリア・スカーレットはその能力故に、次期の運命の守護者に選ばれた。運命の守護者とは、ゼウスがイエスの同じ過ちを繰り返さぬために作った組織よ」


 そんなのがこんな場所にいるなんてことが驚きだけどな。


「我の老い先ももう短い。だが……レミリア・スカーレットは未だ力不足。よって、汝から継承してほしい。その術、名を──黒魔術『魔再現〈肉体〉』。意識あるうちは肉体をいくら失っても自由に取り戻すことが魔力が必要なくできる秘術。汝からレミリアに教えられるか?」


 運命の守護者の問いに、俺は力強く頷く。


「もちろんだ」

「ふむ。……このスクロールを自らに当てよ。レミリアに渡すときは、魔法使いにことの全てを話せ」


 そう言うと、運命の守護者は魔法陣の書かれた紙を俺に渡した。俺はそれを胸に押し付け、魔力を込める。


「……ふむ。上手くいったようじゃの。それでは、最終決戦じゃ」


 運命の守護者はそう言うと、その巨体に相応しい薙刀を取り巻きの一体から受け取った。


「いざ──覚悟!!」


 そのあと何があったかは、よく覚えていない。

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