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Flight23‐校医さんとの何気ない一日

今回は彩さんの暴走率が120%を超えました。ご注意ください!!




 僕の週末はある意味極端だった。

 土曜日は先輩との約束を守ってデート(なのかな?)をしてゴタゴタがあったけど、日曜日は矢沢くんと一緒に家でのんびり何事もなく過ごした。

 ……あ、唯一出来事としてあげられることがあるとしたら、日曜日の昼頃に先輩本人から大会で優勝したってメールが来たんだ。

 その時添付されてた写真には、優勝のトロフィーを掲げながら満面の笑みでピースしてる先輩の姿があった。

 その先輩の胸元には、白いリングのネックレスが輝いてて……ちょっと嬉しかった。



 そして僕は今日、普段通りに起きて、普段通りに運動して、普段通りに矢沢くんを起こして、普段通りにお弁当を作って、普段通りに制服に着替えて、普段通りに家を出た。

 それから普段通りに矢沢くんと雑談しながら登校し、普段通り彩貴と遭遇し、普段通り逃げ出し、普段通り追われ、普段通りに撃たれ、普段通りに避け切り、普段通りに逃げ切って、普段通りに校門を通った。



 そこまでは普段通りの学校生活だった。

 ……え? 途中でおかしなものが混ざってるって?

 しょうがない……彩貴に追っ掛けられたり撃たれたりするのは、悲しいけど既に日常だ。

 まぁ、なぜか今日はいつもに増して殺気立ってたけど……って、そんな可哀想なものを見る目で見ないでください……余計悲しくなります。


 コホン……さて、そんなことは記憶のゴミ箱に入れときましょう。

 僕が校門を通って昇降口に入ると、誰かに背後からがっしりと抱きつかれて、その瞬間首筋をチクッて痛みが走り僕の意識がブラックアウト。




 そして今、意識が戻った僕は清潔なベッドの上で横になっていた。

 清潔感漂う純白のシーツに消毒液の匂い……ここは保健室?



「ってことは、あれは彩さんの仕業か……」



 昇降口で首筋がチクッとしたのは、いつも彩さんがファンクラブに投擲とうてきしてる超即効性睡眠薬入り注射器を直接射ち込まれたらしい。

 彩さん曰く副作用はないらしい……てか、保健室の先生が薬使ったり傷口縫ったりできるのも、今思えばおかしいよな……なんでだろ?



「……私は養護教諭じゃない……校医だから……」

「へぇ〜、それどう違うんで……って彩さん!?」



 横から突然、声に出してない質問の答えが返ってきたことに驚いて、急いで声の方を振り向くと、僕の寝ているベッドの横で彩さんがパイプ椅子に座っていた。

 いつもの仕事モード(白衣着用+お団子ヘア)の彩さんは、僕が起き上がろうとするのを、それを無表情で白衣の袖からメスをちらつかせることで止めた。



「あ、彩さん?」

「……」



 僕は遠慮がちに彩さんに話し掛ける。

 でも、彩さんは無表情を崩さず、その艶やかな赤髪で隠されてない右目だけで異様な眼力を放ちながら、僕の目を真っ直ぐ凝視してくる。


 ……彩さんは基本的に常時無表情だ。

 でも、よくよく見れば嬉しい時はほんの少し目を綻ばせるし、悲しい時はほんの少し伏し目がちになる。

 そして、今はほんの少し唇を尖らせている……これは拗ねてる証拠だ。

 でも……なんで拗ねてるんだ?

 僕が腕を組んで拗ねてる理由を考えてると、拗ねてる本人の彩さんは椅子から立ち上がって、僕の寝てるベッドの上に……って!?



「ちょッ!? 彩さんッ!?」



 彩さんは流れるような動作で僕の上に乗った……こ、これはボコボコ殴られること必至の馬乗マウントポジションりッ!?

 焦った僕は急いで彩さんの方に手を突き出し……たら、両手をしっかりと掴まれた。

 これじゃ防御が出来ない……僕は本能的に目を強く瞑る。

 あぁ……神様仏様マリア様、何であなた達は僕を谷底に突き落とした後、谷底に生コンを流し込むようなことをするんですか? 僕はそんなにあなた達に嫌われること……



 カチャカチャ……カチャリ



 ん?

 なんだ、この金属が当たり合う音は……それに左手首に冷たい感触が……?



