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東方遊楽調  作者: 甘味処アリス
第1章〜子供達の黄昏〈人超異変〉編〜
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第九話『人を超える少女〜人超異変第五面、決着〜』


 妖夢は刀を構え直すと、再び高く跳躍して未花へと肉薄する。

 未花はそれを超能力を用いて妖夢を弾き飛ばすことで回避し、さらにたくさんの岩を妖夢に向かって撃ち出した。


 妖夢はそれを全て切り裂くと、妖力弾を未花に向けて飛ばす。

 未花はそれを能力で静止させるが、その弾幕ごと妖夢に斬られた。

 妖夢はそのまま未花のことを切ろうと妖力で空中から急前進したが、それは自動で動くフラガラッハに防がれた。


「くっ……!」

「次に私に刃向かうようなら……今度はあんたの胴体がねじれちぎれるわよ」


 未花はそう言って能力で空中に停滞させている妖夢を脅すが、俺はそのうちにゴーレムの背中に渾身の蹴りを決める。


「わわっ!?」

「今だ妖夢!」

「ええ!」


 ゴーレムが俺の蹴りで破壊されたことで地面に落下していく未花に、妖夢はタイミングを合わせて斬りつけた。


「斬り捨て御免」


 妖夢がそう言って鞘に刀を収めると同時に、未花は胸から鮮血を噴き出しながら倒れた。


「やっぱり……集中していないと、あの能力は使えないようだな」


 あの能力の使用方法は、簡単に言えばイメージだろう。鮮明にイメージしたことを実現する能力、ともとれるか。


 つまり、イメージを作らせなければ、簡単に倒せる敵ってわけだ。

 未花があのタイミングで地面の形を変えるようなことをすれば、その瞬間、俺たちに勝ち目はなかっただろう。


「さて……この少女、どうしますかね」

「その必要はないよ。ラストスペル。爛符『ダークナイト・シューティング』」


 妖夢が呟いた瞬間、未花は答えるように何かカードを使って弾幕を展開した。

 それは、闇夜に輝くビルの光で織りなされる夜景のように、美しくも力強さを感じさせる弾幕。


「……ぅおっと、見惚れてる場合じゃなかったな。じゃあ、俺も……妖力、解放するか」


 俺はそう言って、未花から流れてくる弾幕をかわしながら、右手に妖力を溜め……未花へと、手のひらを向けた。


「『カノン』」


 俺から放たれる妖力は、未花の弾幕が銃弾だとするならば、さしずめ砲弾と言った所か。というか、砲弾くらいしか俺は弾幕を放てないからな。

 カノンは、未花の作り出した七色の美しき弾幕を散らしながら、未花へとぶつかっていった。


「……今度こそ……やったか……?」

「いや、それフラグですから」

「ちょっと黙ってて!」


 俺が妖夢に叱咤の声を飛ばし、未花の方を見やる。未花はやはり、能力を使ってカノンを防いでいたようで、俺の視線の先では岩の盾がボロボロと崩れ落ちていた。


「……ふん、やるようだね。私を本気で怒らせるとは……恐れ入るよ」


 未花はそう言いながら、身体中に妖夢の攻撃によってできていた傷を能力で塞いでいく。

 なるほど、ああやって戦線復帰を繰り返していたのか。……どうやって倒すか……?


 一番手っ取り早くて確実なのは、首を切り落とすことだろう。が、それは最終手段だ。

 なるべく命は刈り取らない方向で行きたい。


 俺はそう思いながら、刀を未花に向ける。

 その途端、刀の名前が俺の脳裏に浮かび上がった。なんで今? とは思いつつも、その刀の名前を口に出す。


「王刀『風斬落』か。……いい名前だ」


 それほどいい名前かどうかは知らないが、礼儀としてここはいい名前ということにしておこう。それはともかく……『風を斬り落とす』刀か。

 名前からして、なんだか特殊効果がありそうだが……と、そう思っていると、風斬落は空気の刃を纏い始める。それは回転に回転を重ね、小さな竜巻のようになった。


「これが風斬落の力……空気の刃か」


 なるほど、この刀であれば『風を斬る』ことも可能そうだ。


「刀に認められたんですね。剣士として誇るべきことですよ」

「へぇ……刀に認められる、か……!」


 俺は嬉しさで顔が綻びそうになるのを、必死に堪えて未花に向き合う。未花は今までずっと待ってたんだろうか? 今までの行動とは裏腹に、義理堅いやつだ。


「話は終わったかな? じゃあ、行かせてもらうよ」


 未花はそう言うと、ゴーレムがその巨大な腕を突き出してくる。

 俺はそれを避けながら、風斬落の竜巻で絡め取るように切り上げる。


「うわっ!?」

「足元がお留守ですよ!」


 妖夢はゴーレムが空中に一旦浮遊したその隙に、跳躍してゴーレムの上を取る。

 そのまま、刀を振り下ろすように突き刺そうとして……ゴーレムに止められた。


「くっ……!」

「とぁぁっ!!」


 真剣白刃取りのようなゴーレムの受け止め方に、そのまま妖夢は腰に携えていたもう一本の刀でゴーレムの腕を切り落とそうとして……静止した。


「言ったよね? 胴体捻じ切れるって」


 未花はそう言うと、妖夢に意識を集中した。

 俺はそうはさせまいと、ゴーレムの胸を思いっきり蹴り飛ばす。


「うわっ!!」


 吹っ飛ばされた未花に、解放された妖夢が追撃をかけようと走り込んで居合斬りを放つ。


 まるで『ズバッ』という効果音が出そうな勢いと太刀筋だ。

 しかし、それはゴーレムの体が盾になって受け止める。


「決定打が……!」


 妖夢は忌々しげにそう呟く。

 無力化……どうするかな……。

 俺は未花に向かって、走り込み、再び斬りつける。


「何度やったって変わらないよ!!」


 再び超能力で防がれるが、俺は刀を放して蹴り技で未花の顔に蹴りを命中させる。

 そのままバク転で落ちる刀を掴み、未花に構える。


「うぐぅ……もう、怒ったよ」


 未花は今までと変わらぬ表情でそう言うと、地面からたくさんの岩や砂が浮かび上がる。


「『岩乱砲』」


 未花がそう宣言すると、人の頭ほどはあろうかという岩が俺に向かって乱雑に飛んでくる。

 俺はそれを高く跳んで回避すると、有り余る妖力と天狗故の飛行能力で未花に向かって飛んでいく。


「妖夢!」

「はい!! 世符『嵐山剣』」


 妖夢は刀に妖力を込めて振ると、一撃で飛んでくる岩や砂、未花の周囲に浮遊するそれらすらも吹き飛ばしてしまう。


「らぁぁぁぁぁぁあ!!!!」


 俺はそれにより、剣に乗せた妖力を未花の上から突き落とした。


「界符『剣乱斬』


 一つの巨大な柱を中心として、いくつも降り注ぐそれは地面をえぐり、未花の逃げ道を削っていき……未花は飲み込まれた。


 妖力が切れ、落ちていく俺を支える妖夢。


「もう……無理しないでください」


 地上で妖夢にお姫様抱っこされた俺が、少し悔しい気分になったことはもう過ぎた話だ。

 厳しい目で一点を見つめる妖夢。その視線の先には……地面でぐったりと横たわる未花の姿があった。

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