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東方遊楽調  作者: 甘味処アリス
第二部〜スカーレット編〜
20/24

第二話『召喚』

「パチュリー様〜! ただいま戻りました〜!!」


 そう言って、図書館の扉を力強く開けた少女は俺たちの方に向かってきて……首を傾けた。


「あら? お客様ですか? お茶をお出ししますね!!」


 せかせかと忙しそうにする赤髪の少女はそう言うと、その両手に持っていたたくさんの本を机の上にズシリと置き、図書館の奥地の方へ消えていってしまった。


「……パチェ、あれは?」

「小悪魔。私の使い魔よ」

「ああ、ずっと使い魔欲しいって言ってたもんな」

「ええ。ヴラドも作ってみれば?」


 パチェは俺の言葉に頷くと、さらに俺に対して作るように提案してくる。


「いや、俺は……あれ、あのヴァンパイアハンターはレミリアの使い魔みたいなもんか?」

「まあ、似たような契約は交わしてるわね」

「そっか」


 レミリアですら使い魔を持ってるのか……これは兄として持っておかないわけにはいかないな。


「よし、俺も作る。パチェ、作り方教えてくれ!」

「作り方っていうか、召喚して契約するだけだけどね」


 パチェはそう言うと、押し花のしおりを読んでいた本のページに挟み、またどこからか別の本を取ろうとして脚立に乗ると……脚立から落ちた。


「いたた……」

「おいおい……大丈夫かパチェ」


 俺はそう言って、パチェの脇を掴んで上に持ち上げる。


「ありがと。……あの本、取れるかしら?」

「あの本ってどれ?」

「赤い背表紙に金色の文字が光る本」

「ああ、アレね」


 俺はそう言って、本棚からパチェに指定された本を取り、パチェに渡す。


「ありがと。……さて、手順を説明するわよ。使い魔っていうのは、基本的に召喚した物と契約を結ぶか、欲しい召喚獣を作るかよ。ヴラドならどっちも慣れてるし、分かるわよね」

「ああ。いつもの俺みたく、召喚すればいいんだろ?」

「普段はそれで放置だけど、今回はそうはいかないわ。そのあと、召喚した奴に自分の強さを認めさせなさい」

「それなら得意分野だ」


 俺はそう言って、召喚する物を決める。

 絶対的な世界の覇者。──竜。

 ドラキュラの語源ともなったそれを、俺は呼び出すことに決めた。


「あ、あんまり無茶なことしようとすると、いくらヴラドだって契約できるとは限らないわよ」

「え?」


 パチェの言葉はすでにとき遅く、俺は魔法陣に魔力を込めた後だった。

 俺は急いでイメージを改変する。ドラゴン……それも、数十メートルある力の象徴ではなく、人懐っこいドラゴンに。

 その結果、その魔法陣から体長1.5メートルほどの黒いドラゴンが姿を現した。


「な……何やってんのよ……」

「これでも、弱い奴にしようって努力はしたんだぜ」


 俺はそう言って、ドラゴンの鼻の頭に手を置く。

 ドラゴンはグルルと喉を鳴らし、甘えたいことを態度で示してくれた。


「とりあえず、何とかなりそうだろ」

「……面倒は自分でみなさいよ」


 そう言って、パチェは魔法陣の書かれた紙……スクロールを俺に渡す。


「それをその子に当てたら、魔力を流して。多分、それで上手くいくハズよ」


 俺はそう言われ、ドラゴンの首にスクロールを当て、魔力を流す。

 するとスクロールが消失し、ドラゴンの首に光る紋様が出現した。


 その瞬間。


「な……何でぇぇぇぇ!!!????」


 ティーカップが割れる音がした。


◇◆◇◆◇


「……それで、この子になんの仕事をさせるの?」

「うーん……外の世界みたいに、居るだけでもいいんじゃないかと思うが……」

「それなら、中国の代わりに門番させたらどうかしら。中国の勤務時間、とんでもないわよ」


 美鈴の勤務状況か……少し気になるな。


「二十四時間休みなし、朝から夜までひたすら門前に立ち続ける。しかもその間、ご飯は差し出されるとはいえ一切の睡眠も取れない。さらに言うと365日のうち休みは2日だけよ」


 な、なんちゅうブラックな勤務状況……!?