 カチャチャキ……カチンッ



 固定音と一緒に、なんか右手首にも同じような冷たい感触がするんですけど……



「かーくん……目、開けて……?」

「いや、見たくないものが目に入りそうで……」

「開ける」

「はい」



 精一杯の抵抗虚しく、僕は彩さんの言う通りに目を開ける。

 恐る恐るゆっくりと目を開けると……僕の両手には、ゴツい銀色のリングが一つずつ装着されていた。

 ……はい、いわゆる刑事ドラマでご拝見できる手錠ってやつですね。

 しかも、右手錠の鎖の先には彩さんの左手の手錠が、左手錠の先には彩さんの右手の手錠がある。

 でも、鎖が結構長くて身動きぐらいはとれる……ってぇッ!?



「彩さん!! 何で手錠を!? そして彩さんまで手錠してるんですか?」

「ふふふ……かーくんとお揃い」

「お揃いってレベルじゃないです!? これは確保とか逮捕ってやつでしょ!?」

「……かーくん……たいほー」

「どこのサスペンス劇場でそんな気の抜けた逮捕する人いるんですか?」



 言葉では抵抗してる僕だけど、状態としてはマウント取られながら手錠つけられてる……抵抗できないし逃げられる状況じゃない。

 てか……



「なんで僕はこんな目に?」

「分から……ないの?」

「はい、全然」

「…………むぎゅ」

「ぶほッ!?」



 僕の解答が気に入らなかったのか、彩さんはまた少しだけ口を尖らせたと思ったら、突然僕の顔に向かってダイビングしてきた。

 しかも、彩さんの腕は僕の後頭部に回されて、彩さんの体に引き寄せられる。

 な、なんだ? この柔らかくて心地いい密着感は……彩さんのいい匂いがいつもより濃厚な状態で僕の鼻孔に…………って!?



「はががん(彩さん)!! はかげへふががひ(離れてください)!!」

「……や」

「ごげばばがびげふ(これはヤバいです)!! びごんばひびげばがびげふっべ(いろんな意味でヤバいですって)!!」

「あ…んっ……かーくん喋ると……いぃ」

「ばびばッ(何がッ)!?」



 そう、ヤバいのだ。

 今、僕の顔は彩さんの胸に埋まってる状況……これはヤバい。

 二つのマシュマロのような感触が顔を挟み込んで彩さんの女性的で甘美な匂いが意志と関係なく僕の中に入ってきて意識が…………それよりなにより息が出来ないッ!!



「じぶじぶじぶ(死ぬ死ぬ死ぬ)!!」

「……ぁん…………もう少し」

「ぼぶずごじでじぶッ(もう少しで死ぬッ)!!」

「……むぅ」



 僕の必至さを感じ取ってくれたのか、彩さんは腕を放してくれて僕は窒息死せずにすんだ。

 でも、心臓はバクバクしたままで、顔は真っ赤に熱くなってるのが見なくても分かる。

 ……危ない……いつも、スキンシップが激しい彩さんだけど、さすがにさっきのは理性やら倫理やらがすべて吹っ飛びそうだった。

 僕を精神的に破壊してきた彩さんはそのままベッドを降りて、いつの間にかベッドの横にあった紅茶セットを手にして、手早い動きで二人分の紅茶を入れていた。



「今日はストレートじゃないの……サモワールを使って……ミルクで煮出した」

「あ、ありがとうございます」



 僕は上半身だけを起こして、差し出された紅茶のカップを取る。

 ミルクと紅茶が交ざりあったいい匂いが、暴れていた心を落ち着かせてくれる。

 そしてゆっくりと口をつけると、口の中に香りが一瞬で広がって……うん、美味い。

 この手錠さえなければ、もっと美味しいだろうになぁ……



「かーくん」

「はい?」



 僕は手錠から目を話して彩さんの方を見る。

 すると、彩さんは僕のことを下から見上げるようにして……つまり、上目遣いで僕の目を見ていた。



「な、なんですか?」

「今日は一日……ここに居て?」



 その右目は、まるで捨てられた子猫のように寂しさに溢れていた。

 ……こんな風にお願いされて、僕にどう拒否しろと?

 でも、特別なことがない限り授業に出ないと……後で彩貴に殺される。



 どうすれば……僕の選択肢ライフカードは『逃げる』『従う』『断る』の三枚。


 逃げる……両手にしっかり手錠されてるから無理だ。

 従う……後で彩貴に殺されるけど、彩さんを笑顔に出来る。

 断る……彩さんはどんな反応するだろ? 取り合えず聞いてみるか。



「もし、断ったら?」

「……さっきみたいにギュッてする」

「抵抗したら?」

「…………食べる」



 うん、捨てられてたのは子猫じゃなくて虎だったみたいだね。

 だって、涙目から一転して真顔で食べるって……完全にマジだよ?