「流石にあのままだと、勤務態度に問題はあってもいつかは倒れるわ」


 俺とパチェが話していると、小悪魔が新しいお茶を入れ、しょんぼりしながら帰ってきた。


「……も、申し訳ありませんパチュリー様……」

「まあ、仕方ないわね」


 パチェは小悪魔が入れ直してくれたお茶を啜ってそう答えた。


「でも、まさか……子供とはいえ、ドラゴンを使い魔にするなんて非常識にもほどがあります!!」


 そう言って、小悪魔……こあは俺に怒った。

 確かに、ドラゴンを召喚は流石に非常識だったか……。


「でもまあ、召喚しちゃった物はしょうがないわよ。こあ、貴方の時だってそうだったじゃない」

「でも、だって……!」


 こあがそう言うと、ドラゴンはこあを見つめて首を傾けた。こいつ可愛いな。


「ヴラドと生活するなら、非常識にはなれないと。幻想郷だってそう言う場所じゃない」

「で、でも……!」

「こあ」

「う……分かりましたよ。今回は認めましょう」


 こあのその言葉に、俺とドラゴンはハイタッチをした。


「んじゃ、改めてよろしくな。こあ」

「よ、よろしくお願いします……」

「んじゃあ、レミリア達にもドラゴン(こいつ)のこと紹介しないとな」

「レミィなら咲夜と一緒に博麗神社に遊びに行ってるわよ。ドラゴンの住処なら庭に私が作ってあげるわ」


 パチェはそう言うと、体を動かそうとして……フラッと崩れ落ちそうになった。

 そこをこあが何とか支えた形だ。


「う……まだ万全じゃないわね」

「パチェ、俺がやるからここで寝てろ」

「……そうね。今日は休ませていただくわ」


 パチェはそう言うと、ベッドへと戻った。

 俺は図書館を開け、廊下を通ってドラゴンと共に紅魔館の庭に出る。


「……おし、まずは場所探しだ」

「グルッ!!」


 俺の言葉に、ドラゴンは威勢よく返事を返した。

 というか……いつまでもドラゴンって呼ぶのも可哀想だな。


「お前の名前も決めるか。神龍(シェン○ン)ってのはどうだ?」

「グルッ!!」


 俺がふざけ半分で名前をつけようとすると、ドラゴンは俺に飛びかかって抵抗してくる。


「分かった、悪かった!! もうシェ○ロンって呼ばねぇから!!」


 俺がそう言うと、ドラゴンは納得したのか、俺の上からどいた。

 ……ていうか、美鈴は何こっちを見てるんだ? バレバレなんだが……。


「美鈴? 何か用か?」

「い、いえ……そちらのドラゴンさんと、随分と仲が良いのだなと思って」

「まあ、俺子供とか動物とか好きだしな」


 俺がそう言いながらドラゴンの頭を撫でると、ドラゴンは目を気持ちよさそうに細めた。


「そうだ美鈴、こいつの家になる場所を探しているんだが……ちょうどいいし、ここでいいか」


 俺はそう言うと、大量の釘と木材を召喚する。

 半永久的な創造は魔力を大量に消費し、動物などのより複雑な物になればその魔力消費は増えていく。

 釘や木材だから可能なことだな。

 俺はさらに槌を召喚し、まずは地面に正方形の四辺に穴を掘り、そこに土台となる木材を埋める。


 木材同士の交差している部分の外側から上に伸びるように木材を置き、釘で固定する。

 さらにその上に地面に埋めた木材と同様の形に木材を組み、それを縦向きに間を埋めるように並べて釘で固定すれば、とりあえずは豆腐ハウスの完成だ。


 さらにその上に木材を敷き詰め、山なりに木材を立て、そこの間を埋めるように木材を敷き詰めればこれでとりあえず豆腐ハウス+屋根の完成。木材を変えれば色に変化が出て、少しオシャレになる……多分。それは木材によって変わってくる。


 ……さて。門の前にこの小屋を作ろうと決めたのは理由がある。それは、美鈴とドラゴンが門番を交代でできるようにするためだ。ちなみに、ドラゴンに何か異常があれば俺とパチェに連絡が届く。


 これで少しは、美鈴の二十四時間休みなし激務レースが休まるだろう。睡眠時間が確保できれば、門番の仕事中に寝ることもなくなるしな。


 俺はそう思いながら、ドラゴンの頭にポンポンと手を置いて撫でるのだった。

自分は建築の知識一切ないです。ご了承ください。

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