 そんな怖いこと言われた僕が出来る選択なんて一つしかない。



「分かりました……今日は一緒にいます」

「……ん」



 僕の解答を聞いた彩さんは、首を横に傾けながら、目を細めてほんの少し微笑んだ。

 いつも無表情な彩さんが微笑むと、綺麗だし可愛いしなんていうか……胸がとっても暖かくなる。

 ……よし、せっかくだしこの時間を楽しもう。



「じゃあ、質問していいですか?」

「……うん」

「さっき彩さんは養護教諭じゃなくて校医って言ってましたけど、養護教諭と校医ってどこが違うんですか?」

「養護教諭は職員で……保健室の先生……校医は医者で非常勤職員なの」

「へぇ〜。でも、彩さんが校医なら、なんでいつも保健室にいるんですか? それに、ここいるはずの保険医はどこに?」

「前に言ったけど……私が校医になったのはかーくんのため……学校にいれば、かーくんがケガしてもすぐに治せるから……養護教諭の人は職員室でよく寝てる」

「……いろいろありがとうございます。でも、保険医が保健室にいないのってピンとこないですよね」

「……知ってる? 『保険医』って実際はいないの……」

「えッ、マジですか?」

「……うん」







 こんな他愛たわいない話をしながら、僕は彩さんといる時間を楽しんでいた。

 でも、僕と彩さんを繋いでいる二つの手錠は外してくれなかった。

 むしろ……



「彩さん、トイレ行きたいんで、手錠外してください」

「……その必要ない」

「え?」

「ほら……行こ?」

「ちょッ! えッ!? 僕が行くのは男子トイレですよッ!?」

「知ってる……でも、レアなかーくん見れる……クスッ」

「彩さんッ!? やっぱ僕トイレ行きませ……ストップストップ!! 手錠引っ張らないでぇぇえええッ!!」

「……れんこー♪」



 ……僕はなんとか男としての威厳を守り通し、それから手錠が外された放課後までの間、僕が保健室から一歩も出なかったのは言うまでもない。



 でも……なんで僕はこんな目にあってるんだろう?

 ……なんてことを彩さんに聞くと、次こそ本当に窒息死させられそうなので、僕は一生聞かないことにした。













 ‐遠呂智のハッキング予定日まで、あと二日‐












 It's depends, on the postscript of the postscript, the postscript for the postscript!!

(これは後書きの、後書きによる、後書きのための後書きだ!!)




四谷よつやアヤ



四谷財閥長女

戌神高校勤務(学校医)

年齢2○才

・身体的特徴

身長:160後半

体重:○○前半(彩貴より軽い)頭髪:赤色髪。襟足や横髪は肩の辺りまで伸びている。前髪は左側だけが顔の半分まで伸びていて、左目が隠されている。仕事中は、前髪以外を頭の頂点より後ろ側に艶やかな団子にして、その団子に鼈甲べっこうかんざし型の髪止めを刺している。

・内面的特徴

性格:無表情で感情を表に出さない。言葉の間に沈黙が入る独特な話し方をし、人見知りが激しく、基本的に無表情を貫く。

駆に対しては感情が滲み出し、抱きついたり積極的になり、ヤンデレ要素が入って盗聴等をするなど容赦がなくなる。

武装は射撃以外、メスや薬剤入り注射器等を使用。

うなじフェチ。

自分には普通、他人はシカト、駆にはベタぼれの子供っぽい大人の女性。

成績:三年前に海外へ留学し、医学部を跳び級二年という短期間で卒業し医師となり、一年前、日本に戻って校医になった経歴の持ち主。偏差値は現在首席の彩貴より上の可能性がある。

一人称:私

大切なもの:家族、かーくん、保健室

趣味:紅茶、かーくんの写真整理




 ……さて、どうでしょう? 今回の話は彩さん一色だったので、人物紹介の方も彩さんにしてみました。

 うん、今回はちょっと本編から外れて、暴走気味に終わりました。どうですか? 楽しんで頂けましたか?

 それにしても、彩さん……彩貴より目立ち気味です……アハハハハ……どうしよ(涙)




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